モータースポーツ

2010開幕直前:合同テスト

2010シーズン 紫電
2010年03月16日

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2010年SUPER GT開幕直前、合同テスト。


 2010年の開幕を2週間後に控え、3月5・6日の両日、SUPER GT合同テストが、三重県鈴鹿サーキットで開催された。
 2006年から開催サーキットとなった鈴鹿サーキットだが、昨年は大幅改修中だった為、久々の岡山での、合同テスト並びに開幕戦となったが、今年は再び鈴鹿となる。
 季節的には、やや冷え込みが残る、この3月の開幕戦は鈴鹿の方がありがたい。
 昨年第2戦から活動休止(決して引退ではない!)に入った高橋選手だが、今年も休止。
 その高橋選手に代わって大活躍をしてくれた、ヨッスィーこと吉本大樹選手、今年は他のチームでアストンマーチンを走らせる事となった。
 そこで今年、加藤選手と組み紫電をドライブすることとなったのは、濱口弘選手(開幕後「ハマちゃん」に変更予定))。
 と言っても殆どの方は???誰!
 レース界でも無名と言っていいだろう。
 それもそのはず、なにしろレースデビューは2008年のポルシェカレラカップ。レース歴はこれだけ!
 1976年10月生まれなので、32歳デビューはかなり遅い。
 しかも2009年はレース活動休止。これで知ってる方はよほどのマニアとしか思えない。
 その2008年のデビューシーズン、全11戦中6戦優勝、残りの5戦も全て2位と言う、驚異の戦績でチャンピオンとなった実力者。
 だがそんな実力があるとは言え、GTデビューとなると、レギュレーション上、ルーキーテストが必要となる。
 今回の合同テストは、マシンのセットアップは勿論だが、濱口選手のルーキーテストと言う課題もある。 っが、その課題は決して重要な事ではない。
 というのも、2月の半ば、GT500の3メーカーが、ここ鈴鹿で行ったテスト走行の場をお借りして、濱口選手は既に紫電をドライブしているのである。
 その時のラップタイムは、とても初めてGTマシンを走らせるドライバーとは思えない、素晴らしいタイムをマークしており、今日のルーキーテストでも合格は間違いないだろう。

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今回の合同テストでは3人が乗るはずだったのだが・・・。
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今シーズンから排ガス浄化の為触媒が義務付け。この後ろの方はただの筒。
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奥の放射状の部分が触媒。排気音が若干変わった。

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設営日の雨は翌朝まで続いた。
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その設営日の暖気で、エンジン不調。これはその後の予兆だったか?

 3月5日、1回目、午前の走行開始。前日からの雨は朝方には上がったものの、コースはウェット。
 500マシンを中心にマシンがコースに入って行く。
 タイヤはインターミディ(浅みぞレイン)が良いかもしれない状態だが、走ればじきドライでいけるだろうと、我々は用意をしていない。
 完全レインなら、それなりにテストになるが、インターミディを使う状況と言うのは、コンディションとしては“中途半端”な状態。
 レースウィーク時のテストなら致し方ないが、この単独のテスト時にインターミディタイヤをおろすのは勿体無いのである。
 同じような経済事情を抱え、路面コンディションがよくなるのを待っている300チームも少なくない。
 テスト開始から1時間を過ぎた頃、何とかドライタイヤで走れる様になり、まず加藤選手がコースイン。
 コースコンディンションもまだ良いとは言えず2分11~13秒前後でマシンをチェック。
 因みに昨年4月、第2戦鈴鹿の予選、加藤選手のタイムはドライで2分5秒台。
 その後濱口選手に交代。
 数周の慣らしで、更にコースコンディションは良くなり、クラストップのタイムも8秒台へ。
 その後、ルーキーテスト・・と言っても計測10周(アウト、インラップ含め12周)以上を連続走行する事。
 時間にすれば約30分弱。その間タイム、ドライビングの安定性、安全性等を、審査し今シーズンSUPER GTに参加可能か?否かを判定するのである。
 単にタイム的に早ければいいわけではなく、GT300、GT500との速度差を理解している事も重要ある。
 濱口選手、この間のタイムは8~10秒台とトップグループと殆ど変わらぬ安定したタイム。
 更にベストタイムは2′07″833!これは1回目テストでなんと2番手タイム。
 合同テストは2日間。午前、午後それぞれ2時間ずつ計8時間が予定されている。

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今シーズンの秘密兵器、濱口選手。GTに限らず、レース経験においても殆ど新人。
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加藤選手から今日のコンディションでのアドバイスを受ける。
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決して今日が初乗りでは無いが、毎回が新鮮かも・・・。

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ルーキーテストの規定周回をこなし、マシンを降りた濱口選手と、、右からエンジニアのシンタロー、加藤選手、そして左が由良さん
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加藤選手と車載ビデオ学習。濱口選手はかなり勉強熱心で、自宅でもシミュレーション特訓をしている。

 午後2回目の走行。濱口選手はもう一度、同じ課題ををこなし、その他、(ってこっちのが重要)ヨコハマの今シーズンのタイヤテスト、開幕戦に向けたセッティングとメニューは盛りだくさん。
 前半は加藤選手によるタイヤテスト、ピットインを繰り返す。
 数周走ってはタイヤを代え、その間消費したガソリンを補給。
 こうしたテスト時のガス補給は、常に同じ車重にして純粋にタイヤの違いをつかむ為であり、ガス欠になりそうだからではない。
 5kg、10kgの重量の違いで、マシンのフィーリングが変化し、その変化を掴む事ができてこそ、“マシン作り”ができるドライバーなのである。
 無論重量だけではなく、車高、ダンパー、スプリング、ウィング、タイヤ内圧等、セッティングは多岐に渡り、5年目に入った紫電、基本はできているので、ピットで行うセッティング変更は結構地味である。
 そんなこんなで仕上がったセッティングで加藤選手がアタック。
 タイムは2′05″602!昨年の予選タイムには及ばないが、予想以上のタイム。 (結果的には、今回のテストでのクラストップタイム)
 濱口選手も安定したタイムで周回をこなし、終盤赤旗中断により、規定の10周計測には満たなかったが当確だろう。

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小雪がちらついてもおかしくないこの時期としては、以上に暖かい、テスト初日。
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マシンとして煮詰まった紫電。スプリング交換は結構派手な作業かも・・・。以前はアーム交換等もあったが・・。
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「ルーキーテスト結果通知表」は勿論合格。幾人かのルーキーの“いちぬけ”だったとか・・・。

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今年のSUPER GT一番の話題はなんといってもGT500クラス、HondaNSXに代わってデビューの HSV-010
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次期NSXとしてデビューするのではないかと思わるのだが・・・詳しくは不明。
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これまでのNSX同様、5台がエントリーしている。

 テスト2日目は予報通り朝から雨。 しっかりとした雨なので、昨日と異なりレインタイヤをテスト。
 この2日目には、久々に高橋選手がドライブを予定。仕事の都合をつけてサーキットにやってきた。
 無論ただ乗って見たくて来ているのではない。
 実は8月の鈴鹿POKKA700kmの第3ドライバーして出場を予定しており、勘を維持(取り戻す?)する為である。
 濱口選手には昨日午後テスト終了後、ルーキーテスト合格証書が交付され、今シーズン晴れてSUPER GTに参戦の許可が出た。
 この雨で、更に経験値を増やしてもらいたい。また果たして雨でどんな走りをするのか・・・。
 完全なレインセッティングとなったマシンで、まずは加藤選手がコースイン。
 硬さの異なるレインタイヤをテスト。 その片方(秘密)がドンピシャ。
 2′17″358と、雨に強いミシュラン勢2番手に0.8秒差をつけ、このレインコンディションの中トップタイムをマーク。
 加藤選手はトータル10周程こなし、その後は濱口選手に交代。
 紫電では初めてのレインコンディションの中、27~23秒台、その後21秒台にまでペースUP。
 これまたクラス中団に位置するタイムで、初のレイン走行と考えれば安定度も含め充分なタイムであろう。

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2日目は朝からしっかり雨。
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これだけの雨であればテストの意義はある。
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ラップモニターには裏ストレートでの最高速が表示される。300クラスは結構速度差がある。

 残り30分程でピットに戻り高橋選手に交代。
 乗込んで準備を進める間に、メカがマシンをチェック。
 すると、右のエキゾーストエンドが無くなっている。
 これでは左右の空燃比が代わり、エンジン不調の原因と成りかねない。
 今シーズンから排ガス浄化の為、触媒装置が義務付けとなり、この辺りのパーツは一新したので、応急処置的にスペア(昨年までのパーツ)に交換しようとしたが、それだけの時間は無い。
 結局、残り時間は諦め高橋選手の走行は午後までお預けとなった。
 これまで、高橋選手が走ろうとすると、赤旗中断となりしばらく走れなくなるというチームのジンクス(かなりの高確率!)があるが、今回もそのひとつか? 
 脱落したパーツは、コースオフィシャルが回収してくれたので、それを再使用(チョット変形してしまったが・・)する事ができ、午後の走行に備える。

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仕事の都合で本日のみ参加の高橋選手。
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マシンに乗り込んだと思いきや・・・。
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エキゾーストの部品脱落を発見。走行中止。

 ところが、午後2時からの走行30分前。
 いつもの様に暖機に入るのだが、なんとエンジンが掛からない。
 プラグの火花が飛ばないという電気系トラブル。
 あれやこれやと点検の結果、とあるセンサーの不良だろうとなったが、そのセンサーはエンジンを下ろさないと交換できない狭い場所についている。
 エンジンを降ろしていては、午後の走行時間は終わってしまう。
 ならば、そのまま状態で狭い隙間に手を入れ、トライしてみたがやはり無理。
 こうしたトラブル、メカが大勢いても手を出しようが無い。
 残念だが、午後の走行は断念。
 もっとも残念だったのは、無駄足となった高橋選手だったかも・・・。

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濱口選手にとって、最重要課題となるのはドライバー交代。加藤選手と幾度か練習を重ねる。
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昨年のチームメイトヨッスィーこと吉本選手。敵状視察(笑)じゃないけどピットに来訪。

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午後の暖気始動でエンジンがかからない。原因箇所は狭い場所にあり大勢でも手が出せない。
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こうしたセンサーの故障。・・と思われるが、これは最終的に交換してみないとわからない。
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結局午後の走行はキャンセル。早々と撤収作業にはいる。

 だがテストその物は、タイムも順調、濱口選手も合格、ポテンシャルの高さも判り多くの収穫を得る事ができた。
 また今シーズンは、例年第8戦となる九州オートポリスが中止となり、10月のモテギが最終第8戦となるが、“第9戦”にあたる11月に特別戦が開催され、“レース”は9戦開催されるが、シリーズポイントは全8戦での争いとなる。
 だがこの中止となるオートポリスは紫電の得意とするサーキットで、この1戦が消えることはポイント争いの上では、非常に重要で、勝手な事をいわせてもらうなら、富士かモテギが無くなってくれた方がありがたいのである。
 それはどこのチームでも多かれ少なかれ考える事であり、この状態で有利なマシンも出ることだろう。
 また今年はこの開幕戦鈴鹿と、2戦の岡山の予選方式がノックダウン方式と決定した。
 これはセッション1でクラス全車両が16台(300クラスは・・)に絞られセッション2に進み、更にそこで上位10台がセッション3に進み、最終的にポールポジションが争われるのである。
 そしてこのノックダウン予選は同じドライバーが連続で出走できないので、2名のドライバー共に高いレベル(トップ10に入る事ができる・・)でないと、上位グリッドは得られないのである。
 恐らく8月のPOKKAと8戦のモテギも同様となるだろう。
 これまで、加藤選手の一発スーパーラップで上位グリッドを手にしていたので、これらノックダウン予選となるとそれらも難しくなる。
 そんな中、これから実戦を重ね、経験値の高まる濱口選手へ期待は大きい。
 いずれにしろ、開幕戦となる鈴鹿も紫電の得意なコース。
 ノーハンディウェイト開幕戦、表彰台を予約しておきましょうか?(笑)