モータースポーツ

2007年SUPER GT 第7戦 ツインリンクもてぎ

2007シーズン 紫電
2007年12月02日

シリーズも3分の2が終わり、ここまでの6戦は有効ポイント制から上位4戦のみの累積ポイントが有効となるが、ここからの3戦は全てが加算される。
その最初の1戦が、紫電にとって、最も不得意とされるここモテギ。
正にシーズン正念場である。
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SUPER GT MOTEGI


開催日:2007年9月8・9日
サーキット:栃木県 ツインリンクもてぎ
マシン名:プリヴェKENZOアセット・紫電
ドライバー名:高橋 一穂・加藤 寛規

第2戦の優勝から、ランキングトップをキープしている101号車の71点には、前戦鈴鹿1000kmで追いつき、現在1点差の2位。殆ど振り出しに戻ったと言える。
ここからが本当にガチンコ勝負である。
しかし、残り3戦で獲得できる最高得点は68点。現在3点以上のチーム全てにチャンピオンの可能性は残されているが、現実的には数台に絞られて来ていると言える。
今期優勝をしている43号車、13号車、19号車、NEWマシンが調子を上げている62号車、ダンロップ勢で堅実にポイントを稼いでいる、46・47号車等など…。
特に43号車ガライヤや、13号車Zはここまで1勝しか無いのが不思議な程のマシン、ドライバーであり、残り3戦、常に表彰台に上がる可能性も高い。
紫電は、ここモテギは全サーキットで最も不得意な為、ここをどうしのぐか?がチャンピオン争いの、正念場とも言える。

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300クラスのリミット80kg!がここモテギで…。苦しいレース展開は必至。
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そのモテギ用にやや大きくしたフロントブレーキ。「焼け石に“やや多目の”水」程度か…。

9月7日 練習走行 雨のち晴れ

この頃、関東地方に近づいた台風9号は、6日から7日にかけて関東地方を直撃!ここモテギも、前日の設営日には、多くのチームがパドックのテント設営が危険な程の強風となり、その影響は今日の練習走行にまで及んだ。
前夜、名古屋から来るはずの高橋選手も新幹線が不通となり、今日の昼頃来られるか?どうか…?
強風と豪雨の為、結局午前の走行はキャンセルとなり、台風の過ぎ去る午後の走行が45分前倒し延長となった。
開始直前の1時頃には高橋選手も到着し、ようやく本日1回のみ、2時間15分の練習走行が始まる。

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台風直撃の為、午前走行はキャンセル。パドックテントも設営できず。
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テントが無く、雨も降ってるとなると、狭いピット内、こんなところもテーブル代わりに…。
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午後からやっとコースイン。

雨は止んだものの、コースはまだウェット状態。それならそれで、インターミディタイヤの比較テストを行うが、台風一過の青空と、吹き返しの風でコースはどんどん乾き、ウェットタイヤテストどころでは無くなり、程なくスリックタイヤへと移行した。
8月初旬の合同テストが順調にこなされた為、基本的なセッティングデーターはできており、今回の走行も大きなセット変更も、トラブルも無く、順調に進む。
各チーム最後の300占有の15分でタイムアタックを行い、明日の予選シュミレーションを行うが、ここまでで加藤選手は1分58秒台、高橋選手は、2分をやっと切る59″976とひまひとつ乗れていない。トップは既に57秒台とやや水を空けられた。
しかし加藤選手は最終ラップで57″560で4番手に着け、不得意と思われたここモテギでチームに明るい話題を提供した。

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序盤こそ、やや濡れ路面かと思われたが…
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コースの乾きは早く、インターミディタイヤはアッと言う間にこうなってしまう。
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データーロガーを見せ、高橋選手のウィークポイントを指摘する加藤選手。
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その高橋選手、一発のタイムは今一歩だが、安定性は上がってきた。今回は特に重要な点である。
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これは最低地上高を測定する道具。このローラーを車体下にいれて接触しないかで判断する。ギリギリセッティングの為、幾度と無く車検場で測定(練習走行日では任意)する。
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そうした車検から戻る頃の西の空。明日は晴れかな。って“タソガレ”てる

9月8日(土)予選 晴れ

今回から、というか、これからは、か?どうか?はまだ未定だが、まずは今回モテギ戦では予選の方式が異なる。
午前の予選は、両ドライバーが基準タイム(予選時の、クラス上位3台の平均タイムの107%)、をクリアするだけで、グリッド順位を決めるのは、午後のノックダウン方式(以下ND)の予選である。
これはF1で既に行われている方式で、300クラスの場合全車(今回は25台)が15分のセッション1を走り、上位20台が10分のセッション2に進出、更に上位10台に絞られ、同じく10分間のセッション3で最終グリッド順位、ポールポジションが決まる。このセッションを500クラスと交互に行うのである。(500は全車→12台→8台)
但し使用できるタイヤは1セットだけの為、何周アタックし、どのセッションにもっともプッシュするか?などこれまでのスーパーラップ方式とは違う掛け引きがある。
セッション1や2で、タイヤを使い切って、驚異的タイムを出してもポールポジションが取れる訳ではないのである。あくまで次のセッションへ進む権利だけである。
ノックダウンされれば、そのセッションでのタイム順がグリッド順となる。

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予選日の公開車検。マシンは位置が決まっているので、整然と並べられている。
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朝はガスっているが、雨の心配は無い

昨日の台風は完全に過ぎ去り、9月らしい快晴、残暑である。
今日の予選は2セットのNEWタイヤが使用できるが、午後のND予選では1セットしか使用できない。
午前予選では、加藤選手からスタート。いつもの予選と異なり、カリカリのタイムアタックは行わない。基準タイムをクリアするだけで良い。しかし午後のND予選に向けたセット確認もあるので、それなりの攻めは必要である。途中、赤旗中断があったがその直後の計測ラップで1′56″487と昨日のベストを更新。
その後は高橋選手の走行に充て、マイレージを増やす。タイムも、58″832と昨日タイムを更新。勿論基準タイムはクリア。
そして最後の3分間で再び加藤選手に交代。磨耗の進んだタイヤでのタイムアタックで、ND予選のシミュレーションである。
ところがこのアタック時に加藤選手が2コーナーで、なんとコースアウト!うまくグラベルで停止、マシンにダメージは無かったが、原因はスロットルが戻らなかったのか?エンジン回転が落ちなかったとの事。
午前予選にも、午後ND予選にも影響を与えない、毎度の事ながら、良い時点でのトラブルである。グラベルの砂利除去等、余分な仕事は増えたが…。

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今回だけ?予選方式が異なる為、午前のシミュレーションも異なる。
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順調に周回をこなす。
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午前1回目の予選は基準タイムをクリアするだけだったが…。
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スロットルのトラブルで加藤選手コースアウト!大事には至らず。

とっ!ここで思わぬNEWSが…。ランキングトップの101号車が予選後の再車検で不合格!タイム抹消となってしまったのだ。
となると午後ND予選のセッション1で基準タイムを出せば良いのだが、ルールによりこれ以上先へは進むことができず、最後尾グリッドとなってしまった。
申し訳無いが、我々にとっては有利な事。しかしこうした事も含めレースなんだと…。
しかし101号車、第5戦菅生から不運続きである。

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スロットル系の点検と…。
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グラベルからの拾い物の除去。

午後ND予選開始。加藤選手がマシンに乗込み待機。殆どのマシンがコースに出た事を確認しコースイン。タイヤを“いたわりつつ”20位以内に食込めれば良い。
結果、計測1周で57″731をマーク14位。まずはセッション2へ…。
次のセッションまでの時間を利用し、タイヤを外し、濡れタオルでタイヤを冷やし、グリップの回復を図る。
SUPER GTではタイヤウォーマー等機材を使ってのタイヤ加熱は禁止だが、冷却に関しては規定は無い。
続くセッション2では56″427で4番手!セッション1も同様、次のセッションへ進むギリギリのタイムで良いのだが、あまりギリギリでは土壇場でひっくり返される恐れもあるが、これはちょっと攻め過ぎ。もっとタイヤを温存したかった。
最後のセッション3に備え、再びタイヤを濡れタオルで冷やす。
このセッションへ進出した10台で、ポールポジションから上位10台のグリッドを奪い合う。
しかここに残ったマシンの殆どは充分55秒台をマークできるマシンばかり。それに対し、NEWタイヤでも55秒台は難しい紫電は、既にタイヤの“美味しい”部分は使い切ってしまい、56″808とタイムは伸びず、結局8位。
だがこの順位は、エンジニアのシンちゃんの想定では上出来で、もし従来のスーパーラップ方式で、1回目予選から全力で走られては、恐らく10位以内、SL進出もできないだろうと思われていたので、このND予選は、紫電にとってはラッキーな予選方式だったといえる。

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SUPER GT初のノックダウン方式予選に向かう加藤選手。ここで見て何も違いは無い。
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使用できるタイヤは1セットの為、ピット内にタイヤを置いてはいけない。
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走行後のタイヤを濡らし冷やす。これは全く行わないチームもあれば、大きな水桶に、
タイヤを浸す、派手なチームもある。その中間…。
 
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モニターの表示。左は500クラス。右が300クラスの表示。
青色はセッション2に進んだマシン。橙色はセッション3に進んだマシン。従ってこの時点での
青色は、ノックダウンされたマシン。
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セッション3でのアタックは“不発”と言うより“限界”
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ND予選を終え、ディスカッションする加藤選手と、エンジニアのシンちゃん。
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前戦の優勝と、直前の「激走GT」の影響か?サインを求めるファンが増えた様に思える。

9月9日(日)決勝 晴れ

昨日に引き続きの快晴かと思われたが、水戸からサーキットに近づくにつれ、山に掛かる“もや”が濃くなる。また雨でもあるのかと思ったが、雲の切れ間から太陽がのぞくと、やはり、厳しい残暑を予感させる1日となりそうである。
朝のフリー走行はサーキットサファリが行われ、7台のバスがコースを走る。その分通常の30分に対し、10分ほど走行時間は延長され、それを利用し加藤選手により、新品ブレーキの慣らしを行う。
後は、今ひとつ乗れていない、高橋選手の練習走行にあてるが、最後に満タンの決勝セッティング状態の確認を加藤選手が行う。…はずだったが、予定時間になっても高橋選手がピットに入ってこない!勿論無線での指示と、常にピットサインを併用しているのだが…。
結局高橋選手のイヤホンのジャックが外れており、マシン側から話はできるが、逆は聞こえない状態だったのである。
そこに加え、ピットサインの見落としであった。
F1でもそうだが、これだけ無線の性能が良くなっても、いまだにアナログなサインボードを止める事が無い、このモータースポーツ。(カテゴリーによっては無線の使用は禁止)
それは、こうしたヒューマンエラーや、機材のトラブル等、万一の事態でも最低限の指示を送る為であり、サインボードの読み取りは“どの”ドライバーにも求められる最低限のスキルであり、高橋選手の“アマ”を披露した一幕であった。

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今日は出番が無いであろうレインタイヤ。タイヤ屋さんは、天候によって仕事量がまったく異なる。
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ピット前が混みあった場合の、斜め停車シミュレーション。隣は26号車。不運が続き今シーズンの最高位は、2戦岡山での3位だったが…。

決勝ウォームUPスタート前、加藤選手が「今日は(攻められないから)堪えるレースだから、いつもと違う走りを見せるかな…」と言い残してコースへ…。
そろそろタイトル争いも絞られてくる1戦だけに、8番手とはいえグリッド上では、注目を集める。最後尾スタートとなったランキングトップの101号車と2位のこの紫電がレース中、どう絡むか?が、このレース、注目のひとつであろう。

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GT100戦記念ポスターに全選手のサインがなされチャリティー出されるとか…。
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グリッドに向かう加藤選手は、グリッドで着用するキャップとサングラスを持参していく。
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グリッド上の両選手。このレースは、とにかく最低限10位、ポイント圏内での完走が目標。
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そこに現れ、無線アンテナに止まったトンボ。加藤選手曰く「これラッキーアイテムですよ。」その占い、果たして…。

まだ30度を超える残暑の中、レースは定刻スタート。すぐ前の4号車がピットスタートとなっていた為、7位でオープニングラップを終え、10周ほどは“宣言”通り、“忍”のレースで順位をキープ。10周を終えて13号車に抜かれ8位となるも、ずっと堪え忍ぶ加藤選手。タイムは59秒~00秒。
前の方では、セカンドポジションスタートの26号車が、スタート直後にトップに立ち独走態勢を築こうとしており、2位以下の43・5・62号車が接戦を演じている。
15周終了のトップ10は、26・43・5・62・110・13・31・2・46・7号車である。
チームが注視しているのは、101号車の動き。最後尾からスタートし57~58秒台のペースで快走。20周辺りで、既に加藤選手の後方5秒、13位辺りまで上がってきている。
レースも中盤に差し掛かった25周目、上位陣の中でまず110号車がピットイン。ここからルーティンピットが始まり、順位が入れ替わり暫定となる。

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レーススタート。第2グループの先頭と言ったところ。
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2周目。トップグループ7台は先へ…。ここでのレースは“攻め”より“守り”。
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500が1周先行し始めた序盤、ダウンヒルコーナーで、単独スピンした300に、500数台突っ込む多重クラッシュ。
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それに巻き込まれる事も無く通過。赤旗ともならなかった。

そんな中、なんと26周目、101号車がコースアウト!グラベルに捕まり、大きく後退。翌周ピットインするが、殆ど勝負権を失ってしまった。
しかし彼らはその後ピットに戻りNEWタイヤに交換。レースは捨てたが、ファステストラップ狙いのアタックを開始した。(レース中のラップ、上位3台には1ポイントが与えられる)
ファステストラップは、500や周回遅れがまだ発生しないレース序盤にマークし易く、これらの混走のとなった中盤以降でのファステストラップ狙いは、かなり難しい。っが、彼らはそれらをやってのけ、貴重?な1ポイントを獲得する。
昨年の様な僅差でのチャンピオン争いとなると、こんな1ポイントが効いてくるのだが…。
その後、上位陣も次々とピットへ…。当然加藤選手も見かけの順位はドンドン上がる。ここまで30周以上走行しても、ラップタイムは全く変わらず、35周目、暫定1位となり、“前が開けて”からは、更に正確にピタリ59秒台!
そして39周が終了した時点でピットイン。高橋選手に交代。燃料も残り周回分のみを積込み、再スタート。9位で復帰。
今回乗れていないと思われた高橋選手、アウトラップ以後59~00秒台と加藤選手と同様、安定した、“忍”のレースで周回を続ける。
昨年は不得意コースながら、“ジタバタ”してノーポイントレースだった。今年は、とにかくポイント圏内で、無事完走できれば充分と、無欲のレースを続ける。

すると(という訳では無いだろうが…)44周目、直前を行く46号車がマシントラブルで、ピットイン。8位へ…。
続いて49周目、6位の13号車に19号車が接触!2台共々コースアウト。第5戦優勝の19号車は、タイトル争いから脱落してしまった。
高橋選手は“漁夫の利”を得て一気に6位に!

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お隣26号車のポルシェは、ボンネット上から給油を行う。パワーを存分に活かし、トップを快走。
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ピットインの瞬間。タイヤマンはレンチの先端で、ホイールナット狙っている姿勢がよく判る。

5位、110号車には20秒程先行されているし、欲は出さない。むしろせっかく拾ったこのポジション、後方5秒程の7位、47号車に奪われぬ走りで充分である。
その間隔を何とかキープ、57周目のファイナルラップへ…。
最終的には1.5秒まで詰められたが、このモテギでは、上出来とも言える6位でチェッカー!5点を追加する事ができた。

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上位の脱落にも助けられたものの、順調にラップをきざむ高橋選手。
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高橋選手を迎えるクルー。このモテギでの6位は、表彰台に匹敵する大健闘。
2007年 SUPER GT第7戦 GT300クラス
予選1位 : 決勝1位
獲得ポイント チームポイント5点+2点(トップから一周遅れ)累計89点 ランキング 1位
ドライバーポイント5点 有効累計75点 ランキング 1位
*第1戦から6戦の、獲得合計点数77点だが、2007年は内上位4戦のみが有効とされる為、第3戦の7点と、第4戦の0点は累積されない。
第7戦から最終9戦までの3戦は全て有効となる。

101号車はポイント圏外。この時点で、高橋・加藤組の2号車が75点となりランキングトップ!
残り2戦フルマークで得られる得点は44点。(ポールポジション3点・優勝20点・ファステスト1点:最終戦は、決勝結果のみ)
現時点で31点以上獲得している、2・101・43・62・13・26・47号車の7台がドライバータイトルの権利が残されている。(チームタイトルは、更に46号車も権利有り)
次回オートポリスで、2号車、101号車のいずれかが、フルマーク24点を獲得し、尚且つ、いずれかが無得点(厳密には、2号車が1点以下、101号車7点以下)であれば、この時点でタイトルが確定する。正に「捕らぬ狸の…」何とやらであるが、シリーズは既に終盤に入ってきている。
昨年はオートポリスでランキングトップに立ったのだが、今年は1戦早い。しかしそれは、ライバルがひっくり返すチャンスが、一回多いに過ぎないのである。

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