モータースポーツ

2014:SUPER GT第7戦 Chang International Circuit

GTレースレポート
2014年10月20日

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9月30日-10月1日 移動・設営初日

8月末の第6戦鈴鹿Pokka1000に続く第7戦はタイで開催されるのだが、輸送の兼ね合いで(F1の様に空輸ではなく船)1ヶ月ものインターバルを経て10月4・5日に開催される。
サーキットはタイの、ブリーラム県のChang International Circuit。
できたばかり・・・というか一部の施設はまだ工事中のサーキット。
FIAの認可もつい先日おりたばかりで、最初のレースのがこのSUPER GTとなる。
設営の為、メカスタッフ等10名は9月30日、日本を出発、約6時間の飛行機でまずバンコクへ、そして大型バスで約6時間400kmの道程でサーキットに移動、更にワゴン車に乗り換え1時間、ようやくホテルに到着、既に現地時間(時差-2時間)で日付は変わっている。
翌10月1日サーキットに行き、搬入、設営作業が行われるが、まだ一部が完成していないサーキットの為、工事関係者や、週末のレースに向けた各種ブース設営現地スタッフ、そしてGTレースチームスタッフと、なんだか慌ただしいパドック。
各種施設は“突貫工事”感が漂うものの、新しく素敵なサーキットである。
本日は搬入と、おおまかな設営のみで明日からは、レースに向けたメンテンナスが行われる。

10月2日 設営2日目

設営作業2日目は、昨日からの続きに加え、いつも通りのレースに向けたメンテナンス。
また、全くのNEWコースの為、下見の為コースが開放されたのでスタッフでコースウォークに出る事ができた。
コースはストレートと小さなコーナーを組み合わせたストップ・アンド・ゴーサーキット。
高低差は殆ど無く、アウト側は砂利のグラベルもあれば舗装部分もあり、インフィールド部分は元々、池と思われる部分が何箇所かあり、降雨時の調整池になっているのかもしれない。
昨晩辺りからここブリラムに到着したドライバーや、タイヤメーカーのスタッフもコースを歩き路面状況を確認している。
マシンも通常のメンテナンスに加え、ここタイ向けのカラーリング・・・といってもステッカーの追加や変更が行われ、通常より1日早い明日金曜からのプラクティス(練習走行)向けほぼ準備は整ったが、明日の走行が始まったら、かなり忙しくなる事だろう。

10月3日 フリープラクティス / 晴れ

設営3日目・・・ではなくフリープラクティス
今のSUPER GTは基本的には、土曜日の午前プラクティス、午後予選セッション、そして日曜日午前フリー走行、午後決勝レースという2デイレース。
だが今回は、ドライバー始めエントラントは勿論、オフィシャル等運営側も初めてのサーキットという事もあり、本日金曜日の午後から2時間のフリープラクティスが設けられている。
ターゲットタイムは判らないが、まずは加藤選手がアウト・インでマシンチェック。
この後は15分程ピットで待機・・・というのも、このレースウィークで使用するガソリンが予定通り入手できないことが判明。
このプラクティスをきっちり2時間走ると、決勝レースで不足する可能性があるので、まだ“路面が出来上がらない”セッション序盤を走らないことにしたのである・・・(結果的には意味が無かったが・・)
その禁が解け、走行再開、既にトップは1分38秒台に入っており、とりあえずここらがターゲットタイムとなる。
44、42、39秒台とタイムを上げる加藤選手、38″605のベストでとりあえず2番手と上々の走り出し。
走り易いコースという印象の加藤選手だが、低速コーナーにおける若干のアンダーステアを解消すべくピットイン、車高を調整再びコースへ・・・。
ところがその直後から「パワーが無い!!」との無線が入る。
確かにトップスピードが、これまでの240km/h台から一気に220km/h台に落ちている。
一旦ピットに戻り点検、ロガーでは水温が高い為、冷却系のチェック・・・と同時に、予定より早いが高橋選手に交代。
まずはコースに出ると出ないではイメージトレーニングでも大違い。
マシンチェックを兼ねて、高橋選手がコースへ出るが、やはりパワーが無い、トップスピードも220km/h台。
再びピットインし冷却水のエア抜き始め、冷却系の徹底チェック。
先のピットインを含め約50分を費やし、高橋選手がコースイン。
するとトップスピードも240km/h台に回復、高橋選手のタイムも45、43秒台と上がり始め、41″650までで一旦ピットイン。
まだまだタイムは上がるが、残り時間も約10分となり、明日の公式セッション用の6セットのマーキングタイヤを決めるべくタイヤテストをこなさなくてはならない。
NEWタイヤを履いてコースに出た加藤選手、タイヤを温めた2周目、バックストレッチ後の左4コーナーで、何と単独スピン!コースアウトしグラベルにはまりストップ。
レスキューが入るが、もう残り時間もなくなりチェッカー後に引き出され、自走でピットに戻る。
マシンにダメージは無いものの、既に他のマシンのタイムは上がり、トップから9番手が35秒台、17番手までが36秒台に入り、序盤の暫定2番手タイムも最下位となっていた。
出来立てのコース、舗装したてのコース、明日も走り込むほどに路面コンディションも変わり、ドライバーの慣熟度も上り、更にタイムも上がるだろうが、我々の感触は悪くない。
若干の出遅れ感は否めないが、追いつく事はできるだろう。

10月4日 プラクティス・予選 / 晴れ

プラクティス
本日も快晴。
陽射しは強くピット裏のホスピテントは暑く、とても居られた物では無く、各チーム手持ち、レンタルの機材を使って何とか使える様にするか?諦めて機材置き場等に利用するか?使い方は各チーム様々・・・当初の目的通りには使えないようだ。
それとは反対に、暑いものの、日陰・・・特にピット内は意外に涼しくて快適。

午前8時からは公開車検。
まだSUPER GTの認知が低いのか?この時刻での動きがないのか?日本と異なりそれほど多くの、観客は訪れない。
10時からは公式練習。
加藤選手からコースイン、45、40、38秒台と順調にタイムを上げ、38″120のベストタイムでまずは5番手。
マシンのバランスは悪くないので高橋選手に交代、計測6周の8周して41″587・・・両ドライバー共、昨日の自己ベストは更新するものの僅か。
その後は加藤選手に交代し、昨日試せなかったハードタイヤで、36″863までタイムアップするも、このタイムでは既に16番手。
他のマシンは更にタイムアップ、トップは34秒台、9番手までが35秒台にまで上げてきている。
同じタイヤで高橋選手は40″590まで上げるが、直後に前方にスローペースのマシンがいたので減速したところ、追突され、特にスピン等も無く大事には至らないものの、ダメージの確認の為ピットイン。
バンパーに軽い接触跡がある程度で全く問題なく高橋選手のまま走行再開。
40秒を切り、30秒台には直ぐ入ると言っていた高橋選手だが、色々と試行錯誤の為か?42~43秒台と今ひとつ。
残り時間も少なくなった事もあり、再び加藤選手により予選に向けたセットアップへと入る。
サスセッティングを変え、36″248とベスト更新するが、17番手。
バランスは良いが、グリップが足りないというコメントを受け、時間内にできる方法として車高を調整、10分間の300専有走行に入るが、1セクター、3セクターはベスト更新するものの36″284と、まとまりきらずセッション終了。
終わってみれば20番手と低迷。
トップから4番手までが34秒台、19番手までが35秒台!!
マシンは快調、ドライバーもそれなりに走れている・・・となると、セッティングが合わせ込めていない。
昨日のトラブルによるロスタイムが響いてきているようだ。

ノックアウト予選Q1
予選に向け何かをやらなくては、このままではジリ貧である。
午後予選までのインターバルでサスのスプリングを交換。
午前の走行時にも、ドライバーの指摘で、試して見たかった事ではあるが、こうした作業はセッション中にできる作業ではなく、昨日の時点で、ここまで走りこめていれば、手をうつ事ができたのだが・・・。

予選Q1は加藤選手。
4周目36″650で4番手・・・このタイムでこの順位キープできるわけはなく、翌周には36″239と更新するが11番手。
1周クールダウン後のアタックでは、35″996!!
しかしこれでも15番手・・・13台が進出するQ2予選には進めない。
だが、想定以上の周回はガソリンを使い切りこれ以上のアタックはできない・・・と同時に500へと切り替わった。
全車アタックが終わり、我々は18番手でQ1で敗退となった。

その後のQ2予選においては99号車(タイ戦特別参加のポルシェ)が33″508!!と2番手34″268を大きく引き離している。

Q2進出のボーダーライン・・13番手のタイムは35″686と、コンマ31秒足りなかった・・・だが、それを埋めるべく絶対的な速さは残念ながら今のところない・・・がレースは、地道に走りきり結果を求めたい。
我々には、まだまだ伸び代は残されている・・・はず。

10月4日 フリー走行・決勝レース / 晴れ

フリー走行
Q1予選18位だったが、上位で車検失格がありタイム抹消の為、スタートグリッドはひとつ繰り上がり17番。
昨年前半の絶不調時がよみがえる。

決勝日朝のフリー走行では満タン状態で、加藤選手のベスト1′37″491が21番手(22台中)・・・。
99号車(地元からスポット参戦のポルシェ)34″151をトップに、13番手までは35秒台、18番手までが36秒台・・・そこから1.5秒遅れでは完全に番外である。
ほぼ決勝想定のこのセッションでこの位置、正直レースでの期待はできない。

今シーズンもスターティンググリッド下位はあるが、アクシデント等、原因がハッキリしており、今回の様に漠然とマシン自体が遅いわけではない。
今朝の走行でもマシンのバランスも悪くなく、一昨日の様なオーバーヒートも出ていない。

ここまでに走行したタイヤの状態から、この新コースに対し持ち込んだタイヤのマッチングが悪い事は判ってきた。
タイヤは自チームだけのデーターだけではなく、同じタイヤメーカー同士であれば情報交換もあり、FRの◯◯号車が好タイムを出しているのあれば、ミッドシップである我々のマシンはそれより、硬め、柔らかめが良い等、詳細はともかく傾向は判り、昨年の前半の不調もこうして克服してきた。
そこから予想されるのは、このコース、また少なくとも昨日今日の路温にはもっとソフトなタイヤの方が良いようだ。
スタートタイヤは既にマーキングタイヤで決められ変更できないが、後半スティントでそうしたタイヤを使えば良い・・・と言いたいところだが、そのレンジのタイヤは今回持ち込まれていない。
今あるもので決勝を戦うしかない。

決勝レース
サポートレース、賑やかなピットウォークを終え決勝レース。
後方グリッドは、最終コーナーの立上り、22番グリッドの最後尾は完全に横を向いている。
セパン戦と同様、暑さを避け日本戦より1時間遅い午後3時スタート。
スタートは高橋選手。
左後18番グリッドの11号車は、スタート用マーキングタイヤのマッチングが悪い為、フォーメーション後のレーススタートと同時にタイヤ交換をし、あえてピットスタートを選択。
同じく12番グリッドの48号車(GT-R)もピットスタート、従って実質16番手スタートとなる。

フォーメーション1周後のスタートで真後ろ19番グリッドの65号車(メルセデス)、その後、20、22番グリッドの86号車(ランボールギーニ)、61号車(BRZ)との3台に先行され、オープニングラップは19位。
翌周、GT300マザーシャシーのデビュー戦となる194号車(86)に先行され20位となる。
狭く、滑りやすいコースでのスタートの混戦、予想されるアクシデントを避け堅実にラップを重ねる高橋選手。
3周目には早くも500クラスが迫りタイムが落ち込むものの、4周目には40秒台と、まだ燃料満載状態で自己ベストに迫る。
そして周回を重ねる毎にタイムを縮め、9周目には39″855とベスト更新。
その後も39~40秒台でラップ、13周目には39″165とまたも自己ベスト更新。
トップを行く99号車(ポルシェ)は35秒台とダントツの速さで、2位に10秒のリード。
2位3号車(GT-R)は36秒台、3位以下は37秒台で、2位3位も10秒差、以下は大きな差はない。
このレースは66周、300クラスは60~61周予想。
一人のドライバーが3分の2・・44周以上の周回はできないので、17周でも交代は可能だが、そこで満タンにしても残り周回を走り切ることができない。
満タンでの可能周回を逆算すると、ファーストスティントは19周がミニマムである。
トラブルにより順位を落としたマシンもあり18位に上がった19周目、高橋選手ピットイン。
殆ど真後ろにいたトップグループが先を行く。
タイヤ4本交換と、満タン給油・・・ではなく計算上の消費分を給油。
20秒少々と短時間で完了、鈴鹿の様に始動に手間取る事はなく、加藤選手がピットアウト。
アウトラップで19位だが、ピットストップの間にトップグループは後方20秒辺りについている。
後半スティント序盤、38秒台ペースの加藤選手。
プラクティス、予選のタイムからすると満タンの序盤のレースラップとしては妥当なタイムか・・・・と思いきや、31周目36″540のベストをマーク。
33周目36″336とまたまたベスト!!
その後は36秒台をコンスタントにマーク・・・どころか、43周目に35″886と、予選タイムをも上回ってしまった!!
順位はピットストップの変動と、トラブル車両等で17位へと上がっている。
トップスピードも序盤の242~244km/h付近から、246~248km/hへとアップ。
48周目には35″104のベストタイム!!
これは、トップグループと全く遜色のないタイム(トップ99号車は33~34秒台と抜けているが・・)
エンジニアのシンタローが無線で「何かやりましたか?」と聞くと
加藤選手「勝手に気温が下がった為だろう。」

レースも後半となると、タイヤカスや土等、(特にこのサーキット、イン側縁石をまたぐのか、結構土がコース上に出ている)でコースも荒れ、普通は予選タイムを上回る事はない。
だが新サーキットという事もあり、走り込むほどにタイムが上がる可能性あるだろうが、タイヤもかなりヘタってきているはず・・。
それらを差し引いても、気温の低下によるパワーアップで、特にターボ車は終盤になってもタイム落ちない。

54周目には何と34″820と、30周以上走ったタイヤで、予選ベストタイムを1.1秒も上回るベストタイムをマーク。
その後も35秒台でラップを重ね、54周目にはピットアウト時30秒以上先行していた、16位の33号車(ポルシェ)にも追いつき猛チャージ!!
コース上の砂に足をとられ、コースアウトの場面も有ったが、本来のパワーで数ラップのバトルを楽しみ順位を上げる加藤選手。
最後まで手綱を緩めることなくチェッカー。
終盤でトラブル車両もあり順位は15位、周回は300トップ2台の直後に500クラスのトップが入った為、3位以下は1周遅れ、我々は2周遅れの59周と、リザルトは寂しいものとなったが、今回のレースで得た経験は、来シーズンも開催されるこのサーキットでの重要なデーターとなるだろう。

画像はFacebookアルバムで・・・。