モータースポーツ

SUPER GT第6戦 富士スピードウェイ

GTレースレポート
2013年09月20日

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SUPER GT第6戦 富士スピードウェイ

各地に局地的大雨や突風をもたらした、台風崩れの低気圧も去った富士スピードウェイ。
我々も、このレースウィークではこうありたいのだが・・・。
シリーズ戦も残すところ3戦、未だノーポイント。
今となっては「NEW」というのもおこがましいが、NEWマシン「エヴァRT初号機アップル・MP4-12C」もシーズン序盤の不調を少しづつ克服、更に7月末からの過密テストスケジュールを挟み、真夏の3連戦も“何とか”完走。
その甲斐あって、多くデーターを得ることができたが、車体、エンジン、タイヤ等々、今になって良くも悪くも色々見えてきた。
しかし見えたからといって、即改善に繋がるというものでもない。
エンジニア、メカニックの、アイデイアと技術を取り込む余地の無いFIAGTマシンのジレンマである。
英国から、遠く離れた日本で唯1台走るマシン、燃料、気候を含めた各サーキットのコンディション、SUPER GTというレース形態等々、彼らにとっても見えない部分・・・共にレースをやって見えてきた部分はあるのだろう。
試行錯誤を繰り返し、この日本のシリーズ、今レースに合わせこんできている。

またタイヤにおいても、チャンピオン争いで、タイヤ4メーカーがトップ4を占める激戦状態の現状で、ノーポイントチームの希望に沿うタイヤを用意できるわけではない。
今はベストよりベターで挑むしかないが、悔いのないレース、そして次のレースに期待が持てるレースウィークにしたい。

9月7日(土) 練習走行 / 晴れ

今回のプラクティスは、用意された新しい(ベストではないがベターな)タイプのタイヤへの合わせ込み・・・というより、このタイヤでタイムを出すべく走り込みとなる。
加藤選手、まずは1′41″164を出し暫定3番手と走り出し好感触。
その後ダンパー、車高を触り再度アタック。
各マシンもタイムアップし、先のベストタイムも既に9番手となるが、40″728のベスト更新で6番手に浮上。
更にこの時の第3セクター(コントロールライン手前3分の1の区間)タイムはクラスベストタイム。
そのままアタックに入り更にタイムアップを狙ったが、マシントラブル車両が出た為、赤旗となりアタック中止。
この機会に高橋選手に交代。

高橋選手も、集中8周計測で43秒台から42秒台へ・・・。
一旦ピットに戻り、周回の少ないユーズドタイヤに代え、予選シュミレーションのアタックへ・・・。
すぐに42秒台から41″325の自己ベスト!そして42秒台連発の安定した周回を重ねる。
最後の300占有走行時間では加藤選手が“本命タイヤ”で予選に向けた最終チェックを行い、40秒台で周回。
“ベター”とはいえ、両ドライバー共このタイヤの手応えは悪くない。

9月7日(土) 予選 / 晴れ

午後2時、上位13台が進むQ2進出へ向けたQ1予選が始まる。
Q1担当の加藤選手、しばらくピット前で待機、他のマシンの様子を見る。
15分間のセッション開始から約7分後、ターゲットタイムを見定め、ゆっくりとピットを離れる。
タイヤも温まった計測2周目40″016のベストをマーク!!4番手。
翌周もアタックをするが・・・前を行くマシンとの距離をうまく保てず、場所によってはややつまり、結局不発・・42秒台、アタック終了。
7番手でQ1突破、今季最高位、第3戦セパン以来のQ2進出である。

プロの加藤選手とのベストタイム差がプラス1.3秒と、乗れているアマの高橋選手、12分間のQ2に挑む。
計測2周目、すぐに42秒台をマークし、全走者に詰まった翌周は流しクリアラップを作り、叩き出したタイムは41″252!!ベスト更新、8番手。
更なるアタックでは41″603、41″547・・・と立て続けに41秒台とするがベスト更新はならず!!
このタイヤが決勝スタートに使われる可能性もあり、アタック終了。
40秒台を目指した高橋選手、ややフラストレーションがたまる物の、連続41秒台の周回は決勝レースでの大きな自信となるだろう。
最終的には11番手・・・今季最高位のスターティンググリッドを獲得、明日8日の決勝レース、久々のシングルリザルトを目指す。
■予選後のコメント
■高橋選手「 ちょっと自分の思ったほどは行けなかった。まぁいろいろ考えてやったんだけど・・・決勝はもうちょっと頑張りますから。あと2つ位前に行きたかったけど・・・無理でした。」
■加藤選手「 ここまで非常に苦戦したレースが続いていたんですけど、富士、鈴鹿、オートポリスとで、いろんなテストメニューをこなせて、ようやくスタートラインに立てたのかな・・・っていう位の車のポテンシャルになってきました。今回の決勝は天候がまだちょっと読めないところがあるんですけど・・・せっかくここまできたんですから.今回はなんとか、ちゃんとポイントを取って次のレースに繋げたいなと思います。」
■渡邊エンジニア「 ここ来る前に、オートポリスのテストに行ったんですけど、そこでいろいろ車の自体の見直し、タイヤの種類・・選択して新たにテストできたっていうのが功を奏して・・・今までかなり頑張ってもタイムが出ない状況だったんですけど・・今回(Q1予選)、最終的に加藤選手が7番手に終わったんですけど、 TOP3が見えるくらいのパフォーマンスが・・ちょっとでてきかな・・まだバランスが取りきれてない部分もあるんですけど・・・まぁそれらが好材料だったかなと思います。高橋選手も41秒台でラッブしたりとか・・・、まあ全体的にチームの底上げってのもできてきたので、決勝に向けて上手く纏めれたらなぁと思います。心配なのは天気だけです。頑張ります。」

9月8日(日) フリー走行 / 雨

予報通りの未明から降り出した雨は、朝には一旦上がるものの、フリー走行が始まる頃には再び降り出した。
路面完全ウェットながら、インターミディ(浅溝)か?レイン(深溝)か?二社択一のコンディションと言った感じ。
マシンは少しレイン方向にセッティングを変える程度で、昨日と大きく変更する物ではない。
レインでコースインした加藤選手だが、直ぐにインターミディに交換、53秒台の2番手をタイムをマークしたところで赤旗が出たので、これを機会に高橋選手に交代、残り20分程のフリー走行を走り込む。
コースコンディションが良くなった事もあり上位は50~51秒台となる中、高橋選手も53秒台までタイムアップする。
サーキットサファリでは先に加藤選手がコースイン、途中高橋選手に交代ピットシミュレーションを行う。
マシンのバランスは昨日に続き悪くない。
決勝レース時刻は晴れ予報、これと言った不安材料も無く、“特に何か?”が起きない限り、堅実にレースを運べばそれなりのリザルトは期待できる・・・はずだ。

9月8日(日) 決勝レース / 晴れ

先のシミュレーションの通り、加藤選手でスタートをむかえる決勝レース。
日差しもあるが、雲も有り、雨の可能性もなくも無いが、スタート時点ではとりあえず完全ドライ、定刻午後2時、1周フォーメーションラップからレーススタート。
1周目前半は、一つ前の30号車(GT-R)との接戦となるが、パワー勝負のヘアピン立ち上がりで離され、続くBコーナー(ダンロップコーナー)までに、追いつかれた86号車(ランボルギーニ)と48号車(GT-R)に左右から抜かれ、オープニングラップは13位へとダウン!更にロングストレート途中で並ばれた87号車(ランボルギーニ)にも1コーナー進入で抜かれ14位と厳しいスタートとなる。
「エヴァRT初号機アップルMP4-12C」、前戦の第5戦鈴鹿から搭載燃料が増えている。
これまでは標準装備の130リッタータンクに、詰め物をして容量を減らし、レギュレーション上の110リッター(JAFGTマシンは100リッター)だったが、搭載燃料タンク容量そのまま使用して良い事となった。
これにより、満タンでの走行周回が増え、残り周回分の給油時間を短くする事ができ(逆も可能)作戦の幅が広がる事になる。
燃料消費の大きいFIAGTマシンと、燃費の良いJAFGTマシンとの給油時間の差を少なくする為の調整であり、JAFGTマシンは給油ホースも途中で絞られ流速が遅くなっている。

この搭載燃料が多くなった事を活かし、満タンスタートの加藤選手で、カラになるまで目一杯引っ張り、残り周回数分だけの給油にしピットストップの時間を短縮する。
満タンスタートで40周以上のロングランに向けひた走る加藤選手。
燃料が軽くなる事と、タイヤが摩耗してくる事が相殺されても、終盤になって大きくラップタイムが落ちる事があるが、加藤選手のタイヤマネージメントは最後までタイムを落とさず、先行車がピットに入った時にタイムを上げ、コース上でのバトルを避け、タイヤへの負担を減らす巧みな走りで、他のマシンのルーティンピットを終えた時点で順位をあげている。

タイムはほぼ42~43秒台でラップ、不要なバトルを避け順位をキープ・・実際にはトラブル等でピットに入るマシンがあり順位は上がって行き、13周目12位、15周目11位へと上がる。
直ぐ前を行く5号車(GT-R)にテールtoノーズとなり、やや蓋をされている感じでタイムが上がらない。
GT-Rはトップスピードで勝り、なかなか抜けない。
16周目プリウスコーナー手前で、一旦前に出るが、ストレート、コントロールライン過ぎで抜き返される。
このラップを勝負所とした加藤選手、1コーナーで喰らいつき、Aコーナー進入でイン側、縁石をシッカリ使いサイドbyサイドから前に出る。
100Rからヘアピンでリードを広げ、パワー勝負となる次のBコーナー(ダンロップコーナー)までのマージンを稼ぐ。
これまでと違うアグレッシブなドライビングは功を奏し、ストレートで追いつかれないリードを稼ぎ、逃げ切りに成功、ポイント圏内の10位に浮上し先を急ぐ。
レース序盤、上位グループは膠着状態が続く。
その流れに転機が訪れたのは18周目、ストレート上500クラスの32号車がタイヤバースト!コースサイドのガードレールに衝突して停車。幸いドライバー、道上選手は無事!
バーストタイヤがフェンダーを破損させ、破片がストレート上に散乱し、その処理の為SC(セーフティカー)が導入された・・・っが、これがこのレースの明暗を分けた・・・と言うより、我々の場合はレースを失ったと言ってもよい。
SCが入った場合、数周はスローな先導走行となるので、この時に“予定している”ピット作業を済ませるのが断然有利なのである。
スロー走行のSC隊列から一旦離れピットインし、作業を終えて隊列の最後尾に着いても同一周回で復帰する事ができる。
勿論各マシン間のリードも無くなってしまい、レースはリセットされる。

ストレート上で一旦クラス別に整列後、SC先導走行で再スタート。
この後ピットレーンオープンとなり、両クラス含め20台近いマシンがピットになだれ込む。
戦場と化したピット前、だがそこには「エヴァRT初号機アップルMP4-12C」はいない。

ここでピットインし、燃料を満タンにしたとしても、予想される残り周回数(恐らく42周)を走り切れないからである。
SCのタイミングが後2~3周遅ければ、当然ピットインをしている。

22周を終えレース再開、順位は4位に上がっているが、「砂上の楼閣」・・・落ちて行くことは目に見えている・・が、その後もピタリと判で押したように42~43秒台を刻みつづける加藤選手・・・レースはまだ何が起こるか分からない。
20秒後方には“既にピットを済ませた組”のトップ4号車が、41秒台で追い上げて来ている。
“ピットを済ませていない組”10台がこれらに飲み込まれるのは時間の問題だ・・・ところが25周を過ぎた辺りで、僅かに雨が落ちてきた。
この雨が本降りになり、レインタイヤへの交換が必要になればまだ勝負は判らない。
先にピットインを済ませたマシンももう一度ピットインが必要となる。
我々は、ルーティンピット時に、一度で済んでしまい、反対に有利となる。

しかしその雨は、降ったり止んだりを繰り返すものの、レインタイヤにするほどの降りにはならず、タイムも38周目には42″252のベストをマークするほど・・・。
SC時にピットインしなかったマシンも30周を過ぎた辺りからピットインを始め、40周目には我々は見かけ上トップとなる。
そして42周を終え、予定通りピットイン、加藤選手から高橋選手へ交代。
タイヤは4本交換、給油は通常のフルチャージに比べ20秒ほど短縮し、コースに復帰した時点で13位。
後半スティント序盤、45秒台から44秒台・・そして43秒台へと、加藤選手と変わらぬペースで快走する高橋選手。

だが後方から30号車(GT-R)が42秒台で追い上げてくる。
その差も、47周目プラス6秒、50周目プラス3秒と、毎ラップ約1秒づつ詰められ53周辺りでテールtoノーズとなるが、何とか抑える。
しかし55周目、Bコーナー手前ブレーキングで左側から先行を許してしまい14位へと下がるが、以後もモチベーションを落とす事なく43、44秒台の好走を続け、トップから1周遅れの61周、14位でチェッカーを受ける。
このレース、ドライバーもピットワークもミスはなく、レースラップも悪く無い。
マシンもノントラブル、タイヤもベストでは無いが良いバランスで走り切る事ができ、今シーズン最高の“無難”なレースができ、充分ポイント圏内に届く要素は有った。
しかしSCのタイミングが明暗を分けてしまった・・・こればかりは“運”としか言いようがないだろう。
だがこのレースで、長いトンネルの出口の明かりが見えてきた・・・そんな充実感を感じるレースだった。

次回はアジアン・ル・マン富士。
SUPER GTのシリーズ戦では無いが、ポイントも付与される。
この勢い(という程では無いが・・)で今シーズン、初ポイント獲得を目指す。

■決勝レース後のコメント
■高橋選手「 なんとも言えんね。うんまぁ今日ぶつからずにも済んだし、何とか走りきった。 SCでレースはグチャグチャなっちゃったね。途中、雨降ったりたりなんかして、(いつドライバー交代になるかわからなかっので)何回も、ヘルメット被ったりしてたけど、結局ズーッと被ってた。(笑)次のアジアンルマンの練習にはなってたね・・・今日は。」
■加藤選手「 レースですが、スタートはドライ行けて・・・降らないかなぁと思ってたんですけど、途中で降り始めたりして、荒れたレースになりました。レースらしいレースが出来て非常にペースも良かったですし、ちょっと今回は上位でフィニッシュできるかと期待してたんですけど・・タイミングが悪く、どうしてもうちがピットに入ることができない時にセーフティーカーが出てしまって・・・それが結局・・・まぁそこで入らなかった(入れなかった)車が全部下に沈んでたんで、そういう意味ではなかなか運が無かったですけど・・・でもレースを戦っていく上には、今回非常に手ごたえもありましたし、次戦以降、上位でフィニッシュできるかなーって言う手ごたえがつかめてきたんで、またこの次頑張ります。」
■渡邊エンジニア「 前回のレースも今回のレースもセーフティーカーが出たっていうのがキーになったんですけど、前回は燃費の問題があって、入らざるえないって言う背景があったんですけど、今回は入りたくても入れない・・・というのは燃費が他のクルマより、ターボカーってこともあって悪く、あの周回数だと、ドライバーがゴールまで走りきるだけの燃料入れられない・・つまりもっとガソリンを減らしてからでないと最後まで走り切れないと言う背景がありまして、結果的にセーフティーカーがアウトしてからもそのまま走り続けたと言う・・・まあほぼそれが全てですね。高橋選手のラップタイムも、ここだんだん・・車もまとまってきた関係もあって、決して大きくは悪くないんですけど・・・まあ、戦ってる相手がプロプロ(のペア)だったりもしてるんで、今の状況だとポイントを取ると簡単に言っても、難しいかなぁと思います。今回もセーフティーカーで大きく明暗が分かれてしまったっていうのがあって、我々としてもいかんともしがたいというのがありまして・・・まぁあのタイミングで入れても結局もう一回入らなくちゃいけないので、結局ほぼ今回のレースはあのタイミングでこういう結果になるべくしてなっちゃったんでしょうね。それ以外のレースのやり方としては、加藤選手がロングスティント走るっていうことで、前半はちょっとタイヤを守りながら、後半ちゃんとベストタイムで帰ってくるって言う、そう言うマネージメント自体は良かったと思いますけど・・ちょっとSCで歯車が狂っちゃって、なかなか結果が出せなかったって言う感じですね。途中雨が降ったんですが、特に大きな問題はなかったんで・・・。次にアジアンルマンと、富士が続くので、今回色々とまた好材料があったので次の走りに活かせればなと思います。」