モータースポーツ

SUPER GT第1戦 岡山国際サーキット

2013シーズン マクラーレン
2013年04月28日

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SUPER GT第1戦 岡山国際サーキット

7年の永きに渡って、共に戦った「紫電」が2012年で引退し、チームは新マシンを導入。
紫電引退が確定した2011年辺りから、次期マシンを選考・・・昨年末発表した通り、今期のマシンはMclaren(マクレーレン)MP4-12C・・・・バリバリの最新鋭FIAGTマシンとなった。
FIAGTマシンとJAFGTマシン、戦力の差としては、パワーが大きくストレートが早い、その分燃費が悪いFIAGTマシンに対し、足回りの改造範囲が広くコーナーリングスピードが早く、燃費が良いJAFGTマシン。
ザックリと言えばこんな評価となろうが、総合的にはかなり拮抗しており、サーキットのキャラクター、コースコンディション(ドライ、ウェット)またレース距離も勝敗を大きく左右する要素となり、今シーズンも白熱したバトルが繰り広げられる事だろう。
そうした中、「エヴァRT初号機アップルMP4-12C」であるMclaren(マクレーレン)MP4-12Cは、2012年にヨーロッパでデビューし、更に2013年仕様となった新型マシン。
SUPER GTシリーズでは勿論、日本国内初参戦となり、どんな戦いぶりを見せるか・・・注目のマシンでもあり、未知数のマシンでもある。

ところが、開幕に先立ち、昨年末のシェイクダウンから、2月に入って幾度かのテスト走行を行ったのだが、細かなトラブルが続出!!
それも“ハード”というより、ソフト、システムの問題でメカニックも、正直対処のしようが無い。
本国のメーカーによる対策を待つしかなく、歯がゆさが募るばかり。
紫電等、JAF-GTマシンは、こうした点を独自に対処、対策を講じる事ができるのだが、FIAGTマシンは独自の改良は許されない。
また、他のチームからも多くエントリーされているマシン(ポルシェ・アウディ等)であれば、それなりに情報、データー量も豊富でまたそれらの共有も可能で、トラブルに対する対処も早いが、現状日本では1台限りのマシン・・・無難なマシンで参戦するより、チャレンジング・スピリッツを重視したリスクが、早くも現れた事になった。

3月に入り、3回の合同テスト、タイヤメーカーテストに参加、スケジュール的には、24時間(1回のテストイベントは、1セッション2時間が4回)での走行時間があるにも関わらず、予定していた走行時間の半分も走れない。(連続走行も殆どできず、1セッション2時間丸々走れないこともあった。)
ベースとなるタイヤも決まらないので、サスのセットアップもできない・・・要するに基準となるセッティングを出した上で、コース、コンディションに合わせてアジャストしていくのである。
無論、メーカー出荷の標準状態でも走行(レース参加)は可能であるが、“走れる”という状態と、“勝つため”は自ずと異なり、我々が目指すのは後者である。
それに何と言っても、ドライバーにはマシンに対する慣れが必要である。
各部のスイッチ類の位置、パネルの表示等は操作系は勿論、ターボ車のパワー特性、トラクションコントールやABS等の電子デバイス等、ドライバーが習得するべき事も山積みであり、それによるドライバーからのフィードバックは、マシンセッティングに影響を及ぼすのだが・・・とにかく走行時間が少なく、両ドライバーもマイレージも稼げない。

これまでにも1時間以上をノントラブルで走れた事がなく、数ラップしてはピットインの繰り返しで、時には貴重なテストセッション(2時間1セッション)をキャンセルする事もあった。
しかし、そんな状況で、全くセッティングのできていない中、鈴鹿のテストでは非公式ながらコースレコードをマークし、ポテンシャルの高さ見せつけ、ドライバーの評価も悪くない。

無論そうした状況は、来日しているメーカーのエンジニアを通じ、本国、イギリスで対策を講じられ、テストが繰り返されるが、なかなか完治に至らない。
開幕戦においても、メーカーのエンジニアがパーツを持って来日し、ギリギリまで対策は行われたが、完全に出遅れ、不安一杯の開幕戦となった。

13Rd01-501.jpg 雲ひとつない青空の元、初レース・・・晴れは今日だけ・・・。 13Rd01-036.jpg 明日からの走行は間違いなく雨なので、レインタイヤも準備。 13Rd01-041.jpg マーキング用ドライタイヤと合わせ、手持ちホイール総動員される。
13Rd01-064.jpg ピットストップの位置決め。 13Rd01-057.jpg 満タンまでの時間を正確に測る。 13Rd01-108.jpg 今年のメカニックスーツ。大きくは、色がオレンジからグレーに・・背中のロゴが新デザインに・・。

4月6日(土) 練習走行 /雨

爆弾低気圧とかで全国的な荒天は、ここ岡山国際サーキットも例外ではない。
霧雨の中、9時からの500/300の混走による練習走行も、開始直後こそ加藤選手はスリックタイヤで走行できたが、6周ほど走行後、高橋選手に代わった辺りから雨脚は少しづつ強くなり、すぐにインターミディ(浅溝レインタイヤ)、そしてレインタイヤ(深溝レインタイヤ)での走行となった。
しかし雨は激しく、スピン車両が続出、コースアウト車両の回収の為、幾度か赤旗でセッション中断となり、セッション最後に予定されていた10分づつの500クラス、300クラス各々の専有走行も、500クラスはキャンセルとなってしまう程の雨となった。
このセッションは、序盤の僅かなドライコンディションにマークしたタイムがベストタイムとなり、あまり大きな意味を持たないが、数回の赤旗中断があったとは言え、我々にとっては、ノントラブルで走り切れた有意義なセッションとなった。

13Rd01-138.jpg プラクティス・・走り出しこそドライコンディションだったが・・・。 13Rd01-138.jpg 30分もしないうちにウェットタイヤの出番。 13Rd01-503.jpg この日は終日しっかり雨!!
13Rd01-502.jpg 各所に水たまりもでき、足をすくわれる事も・・・。 13test03OK-240.jpg 今年から導入のアイテム。こういう道具を4箇所マシンの下に入れ・・・。 13Rd01-183.jpg その場でマシンの方向転換ができ、すごく便利。決して目新しいアイテムでは無い。

4月6日(土) 予選 /雨

今シーズンより全戦ノックアウト方式となった予選、15分間のQ1予選で上位13台を選抜し、その後12分間のQ2でグリッド順位を決定する。
練習走行からの雨は相変わらず降り続き、コースの各所に水溜りができ、Q1は10分遅れで開始された。
Q1を担当する加藤選手、タイヤを早く温める為、開始と同時にピットを離れる・・・が、それは各マシン同じ。
Q1開始早々、スピン車両が発生し、回収の為赤旗中断となり、アウト、インで戻る加藤選手だが、既に1周通過できたマシンもあり、今回のピットは、もっとも最終コーナーよりのピットの為、コースインまでも少し時間がかかり、その差が現れた。
Q1が再開されたが、なかなかグリップの上がらないタイヤに・・・
加藤選手「全然グリップしない!これ本当にソフト(タイヤ)?」という無線。
無論“今回用意”した中ではソフトである。
計測4周目の1′49″374で12番手。
僅かにグリップも上がり、更にアタックに入ろうかという所で、再び赤旗。
5分の中断の後、残り3分!で再開されたが“1ラップアタック”である。
各マシン、我先にとコースインするが、そうした焦りが、三度目赤旗を出す事となり、各マシン、タイムアタックにすること無くピットイン、そのままQ1は終了となり、12番手で辛くもQ2にコマを進める事ができた。

この雨は、次の500クラスのQ1にも、同様の混乱を生み、300のQ2が開始されたのは、当初のスケジュールから約1時間遅れとなった。
Q2を担当した高橋選手、2周ほど周回した辺りで・・・
高橋選手「ワイパー動かない!左で止まったまま!」
フロントウィンドウは撥水剤がコーティングされているとは言え、視界不良は必至。
しかしピットに戻り、点検する時間は無い。
高橋選手「このまま走る。」
タイムは52秒台から51秒台へ・・・51″412のベストで11番手まで上がるが、最終的には12番手(12番グリッド)となる。
その後500クラスのQ2は、天候悪化に伴いキャンセルされるほどの、荒天の予選となった。

13Rd01-232.jpg 予選開始は雨の為大幅Delay!! 13Rd01-504.jpg 加藤選手グリップしないレインタイヤに苦戦。 13Rd01-505.jpg 雨はピークに・・・。
13Rd01-247.jpg 赤旗、赤旗でセッションは分断。最後も赤旗で終了。Q1は12番手でQ2進出。 13Rd01-506.jpg 高橋選手の予選ではワイパーが途中で止まるトラブル発生。 13Rd01-274.jpg 予選終了で車検場から戻るマシン。確かにワイパーが左端で止まってる。

■予選後のコメント
■渡邊エンジニア「雨・・というかドシャ降りでなかなか難しい予選・・練習走行だったんですけど・・ある意味・・このクルマが来てから、一日・・初めて(ノントラブルで)完走しました。
・・・今回初めて分かった事もイッパイあって、ウェットでチャント時間を通してセッションを丸々走れたのも今回初めてなんで、そういった意味で、実際このセットアップの部分だとか、タイヤの使い方っていうのも・・ボクの個人的にも、ドライバーも含めて、クルマのセットアップも考慮して出来上がってないのが露呈しちゃったかな~。
用意したタイヤのポテンシャルを引き出せずに予選が終わっちゃったんで、ドライバー両名には苦労させちゃったかなと思います。
ただ予想していあたより柔らか目のタイヤが使えそうなクルマなんで・・そんな中(今回使用したのは)硬めのタイヤで・・・(短時間で)うまく暖められなかった・・という図式で終わっちゃったんですけど・・・予定より気温も下がって・・(このマシンに対し)色々と経験不足の部分が出ちゃったかなと思います。
極端にバランスが悪かったわけじゃ無かったんで・・その辺をアジャストしないで、明日のレースに臨みたいです。
当然レースも初めてなんで、今回の開幕戦で得られる情報・・経験値を皆で上げて進んでいきたいなと思います。」
■高橋選手「ま~ボロボロだね・・・タイヤもダメだし、ワイパーも壊れたし・・・○○選手にも負けちゃったし、△△選手に負けちゃったし・・・もうゆるせんわ。」
■加藤選手「気温と雨と・・・うちにとってはつらい状況になってしまって、(テスト時間は例年以上にとったが、トラブルで走れず)テストできなかったツケが、初めてここで・・・初めてじゃないですね。テストできなかったツケが回ってきました。
ただ・・・あしたは雨も止むということなので、気持ちを切り替えていきたいなと思います。」

4月7日(日) フリー走行 / 曇り

通常であれば、昨夕にピットワーク練習を行なうのだが、雨の為、早朝のピットワークシミュレーションを行った。
昨年までのスタッフと殆ど変わっていないが、マシンの変更に伴い、ピットワークも、いくつかのマイナーチェンジを行なう。
エアジャッキの位置、タイヤサイズアップにより、タイヤ交換時間、置き位置が変り、またガルウィングドア(左側、運転席)の開閉角度、給油位置等々、各スタッフの立ち位置が変わった事により、幾度と無く練習が繰り返された。

早朝までの雨も、フリー走行開始前には上がり、走行時にはレインタイヤか?インターミディか?という選択となる。
セッション終盤にはスリックを装着しコースインするマシンも出るなど、コースコンディションは徐々に回復していった。
このセッションは全て高橋選手に当てられ、途中レインからインターミディに交換も含め15周、これまでに無い連続走行を行なうことができ、38″881がベストだが、既にインターミディでは厳しいコースコンディションとなっていた。
続くサーキットサファリでも高橋選手がスリックタイヤでコースイン。
数台のバスが走る中、1周全てレースラップで走る事はできないが、走行時間が不足している高橋選手にとっては貴重なセッションとなる。
サファリ終盤、バスも退去しフリー走行となり、加藤選手により決勝想定のマシンのバランスチェック。
31″458の12番手タイム、トップグループは30秒台とそれほど遜色はなく、まだ全くセッティングが煮詰まっていないこのマシンとしては悪くはなく、決勝レースでは期待できる・・。

4月7日(日) 決勝 / 晴れ

フリー走行から決勝レースまでの間、日射しはあるが、小雨もパラつき、時折強い風が吹き、またサーキット上空は爽やかな青空をだが、周辺の山々は厚い雲に覆われ、周辺地域ではかなりの雨が降っているらしいとの情報も入るなど、予想が難しい天候。
しかし決勝レース直前のウォームアップ走行時では、完全ドライコンディションとなった。
2013年シーズン開幕戦、NEWマシン「エヴァRT初号機アップルMP4-12C」のスタートは高橋選手。
ウォームアップ走行では満タンながら、35秒台から33″442までタイムを上げ6番手と好調。
マシンに慣れるに従い、レースではまだまだタイムアップは可能だ。

13Rd01-309.jpg 昨日は雨の為やらなかったピットワーク練習。早朝のコソ練。 13Rd01-330.jpg マシンが変われば勝手も変る。 13Rd01-365.jpg 朝のフリー走行途中から天候は回復・・・
13Rd01-382.jpg 恒例のドライバー集合写真。こないドライバーにスタッフやきもき。このサーキット周辺以外は凄い雨になっているらしい。 13Rd01-422.jpg グリッドに向かう。日差しも強くなってきた。 13Rd01-448.jpg グリッド上の両ドライバー。今年はRQも一新。

定刻の午後2時、フォーメーションラップが開始されるが、隊列が整わず2周のフォーメーションの後、開幕戦スタート。
オープニングラップをポジションキープの12番手で通過した高橋選手、2周目32秒台、3周目ポジションをひとつ落とすものの、混戦の中団グループ中、32秒台と良いペースだ。
更に4周目の31″674のベストタイムをマークし、5周、6周目と31秒台を連発し、トップグループと遜色ないタイムを刻む。

7周目に入り、アトウッドカーブで86号車(ランボルギーニ)に、バックストレッチエンドのヘアピン立ち上がりで88号車(ランボルギーニ)と、2台にランボルギーニにパスされたあと、左パイパーコーナーでクリップに着こうとした瞬間、左側面に9号車(ポルシェ)が追突!
180度スピンしたはずみで、更に左前部も9号車と接触。
幸い、接戦中の後続車との二次被害は無く、損傷の確認の為一旦ピットに戻る事はでき、その間も走行に支障は無いようにも思われたが・・・。
外観的には、左側面(サイドシル部)と、左前部の衝突跡と左カナードの脱落だけかと思われたが、左前フェンダーの内側にある、インタークーラー用のラジエターが破損、大量の冷却水が漏れだしている。
交換しレースに復帰するには時間が足りない・・・。
テスト走行とレースでは、得られるデーター、また経験値は大違いである。
タイヤの磨耗度、燃費、そして何と言ってもドライバーのマシンに対する練度・・・。
リザルトを無視してでも、走行を続けて行きたい所だが、初戦、手痛いリタイヤである。

13Rd01-513.jpg 陽気で頼りになるメカ集団 13Rd01-509.jpg フォーメーション開始 13Rd01-510.jpg 序盤後方を集団を押さえ力走する高橋選手。
13Rd01-511.jpg この後、2台のランボに抜かれ・・・。 13Rd01-484.jpg 見た目は軽傷だが、ラジエターが破損・・・。

■決勝レース後のコメント
■渡邊エンジニア「終わってから言うんで“タラレバ”しか無いんで、言いたい放題言いますけど、(高橋さんの)ペースは意外と良かったと思うんですね。レース中にベストも出てるし・・・ドライのバランスも悪くなかったんで・・・ま~他車と接触するってアンラッキーがあって、レース終わっちゃったんで・・・・。
今、最後まで(TVライブ中継で)レース見てて、自分が想像してたより遥かにペース遅いんで・・・ま~残念だったかな。 ただ・・正直、今燃費の問題抱えてて、何か大きな打開策見つけないとレースは難しい状況なんで、そうした事を、次の富士の(500km)レースまでに詰める事ができるのか
・・?と言うのが次の課題になると思います。次も頑張ります。」
■高橋選手「何も話したくない・・・ボロボロだ。でもチャンと走れたらあるていど行けたんじゃないかと・・・でもだいぶ慣れてきた。クルマに・・。
レースで走っとるのと練習で走っとるはだいぶ違うでな~・・・(あのマシン)意外と行けるよ。」
■加藤選手「今週通して、だいぶレースを戦うにあたっての準備が少しづつ整ってきたかな・・・今まで分からなかった事が、見えてきたってのもあって・・・レースに臨んだんですが・・・高橋さん、序盤からペースは良くって、これは期待できるかなって思ってたら、残念な事に・・追突されて・・ぶつけられて・・・ラジエターが壊れ・・残念だったんですが、何か少し光が見えてきたかな・・・って、なので次の富士はもう少しうまくまとめてがんばりたいと思います。」