モータースポーツ

2015 SUPER GT第5戦:鈴鹿サーキット 

2015シーズン LOTUS EVORA
2015年09月10日

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8月28日 設営 

 SUPER GT第5戦は伝統の鈴鹿1000km。
 地元東海地方という事もあり、SUPER GTのシリーズ戦に加わる2006年よりズッと前からGTクラス、S耐クラス等にも参戦し、優勝も含め幾度か表彰台に上がった事もありチームとしては“楽しみ”な1戦である。
 しかし昨今の1000kmは長距離耐久というより、300kmスプリントX3回という様相で、マシンというハードの耐久性に差は無く、通常のレースでの勢力図がそのままスライドする事が予想される。
 だが、1000km、約6時間のレース・・・・天候、気温、路面温度の変化、義務付けの4回のピットイン・・・またこの長丁場はアクシデントによりセーフティーカーが入る事も珍しく無く、その後のレース結果を左右しかねない。
 それらの要素からレース中の作戦変更は1度や2度ではなく、そうした事態にチーム一丸となって臨機応変に対応し、ゴールまでマシンを導かなければなないし、そこに勝機もある。
 昨年はドライバー、ピット作業共ほぼノーミスながら、燃費が悪く、加えてピットアウト時の始動で大きくロスしたMclarenMP4-12Cで12位。
 今年のマシンは前戦富士では、終盤の不運タイヤバーストでストップするまで7位を走行し、充分ポイント圏内でレースをする速さにまで完成度が高まってきた「シンティアム・アップル・ロータス」こと「SGT-EVORA」・・・好燃費に加え、助っ人第3ドライバーは今季GTAsiaで優勝を飾っている濱口 弘選手もドライブ。
 まずは確実に昨年以上の順位・・・シングルポジションを狙う。
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8月29日 プラクティス/ 曇り /ウェットのちドライ

 未明の大雨は夜明け前には上がったものの、公開車検の始まる午前8時頃ではまだ路面はシットリ状態。
 気温も24、25度、路温も26、27度程度と、予想以上に低く、完全ドライとなれば、かなりの好タイムが期待できる。
 公式練習の始まった9時20分、ウェット宣言(マーキングタイヤ以外のウェットタイヤが使用可能)が出され、プラクテティス(練習走行)が始まる。  コースインするマシンは、ドライタイヤ、ウェットタイヤと半々といったところか・・?
 だがウェットタイヤでコースインした加藤選手、バックストレートと130Rだけが少し濡れてる程度・・との事なので、もう1セットのウェットタイヤの皮むきだけして、直ぐにドライタイヤにはき替え計測を行う。
 今日のプラクティスもいつもと同じ85分+クラス専有走行10分だけ。
 その時間内に予選決勝に向けたタイヤ選択、セットアップ、燃費等各種データ取り、高橋選手は勿論、第3ドライバー濱口選手の練習走行も行わなくてはならない。
 そんなタイトスケジュールに加え赤旗でセッションが分断される等、慌ただしい中、早々と2′00″523のトップタイムをマークし存在感をアッピール。
 直ぐに3号車(GT-R)に抜かれるも、加藤選手は更にタイムを上げ59″610で再びトップに返り咲き、最終的にもこのセッションの一番時計となる。
 無論、このプラクティスの順位は特に意味を持つものではないが、チームのモチベーションを上げるには充分!!
 続く高橋選手は、開幕前のここ鈴鹿のテストにおいて初ドライブ時にクラッシュ!このマシンで、ここ鈴鹿ではこれが初めてのドライブとなる。
 ここでも赤旗によりセッションが分断されるも、計測5周、赤旗ラップも含め僅か7周の走行ながら、03″399のベストタイムをマーク。
 まだ各セクタータイムにムラがあるが、うまくまとめ上げれば、2秒台は確実だ。
 最後に濱口選手・・・計測2周目には02″752をマーク!
 このプラクティスで、速いタイムを出した方が予選アタックを行うと決めていたので、濱口選手がクラス専有時間にNEWタイヤでの予選シミュレーションのタイムアタック。
 計測開始で直ぐに01秒台、翌周には00″296の好タイムで8番手をマーク、更にアタックを続けるが、各セクタータイムは伸びず、最終シケインでコースアウト!!
 グラベルに飛び出しストップ、赤旗を出しそのままセッション終了となってしまうが、Q1予選突破への足掛かりを得る。
 このプラクティスでは59秒台3台、00秒台11台、01秒台8台と接戦必至の結果となった。
 上位13台が進めるQ2予選、このノックダウン方式の予選はそれぞれ異なるドライバーが出走しなくてはならない。
 現在は約半数以上のチームが、ドライバーがプロとプロのコンビで、共に13位以内に残るタイムを出すことがでときれば良いが・・・・・、そうは行かない場合どちらのドライバーをQ1予選を走るか?
 少しでも前のグリッドを得るには“確実な”ドライバーをQ1に出走させ、最後方でも13番グリッドを得るのが常套手段であり、我々のチームも残念ながらアマチュアの高橋選手では、プロドライバーひしめく中、この13位以内はハードルが高い。
 コースによっては、あと一歩にまで迫っているところもあるのだが・・・。
 このレース、濱口選手が加わったものの、ここ鈴鹿初乗りのNEWマシン・・・今回も加藤選手にQ1予選を託すことになるかと思われたが、濱口選手が予想以上の好走を見せ、Q1予選は突破できると判断・・・予選となれば他車も更にタイムを上げてくるであろうが、濱口選手への期待がかかる。
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Q1予選 / ドライ

 雨は降らないものの、ズッと曇りの為、気温、路温もそれぞれ27度、31度と、殆ど上がらない午後2時30分、Q1予選開始。
 やや緊張感の見えた濱口選手だったが、タイヤを温めた計測2周目いきなり59″993のベスト更新に加え3番手タイムを叩き出す。
 連続アタックにより、更に59″961に短縮するも、他車のタイムが上がり、8番手に後退。
 3周目もアタックするが、第1、第2セクター共タイムは縮まらず、タイム更新が見込めない事から、ピットからもクールダウンを促す。
 残り時間も少なく、また他車もアタックが終了、最終的には11番手でQ1突破を果たし、2013年から始まった、全サーキットでのこのQ1、Q2予選方式で、Q2予選に初めて加藤選手を送り込むことができた。
 プラクティスタイムからも充分上位・・・いや、ポールポジションへの期待が膨らむ。
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Q2予選 / ドライ

 500クラスのQ1において赤旗中断があり、10分遅れでQ2予選開始。
 12分間と短いセッションなので、赤旗中断を嫌い、早々にコースインする加藤選手。
 2周計測、4周分の燃料しかいれない軽量仕様・・その2周目にピタリと照準を合わせたラップタイムは、なんと1′58″248!!
 従来のコースレコード1′59″115を1秒弱更新する正にスーパーラップ!!
 加藤寛規恐るべし!!
 これにはライバルも追いつけず、2位に0.35秒差をつけ、加藤選手5年振り(2010年第4戦SUGO以来)11回目のポールポジションを獲得!!
 ポールポジションはチームに最高のモチベーションをもたらし、このNEWマシン「シンティアム・アップル・ロータス」の速さを実証した。
 だが、このポールポジション、最終的なリザルトとしては大きな価値を持たない。
 ポイントも無ければ、シリーズランキングにも影響はない。
 レースを走りきった先に残る残る結果・・・ここ無くしてレースを戦う意味はない。
 ポールポジション獲得を一つ積み上げた加藤選手も、充分わかっている。
 明日決勝日、予報は雨、長丁場・・・・NEWマシンにとっての不確定要素はたっぷり。
 「速さ」に「強さ」を加える絶好の舞台は出来上がった。
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8月30日 決勝レース /雨

 ポールポジションという、これ以上ないグリッドを得た決勝日・・・残念ながら予報通り朝から雨。しかも午後にかけてもズッと雨予報・・・。
 通常のレース、また昨年までの1000kmでは午前中の30分のフリー走行が設けられているが、今年はそれが無く、新コンパウンドのウェットタイヤを試す事はできない。
 タイヤの性能差・・・というより雨量、温度等で現在参戦中の3社(BS、ダンロップ、YOKOHAMA)各メーカーのキャラクターの差があるというだけで、我々が使用するYOKOHAMAが不利という物ではない。
 心配なのは、NEWマシン「シンティアム・アップル・LOTUS」のウェットデータが少なく、開幕戦岡山の決勝時のみで、セット変更を試した等、テストデーターは全く無いといっていいし、ドライバーの習熟不足・・・特に濱口選手は全くのブッツケであり、この雨が有利に働く要素は皆無・・・先述の新コンパウンドのウェットタイヤがドンピシャとハマる事に掛ける。
 朝のフリー走行が無くなった代わりに、グリッドに着く前のウォームアップ走行が通常の8分から20分に延長されたので、加藤、濱口両選手2周、残りを高橋選手がそれぞれ走行、ピットイン時にはピットワークシュミレーションを行う。
 ウォームアップ走行が終了し、一旦全車ピットに戻った後、再びピット出口が3分間開放され全車グリッドに向かう。
 ピット内でガスフルチャージ、ドライバー乗車・・・あれっ思ったより時間が掛かっており、大慌てでピット前に押し出す送りだそうとする。
 ところがポールマシンは、全車グリッドに着いた後、300、500各々1台づつゆっくりグリッドに並ぶセレモニーが有ったので、ピットを離れる時間にも少し余裕があったのだ。
 しばらく経験していないセレモニーだけに忘れておりパニクってしまった。
 このスタート進行が始まる頃には雨は止んでしまった。かといって、このまま上がると思われる空模様ではなく、時折小雨を感じるといったところ・・・。
 全チーム、ドライタイヤと、仕様の異なるウェットタイヤをグリッドに持ち込み、直前まで待機。
 しかし、フォーメーションラップ・・その前の警察車両先導のパレードラップが始まるまで本降りとはならず、軽い小雨により路面コンデションは殆ど変わることなくスタート時刻を迎える。
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1stスティント/ウェット:加藤選手

 セカンドポジションの10号車(GT-R)のダンロップタイヤを警戒していたが、ホールショットは加藤選手が穫り、スタート前に「1コーナーまでに抜かれなかったら後は大丈夫。」の言葉通り、オープニングラップも一番で戻ってきた。
 2番手はその10号車・・それから1周1秒以上のリードを築き、3周を終え5秒差まで広げる。
 タイヤ選択、キャラクターの違いから、4周目には後退した10号車に代わり88号車(ランボルギーニ)が2位へ上がる。
 2号車加藤選手と変わらぬ12秒台で追う88号車だが、時折13~14秒台へ落ち込む事があるのに対し、終始安定して12~13秒台、15、16周目には11秒台と抜群の速さを見せ、18周目には2位に17秒差にまで広がった。
 新コンパウンドのYOKOHAMAはドンピシャ!!
 順調に周回を重ねているかと思われるが、レース序盤にはリアモニターが映らなくなり、10周過ぎ辺りからは「エアコンが効いてない!!」との無線が入る。
 リアモニターは、水膜で正常でもあまり見えないし、エアコンもこの雨、気温でドライブに影響は無く、共に天候に助けられている。
 19周目になると、BSタイヤ装着の31号車(プリウス)が、タイヤと路面コンディションが合ってきたのか、11~12秒台で2位に上がり、加藤選手と変わらぬ・・・時折上回るタイムで追走。
 20周目、25周目、そして30周目でもその差はズッと16秒と変わることはなかった。
 また30周辺りから1回目のピットインが始まる。
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 今年もドライバー交代を伴う4回のピットストップが義務付けられ、最低でも5スティントで区切られるので、レースは173周・・・300クラスは160周辺りがゴールとなり、これを単純に5回で割れば、1スティント32周となるが、燃費、ドライバーのタイム等々の要素もあり、ピットイン周回は各チームまちまちである。
 160周走る為に、・・燃費が1周当り3リットルとした場合・・約480リットルを必要とし、スタート時に100リットル(規定の燃料タンク容量)積み込んでいれば、480リットル-100リットル=380リットルをレース中に給油しなくては・・・いや、?できなくては?ならないのである。
 ピットインを最小回数の4回で済ませるには1回のピットインで380リットル÷4回=95リットルの給油ができなければ、1回以上の余分なピットインを強いられるのである。
 ※これらの数値はあくまで説明用の例えです。
 特に今回の様に雨が絡むと、雨が止み路面が乾きだしドライタイヤ有利となった場合の交換タイミングと、残燃料との兼ね合いで複雑な作戦が要求される。
 ピットインして、燃料を満タンにしてウェットタイヤで送り出したが、その後雨は止み、雲が切れ強い日差しと風が吹き、急激に路面が乾きだし、ドライタイヤ有利となったとしても、少ない周回=燃料がそれほど減っていない状態でピットインさせても、タイヤは交換できるが、最終的に給油の帳尻合わなくなる場合がある。
 1000kmもの長丁場になると、ウェットからドライへ・・・再びウェットへと2転3転する事も珍しくない。
 雨は一旦上がったが、また降りだすのか?完全回復に向かうのか?そうした天気予測も行うと同時に、鈴鹿の様に東西に長いコーズは西と東で天気が異なる場合もあるので、ドライバーからのフィードバックが最重要である。
 こうしたイレギュラーなタイヤ交換が、予定していたピットインとドンピシャ・・・とまで行かなくても、ギリギリ合わせ込む事ができるかどうか・・・こうした計算が常に行われてレースは進むのである。
 28、29、30周とドンドンとルーティンピットインが始まり31周目、2位の31号車もピットイン。
 雨はスタート時に比べれば本降りとなっており、路面もやや水量が増えたか?ラップタイムも全体にやや落ち気味・・・。
 見かけの順位は元々1位なので変化無し・・・2号車がピットアウト後どうなるか?
 順調にピット作業を終えた31号車が再び2位に着くだろう。
 ほぼ燃料を使い切った35周を終え加藤選手ピットイン。
 約100秒後方に31号車がいる。
 タイヤ4本交換、燃料フルチャージで濱口選手に交代し送り出す。
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2ndスティント/ウェット:濱口選手

 だが、このコースインではトップだったものの、アウトラップで31号車にパスされ2位に後退。
 冷えたウェットタイヤに加え、レース直前のウォームアップ走行で、このマシンで初めてウェットコンディション走ったばかりである・・・それも2周だけ・・・アマチュアドライバーには厳しい条件だ。
 15秒台の31号車に対し、16~18秒台の濱口選手、39周目には13秒台で追い上げてきた61号車(BRZ)にも抜かれ3位にまで後退し、40周目、トップ31号車と61号車の差は1秒、そこから7秒遅れて2号車。
 更に43周目になると、その差も11秒と大きく水を開けられてしまった濱口選手。
 しかも500マシンとの接触で左ミラーの向きが変わり機能しなくなってしまった。
 このままジリ貧となってしまうかと思われたが、45周以上になると一気に15秒台と、1、2位にと変わらぬラップタイムにアップ!!
 50周を過ぎると14秒、13秒、12秒台と走行中のクラストップタイムで周回を重ねる濱口選手。
 加えて、トップ2台がデッドヒート。
 各コーナーでバトルを展開するが、ラップタイムは15~16秒台に落ちていく。 正に「漁夫の利」で、53周目、トップに上がった61号車、2位31号車、そして2号車までの3台が1秒以内の接戦となり、翌周には31号車を抜き2位へと上がる。
 そのまま61号車にテールtoノーズで周回を重ねる中、58周目に入ると、モニターにクラッシュ車両が映し出される。
 場所は分からないが、部品が散乱しており、セーフティーカー(以下;SC)が入るかもしれない。
 実は、雨は既に上がっていて、これ以上雨が降らなければドランコンディションへと移行すると思われ、我々も含め、次のピットインではドライタイヤへの交換が予定されており、準備も整っていた。
  SCが入る事が予想されるが、実際にSCが入るまで(ボードが表示されるまで)の僅かな間隙をついてピットインが可能であるが、反対にSCボードが出てからのピットインはできない・・・といっても、入り口が閉鎖されるわけではないので、入ってしまうことは可能だがペナルティの対象となる。
 濱口選手、2号車の位置からすると、その間隙をついてギリギリでピットインは可能と判断、濱口選手にピットインを指示し、ピット前は臨戦体制にはいる・・・ところが、思いの他濱口選手が遅い・・・というより、予想していた位置より遠かったようだ。
 このままではSCボードが出てしまい、ピットインはできない状態になるので、ピットインは中止しようと無線で知らせるが、応答が無い。
 伝わっていないか??!!
 細長い鈴鹿のコースは部分的に無線が入りづらい場所、時があるが・・・よりによって今か・・・。
 と、やってる内に、ピットロードに2号車が入ってきたしまった!
 入ってしまった以上、予定していた作業を行わなくなくてはしようがない。
 タイヤをドライに換え、燃料フルチャージ、向きが変わったミラーを修正、ドライバーは再び加藤選手が乗り込み、SC走行の隊列に送り出す。
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3rdスティント/ドライ:加藤選手

 SC走行の隊列に加わり5周、レースが再開される。
 だが既に先のピットインはペナルティ対象となる事が通告されている。
 67周目ペナルティストップ90秒!!
 ドライバーが必死になってコンマ数秒づつを積み上げたリードは一瞬で消え、多額の借金ができてしまった。
 戦列に復帰するが11位・・・ポイント圏外にはじき出されてしまったが、直ぐ前にいた77号車(フェラーリ)をパスし10位に上げる。
 トップは、先のSCの出る直前にピット作業をすませた55号車(CR-Z)に替わっており、そこから約2分遅れ・・・既に周回遅れ寸前の7秒後方に迫っている。
 トップが背後に迫ればブルーフラッグを振られ、進路を譲らねばならず、そうなってはもう勝負権は無くなったも同然である。
 ところが、この68周目にはいったところで、トラブル車両が発生、最終コーナーから第1コーナーにかけてオイルが撒かれてしまい、2回目のSCが出る。
 オイル清掃が行われる中、SC走行は続き、一旦ストレート上にクラス別に停車。
 その後?先頭車両(1位車両)から前の車両?は、この後のSC走行中にグルっとコースを1周先行して、隊列の後ろに並ぶ事になる。
 すなわち、?もうすぐ?周回遅れになろうかという位置にいた2号車も、リセットされるのである。
 このSC走行に入る前に、既に周回遅れ(1位車両の後にいる)になっていたらリセットはされない。
 全くもってラッキーにも10番ポジションからの再レース。トップ55号車と同一周回・・・マイナス13秒となった74周目、2分04秒をマーク、ほぼ完全なドライコンディションとなったが、直ぐ背後にいた77号車に抜かれ再び11位へと後退。
 前の車両とのビハインドが無くなったのは、後ろに対しても同じ事・・・油断はできない。
 序盤からのライバル、31号車が2回目SC走行中のスピンがあり、ドライビングスルーペナルティを受け3位から13位へと下がり、加藤選手は10位へと上がる。
 レースも半分・・とはいえ、通常の1.5レース分を消化したにも関わらず、ワンミス、ワンチャンスで大きく順位が動く接戦となっている。
 80周前後から3回目のピットインが始まり、見かけの順位も変動。
 この頃のトップは88号車(ランボルギーニ)だが、まだ3回目のピットイン前の為暫定である。
 全車3回目のピットインが完了するまで、実際のすぐ前のポジションの車両が分からないが、淡々と周回を重ねる加藤選手のラップタイムは03~04秒台、順位を落とすようなタイムではないはず・・・。
 96周目、途中ガス消費の少ないSC走行もあり、1stスティントより多い38周でピットイン。
 満タン給油、ドライタイヤは4本交換、高橋選手に交代・・・順調に戦列復帰。
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4thスティント/ドライ:高橋選手

 アウトラップでポジション8。トップは既に3回目ピットインを完了した10号車(メルセデス)で、同一周回、37秒前方にいる。
 7位の21号車(アウディ)からは4秒マイナス、9位の11号車(GT-R)からは3秒プラスの位置・・・11号車の04秒台に対し、アウトラップ2周目の高橋選手は06秒台。
 99周目に捕まるものの、同じ周回に6位の0号車(メルセデス)が、前の周のコースアウトで芝がエアインテークを塞いだ様で緊急ピットイン・・・順位は変わらず8位。
 100周を過ぎ8位の高橋選手、10秒後方の9位は再び31号車(プリウス)。04秒台後半で追い上げてくる。
 だが05秒前半にペースを上げた高橋選手、容易に差を詰めさせず、110周を過ぎても順位変わらず、6秒のリードを保つ。
 しかし、2014年F3チャンピオンの若手、中山雄一選手ドライブの31号車はアベレージで速く、115周でコンマ5秒差にまで詰め寄られた。
 しかしその後5周に渡り04、05秒台でポジションをキープ・・・だが121周目ついにパスされる。
 この頃になると、最終4回目のルーティンピットインが始まる・・・と同時にゴール周回が見えてきた。
 と言うのは、この1000kmレース周回数としては173周が予定されているが、雨やSC走行等により(今回は両方あったが・・・)レースペースが遅くなった場合、周回数ではなく時刻・・・18時25分:日没時刻・・がレース終了(チェッカー)となり、残り1時間・・雨が無ければ、500は162~163周、300は150周辺りがゴールと計算された。
 見かけの順位は7位、28周を走り切った高橋選手、124周目にピットイン。
 これまでのピット作業と同様、燃料フルチャージ、ドライタイヤ4本交換で、加藤選手3度目の出撃・・エースドライバーを酷使するチームである。
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5th最終スティント/ドライ:加藤選手

 雨のスタート、中盤からドライコンディションとなるも、終始曇り空の午後、気温も26~28度と殆ど変わる事なく夕刻を迎える。
 ピットアウト後の順位はポイント圏内の9位・・・路面温度も下がり、追い上げ(「逃げ切り」でないのが残念・・)には悪くないコンディションである。
 8位の65号車(メルセデス)との差はマイナス10秒。7位の31号車からはマイナス13秒・・・どこまで追い上げられるか!!
 31、65号車の03~04秒台に対し、02秒台の加藤選手は129周目ファステストラップの2′01″935をマークし猛追。
 135周目には65号車からマイナス5秒、31号車からマイナス8秒だったが、140周目にはポジション変わらず、3台が1.5秒以内に入る接近戦となった。・・・・残り時間20分、10周。
 この膠着状態は143周まで続いたが、144周目ダンロップ登り(紫電+加藤選手のお得意)コーナーで31号車をパス8位へと上がる・・・と同時にこの周、5位の11号車(GT-R)がホイールトラブルで緊急ピットインで後退。
 3台揃って更にひとつポジションを上げる。
 西コースで小雨が降って来たようで、モニターではワイパーを動かす車両も見受けられる。
 ラップタイムも3~4秒ダウン・・・特に31号車は5秒近くのダウンで、65、2号車から振り切られて行く。
 148周目07″558の65号車、06″787の2号車加藤選手・・・0.7秒差。
 149周目65号車06″138、2号車06″020・・・・0.6秒差!!
 しかしこのデッドヒートの前、いや前のスティントから出ていたエンジンのバラつきが、終盤になってややひどくなり、「ここぞ!」という所でいうことをきかず無理ができない。
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 時刻は18時25分をまわりチェッカーが500のトップを待つ。
 300トップ10号車始め3位までが通過し151周目に入ったその直後、500のトップに向けて振り下ろされ、その1分半後、6位65号車に0.5秒差で、2号車加藤選手は7位でチェッカーを受ける。
 周回数は150周・・・トップと同一周回で戦ったレースだが、この段階で周回遅れとなった。
 前戦富士ではポイント圏内・・10位以内を目標に挑んで惜しくも果たせなかったが、今回こうして7位という結果にも関わらず、チーム内に喜びは無い。
 せっかくのポールスタートを活かし、順調に積み上げたブロックをピットミスで崩してしまったからで、反省すべき点が多々ある事をクルー皆が分かっているからである。
 モータースポーツに限らず、結果にどれだけの満足感があるか?は、相対的な物で内容の充実度で大きく変わる・・・「結果が全て!!」満足感など所詮マスタベーションに過ぎないかもしれないが、それなくしてはモチベーションを保つ事はできないだろう。
 しかしペナルティを受けた1回目のSC、周回遅れを免れた2回目のSC。
 ドライコンディションでレースに臨みたかったが、エアコンの不調はこの天候に助けられた。
 また、未知のマシンの耐久性も、この気温とウェット路面に助けられたのかもしれない。
 1000kmという長丁場は運も含めた「タラレバ」だらけ。
 そんな中、最終的にシングルポジション・・・速さも含め、強さも加わってきたと感じる1戦でした。
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