モータースポーツ

2009年SUPER GT第4戦

2009シーズン 紫電
2009年07月20日

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脅威のテールtoウィン達成!

7月20・21日 SUPER GT 第4戦 MALAYSIA Sepang International Circuit

6月19日(金) 設営 晴れ

 かなり言い古されたしまったが、灼熱のセパンラウンド。
 と言っても本当に暑いと感じたのは、最初の頃だけで、その頃は連日35度超えの猛暑だったと思うが、ここ数年は30度超える程度で、名古屋の蒸し暑さに慣れた人間には大した事ではない。
 かと言って、ドライバーの負担が軽減される程の事ではなく、8月のPOKKAと並び、最大のライバルともいえる、暑さ対策が重要なレースである事には変わりは無い。
 2001年からGTに参戦し9年目。
 それなりに続いてくると、マイレコードとでもいうか、色々なジンクスや珍記録がある。
 ジンクスと言えば、決勝レースまでに何かトラブル、アクシデントがあるとレース結果は良い。とか、チーフメカは、ゲンかつぎでスタート直前にドライバー側のステップに黒のガムテープを貼るとか・・・。
 高橋選手が走ろうとすると,
赤旗中断になるとか、ヨッスィー(吉本選手)がいると、必ず雨が降る等など。
 まじめな記録では昨年のPOKKAまで続いた、紫電のデビューから、23戦連続完走とか。
 そしてもうひとつ“リーチ”の掛かった記録もある。
 それはSUPER GT開催、全サーキット表彰台GETである。
 リーチという事はあとひとつ!
 最も不得意と思われたモテギで昨年2位となり、あと残るは、最も得意なサーキットと思われるここセパンだけである。
 ポールポジションを取った、デビューの06年の4位が最高位である。
 今回の目標は(常に優勝だが・・)最低限表彰台。
 少なくとも、ここらで表彰台に行かないと、チャンピオン争いから完全に見放されてしまう。
 開幕戦以降、高橋選手に代わり、2戦3戦とヨッスィーが加わり、Wヒロキ+紫電という布陣は、300クラス最強と言っても過言ではないはず。
 ところが、第2戦は4番グリッドを得たが、レース直前のトラブルでピットスタートとなり最後尾からのレース。
 第3戦は予選アタック直前にまたまたトラブル。パワーステが効かずアタックどころではなく、スーパーラップ進出はおろか、後ろから4番目の18番グリッド。それもレース序盤に追突され、本当の最後尾からのレースとなる等、ヨッスィーが着てからは「ありえね~」アクシデントが続発。
 ヨッスィーの新たなるジンクス、伝説となるのか?
 本人(周りも・・)も、マジで悪い流れを持ち込んで来たと、恐縮し始めていた。
 そんなムードを払拭するにも、シーズン中盤となるここセパンを Turning Point としなくては・・・。
 今シーズンは2デイレースとなったが、多くのチームがこれまで通り、水曜着、木曜日から設営を行っていたが、我々はこの経費節減策の2デイ化を活用。
 スタッフは木曜夜クアラルンプール国際空港に到着。
 そのままホテルに直行。
 例年に比べ、暑さを感じるこちらの気候に慣れる間も無く、例年より一日遅い金曜日から設営に入る。
 といっても、紫電となってから、マシンもスタッフ大きく変わらないので、作業はテキパキと進み、両ドライバーがレンタカーライドを終えた、午後5時頃には概ね設営も完了。
 多分、今夜はスタッフ、ドライバー全員で夕食がとれる、唯一の日と思われるので、ホテル隣の和食のお店で、必勝祈願の乾杯。

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このレースは、まずは3週間前に船積みした、マシン、機材の確認
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マシンは、異物の混入や、気休めでも塩害から守る為、全ての穴が塞がれる。
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こうして、更に室内には大量の湿気取剤が入れてある。

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レンタル備品も、チャンと揃ってるか確認。ピット生活の必需品。
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隣のピットは、地元マレーシアからスポット参戦のサンダーアジア。ゼッケン69、モスラーMT900Rは日本でもお馴染み。
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そのチームのタイヤメンテナンスは女性が担当。男顔負けでポンポンとタイヤをラックに載せていた。

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ハンディウェイト22kgは、現在11ポイント。
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この「YOKOSO JAPAN」は国土交通省の観光キャンペーン。今回のオフィシャルステッカー。

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ホテルに近い和食屋で全員で食事。味に違和感は全く無いが、所々に・・・。「カレーソースのオムライス膳」洋食でも“膳””
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出汁巻き卵も、変わった盛り付け。
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串盛りもなんだかな~。味はみんな良いんだけど・・。

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極め付け、日本酒の冷や。ワインクーラーで登場。
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今回の宿泊先、ピラミッドタワーホテルって言うだけあって、チャンとあります。
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その前に鎮座するのは、?スフィンクス??でも人面じゃない。

6月20日(土) 練習:雨 ・ 予選・SL:晴れ

 2デイとなったセパンとはいえ、公開車検を経て、午前10時から1時間半の練習走行とスケジュールは概ね同じ。
 その公開車検の頃から上空を雲が覆い始め、気温を30度を下回り、走り“易い”状況となったが、こうなっては午後の予選、明日の決勝が晴れて、通常の猛暑となった場合のコンディションとの差が激しく、セットアップの参考にならない。
 その練習走行も、開始早々チェックの1周をしたら、ポツリポツリ・・・。
 コースに出ていた各マシンも続々とピットに戻りレインタイヤに交換し再びコースに出て行くが、その雨もドンドンと雨脚を強め、一時全てのマシンが、ピットで待機状態となるほど、とても走れる状態ではなくなった。
 これだけ降っては、雨があがってもドライコンデションのセット確認は不可能な為、ならばと、ウェット仕様にセット変更。
 午後予選では雨の可能性もあるので、様子を見ておく必要もある。
 走行開始から40分ほどが経過、雨もやや小降りとなり、多くのマシンがウェット仕様となりコースに出て行く。
 それぞれ目的も異なるからか?無理もしないからか?タイムもパラパラ。
 加藤選手も1~2周走ってはピットインの繰り返し。
 少しずつセットを変え、2分26秒台のクラストップ。
 それも暫くして46号車の24秒台、19号車の25秒台に取って変わられたが、感触は悪くないのでそれ以上攻めるのは止め、残り約20分をヨッスィーの練習に充てる。
 ヨッスィーもコースは知っているが紫電では初めて。
 そういえば、彼が紫電に初めて乗ったのは、06年鈴鹿1000km。その時も雨。
 そして今日も雨。やはりジンクス通りの雨男か?
 そのヨッスィー、紫電でセパンは初めてだが、直ぐにペースが上がり、実質4周ほどの走行だが、加藤選手と遜色ない26秒台をマーク。 しかしドライ走行のないまま、いきなり予選となりそうだ。

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公開車検。日本ほど人気が無い。というか、土曜日からレース観戦に来る観客が少ない感じ。
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これはオフィシャルの緊急時のマシン説明。だと思うが、日本と異なり、カメラを持っての見学会っぽい。毎年の事だ。
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プラクティスが始まる前に空はこんな感じに・・・。

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プラクティス開始、1周の確認を終え、ピット戻り・・・。
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そろそろペースを上げようかと思った頃にはこんな路面に・・・。
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これには加藤選手もたまらずピットイン。

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雨脚も強いので、ピットで待機。
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ヨッスィー「やっぱ俺か~。」の図
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この雨では止んでもドライは望めないので、足回りも含め、ウェット仕様に変更

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やや小振りとなり走行再開。(赤旗が出ていたわけではない)
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時折雨脚が強くなり、ストレートでかなりも水しぶき。ウェット仕様で一時クラストップの加藤選手。
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加藤選手は“練習”ではないので、頻繁にピットインを繰り返し仕様を変更。 photo/Kazuhisa Masuda

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セパンを知り尽くした加藤選手。雨でも死角なし。 photo/Kazuhisa Masuda
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残り20分ほどをヨッスィーの練習時間に・・・。
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セパンで初めて紫電。やはりウェットのヨッスィー

 午後予選は予想通り晴れ。
 気温も想定内の33℃。路温は45℃と、設営日が50℃超えだった事からするとやや低い。雨上がりのせいだろう。
 いつもなら先にヨッスィーが出て基準タイムをクリアさせ、加藤選手でアタックとなるが、ドライセッティングの確認の為、加藤選手が先にスタート。
 2周目のアタックで2′11″585クラストップ!
 直ぐにピットに戻りヨッスィーに交代。
 「加藤さんがセットしたマシンは全く不安が無くアタックできます。」と言っていたヨッスィー。
 紫電で、セパン、初のドライコンディションにも関わらず1周目の計測ラップで12″895と好タイムをマーク。
 アウト、インラップ含め3周のみで予選の仕事を切り上げ、再び加藤選手に交代。
 ここまでに81号車フェラーリが10″442をマークしトップとなるが、紫電のSL進出に影響は無いので、練習走行で、できなかった決勝に向けたドライセット、タイヤの確認を行う。
 30分の混走セッションが終わり、15分間の300占有となり、NEWタイヤで再びアタック。
 10″570のベストタイムをマークするが81号車には及ばず、同時にアタックラップに入っていた87号車ガイヤルドが、唯一9秒台の9″862をマークし暫定ポール。
 紫電は3番手、SLは6番手スタートとなった。

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走行を終えた直後のヨッスィーとエンジニアのシンタローと加藤選手でディスカッション。
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走行終える度に車検場へ。任意だが重量チェックは頻繁に行う。
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それと最低地上高の測定。

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このセパン直前に交換した給油ホース。こちらに来てビックリ!規定より何故か短くなっていた。何度測っても同じなので、他チームから借用。
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コモンルーム(休憩所)のウィンドウには、日除けも兼ねたタペストリーで目隠し。
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走行を終える度に両ドライバーの装備品は乾かす。

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予選向かう加藤選手。マシンが完調ならSL進出に何の心配も無い。
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先に出走した加藤選手、あっさりトップタイムをマーク。 photo/Kazuhisa Masuda
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続くヨッスィー、紫電で初のドライコンディション。1周計測で好タイム。

 午後4時20分から始まったSL、路温が若干下がった事もあってか、全体に予選よりタイムが上がり11秒台だったマシンも10秒台に入ってきている。
 5台が終わって暫定トップは46号車、10″356。
 そして加藤選手の乗り込んだ紫電がウォームアップランに出て行く。
 ところが続いてピットロードに出なくてはならないはずの81号車が出てこない。“トリ”となる87号車が先にピットロードエンドに向かっている。
 どうしたんだろうか?モニターにピットに入ったままのオレンジ色のフェラーリ81号車が映しだされる。
 後で判った事だがエンジントラブルの為、SL出走をキャンセルしたとの事。
 そうこうしている内に加藤選手のアタックラップに・・・。
 セパンで開催されるMME12時間耐久レースで毎年活躍、(何連勝か忘れた・・。)このサーキットを最も得意とする加藤選手、現在トップの46号車に第1セクターでは0.05秒の遅れをとるが、第2セクターまでに挽回0.2秒のリードに、第3セクターでは0.3秒とわずかづつリードを広げ、最終的には0.37秒の差を付け9″983と、ここまで唯一の9秒台。
 残るは87号車だが、各セクターで僅かづつ遅れ、最終的にはスピンで大きくタイムを落としてしまい、紫電加藤選手に昨年の開幕鈴鹿以来のポールポジションが転がりこんだ!・・・はずだった。

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SL直前のコンディション。意外に湿度が低い。
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ブルーシグナルで加藤選手スタート。
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サインエリアで見守るヨッスィー。その表情を捉えるカメラ。

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加藤選手は各セクターでリード。あと1台を残し暫定トップタイムをマーク。
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SL直後の加藤選手はインタビューを受ける。
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ヨッスィーも加わり、“No1”と“V”サイン・・・だったが。 photo/Kazuhisa Masuda

 SLの仕事を終え、車検場に入れたマシンから降りる加藤選手に、ポール“確定”を受けてカメラマンが囲む。
 ヨッスィーも相方を称えに、メカも再車検の為にと皆が車検場へ向かう。
 久々のポールにチームの意気は大いに上がっていった。
 その後500クラスのSLも終わり、ポールポジション記者会見へと進んでいった。
 しかしその頃、車検場では、メカが鉛色の空気に包まれていた。
 車両重量、ウェイトハンディのチェックが入念に行われている。
 暫くして監督が審査委員から呼び出しを受ける。
 結果、車検失格!
 これは予選タイム全てが抹消となる為、スターディンググリッドが与えられないのである。
 車両重量は、ウェイトハンディ(今回22kg)を含めても全く問題無いが、このウェイトハンディの搭載方法の解釈に間違いがあり、約10kg分が正規の搭載位置になかったのである。
 詳細は技術的な事となるので省かせていただくが、正規の位置に積んでいても“殆ど”タイム的には影響はなかったとは思われる。
 だがエンジニア、メカがタイムを追及していくと言うことは、この“殆ど”をどれだけ集めてくるか?であり、特にお金を掛けずになんとかしようとする場合は、この“殆ど”の集大成、チリを集めて山を作っているのである。
 車検失格は、チーム参戦以来初めての事。
 今回のハプニング(最終的な結果から“ハプニング”で済んだが・・)は、チームに「またかよ~!!」と3戦続いたヨッスィージンクスを、よりを強固なものにしていった。
 勿論過去2戦も含め、全てヨッスィーになんの責任も無いが、ジンクスとはとはそういう物であり、そうして楽しんでなければやっていられない。
 とにかく決まった事はしようがない。
 まずは嘆願書(チーム初)を提出し、明日の決勝レース、最後尾ながらグリッドを確保。
 長時間の車両保管により、メンテナンスが遅れた為、メカの作業は深夜にまで及んだ。

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記者会見を終えてから、車検失格が決まったので、とりあえず持ってきてしまったポールポジション賞。勿論返却。
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欄外に記された、予選のリザルト。失格を表す。
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嘆願書でもって明日の決勝は出場できるが、3戦続いた不運に、メカの気持ちも複雑。

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明日に備え、一人タイヤ交換練習に励む西崎メカ。右側担当。
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でもやり過ぎか?シャフトのねじが欠けた!修正中。

6月21日(日) 決勝 晴れ

 翌日決勝日。
 フリー走行では早朝の雨は上がっていたが、路面はところどころウェットパッチが残る。
 ウェット宣言は出たが、多くのマシンはドライタイヤで出て行く。
 昨日まで「フリー走行はNEWタイヤで燃料ギリギリの予選仕様で、ブッチギリタイムをマークし存在感をアッピールする。」なんて考えていたのだが、大人げないので止める。
 チャンと決勝仕様でも、ヨッスィーがジンクスを振り払う2′11″699と、2番手に1秒以上の差をつけトップタイムをマーク。
 セッティングも、最後尾スタートの“秘策”も確認ができた。
 その後サファリも行われたが、開始早々雨脚が強くなり、充分気をつけて走行するよう、各ピットに連絡が入ったが、既に各所でスピンコースアウトが発生。
 その為、サファリは予定時間より早めに中止となった。
 バスの観客にとっては、GTマシンの普段見られない光景も見られ、良かったか?残念だったか?

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サーキットへ向う道中の雨。半端じゃない。
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サーキットに着いた頃には上がっていた。
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フリー走行ではウェット宣言が出されるが実質ドライコンディション。 photo/Kazuhisa Masuda

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予選の速さは本物!フリー走行ではトップタイムをマーク。 photo/Kazuhisa Masuda
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しかしフリー走行後の、サファリが始まると再び雨。何とも読めない天気・・。

 通常午後2時からの決勝レースも、ここ灼熱のセパンでは午後4時からのスタート。
 公式戦となった2002年に、我々は初めてセパンに来たが、その頃は午後2時スタートだったので、真上から“刺す”日差しの暑さは半端ではなかった。
 その翌年(といっても03年は中止だったので04年)から午後4時スタートとなったが、正解だろう。いっそナイトレースも面白いかも・・。
 今回のスタート加藤選手。
 19台のエントリー中、SL権まで得たがエンジントラブルでSLに出走できなかった、強敵81号車は結局グリッドにつかず。
 最後尾、実質18番グリッドにマシンを並べる。
 最後尾グリッドに並んでも、ポテンシャルとしては実質ポールポジションと変わらないので、メディアが集まりポール同様の注目度である。
 ここセパンなら、どんな状態からでもベストレースができる加藤選手。
 ポールなら後続を抑えて、目一杯引っ張り、残りをヨッシィーに繋ぐ予定だったが、最後尾ならその逆。
 少ない燃料で、目一杯飛ばして順位を上げ、早めにヨッシィーに交代し、後を託す作戦だ。
 今日の加藤選手、久々に“最強”戦闘モードである。
 エンジンスタート。スタンドが沸く!
 スタンドの観客数は明らかに日本より少ないが、ここマレーシアの観客の盛り上がりはすごい。
 定刻となりフォーメーション、そしてスタート!

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スタート前ミーティング。ポール(少なくとも上位グリッド)予定から最後尾スタートとなり作戦も大幅変更。
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紫電はちまきで気合を入れるスタッフ。
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ウォームUP開始直前、少し降ってきたが、結局これ以上は降らなかった。

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最後尾グリッドについた紫電。
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レースクイーンは他のチームからお借りしました。結構な人気。
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遠く最後尾までインタビューに来る。どんな結果となると思っていたのか・・?

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マレーシアでいつもお世話になるI・M JIHANのシャーミー君
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RQ代わりにパラソルを持つヨッスィー。
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スタート時の気温は30℃少々と予想より低い。

 オープニングは波乱も多いので、無難に見守ってくるかと思いきや・・・!
 何と10位!いきなりポイント圏内。
 中段グループで、何台かがスピン、コースアウト等のアクシデントが発生、労せず順位が上がったようだ。
 これらに巻き込まれず、最後尾スタートが幸いしたかも・・・。
 無論これらだけで、ジャンプUPした訳ではなく、最終コーナー突込みで43号車と7号車2台の強敵を抜き去っている。
 この勢い、とどまる事はなく、2周目には9位、3周目には7位!
 4周目はベスト12″402出し、0.6秒先行する5号車に迫り、5周目には抜き去り6位へ!
 46・19・69・66・87号車、そして加藤選手2号車!
 69号車はここマレーシアのチームで、モスラーMT900Rでの大径リストリクターで特別参戦である。
 ストレートが500に迫る速さで、その反対にストレートの遅い紫電はチョッと苦戦。
 その69号車も、7周目には87号車とまとめて、オーバーテイク。
 46・19・66号車に続く4位!今回のマスト表彰台まであと一歩である。
 ペースが速すぎる気もするが、更に鞭を入れ、8周目も12秒台、トップが入れ替わり19・46・66号車、そして2号車。
 9周目は12″354のベスト更新!
 しかもこの周46号車がミスって4位へドロップ!19・66号車に続く3位、表彰台に足が掛かった!

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最後尾に埋もれスタート。 photo/Kazuhisa Masuda
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先は長い・・・と思ったが。 photo/Kazuhisa Masuda
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何と1周目、いきなりポイント圏内の10位で帰ってきた加藤選手。その後10周にも満たない内に3位、表彰台圏内にまで上がってしまった。 photo/Kazuhisa Masuda

 0.8秒前を行く66号車は13~14秒台、加藤選手2号車は13秒台。
 2周使い、11周目66号車をパス。ついに2位へ!
 トップ19号車とは4秒差だが、13秒台で逃げる19号車織戸選手に対し、時々12秒台から13秒フラット付近の加藤選手。
 その差はジワジワと縮まり、15周目には-3秒、17周目には-2秒。18周目には1秒以下。
 クラス唯一の12秒台もマークする猛追。
 そして殆どテールtoノーズになるも、名手織戸選手、“コース上”では易々と抜かさせてはくれない。ペースも上げられない。
 しかしこれは想定内。今回の作戦はドンピシャ。
 20周を終え、最も早い周回でルーティンピット。
 少な目の燃料の軽いマシンでハイペースで追い上げ、トップグループに引っかかり膠着状態となったら、コース上で順位を上げる事を早々と放棄。
 早めのピットインで見た目の順位を下げ、そこでペースを上げて順位を上げるのである。
 その作戦は順調に進んでいたのだが、ひとつ誤算は、まさかここまで順位が上がるとは思っていなかった。
 せいぜい5位辺り、良くて表彰台圏内の3位辺りかと思っていたので、この“トップ奪還作戦”のピットインはメディアの注目と、クルーへのプレッシャーを伴った。
 ピットロードに入った加藤選手。
 待ち構えるクルー。
 停止、ジャッキUP、フロントタイヤ交換、ドライバー交代、クールスーツ氷交換。
 フロントタイヤ交換終了。すかさず給油。やや多目の為時間が掛かる。
 その間タイヤ担当メカはリヤ側に移動
 給油完了!リヤタイヤ・・交換完了!ジャッキダウン!再スタート。
 あの給油量で、31秒のピットストップは無難な出来。
 見かけは8位で復帰。勿論1から7位まではまだピットインは済ませていない。
 トップ19号車とは60秒差。
 このタイム差は、“何周か”後に行われる、19号車ピットストップ、そのメニューによっては安全とは言い切れないタイム差だ。
 その“何周か”の間にヨッスィーがどれだけ詰め寄れるか?にかかっている。
 アウトラップに続く22周目19号車14″987、ヨッスィー2号車13″146。タイム差58秒4
 23周目19号車14″286、ヨッスィー13″086。タイム差57秒2
 ヨッスィー「モスラー(69号車)抜けねー!」ストレートがメチャ早い69号車を抜きあぐむヨッスィー。
 だが16秒台の69号車を、インフィールドで料理し先を急ぐ。
 24周目19号車15″708、ヨッスィー13″662。タイム差55秒2
 見えざるトップ19号車を、確実に追い詰めるヨッスィー!
 25周を終え19号車ピットへ。
 順調に作業は進む。給油量の差もあってか?3秒ほど我々より早い。
 しかしタイム差から予想通り、19号車がピット離れるのとヨッスィーがストレートに戻るのは殆ど同時。
 19号車がコースに出てフル加速に入る頃には、ヨッスィーは既に1コーナーのアプローチ!
 ついにトップへ!!
 アウトラップの19号車に対し、ここで更に差を広げる事になる。
 完全リセットされた26周目、トップヨッスィーは2位19号車に約7秒の差を着ける。
 最後尾スタートからトップにまで踊り出るというレースは、稀しくもこの19号車が、昨年第7戦モテギで演じている。
 その19号車が、このままあっさりと追従するなどもありえない。
 今年、500からスイッチした片岡選手は14秒台に落ちたヨッスィーに対し13秒台で猛追!
 29周目両車の差は5秒に詰まり、30周目にはその差4秒以下に・・・!
 更に19号車は12秒台にまでペースアップ!
 しかしヨッスィーも負けていない。12秒台へ・・!
 ピットアウト後のヨッスィー、タイヤを温存しての13~14秒台。
 その貯金を、ここぞとばかりにペースアップ。
 途中トラフィックにつかまる等もあり、一時は2.5秒差にまで詰められるものの、うまく19号車のペースに合わせつつジワリジワリと差を広げ始める。
 コンスタントに12秒台を刻む片岡選手に対し、同じく12秒台とは言え前半。
 更には41周目、このレースのファステスト11″971をもマーク、5秒以上の差を着ける。
 これには片岡選手19号車も参ったのか?ワンチャンスの5秒差を維持する12秒台で追従するが精一杯。
 完璧な作戦を支えた、加藤選手の怒涛の快進撃、完璧なピットワーク、そして全く力負けせず、レースを仕上げたヨッスィー。
 最終的には7秒の差を着け、50周を走りきりトップチェッカー!

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そして11周目2位に・・・!
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ドライバー交代前にインタビューを受けるヨッスィー。
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そのヨッスィー。ピットインアウト時にトップに立つ。 photo/Kazuhisa Masuda

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序盤トップグループをかき回したマレーシアチーム「サンダーアジア」は再始動に手間取り下位に沈む。
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トップを快走するヨッスィー。追いすがる19号車片岡選手のペースにうまく合わせ逃げる。 photo/Kazuhisa Masuda
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ファイナルラップ、ヨッスィーを待ち構えるクルー。

 苦しい、シーズン序盤だったダブルHiroki。
 結果論で言えば、今回の最後尾スタートは、喜びを倍加させる為のスパイス。
 予選での出来事は悲劇から、単なるハプニングへと呼び名が変わった。
 最高の形で厄払いができ、これでSUPER GT開催サーキット全てにおいて表彰台をGETする事になった。
 この結果、ランキングもドライバータイトルは加藤選手がトップから17ポイント差の31ポイント、4位へ浮上。(ヨッスィーは開幕戦の5ポイントが無い為6位)
 チームランキングも19ポイント差の41ポイント、4位。

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そして片岡選手を振り切り、ジンクスを打ち破るトップチェッカー! photo/Kazuhisa Masuda
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マシンを降りたヨッスィーを迎える松下チーフメカ。
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レースの5分の3を走り切ったヨッスィー。この結果に疲れもさわやか。

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昨年モテギ以来の表彰台。しかも最高位。 photo/Kazuhisa Masuda
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久々のシャンパンファイト! photo/Kazuhisa Masuda
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24時間前と打って変わって歓喜の乾パーイ!!