モータースポーツ

2013:JAF GP FUJI SPRINT CUP 富士スピードウェイ

GTレースレポート
2013年12月01日

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JAF GP FUJI SPRINT CUP 静岡県 富士スピードウェイ

 SUPER GT 2013年シリーズ戦は終わったが、シーズンラストランになるのがこの富士スプリントカップ。
 2名ドライバーが、交代で300kmを走るシリーズ戦の様な耐久レースと異なり、2名のドライバーが、22周(約100km)の第1レース、第2レースをそれぞれ走る、正にスプリントレースである。
 「エヴァRT初号機アップルMP4-1」もシーズン序盤の遅れを徐々ではあるが取り戻し、シーズン終盤になり、他のFIAGTマシンと同等のパフォーマンスを見せる様になってきた。
 またスプリントなので厳しい燃費にも左右される事もない。
 来シーズンをも占う、今シーズン最後のパフォーマンスを見せつける事ができるか・・・。
 イベントレースとはいえ熱い戦いになる事は必至!

11月23日(土) 第1・第2レース予選 / 晴れ

 昨日に続き、素晴らしい雄姿の富士を望む今日は、予選と決勝第1レースだが・・・そう、昨年までのスプリントカップやシリーズ戦の様に、プラクティス(練習走行)がなく、いきなり20分間の予選となる。
 決して豊富とは言えないが、富士スピードウェイは今シーズン最も多くの周回をこなしたサーキット、そのデーターがどう活きるか?
 まずは第1レース出走の、高橋選手の300占有予選、20分後から500クラス占有予選、5分のインターバルをおいて第2レースの300、500クラス占有予選がそれぞれ20分間づつというスケジュール。
 午前8時5分、予選スタート。
 最も第1コーナー寄りのピットの利を活かし、開始と同時に真っ先にコースインする高橋選手。
 気温、路温、共に10度と低く、ソフトタイヤで臨む予選、2周目1′40″052、走り出し好調だ。
 連続アタックは、39″652、40″132と続き、順位は7番手。
 予選も中盤になると、2セット目のNEWタイヤを投入するチームもあり、ポジション争いは熾烈さを増す。
 高橋選手は、タイヤ交換はせず、走り込みに専念する。
 更なる連続アタック試み、各セクターでベスト出すが、ミスもあり、なかなかうまくまとまらない。
 ミスした周回は、クールダウンし、タイヤを温存、最後のアタックに掛ける。
 そしてタイヤのグリップのピークは過ぎた9周目、39″347の今シーズンのベストタイムを更新。
 最終結果は15番グリッドとなる。

 続く加藤選手の第2レース予選。
 気温は11度、路温16度と上昇。
 高橋選手同様、一番にコースイン、周回を稼ぎ、計測3周目、38″048は暫定2番手。
 6周目ピットに戻り2セット目のNEWタイヤを投入。
 この時点で既に6番手、この第2レースも接戦が続く。
 残り時間は10分を切り、タイヤのウォームアップを入れると実質アタックは1~2ラップ。
 10周目、37″900暫定5番手、残り時間僅かだが、連続アタックに入る。
 第1セクター、ベスト!第2セクターもベスト!
 このペースなら37秒6~7かと思われたが、第3セクターで他のマシンに引っ掛かり、38″164と更新ならず7番手。
 6番手までがコースレコード(37″892)を更新、加藤選手は僅かに及ばず。
 だが明日のレースはかなり期待できそうだ。
■予選後のコメント
■高橋選手「 まぁもうちょっといけると思うけどね・・・38秒は行けたと思うけど・・・体が慣れた頃にはタイヤもたれたんで・・まぁそれはサッサとできない・・・まぁしょうがない・・・ま~ボチボチだね・・予定通りくらいのもんだ・・あれは。」
■加藤選手「 富士はシーズン中1番レース数があるので・・セットアップもだいぶ詰まってきていますし、タイヤ選択もいいところが取れていたんで、思ってたより・・前戦の苦戦からすれば・・健闘してるかなって思います。上位はちょっと早いですけど・・・それでも1秒以内なんで・・レースはまた何があるのか分からないのでがんばりたいと思います。」
■渡邊エンジニア「 当初実は考えていたより、 10番前後で苦しむかなと思っていたんですけど、終わってみれば加藤選手は最終的には7番手、高橋選手は10番手、イメージとしては思ってたより良かった。実際高橋選手の39秒というのは今まで最速のタイムだと思いますし、全体を通してみてもアマチュアではトップクラスだし、悪くなかったと思います。結局なんで徐々に歯車があってきたかって言うと以前にも話をしている、タイヤとクルマのバランスとか、エンジンマップの問題とか、徐々にクリアできて来ているんで、全部がうまくハマればこういう感じで走るのかな・・・とい言ったところです。特に加藤選手に関しては4番手あたりを狙えそうだったので、2列目逃して少し悔しかったかなっ・・・て、言うところです。全体的バランスもいいし・・・ただGT-Rが極端に早いんで・・・あれと勝負するがちょっと厳しいと思いますけど・・・全体的には流れとして悪くないんで・・後はレースの方・・うまく走ってもらって、いい形で今年の最後しめくくれれば良いと思います。」

11月23日(土) 第1レース決勝 / 晴れ

 SUPER FORMULA、F4、ヴィッツレースと、多彩なマシンの予選、決勝を経た午後1時50分、第1レースのウォームアップが始まる。
 このスプリントカップは、隊列を組んで、ゆっくりと走りながらスタートする通常のローリングスタートではなく、スターティンググリッドに一旦マシンを止めて、そこからスタートするスタンディングスタートなる。
 その為、このスタートのテクニックも重要となる。
 ウォームアップでは、ピットロードエンドでスタート練習ができ、多くはスタート練習を行っている。
 だが、「エヴァRT初号機アップルMP4-12C」は、今夏、クラッチにトラブルが発生し、目下の不安要因でもあり、このクラッチに負担のかかる、スタート練習は行わない。
 午後2時5分フォーメーション開始・・・1周の後スタンディングスタート。
 トラクションコントロール等電子デバイスの助けもあったものの、きれいなスタートを切る高橋選手。
 ストレート上での攻防、そして1コーナーではアウトに膨らむものの踏みとどまり、オープニングラップは14位。
2周目には2台のメルセデスにも抜かれ16位にまで後退。
 その後は40秒から41秒台、40″471のベストタイムも出し、中団グループの中では速いタイムで接戦を演じ、7周目には14位、翌周には13位にまで追い上げる。
 
 だが、9周目には14位、12周目までに再び16位にまでドロップ!、タイムも42秒~43秒台へと落ちこむ。
 ここ2戦、オートポリス、モテギ同様、このままズルズルと下がっていってしまうのか・・・。
 
 だが、13周を過ぎ、中団グループでの接戦の中、コンスタントに41秒台でラップし、15位、そして14位へと上がる。
 この順位も、コントロールライン上の順位で、コース上各所で順位を入れ替えるバトルを展開し、22周を終了し最終的には14位でチェッカー。
 結果はいまひとつだが、今シーズン最後に続いた、不甲斐ないレース展開を払拭する好タイムの熱戦は、高橋選手の来シーズンを占う有意義なシーズンラストランと言える。
■第1レース後のコメント
■高橋選手「 まぁあんなもんだねん実力は・・あんなもんです。もうちょっと上に行きたかったけど。ベストラップはそう悪くなかったけど、結構タイヤたれてきたし・・後半・・。タイヤのせいでもないけど・・まぁボチボチです。」
■渡邊エンジニア「 ま~予選の時も話したと思いますけど、車も極端にバランスとかも悪くなかったみたいで、レースは結果的には14位だったんですけど・・・内容は僕らが見てても盛り上がるぐらい、随所でバトルもあって、そして内容もクリーンだったし、実際ラップタイムなんかもTOP10に入るくらいのイムが出てて、実際のゴールした順位よりはすごく内容良かったかなと思います。だから今年最後のレースになっちゃってますけど、ここに来ていろんなものの辻褄が合ってきてるんで・・・決して高橋選手もこの14位という順位が良いとは言わないと思いますけど、来年に向けて、高いモチベーションを保つための、ほとつの良い材料になったかな~と思います。」

11月24日(日) 第2レース決勝 / 晴れ

 今年最後のSUPER GTレースイベントとなる今日、昨日の第1レースと同様、午後2時5分から22周のスプリント、第2レースが行われる。
 それに先立つウォームアップで、本来なら、完全停車の状態からのスタート練習が行いたい所だが、昨日の第1レース同様クラッチへの負担を避ける。
 その為、加藤選手はピットロード閉鎖ギリギリとなる4周回をこなし、完全停止からではないが、スタートの感触を確かめる。
 ピットロード閉鎖時刻までにコースインしないとピットスタートとなってしまい、スプリントレースでは致命的な遅れとなる。
 またスタンディングスタートは、特にスプリントレースではレースを大きく左右する重要なテクニック。
 一昨年のJAFGPにおいては、ベテランの加藤選手でもなんと(レース人生で初めて・・)エンストを喫し、大きく順位を落としている。

 フォーメーションラップを終え、7番グリッドに着いた加藤選手、レッドシグナル消灯!レーススタート!!
 素晴らしい、スタートを切った加藤選手、1コーナーではなんと3番手に上がる。
 そんな加藤選手のロケットスタートより、もっと先を行ったのがポールポジションの3号車(GT-R)!
 だがこれは、明らかにジャンプスタートと思われ、TVモニターに「反則スタート検証中」のテロップが流れるが、オープニングラップは3号車、55号車(CR-Z)に続き3番手で通過。
 そして3周目にはその3号車にドライブスルーペナルティの裁定が下され、実質2位に上がり55号車を追撃、6周目にはテールtoノーズとなり、7周目のストレートエンド、トップスピード勝負で前に出てトップへ!!
 その頃、3番手に上がってきたのが、昨日の第1レースでも中盤までトップを快走した35号車(GT-R)。
 ややペースの落ちた55号車が蓋をする形で抑えられていたが、8周目には2位に上がり、2号車に迫る。
 加藤選手から「100Rとかリヤがタレタレ!!」とマシンの厳しい状況が伝えられる。
 このレース、ウィングを寝かせ、トップスピードを稼ぐセッティングの為、ダウンフォースが減少、高速コーナーでは厳しい事は予想されていた。
 ストレートの速い35号車に、ストレート半分を含む第1セクターで詰められるものの、第2セクターでは抑えきり、第3セクターでは加藤選手がややリード、続くストレートを逃げ切るマージンを作る。
 39秒後半で迫る35号車、40秒前半で逃げる2号車、徐々に差を詰められていたが14周目、何かトラブルを抱えたか?突然ピットイン、大きく後退した。
 2位、55号車に3秒リードでこのまま逃げ切りたいところだが、その55号車の後方に新たな伏兵、11号車(メルセデス)が現れる。
 55号車の40~41秒台に対し、39秒後半の11号車は17周目に55号車をパスし、2号車加藤選手の1.5秒後方に迫る。
 残り周回は5周。
 19周目にはテールtoノーズとなり、残り3周、各コーナーで激しいつばぜり合いとなる。
 高速コーナーで攻め立てられる2号車加藤選手だが、ストレート中盤からの伸びは2号車が上を行く。
 真夏のセパンではこのメルセデスのトップスピードに舌を巻いたが、この寒くなった時期なら「エヴァRT初号機アップルMP4-12C」が速い。
 そんな攻防はファイナルラップまで続き、第2、第3セクターのテクニカルセクションを抑えきり最終コーナーを先に立ち上がる2号車加藤選手。
 その状況をピットのモニターで見届けたクルーが、サインエリアに集まり加藤選手を迎える。
 もう大丈夫だ!!
 0.5秒後ろに11号車を従え「エヴァRT初号機アップルMP4-12C」加藤選手がトップでチェッカーを受ける!!
 昨年のJAFGPでの2位に続き2年連続表彰台、2010年のSUGO戦以来の優勝だ!
 この予想以上の結果は、今シーズン長いトンネルに入り、明かりがチラッと見えつつも、なかなか脱出できなかったチームにとっては最高のサプライズ。
 優勝インタビューで見せた加藤選手の涙は、チームクルー、ファン、全ての思いでもある。

■第2レース後のコメント
■加藤選手「 まぁセッティングがテストできてるわけではないので、完璧じゃなかったんですけど・・・まず今日の勝因はスタートがとても良くて・・もうそれに尽きますよね。それから実績のあるタイヤとセッティングで臨んだんですけど、100R捨ててでもストレート伸びるような感じの車だったんで・・まぁほんとに運にも助けられ勝ってしまったといった感じです。自分でもまだ信じられないな~って言う感じです。シーズンの途中までの苦戦を考えると・・ただほんとに序盤からトラブルに泣かされてきて、非常にストレスの溜まるレースが多かったんですけど・・まぁほんとにムーンクラフトのスタッフと、マクラーレン側のスタッフと、みんなで力合わせて一つ一つ問題を消してくれて、それが本当に今の速さにつながってきて、信頼性も上がってきて、だからこういう結果になったと思います。本当にみんなに感謝したいです。ありがとございました。」
■渡邊エンジニア「 加藤選手の素晴らしいスタートによって7番手から一気に3番手に上がって、そしてトップの車がフライング・・・自動的に2位ポジションを獲得し、そこからさらに二番手・・つまりその時1番の55号車のARTAのCR-Zを抜いてトップに立ってそのままゴールで優勝できた・・ということなんですけど・・。まぁ後からGT-Rの35号車が来てたんですけど、向こうは向こうでタイヤに問題があって、結局最後まで持たずピット入り、そして単独1位になり、中盤走って、そして最後ダンロップのメルセデスに追い込まれましたが、加藤選手の巧みなドライビングと、冷静な判断で最後まで逃げ切り、結果的に優勝できたと・・今までいろいろやってきたものの集大成がここに出たかな・・。というのも以前も何度も言ってますけど、タイヤの組み合わせ、燃料のマップ、そしてシステムトラブルがなくなった事、その辺と加藤選手の巧みなドライビング・・・それらが全て発揮できたかな・・。あと車自体は、ターボの関係で気温が下がれば下がるほどエンジンのパフォーマンスが上がるので、その辺に関しては、この寒い時期のレースというのは我々にとって追い風になったかな・・そして決勝に関しては、ダウンフォースを・・・この車もともとダンフォースが少ない車なんで紫電のようにコーナーでは稼げない車なんで、気温が低くてエンジンのパワー生かせるようにということで、ウイングを寝かせたり、走行の姿勢もスピードが出るような感じに変更して決勝に臨んだんですが・・結果的には良い方に行きましたね。途中リヤタイヤがたれてきて、リヤの動きがナーバスってこと(加藤選手は)言ってましたけど・・・まぁそれは予想はしてたんで・・まぁその部分を捨てても・・というか、それを考慮しても、ストレートスピードにかけようと・・、そして実際TOP3に入るほどのトップスピードで走っていたと思うんで、それをうまく加藤選手が利用して抜かれずに・・、ラップタイム自体は後から追い上げてきた車のほうが全然早かったんですけど、それがちゃんとうまく活かせて、そして最終的には勝てたかなと言う感じです。・・・とりあえず苦悩の年だったんで、最後にいい形で終われてよかったかなと思います。来年に向けては、これで色々と基本的な材料が揃ってきてますんで・・・僕個人的な感覚から言えば、やっとスタートラインかなと・・・このバランスが取れてる段階から、またタイヤなり、車のセットアップ内容進めていけば、色々と少しは良い年に来年はなるんじゃないかなと思います。またよろしくお願いします。」