モータースポーツ

2014:SUPER GT第4戦 スポーツランドSUGO

GTレースレポート
2014年08月10日

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7月18日 設営日

第4戦はSUGOスポーツランド、今日設営日は、雨のちくもりという事もあって、グッと涼しい22~23度。
6月から7月は中止となった韓国戦が予定されいた為、第3戦オートポリスから1ヶ月半以上と、大きくインターバルが空いた。
その間、ここSUGOも含め、公式テストが2回開催され共に参加した「シンティアム・アップルMP4-12C」。
データー収集も十分(これはいくら走っても十分とはならないが・・)、特にSUGOテストでは、高橋選手は2日目、約100周を一人でこなし、走り込みも十分・・・と思いきや、本人は新たな課題も見えてきて、SUGO攻略の難しさを再認識したとの事。
マシンはその2回のテスト含め、今シーズン、ほぼノントラブル。
走行に「穴」を開けない事は勿論、タイム的にも常に上位クラスのパフォーマンスを見せる好調ぶり。
明日のプラクティス、予選の土曜日も雨予報と、今シーズン公式戦では初のウェットセッションとなりそうだが、雨、霧のSUGO・・・(ご覧になる方には)面白いレースが期待できそう。

7月19日 プラクティス・予選

午前:プラクティス 雨/ウェット
小雨のSUGOスポーツランド・・幸い霧はそれほどではないので、定刻9時からプラクティス開始、タイヤはレイン。
加藤選手からの走り出しで33秒台・・そして32秒台・・あまり思わしくないようで、トップは既に29秒台に入っている。
雨は降ったり止んだりを繰り返す中、インターミディ(浅みぞレインタイヤ)が良いと判断、交換する。
加藤選手は1′29″308のベストタイムで、一時2番手に・・・だがトップは61号車(BRZ)27″139と飛び抜けている。
その後高橋選手に交代。
雨は、相変わらずの降ったり止んだりで、そんな中、加藤選手と同じインターミディで、29~30秒台の安定したタイムの高橋選手・・・どころかセクター1では、加藤選手を上回るタイムをマークする快走を見せ、ベストは29″661。
雨は時々強く降ることもあり、終盤インターミディからレイン(深みぞレインタイヤ)に交換。
変化を伴うウェットコンディションにおいては、タイヤのキャラクターの差が出るもので、トップは61号車(BRZ)ミシュラン、2番手は0号車(CR-Z)ブリジストンが共に27秒台、3番手は3号車(GT-R)ヨコハマと続き、我が2号車は6番手となった。
そうした中、深みぞ、浅みぞ4種のウェットタイヤを試す事ができ、おそらく同様のコンディションになると思われる、午後の予選に向けた貴重なデーターを得ることができた。

午後:予選 雨/ウェット
予想通り変わることの無いウェットコンディションとなった予選セッション。
まずは上位13台を選出するQ1予選に挑むのは加藤選手・・・定刻の午後2時が迫り、マシンに乗込み開始の合図を待つ。
ところが開始直前、にわかに霧が濃くなり視界不良となった為、スタートDelay・・・しばらく待つが、視界は一向に回復しない。
審査委員会の判断で、2時30分まではスタートは無いとの事で、一旦マシンから降りる加藤選手。
その後、時折霧が薄れる事もあり、予選が開始されるかと思われたが、再びコースは濃霧に覆われ、再びDelay・・・。
雨の中、GTマシンのコースインを待つ多くの観客・・・だが、3時になっても晴れない霧、回復しない視界に審査委員会は今日の予選中止を決定。
明日決勝日の朝、通常のフリー走行を予選に変更する事となった。

7月20日 フリー走行(予選に変更)・決勝

午前:フリー走行(予選に変更) 雨/ウェット
雨で朝を迎えたSUGO。
昨日行われるはずだった予選が、視界不良の為キャンセルとなったので、通常9時からのフリー走行が予選にあてがわれる事になった。
300・500両クラスそれぞれ25分間、2名のドライバーのいずれか1名のベストラップでスターティンググリッドが決められる。
昨日のプラクティスでは、ウェットコンディションの中、高橋、加藤両ドライバー共、好タイムをマークしたものの、今日の様な刻々と変化する路面コンデションの予選、プロドライバー加藤選手に期待したい。
雨量は昨日と殆ど変わらないが、霧は薄れ視界は良好、定刻9時5分、予選開始!全車一斉にピットを離れる。
全車レインタイヤであるが、深みぞ、浅みぞ(インターミディ)、何をチョイスしたか?各チームこのコースコンディションの捉え方は様々・・・。
深みぞレインでコースインした加藤選手、計測2周目1′31″936!!・・・11番手・・手応え弱し!!
加藤選手「ハードに換える!!」
こうした条件下、ピット内は組み込んだレインタイヤは全て待機、いつでもタイヤ交換に対応すべくメカもスタンバってる。
それは、他のチームも同じで、ピット前が“戦場”と化すこと必至である。
ピットに滑りこむ2号車、加藤選手、タイヤ深みぞハードに交換、ピットを離れる・・・1周しアタックに入る。
渡邊エンジニア「残り時間12分!」コースコンディションの変化、タイヤの温まり、グリップ、それらを総合判断し、このタイヤで行くか?もう一度交換するか?・・残るチャンスは1回、それらは加藤選手に委ねられる。
2周のアタックは32秒台!全くダメ!!
加藤選手「インター!インター(ミディ)に換える!!」
予想以上に水は少なくなってきている。
計測1周目は33秒台・・・タイヤも温まり翌周30″273!19番手。
渡邊エンジニア「残り4分!3周は行けると思います!!」
セッション後半に入り各マシン、ドンドンタイムが上がり、上位は既に28秒台。
29″909とタイムアップするも20番手。
更に28″979と一気に短縮するが16番手・・・直後に500クラスに切り替わり、この周回が最終アタックとなりコース前半セクター1までは更新したが、後半が伸びず29″093、最終的には17番手でそのままグリッド位置となった・・・基本的に昨日と同じセッティングで挑んだものの、今日のコンディションは微妙に異なっていたようだ。
終わってみれば、トップは10号車(メルセデス)ダンロップ、2番手61号車(BRZ)ミシュラン、続いて11号車(メルセデス)ダンロップ、0号車(CR-Z)ブリジストンの4台が27秒台、5番手からはヨコハマ勢と、タイヤのキャラクターがクッキリと現れる予選結果となった。
その5番手33号車(ポルシェ)の28″005から17番手の加藤選手までが28秒台で、1秒内に13台が入る激戦となった。

午後:決勝 くもり/ドライ
予選から決勝までのインターバルに行われた、ポルシェカレラカップはまだウェットコンディション。
ウェットコンディションの時は、両ドライバー、エンジニア、メカもこうしたサポートレースも熱心に見ている。
コース全周に渡っての路面状況が分かるからである。

雨は徐々に小止みとなり、ウォームアップが始まる、スタート1時間前の午後12時50分には完全に上がった・・・かにみえた。
コースは・・・少なくともピット前は濡れているので、ウォームアップは殆どのマシンがインターミディでコースイン。
2号車「シンティアム・アップルMP4-12C」のスタートドライバー加藤選手は、数周の後、皮剥きの為、このレース初めてドライタイヤをはいた。
現在はまだ濡れており、また太陽もみえず、空全体が雲に覆われドライタイヤは微妙なところだが、スタートは1時間後という事もあり、全車ドライタイヤでグリッドに着く事となった。
グリッド上へは各チームウェットタイヤを持ち込み、スタート直前(5分前まで交換可能)まで待機。
ドライタイヤは“事前にマーキングされたタイヤ以外に変更する事はできない”ので、ドライタイヤでグリッドに着いたチームが、別のドライタイヤを準備する事はない。
アナログ的に雲の動き、風の動きを感じ、またスマホで雨雲の動き等からこれからの天候の変化を予測・・・少なくともグリッド上でのレインタイヤへのチェンジは無くフォーメーションラップ開始と同時に小雨が・・・濃い霧雨といったところか?・・・降ってきた。
どうする!!といってもフォーメーションに入った以上はどうしようもない。
1周のフォーメーションは隊列が整わず1周追加され、その間に路面はシットリ・・・。
これはインターミディか?っと、このSC(セーフティカー)走行の間にピットに入りインターミディに交換したマシンがいくつかあった。
フォーメーションは更に1周追加され3周目に入る。
その3周目、SCが退去、レーススタートなる。
と同時に加藤選手もインターミディに交換と判断・・・ピットに入る。
上位グリッドならともかく、今回の様な下位グリッドからの起死回生を狙うには賭けが必要だ!!吉と出るか凶と出るか!!
だがこの周回(レーススタートと同時)でのタイヤ交換はグッドタイミングで、前の周回でタイヤ交換を行ったマシンは、レギュレーション違反となりペナルティを受けることとなった。
マーキングタイヤから、他のタイヤへ交換するのは❝レーススタートの合図があってから❞となっており、フォーメーションラップ中は交換できないのである。
スタート直後、何台かのマシンもタイヤ交換に入り、コース上はスリックで前方を走るマシンと、インターミディに換えて追い上げるマシンとが混在する形となり、このまま雨脚が強くなれば、順位がガラリと入れ替わる・・・はずであった。
オープニングラップ、「タイヤ無交換組(ドライタイヤ)」と「タイヤ交換組(インターミディタイヤ)」とは30秒~40秒の差がついたが、2周目、ドライタイヤ勢36~40秒台に対しインターミディ勢は30秒を切っている。
これは追いつくかと思われたが、3周目には雨は上がり、路面コンディションはドライ方向に・・・!!
ドライ勢33~35秒台、インター勢27~30秒台・・・4周目には殆どインターミディの優位は無くなり、共に29~31、32秒台となってしまった。
このまま雨が落ちてこなければ、インターミディはタイヤが壊れてしまう(ボロボロになる)だけである。
5、6、7周、26~28秒台となったドライ上位グループ、30秒を切れないインター勢、賭けは完敗。
8周を終え、ピットに入ってきた加藤選手、ドライタイヤに交換し戦列に戻るが、このピットストップにより早くも周回遅れ、21位となってしまった。
スタート直後にインターミディに交換したマシンも、全てドライタイヤにチェンジ、無駄な2回ピットストップで、レース序盤にして、完全に「勝ち組」と「負け組」が別れてしまった。
ドライタイヤに換え10周目18位、11周目16位まで順位を上げる。
15位は33号車(ポルシェ)で先の表現で言えば、失礼ながら「負け組」で、加藤選手と同タイム、22~24秒台で、4~5秒前、差は詰まらないが、共に追撃の手を緩めない。
14位はポールスタートの61号車(BRZ)、こちらも「負け組」だが、フォーメーションラップ中にタイヤ交換を行った為、10秒ストップのペナルティを受け更に下位に沈んでしまい、2号車は15位に上がるが、「勝ち組」最後尾と思われる86号車(ランボールギーニ)とは約50秒、トップとは1周+30秒と、大きく水を開けられてしまった。

冷静に考えて、この遅れを取り戻すのは、天候の急変、SCが入るアクシデント等何か起こらない限り不可能だろう・・・。
だがレースは何が起こるか判らない。(もう起こってしまった感はあるが・・・)
その「何か」に備え、ひとつでも順位を上げ、1秒でも差を詰めるべく、22~23秒台と上位グループと変わらぬペースでラップを刻む加藤選手。

35周を過ぎた辺りからルーティンピットが始まり、上位グループは“1回目”のピットストップ、タイヤは勿論ドライ。
35周目14位、36周目13位と見かけの順位上がると同時にペースも21~22秒台へと上げる。
49周目6位に上がったところで、「ローフィーエルランプが灯いた!!」と言う事で緊急ピットイン。
タイヤ4本、勿論“ドライ”に交換、給油で高橋選手をコースに送り出す。
アウトラップで16位。
ところが、この50周を過ぎた辺りから再び小雨が降ってきて、54~55周目、トップグループは25~27秒台と雨がタイムに現れ始め、その後30秒台へと更にペースが落ちる。
残り周回は約20周・・・再びレースを混乱に陥れる事となった。
先の「負け組」を始め、ポイント圏外のマシンは、再びインターミディへのタイヤチェンジを行い、起死回生の勝負に出る。
25、27、30秒台へとペースの落ちる2号車、高橋選手「グリップしないが、何とかガンバル!!」
だが58周目、ドライタイヤでグリップを失ったマシンに、2コーナーで追突されスピン、これは以上は無理だろう判断しピットに呼び込む。
タイヤのみインターミディに交換。
ジャッキダウン!!誘導のメカが、指を回し、エンジンスタートの合図を送る。
だがスタートしない・・・どうした?!
ニュートラルでエンジンはかかるが、ギアを入れるとエンスト。
クラッチが切れなくなったようだ。
ギアを入れたままスターターを回し、そのままスタートを試みるが、それだけのパワーが無い。
ピットに入れ、点検をするが応急処置でも対処はできない・・・リタイヤである。

その後雨は止むことは無かったが、インターミディが有利になる程のコンディションとはならず、レースが終わってみれば、上位陣(1~6位)は、雨に全く翻弄される事無く、ピットイン1回のみで、タイヤはドライで貫いた。
優勝した88号車(ランボールギーニ)はタイヤすら交換しなかった。
下位に沈んだチームは、我々を含めタイヤを4回も交換する“タイヤ祭り”となった。
同じサーキット、同じ時刻で、同じ気象をどう読んだかでこの違い。
今回は惨敗となったが、過去のレースでは恩恵を受けた事もある。
こういう事もあるから、レースは、見ても、やっても面白いのかも・・・。

画像はFacebookアルバムで・・・。