モータースポーツ

2010:SUPER GT第5戦

2010シーズン 紫電
2010年08月20日

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完璧なポールtoウィン!!
ルーキーハマちゃん悲願の初優勝!!

ハマちゃんこと濱口選手のブログ・レースレポートはこちら 必見!!

 

エンジニアのシンタローがブログをかきはじめました。
 機密情報も含めヤバイ内容も多いので賞味期限がかなり短い可能性もあります。

シンタローの危険なブログはこちら 早めに御賞味下さい。

7月23日(金) 設営 超快晴

 前戦マレーシア、セパンから1ヶ月。
 “灼熱”のセパンと言われるが、そんなまくらことばは、ここSUGOの方がお似合い・・・。
 7月24・25日、SUPER GT第5戦は宮城県スポーツランドSUGO。
 日本の最高気温を記録している、岐阜県多治見市、その東海地方から北上し、宮城まで行けばチョットは涼しいかと思ったら、さにあらず。
 この週末は全国的に連日35度超えの猛暑!
 熱中症で多くの方が病院に担ぎ込まれるほど。
 設営中、チームスタッフからも「セパンの方が涼しかったぞ!」とぼやきが出る。
 でも例年この時期のSUGOはこんな感じで、決して特別なシーズンというわけではない。

 エンジニアのシンタローに言わせると、紫電と相性の良いサーキットは、鈴鹿、セパン、オートポリス(今年中止)、そしてここSUGOだと言う。
 それらのサーキット、確かに早いが、昨年のオートポリス、開幕の鈴鹿、前戦のセパン、どこも不運に見舞われ、良いリザルトに恵まれていない。
 そんな中、ここSUGOは“運”も含めて最高に相性のいいサーキット。
 フル参戦開始の02年も、あと少しで表彰台の4位。
 初表彰台も06年、紫電デビューイヤーで3位を獲得。
 “暗黒”の04年以外、全てのシーズンでポイントを獲得している。
 因みにこの04年は、唯一のリタイヤ(クラッシュ)である。
 昨年も、ドライ、ウェット、ドライとめまぐるしく変わるコンディションの中、見事な作戦で2位表彰台をGET!
 残るは最高位のみである。
 セパンでのトラブル(スターターモーターが噛みあわずエンジン始動せず)は、原因もはっきりしている事から、対策を施したが、今年は・・、と言うか、昨年の最後2戦辺りから、予想外のトラブルに悩まされ、しかも決勝中に発生。
 ミスの無いドライビング、(ほぼ)完璧な作戦、ピットワークが全て水の泡となってしまっている。
 今シーズンも、レースらしいレースは第2戦岡山での2位だけ。
 ハマちゃんとっては、未だ2レースしか経験できず、決勝出走率50%!
 こんな悪い流れを、SUGOで断ち切りたいものである。

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降ろされる紫電。「オッと床下は撮らないで」とエンジニアのシンタロー。一応モザイク。
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設営が進む中、サイクリング(コース下見)に出かける両ドライバー。
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早くも来たよヨッスィー。まだ冷えてないよ。

7月24日(土) 練習走行 予選 スーパーラップ 超快晴

 セパンでは運こそ無かったが、速さはあった。
 その速さをそのままSUGOへ持ち込む。
 ただこのセパン異常(以上)の暑さは、タイヤにとっては想定外か・・・。
 マシンの速さは日々(毎戦)進歩しているが、タイヤに負う所が多く、またその性能を引き出すセッティング能力に掛かっていると言って過言では無い。
 セッティングを決めるには、走り出しの基本セッティング、ドライバーからの的確なフィードバック、それらとデーターロガーから読み取り必要なセット変更を迅速に行う。
 これらの繰り返しを、短時間で行う必要がある。
 特にルーキー濱口選手こと、ハマちゃんに多くの走行時間を当てたいからである。
 彼にとってここSUGOはポルシェカップで1回(2レース)走っただけで、無論紫電では初めてである。
 しかしそうした走行時間の少ない“初”サーキットでのハマちゃんの適応能力はすばらしく、セパンでも、練習走行でのタイムの伸びからすると、決勝レースはかなり期待できただけに、走る事ができなかったのは残念であった。
 だが、このSUGOもセパンと似た特色をもった紫電の得意なサーキットなだけに、ハマちゃん多いに期待していいだろう。
 それは走り出して直ぐに現れる事に・・・。
 練習時間前半は、加藤選手によるセッティング。
 このSUGO、シケインから、S字部分で一部コース改修があり、完全に縁石をまたぐように走るとかなりタイムUPが期待できるらしい。
 しかしライン取りによっては、殆ど(4輪がはみ出し)ショートカット状態となる為、予選ではトップタイム抹消等のペナルティ対象となりかねない。
 しかしそんな中、ギリギリのラインを攻める加藤選手。
 幾度かのピットインを繰り返し、アッという間にセットは決まり、その後タイヤ比較、軽い?タイムアタックでは2′24″482の(最終的に)トップタイムをマーク。
 

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ハレーションが暑さを倍に感じさせる。
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公開車検。遠くの山もクッキリ。もう少し涼しいと気持ち良いのだが・・・。
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気温31℃、路温45℃練習走行直前の午前9時頃

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走りだしから好調な加藤選手。
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タイヤ比較も行ないつつ・・・
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幾度かのピットインを繰り返し・・・

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鬼の“縁石跨ぎ”走法でクラストップタイム。お陰で・・・
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アンダーパネル傷だらけ。肝心な部分は一応モザイクです。
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おまけに肝心なパネルはパックりと割れてしまった。これもモザイク。謎めいていてレーシングカーっぽい、とエンジニア。

 残り時間50分。続いてハマチャン。
 走り始めて3周、27秒台。
 その後タイムは短縮されないがライン、ブレーキングを試行錯誤する中・・・眼界を極めようとして「スピンしちゃいました~。」と無線が入る。
 バックストレッチから馬の背コーナーへのブレーキングでスピン、 グラベルにはまりストップしてしまったものの自力で脱出。
 そのまま、ピットへ・・・。
 ここでやばいのは、コースアウトすると芝生、枯れ草がラジエターのエアインテークを塞いでしまう事。
 この時期、一発でオーバーヒートしかねない。
 マシンのダメージも無く、それらの清掃後再び走行再開。
 再開後、4周目に同じく馬の背コーナー立ち上がりでコースアウト!
 しかしこれはそのままグリーンを抜けてコース復帰。
 そのまま周回を続ける。
 ハマちゃんがスピン、コースアウトするのは、開幕鈴鹿以来(だと思う)。
 2DAYレースとなり、練習時間が大幅に削減されてから、こうした事で、走行時間が消費されて行くことは、ルーキードライバーにとっては大きな痛手となることは本人も充分承知している。
 ましてや、マシンが大きなダメージを負ったら、午後の予選も走れなくなる可能性もある。
 マシンを壊さない。ドライバーに求められる重要な資質だろう。
 しかし限界を見極めなくては、タイムを縮める事もできない。
 その為に負ったリスクを活かしたハマちゃん、その後26秒台を連発。
 安定したラップタイムに加え、26″146の自己ベスト。
 これはトップグループを走るドライバーと全く遜色のないタイム。
 まだ短縮できそうなので、午後の予選では25秒台突入間違いないだろう。

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交代するハマちゃんにアドバイス。
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共に大したこと無かったが2回のコースアウト。
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こうした芝がエアインテークに詰まるとオーバーヒート原因に・・・。

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ピットアウトしたマシンは、2コーナーを抜けてきたマシンと交錯するので要注意。またこのピットロードでスピンしてピットロードを塞いでしまうアクシデントもある。
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コースアウト後のハマちゃん、順調にタイムを上げる。
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このセッションでは26秒前半。25秒台の手応えも充分。

 予選そして、ここでもセパンと同様スーパーラップ(以下:SL)方式で上位8台のグリッドを決める。
 セパンで狙ったポールポジション。
加藤選手にとってはGT300クラス単独トップはお預けとなっていたが、決勝レースへのはなむけとしたい。
 ハマチャンから予選スタート。
 勿論基準タイム(上位3台の平均タイムの107%)クリアが課題ではない。
 こうした、SL予選なら、どちらか一方のドライバー(我チームの場合、加藤選手)の頑張りで、高位置のグリッドが狙えるが、ノックダウン予選ではそうはいかない。
 そういう意味を踏まえ、ハマちゃんにも、タイムアタックの集中力のみならず、NEWタイヤの使い方等、スキルUPを目的とした走りが必要だ。
 NEWタイヤの感触を充分確かめつつ暖機、計測3周目、26″283、そして翌周25″874のベスト更新。
 既に23台の300クラスのドライバーA、Bいずれかのドライバーはアタックを終えている中、2番手タイムである。
 加藤選手に交代した頃には、他のチームも相方ドライバーに交代、再度アタックに入るが、このハマちゃんのタイムは予選開始から20分を過ぎ、500との混走セッション終了まで3番手を守る堂々たるタイム!
 混走セッション終了間際に、ストップ車両が発生、赤旗中断となり、再開後は300専有セッションとなる。
 各チームエースドライバーによるアタックは25秒台前半に突入。
 3号車Z、25″403、“因縁”の43号車Garaiya 25″126、ディフェンディングチャンピオン19号車IS350 25″025、そして今年波に乗る74号車、カローラアクシオがついに25秒を突破、24″975!、11号車フェラーリも24″913と僅差でトップに・・・。
 そんな緊迫したSL進出(正確にはSL出走順)を掛けた予選上位争いだったが、加藤選手のアタックはそれらを一蹴する、24″471!!ダントツのトップ!!
 さすがにライバルもこのタイムには追いつけず、7号車RX-7、24″704、3番手、31号車エヴァンゲリオンカローラが24″544で2番手・・・、予選終了。
 久々にSLのトリを務める事に成功した。

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“まずは”25秒台を目指し予選に挑むハマちゃん。
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ハマちゃんのタイムは2番手。勿論25秒台。
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加藤選手のアタックはあっさりトップタイム。SLの最終スタートとなる。

 2時間弱のインターバルでSL開始。
 トップは“因縁”の43号車。このままの順位なら8番グリッド。ここら辺りからスタートして貰えると“ニアミス”避けられるのだが、先方もそうは行かない。
 うまく纏めて24″505。これがターゲットタイムとなるのだろうが、結構速い。
 続く46号車Zは(結果的に唯一の)25秒台で43号車をひとつ上げる事に・・・。
 3番手スタート19号車も24″741とコンマ23及ばず・・・。
 続く74号車カローラも24″631と僅かコンマ13秒届かず43号車をまたまたひとつ押し上げ(5番手)る事になる。
 5番手スタートの11号車フェラーリは、唯一第1セクターで43号車のタイムをコンマ14秒縮めてきた。
 頑張って間に入ってくれ!と言う願いむなしく24″524!100分の2秒届かず。
 残り3台。
 今期絶好調のポイントリーダーの7号車も、ウェイトに苦しむのか?11号車にも届かぬ24″593。
 これで43号車は最低でも3番グリッドまで上がった事になる。
 ラス前はもう1台のカローラ、31号車エヴァンゲリオン。
 第1セクターまでは43号車に及ばぬものの、後半で稼ぎ、終わってみれば24″441。
 100分の6秒ながら、少なくとも43号車のポールは阻止することには成功。
 白熱、緊迫したSLである。
 そんな中、トリの加藤選手がアタック開始。
 第1セクターは31号車から既にコンマ27秒マイナス!速い!!
 後半を攻める加藤選手。
 モニターに映し出される紫電の後ろ姿は、(個人的な印象・・)平ぺったいスルメイカの胴体の様。
 その大柄なボディが、ユサユサと左右に揺れながらもアクセルを緩めず加速して行く。
 加藤選手が本気モードの時の動きだ。
 紫電の稼ぎ所は前半のテクニカルセクションだが、SPコーナーから最終コーナー、そこでスピードを落とさなければ、非力な紫電も昇りは速い。
 コントロールライン通過!24″082!!
 予選と同様、ライバル達のSLでの大接戦を一蹴する、コンマ36秒もの差を付けた、正にスーパーラップ!
 加藤選手にとってはクラス最多10回目(紫電で8回目)のポールポジション。

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SL出走前の加藤選手。「アッ爪切ってないや。」じゃないと思うけど。
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SLスタート待機中。万一の為に松下チーフメカが駆け寄る。
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モニターで見守るハマちゃんとシンタロー。TV向けのポーズ。

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終わってみれば0.36秒の大差であっさりポール獲得。
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昨年のセパンが幻となった為、08年開幕の鈴鹿以来のポール。ハマちゃんは一度やってみたかったポーズとか・・。
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裏から見るとこんな感じ。

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ポールポジション記者会見後の記念撮影。
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久々のポールポジション賞。
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一安心の松下チーフメカ。真面目だがひょうきん。

各種暑さ対策&ファンの方々より

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テントの屋根には銀色のシートを被せ、日除けを強化しているが、テント内はこんな温度。
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すだれを浮かして空気を入れる。貧乏臭い!!が効果あり。
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ノートパソコンはこうして待機。

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なんといってもかき氷。
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シンタローは、意味不明的なレア物ドリンクが大好き。
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ファンからのフラワーギフト。

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これまたファンからの風鈴。でも全く風がないので鳴らない。
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この手紙と共にドリンクの差し入れをいただく。
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その手紙を読む当人。

 

7月25日(日)フリー走行 決勝レース 晴れ 一時超小雨

 今日も、朝から30度に届かんとする暑さ。
 例年SUGOはどこかで雨に見舞われるが、今のところまだ大丈夫。
 今日のフリー走行は45分。
 最近は30分+サファリだが、ここではサファリが無い。
 (この狭いSUGOでは、サファリの大型バスを運行するのは無理があるだろう。)
 その為今日のフリー走行は45分と長め。
 走り出しは加藤選手。
 満タン、決勝用にセット変更したマシンで徐々にペースアップ。
 26″180で5番手まで上げた辺りで最終コーナー立ち上がりで、300と500マシンが激しく接触。
 共にコースアウト、赤旗中断となる。
 再開後2周目、25″433のベストタイムをマーク、ここでもクラストップに立つ。
 加藤選手絶好調である。
 この順位は、その後ハマちゃんに替わった後も破られず、昨日から全てのセッションでトップとなる。
 ・・・・かと思ったが、残り10分少々の所で11号車フェラーリが25″080をマークし、加藤選手のタイムは2番手へと下がる。
 無論でのここでの順位は、単なる決勝への目安程度しかならないのでさほど意味が無い事は判っているが、全てのセッション、パーフェクトと行きたかった。
 って、まだ一番重要な決勝レースが残っている。
 ここでのハマちゃんはコンスタントに26~27秒台でラップ、決勝レースのペースとしては充分だ。

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フリー走行で発生した300と500同士のクラッシュ。赤旗中断。
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フリー走行は序盤はトップだったが・・・。
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ポールポジション賞を片手にマリオ・ハマグチ

 決勝レーススタート直前になり、雲が厚くなってきた。
 グリッドにレインタイヤも準備されるが、どうやらスタートでは必要なさそうだ。
 陽射しは弱まったが、気温は34度、路温はまだ45度以上、昨年同様、レース後半での波乱を呼びこむのか・・・?
 
 定刻となりレースはフォーメーションラップへとスタート。
 加藤選手は300クラスのマシンを率いてコントロールラインを通過。
 ポールポジションを利して1コーナーをトップで進入。
 オープニングラップ、2番手31号車に1.7秒の差をつける。
 3番手以下は既に、入れ替わり11、7、43、74号車と続く。
 2周目26″476、2番手31号車26″660、2秒差と開き始めるかと思ったが、3周目加藤選手26″414、31号車26″031と1.6秒差と詰まり、5周目には0.7秒差に・・・。
 だが、決してこれは“接戦”となっている訳ではない。
 前がいない状態では、あくまで加藤選手のペースであり、31号車の追撃は、プレッシャーとはならない。
 これまでのポールポジションで、加藤選手がスタートを努めた時のトップキープ率は極めて高く、唯一07年のここSUGOで、スタートしてしばらくして雨が降り出し、ウェット路面の中スリックタイヤでトップをキープするも、(当時)GTマシン唯一の四輪駆動、77号車インプレッサに抜かれて2番手に落ちた事があるがこの1回だけ。
 この時無線で加藤選手はかなり悔しがっており、シンタローが「四駆ですからしようがないです。」と慰めるほどであった。

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スタートセレモニー中、くつろぐ?加藤選手。
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そろそろマシンに乗り込む。雲が厚くなってきた。
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出勤準備のできた加藤選手。ガッツポーズのハマちゃん。背後霊のシンタロー。

 7周目には25″387のベストタイム(このレースのファステストラップ)、31号車も、25″505をマーク、1秒差で喰らいつく。
 そんなテールtoノーズの“接戦”も10周を過ぎた辺りから、500が入ってきた。
 このSUPER GTは、(300クラスから見て・・・)500をうまく先行させるテクニックが重要であり、逆に前車をオーバーテイクする為に利用する事もできる。
 うまく先行させる2号車加藤選手、31号車も遅れてはいないが、加藤選手を脅かすだけの余裕は無いようだ。
 15周目には2.5秒差、20周目1.3秒、25周目1.8秒。
 なかなか差が広がる事はない。
 加藤選手のスティントをトップで終える事に不安は無いが、後半のハマちゃんへの“貯金”をしなくてはならない。
 3位の11号車とは既に10秒以上の差がつき、この2台のブッチギリ状態。
 スタート直後はデッドヒートになるかと思ったが、31号車も無理なオーバーテイクを試みる事は無く、次第にランデブー走行へと様変わり。
 前半食らいついていって、ドライバー交代後に勝負を掛けるのか・・・?
 観戦している方にとっては面白み無いレースになってきてしまった。
 そんなレース展開に更に拍車を掛けるかのごとく、レースも30周を超えようかとした頃、僅かに雨が落ちてきた。
 ピット前辺りでは気がつかない程度の雨だが、コースの場所によってモニターカメラに水滴が写り、ところどころで雨量が異なり、すぐに雨用タイヤが必要な程ではない。
 だがラインの選択肢は狭くなっているようだ。
 更に同クラスの周回遅れが出始めた。
 周回遅れには、ブルーフラッグが出され、進路を譲ってくれる事になっているのだが、どこで遭遇するかによっては、ラップタイムに影響が出ない訳ではない。
 前に現れる周回遅れ、後ろから来る500。短いコースだけにそうしたシチュエーションは多い。

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フリー走行で大クラッシュの38号車。スタッフ総動員でピットスタートに間に合う。
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スタート直後の2コーナー。
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この2台が3位以下を引き離す。

 またこれを機にか?ピットインが始まる。
 レース周回は81周、300クラスは75周前後と読んでいるが、ほぼ半分の30~40周辺りが各マシン、ピットインだろう・・・。
 この雨の状態(更に強くなるか?)によっては、ピットインを伸ばし、レイン、インターミディへの交換も考えられるのだろうが、今日の雨はこれ以上強くなりそうにもない。
  
 こういう悪条件を味方にするのが、百戦錬磨の加藤選手。
 明らかにラップタイムの落ちた31号車との差をみるみる広げ、34周目には7秒、37周で12秒、41周で17秒と貯金が増えた。
 さてそろそろ、我々もピットインの準備を始めるのだが、当初の45~50周のピットイン予定。
 しかもタイヤ交換は左側だけだったが、殆どのライバルチームが最近“流行”の、無交換、2本交換ではなく4輪交換。
 シンタロー「タイヤの状況どうですか?予定通り左2本交換で良いですか~?」
 加藤選手「大丈夫だと思うけど、後ろとの差が判んないからそっち(ピット)で決めて~!」
 また、30、40周目でチェックした燃料消費が予想より多い。給油時間も伸ばさなくてはならない。
 
 現状のラップタイム、後ろとのタイム差、ピットストップでロスする時間、これらを予測、計算し、ピットインのタイミング、給油時間、各種ピットワークのメニューを決める・・・っていうか基本線は決まっているので微調整。
 シンタローが頭とパソコンを駆使し、導いた結論、ピットインは52周、タイヤは4本交換!給油は長め(時間は企業秘密)。
 因みに今シーズンから、レギュレーションにより、給油ホースの途中が絞られ、時間当たりの給油量が減った。
 ドリンクボトルは?加藤選手の「飲む暇が無いから減ってない!」との言葉を受け交換しない。
 暇だから飲むって物でもないだろうが・・・。

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雲行きが怪しくなり、僅かに雨が落ちてきた。雨雲の状態は・・・。
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そんな中、快調にトップをキープする加藤選手。
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控えるハマちゃんの横にはインターミディも用意される。

 タイヤ4本交換に決めた46周目、31号車がピットイン、これも4本交換。
 シンタロー「4本交換するんで、プッシュして!!」ここまで2本交換の予定で走っていた加藤選手、残り6周“ご自由にお使いください”の無線が飛ぶ。
 加藤選手「・・・・・」特に返事なし。
 この時点で2位31号車とはピットイン直前で23秒。実質の3位は、既にピットインを済ませた3号車Zが95秒後方。
 この3号車、1回目予選でコースアウト、マシンを大きく破損し、12番グリッドと後方からの追い上げである。
 
 タイヤの足かせが外れた加藤選手、それまでトップグループと同じ27~28秒台から一気に26台にペースアップ、49周目には25秒台!
 2位3位は31号車と、0.7秒差の3号車。彼等とは100秒弱の差がついた。
 長めの給油と、タイヤ4本交換をしても、充分な残高をハマちゃんに“相続”できそうだ。

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エヴァ31号車ピットイン。タイヤは4本交換。
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周回遅れにしたマシンの、後ろに500マシンが迫る。こうした混戦に強い加藤選手

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出撃準備ハマちゃん。

 51周を終え、「BOX」(ピットイン)サインが出る。スタッフが少ない我々、サインマンもエンジニアも全て作業要員の為、そそくさと作業準備に入る。距離が短いので直ぐにやってくる。
 他のサーキットより遅い50km/h制限となったピットロードを加藤選手がやって来る。
 待ち構えるハマちゃん始め、クルー。
 ピタリ定位置に停車、同時にドライバー交代、フロントタイヤ交換。
 フロントを終わると同時に給油開始。
 その間にタイヤマンは後ろに移動。給油終了と同時にリヤタイヤ交換。
 タイヤ2本と4本では約6~7秒差。また4本が冷えたタイヤではアウトラップにも差が出る。
 だが、今はそれらを消費しても充分なマージンがある。
 リヤタイヤ終了!ジャッキダウン。
 それを待ちかねたハマちゃんの指は、既にスタータースイッチに掛かっている。
 キュル、キュル、キュル、キュル・・・。
 きっちりクランキングしているが始動しない!
 こりゃまたハマちゃん、セパンの二の舞か?!!!
 タップリと3分間に思える3~4秒が経過した頃、グァオーン!!とエンジン始動。
 ホイールスピンをさせ、猛然とピットを離れるハマちゃん。
 とりあえずトップで復帰する事に成功。
 イグニッションスイッチがOFFになっている事に気づいたハマちゃん、冷静に自力で解決。
 我々が最後のルーティーンピットの為、これで戻った時が実際の順位であり、マージンである。
 と同時にこの周回で、2位が3号車3位が31号車へと入れ替わり、その差は34秒、残り周回は22~23周。守りきれるかハマちゃん!
 共に26~27秒台だが、僅かながら3号車の方が上回っている。
 57周目+29秒、60周には26″095のベストタイムで追い上げる3号車、62周目+23秒!
 67周で+17秒!まだプレッシャーを掛けられるタイム差ではないが、14周で17秒、1周1秒以上詰められた計算だ。
 無論アウトラップも含んでいるので、残り8~9周がこのペースで詰められるわけではないが、昨日の様なオーバーラン、1回があれば充分“うっちゃり”を喰らうマージンとなった。

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再スタートではヒヤリとしたが、冷静に対処。トップで復帰。
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52周のロングスティントを終え、モニターを見守る加藤選手
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トップ2号車を映し出す。実質3レース目となったハマちゃん。

 ところがそんな心配をよそに、ノーミスどころか、柳田真孝選手を相手に徐々に差を広げ始める快走振り!
 70周目+18秒、72周目+21秒、73周で、+23秒!残り3周。
 そんなハマちゃんに、コースサイドから無線でアドバイスを送っていた、舘師匠からも「行け!行け!」の激が飛ぶ。
 74周を終え、24秒後方の3号車との間に、500のトップグループ、2台のHonda、18、17号車が割って入り、彼らはファイナルラップとなったが、2号車ハマちゃんの16秒後方、この周回で抜かれる事は無いだろう。
 76周目に入るハマちゃん、その6秒後、500トップ争いの2台にチェッカーが振り下ろされる。
 この為、2番手3号車は75周でレースを終える事となり、リザルトとしては全車周回遅れにする事となった。
 ファイナルラップは、既に確定したウィニングランとなった。
 ハマちゃん、後方の脅威は消えた為か?ややペースを落とし、坂を駆け上がってくる。
 そしてピットウォール側にマシンを寄せ、加藤選手始め、クルーの歓喜を受けフィニッシュ!
 不運の続いた今期、チームにとっては待ち焦がれた一年振りの優勝。
 そしてGTルーキー、ハマちゃんにとっては5戦目、実質、ドライブした3戦目にしての初優勝!!

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ゴール!マシンチョッとしか写ってないけど・・・。
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優勝マシンとして誘導される2号車、ハマちゃん。迎えに出る加藤選手。
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任務を終えたハマちゃん。レッドカーペットに囲まれる。

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ハグする両ドライバー。
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僅か5戦目での初優勝ハマちゃん。幾度かチャンスは有っただけに長く感じられる。
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チーフメカと抱擁。帽子で顔を被った訳は・・・。

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今期2度目の表彰台。2位は3号車、3位は31号車。
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シャンパンファイトでも独走する両ドライバー。
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堂々のレースを見せたハマちゃん。自分にご褒美。

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 これがUPされる頃は既に第6戦鈴鹿Pokkaサマースペシャルのレースウィーク。
 久々の高橋選手も加わる3人体制で挑む。
 ウェイトが40kg増の70kgとかなり厳しいが・・・。
 応援よろしくお願いします。