モータースポーツ

2010:SUPER GT第3戦

2010シーズン 紫電
2010年05月16日

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トラブル?アクシデント?ハプニング!
小説より奇なり。ポイント圏外の13位

ハマちゃんこと濱口選手のブログ・レースレポートはこちら 必見!!

このレースから、エンジニアのシンタローがブログをかきはじめました。
機密情報も含めヤバイ内容も多いので賞味期限がかなり短い可能性もあります。

シンタローの危険なブログはこちら 早めに御賞味下さい。

4月30日(金) 設営 :晴れ

 高速道路¥1000、最後の大型連休と言われるゴールデンウィークも始まった5月1・2日。
 静岡県富士スピードウィは、高地の冷え込みは感じられものの、雲ひとつない素晴らしい好天に恵まれ、富士山もくっきり。
 開幕戦、鈴鹿の事故の後遺症が無いことは、岡山での2位で実証され気を良くし臨んだ富士第3戦。
 この屈指の高速サーキット、最高速はサッパリの紫電には全くもって不得意・・・のはず。
 これは、排気量、車種がいり混ざったGT300クラスの性能均衡化のルール上やむ負えない事で、決してエンジン屋さん(戸田レーシング)せいではありません。
 むしろそのルールの中で、エンジン始め、車体関係も微に細に、ほぼ行けるところまで行き尽くした感もあるほどです。
 不得意な部分(パワー)は多少目をつぶり、得意な部分(コーナリング)をより伸ばす事に主眼をおきセッティング勧められるが、これはどこのサーキットでも基本的に同じだが、ここ富士だけは外観的にも判る“富士仕様”となる。
 鈴鹿と共に、年2戦開催される富士、ここでのリザルトはシーズンを大きく左右する。

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設営日の富士山。素晴らしい。
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斜め止めの時の位置決め。給油ホースが届くか?どうかを確認。
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加藤選手からの差し入れを分捕りに来たヨッスィーこと吉本選手

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少しでも空気抵抗を減らす為、富士仕様の翼端板。個人的には嫌いな形。“木”でできているのか?“木端板”という噂もあるが・・・。
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これもルーバーの無い富士仕様。
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先回岡山のレースでクラックが入った為改良されたエキゾーストエンド。“鼻割り箸”タイプ

5月1日(土) 練習走行 予選 スーパーラップ :晴れ

 特に今シーズンから台数の増えたFIA GT勢、ポルシェやフェラーリ、そして昨年のチームメイト、ヨッスィーこと吉本選手のドライブするアストンマーチン等はそのパワーを生かし、ここ富士では強敵となる事は必至である。
 これらのマシンは最高速も260km/h前後と、紫電を約10kmも上回る。
 この速度差はスリップストリームがどうこうというレベルではなく、最終コーナーを一緒に立ち上がったら、みるみる離されて行く。
 そこで紫電は、1コーナーのブレーキで差を詰め、Aコーナー(コカコーラコーナー)から100Rで抜き返し、ヘアピンからのパワー勝負を何とか押さえ、Bコーナー(ダンロップコーナー)から先のテクニカルセクションで、ストレートで抜き返されないだけのマージンを稼ぐというレース展開となるが、マージンが稼げないとシーソーゲームである。(09年の第7戦など)
 そうした特性に合わせ込んで行く中、オーバーステアが中々解消されず、細かなセッティングを繰り返し、結果最高速こそショボイがラップタイムは悪くない。
 だがセットアップに1時間以上を費やし、ハマちゃんの練習時間が予定より短くなってしまった。
 開幕鈴鹿では2時間40分、第2戦岡山でも2時間の練習走行時間があったが、ここ富士では1時間45分。
 昨年から金曜日の練習走行が無くなり、この土曜日の午前だけが練習時間となり、ハマちゃんの様なルーキードライバーには厳しいレースウィークである。
 紫電で初めての富士。(・・・って、どこでも初めてになるが。)
 走り出しこそ53秒、49秒だがすぐに46秒台へ・・・。
 だがすぐに48、47秒台へとタイムのバラツキが目立つ。
 46秒台はレースラップとしては悪くないが、ミニマムであり、どんな状況下でもラップして欲しいタイムである。
 計測13周中、46秒台は3回だけと、チョット走り込み不足は否めない。
 残るは予選と、明日朝のフリー走行、そして車載ビデオ学習で頑張ってもらう事に・・・。

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公開車検。隣は今年新規参戦のフェラーリ。FIA仕様でストレート速い。
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コースに向かうカート。今日も素晴らしい富士山。
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走り出しは加藤選手。早めにセッティングを完了し、ハマちゃんの練習時間を多めに取るはずだったが・・・。

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良いところでオーバーステアが出るなど、セットUPに手間取る。
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フロントエアアウトレットを塞ぎ、微妙なダウンフォースの調整。
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そうそう、岡山のお土産、ハンディウェイトは30㎏

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結果ハマちゃんの練習時間は35分程度に短縮され・・・。
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タイムが伸び悩む。
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車検場から戻るスタッフ。イチイチ手押しで面倒だが、任意で最低地上高と重量はしょっちゅう計測に行く。

 加藤選手によるベストラップはトップから1秒落ちの、1′44″813(昨年は44″265)だが、エンジニア曰く「予想以上に良いでき。」とか・・・。
 今日午前のプラクティスでも順位こそ8番手だが、上位5台は先に述べた、ストレートバカッ速のFIA GTマシン。
 と言ってもちょっと前の直線番長という事もなく、コーナーも充分速いので“始末”が悪い。
 グリッド上位に行くべく予選。今回は久々のスーパーラップ(以下“SL”)。
 1回目予選で、両ドライバーが基準タイム(予選上位3台の平均ラップの107%以内)をクリアした、上位8台がSLに進出。
 1台づつのタイムアタック(アウトラップ含め3周目にアタック計測)を行いグリッド順位が決まるのである。
 まずは上位8台に残る事だが、先の練習走行の順位では非常に微妙な位置である。
 
 昨日に続き朝から好天に恵まれ、朝方はやや冷え込んだものの予選開始となる午後2時前には20℃にまで上昇、絶好のゴールデンレースウィークとなった。
 35℃近い路面温度も、予想と大きく外れないのでタイヤチョイスもドンピシャとなるだろう。

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昼休み。予選タイヤと共に日向ぼっこするスタッフ。
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ファンからいただいたオリジナルチロルチョコ。ありがとうございます。
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現地で食べて包み紙クシャポイは勿体無いので、3個づつ包んでスタッフに配る。

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ハマちゃんにもファンからフラワーギフトが贈られた。
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皆さんから応援メッセージや差し入れをいただきました。ありがとうございます。

 まずは500との混走セッション、加藤選手によるアタック。
 計測2周目で44″816!トップタイム。
 続いて44″487、44″187と毎周更新。
 ハマちゃんに交代。
 2周のアタックは47″139と、46″559と自己ベスト更新。
 この間も加藤選手のベストタイムはラップモニターの最上位に居座る。
 しかし300専有走行に入ると各車タイムUP。
 まず74号車カローラが43″952でトップへ・・・。
 続いて11号車フェラーリが43″886でトップに踊り出る。
 2号車加藤選手は3番手に・・・。
 43号車ガライヤも43″685。
 目まぐるしくトップが入れ替わる。
 と、同時に2号車の順位も落ちて行く。
 この間、加藤選手もアタックを続けるがタイムUPとならない。
 66号車ヨッスィーも44″180と僅差で割り込んで来る。
 そして最終ラップ、予想通り33号車ハンコックポルシェが44″005で4番手に・・・。
 終わってみれば6番手。
 後ろには、今回から新規参戦の25号車ZENTポルシェ(44″257)と、3号車HASEMI Z(44″286)が続いた。
 SL落ちの、9番手19号車が44″340と、激戦となったSLへの進出を果たす事ができた。
 タイヤも、SLに使用したタイヤは明日のスタートタイヤとなる為、必要以上のソフトタイヤとする事もできない。
 これはSL進出マシン全てに共通だが、決勝レースでのピットワークに影響する。
 前戦岡山でも、300クラスは、タイヤ4本交換、左2本交換、そして2号車の無交換と3車3様の作戦をとったマシンが表彰台を占め、この予選時のタイヤから決勝にかけて、昨年から作戦のバリエーションが増えて来ている。

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予選で皮むきを行ったSL用タイヤ。
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予選からSLに向けてもセット変更。

 予選終了から約1時間、SL開始。
 6番手という事は、3番目スタートとなり、早めのピットアウトとなる。
 久々のSL、アタッカーの加藤選手、SLは10台だと勘違い。(10台は一昨年まで・・)
 ノンビリ構えていたので慌てて準備、マシンに乗り込みピットを出る。
 ここ富士でのSLは辛い。
 何故なら単独走行では、他車のスリップが利用できないからである。
 予選の好タイムも、そうしたスリップ利用の結果なので、加藤選手の“アタックモード全開”が加わっただけで、果たして予選タイムを上回る事ができるか?
 既に3号車がアタックを終え、44″079!
 加藤選手は2周目のウォームUPの最中25号車がなんと43″417!!これは早い。
 共に予選タイムを上回っている。
 その経過を聞きつつ、ストレート彼方から加藤選手が現れアタック開始。
 モニターに映し出され、1コーナーに飛び込む。最高速が表示される。
 にひゃくよんじゅうさんキロ!!(243km/h)遅い!遅すぎる!!
 予選時でも247kmは出ていたはず。
 先の3号車248km、25号車に至っては250kmである。
 この影響は第1セクターは勿論、第2セクターまで響き、予選ベストを下回り、テクニカルセクションで若干挽回するも、44″191。
 3台走って暫定3位・・・最下位!
 得てしてSLで出走順位を上回れない場合は、大体その順位に落ち着いてしまう場合が多いので、これは8番グリッドになってしまうか?
 次々とアタックに入るマシン、ことごとく予選タイムを上回り、唯一11号車のみスピンによりアタックキャンセル、我々の後ろとなり、結果7番グリッドが確定。
 
 マシンがピットに戻り、メンテナンスに入ると、なんとエキゾーストパイプの連結部が外れている。
 エキゾーストパイプは、何本ものパイプがパズルの様に組み立てられており、接合部はボルト、ナットで連結されているのだが、その一箇所が外れ排気漏れを起こしていた。
 これはエンジンパワーに影響を及ぼし、トップスピードは勿論、加速にも影響が出たことは、データーロガーからも明らかで、ピットを離れたアウトラップ中に既に外れていた。
 だがエンジニアのシンタロー曰く、これによるタイムダウンを補正しても、予選タイムを若干上回る程度で、精々1グリッド上がるくらいだろうとの事。
 このSLで使った決勝“スタート用タイヤ”、マシンとのバランスは素晴らしく、決勝レースでのパフォーマンスがかなり期待できそう。

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ヘッドライト点灯はアタック開始の合図。
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得意とする第2、第3セクターでもタイムは伸びず・・・
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もうすぐチェッカー。結局SL進出チームで(ノータイム1台を除き)唯一予選タイムを更新できなかった。

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エキゾーストをつなぐボルトが脱落(赤矢印部にある。)排気漏れを起こしていた。(黄矢印)
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今回特に重要となるドライバー交代の練習。初の(って、まだ実質2戦目)ハマちゃんから加藤選手へ・・。
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シャッターを閉めて秘密練習。左のみタイヤ交換。

5月2日(日) フリー走行 サーキットサファリ 決勝レース :晴れ

 この富士の第3戦、一昨年までの500kmの場合、ワンストップか?ツーストップか?は各マシンのキャラクターにより、まちまちだったが、昨年から400kmに短縮され、その気になれば1回のピットインで走り切る事は充分可能な距離となった。
 だが、ドライバー交代を伴う、2回のピットインが義務付けられている。
 このドライバー交代は、うまく行って大体15~16秒程度は掛かりる。
 尚且つ、この間は、“給油”でも“タイヤ交換”でも何でもできるが、“給油中”タイヤ交換等他の作業は一切できない。
 だとすると、この2回のドライバー交代時間に何を行うか?またこれ以外にピットストップに時間を掛けない事が、決勝レースの重要なポイントとなる。
 給油時間は燃費との相談。
 レースは400km(88周)だが、これはあくまでトップ500クラスの距離。300クラスは昨年のリザルト、今年の500とのタイム差等から81~83周がチェッカーと推測。
 これに必要なガソリン量を算出。
 仮に1周当り2リットル必要とすると、162~166リットルのガソリンが必要だが、燃料タンクは100リットル。
 レース中に62~66リットルのガソリンを給油しなくてはならず、給油が1秒当り3リットル可能とすると、31~32秒掛かる計算になる。
 しかもこれを一度に給油しようとすると、タンクに34~38リットルしか残っていない状態(31~33周走った後)でないと入りきらない。
 ピットイン回数が自由であれば、1回のみとしてこれにタイヤ交換をプラスすると言う作戦もとれますが、2回必須であれば、どこでどういった形でこの給油作業を2回に分割するかが重要となる。
 ドライバー交代のみは無駄ですから・・・。
 どうせ給油できる時間があるなら、軽い状態で走った方が良いし・・・。
 更にタイヤ交換は2人で行うのだが、“2輪”交換に約7秒前後、“4輪”交換は倍の約15秒程掛かります。
 通常、前後何れかを(2輪)左右同時に交換したら、給油を開始、その間にメカが反対側に移動するので移動時間はロスとならず、単純に2本交換時間×2となる。
 
 ここまでの数字は全て大雑把な数字ですが、燃費は練習走行は勿論レース中も常に計測、補正しています。
 燃料タンクも100リットルタンクですが、実際に100リットルがレース中有効に使えるわけではないし、給油速度も、サーキットのピット前の傾斜等によって若干異なるので、これも毎レース必ず測定している。
 この富士での2回のピットワークは、以上の作業時間の“パズル”であり、当然レースの流れによって左右される。
 タイヤ交換も前述の様に、無交換、2本、4本交換とバリエーションが増えてきており、レース前の基本作戦では決まっていても、実際のレースでは変更せざるえない事もある。
 こうした作戦の詳細を、このレースからエンジニアのシンタローがブログに書き始めましたので、マニア度高いですが興味のある方は一度ご覧下さい。(やばくなったら、削除、閉鎖の可能性もあります(笑))
 決勝日、朝のフリー走行はレースを占う上で非常に重要な走行となる。
 そうした中、満タンの2号車は、加藤選手のドライブで45″362のベストラップでクラストップ。
 その後26号車が44″925をマークし2番手に下がるも、充分な手応えを得る。
 だが反面ハマちゃんは6周の計測ラップで46″813が1回、残りは全て47、48秒台と苦戦。
 サーキットサファリでは、ブレーキの慣らし。バス退去後の僅かなフリー走行時間もハマちゃんの練習走行に充てる。

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朝のフリー走行前、ハマちゃんにアドバイスを与える加藤選手。
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決勝日の恒例となったサーキットサファリも終りバスが引き上げてくる。この後の僅かなフリー走行も貴重な時間。
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ハマちゃんにとっては、実戦(練習)で初めてとなるピットイン。斜め止めの位置がずれている。

 また今回は2回のピットインでのドライバー交代。
 これまで(と言ってもレースではまだ岡山戦だけだが・・)加藤選手からハマちゃんに交代する事はあったが、今回はハマちゃんから加藤選手にも代わるのである。
 要するにハマちゃんにとって、実戦で初めてのピットインである。
 実戦でのピットインとは、ピットレーン入り口まで飛ばしてきて、入り口で60km/hに減速(チャンと速度計測をしている)。
 60kmでピットロードを“駆っ飛んで”来る間に、クールスーツ、ドリンク、ヘルメットクーラーのホース、無線のコードを外し、ピットが近づいたらシートベルトを“緩め”(外してはいけない)、確実に定位置に止めなくてはいけない。(ピットアウトするマシンにも気をつけながら・・・。)
 前後にマシンが止まっていた場合も、決められた斜め止めの位置に停車しないと、給油ホースが届かず、大きくタイムロスをする。
 停車と同時にイグニションは勿論、ヘッドライト、換気、冷却用ブロアファン等全ての電源をOFFにして、(でないとスターターの回りが悪い場合がある。)ベルトを外しすかさず降車。
 加藤選手が乗り込むと同時に、ハマちゃんは疲れていてもサポートに回る。
 特にベルト類はヘルメットをしていると非常にやりづらいのでサポートは必須である。
 場合によっては、ホース類等はピットアウト後、ピットロード走行中にセットする場合もある。
 これらの練習も何度か行い、何とかまとまってきた。後は実践経験を積むだけである。
 決勝レースは、タイムスケジュール通り。
 ウォームアップを終え、ピットで再び燃料をオーバーフローするまで満タンにする。
 そしてグリッドへ向けて1周。ここでの1周や、フォーメーションラップの燃料消費も当然計算に入っている。

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ウォームUP終了後、ピット内で燃料フルチャージ。
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グリッドに向かう。素晴らしい五月晴れ。全く雨の心配はいらない。
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グリッドに着くと、いつも一旦ピットに引き上げる加藤選手が戻ってきた。しばし精神統一か?

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「お二方、今回も表彰台予約しておきましたから・・・よろしくお願いいたします。」「まかせとけ!」の図
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フロント2台がポルシェというのは、久々・・・。

 気温は20℃やや超え、路温は35℃に届こうか?といった午後2時フォーメーション開始。
 最終コーナーからゆっくり立ち上がり、コントロールライン近づき徐々に加速。500スタート!300も続く。
 この長いストレートを持つ富士、1コーナーまでに後続に刺さされるか!
 ストレートエンドで8番グリッドの11号車に先行されるが、ブレーキングで抜き返す。
 ここから先は、そう簡単に先行される事はないが、最終コーナーからストレート、まず来たのは先の11号車ではなく19号車。
 1コーナーでインからパスされる8位へ。
 2周目から3周目に入るストレートで、12番グリッドの9号車、初音ミクポルシェが、加藤選手2号車と、前にいる19号車をセットであっさり抜き去る。
 この9号車、トップスピードはクラス最速と思われ、常に253~254kmをマークしている。
 更に9号車はAコーナーまでに、6位の3号車も抜き去り暴れん坊ぶりを発揮6位に・・・。
 抜かれて呆気に取られた(わけじゃないだろうが・・)3号車と19号車を、得意の100Rでアウトから抜き去る加藤選手、7位へ順位を挽回して帰ってくる。
 レースはポールの33号車ハンコックポルシェが、1周目に2番グリッドの25号車ZENTポルシェと入れ替わり、更に2周目には4番グリッドのヨッスィー駆る66号車アストンマーチンが25号車をの前に出てトップ3台、33、66、25号車とFIAマシンが占める展開となった。
 4位以降、74号車カローラ、43号車ガライヤ、9号車初音ミクポルシェ、そして紫電と続いた。
 6周目、14位を走っていた7号車RX7にジャンプスタート(フライング)による、ドライブスルーのペナルティが課せられた。
 今シーズン開幕から速さを見せつけた7号車、性能調整を受け、50kgものウェイトを追加され、この第3戦、予選(15番グリッド)まで精彩を欠いたが、決勝レースでは“強さ”を発揮すると思われた。
 そんな後方の脅威がひとつ消えた。
 続いて上位グループをかき回した暴れん坊の9号車、8周目の1コーナーで単独スピン!順位を落とす。
 
 500クラスのトップグループも混ざり始め、加藤選手、しばらく45~46秒台で6位をキープ、小康状態が続く。
 
 16周目、ずっとトップ25号車にピタリと追走していた、ヨッスィー66号車が初めてトップに立つ。
 さて、予定では19周辺りで1回目のピットインの予定だったが、トップと離されない(20周目でトップのヨッスィーからマイナス5秒)好調なラップタイムなのでもう少し引っ張りたい。
  だがタイヤ交換をしないとなると、次のハマちゃんが厳しくなるので、22周目、3位の33号車の後ろに着く形で、上位グループでは最初の、1回目ピットインである。

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スタート!コントロールラインからも長い富士。
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8番グリッドの11号車に並ばれるが、とりあえずオープニングラップはしのぐのだが・・・。
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その後もストレートで苦戦し、コーナーで稼ぎ、タイヤを労りつつ順位をキープするという妙技を見せる。

 予定通りタイヤは替えず、給油は17秒。これはドライバー交代の時間分であり、ほぼ満タンにできる給油時間である。
 ハマちゃんに交代、給油量の多い33号車に約6秒の差を着けピットを離れる事に成功。
 ピットロード上、ボロボロと60km走りながら、未装着の無線とドリンクホースを接続。
 ヘルメットに繋がるこの無線とドリンクホースの2本、マシンに乗り込む前は、マジックテープでヘルメット頂部に張り付けられており、ホースは目の前、邪魔な位置を通している。
 これは、装着忘れを防ぐ為の“おばあちゃんの知恵袋”なのである。
 翌周で見かけの順位は17位。単純には3位を走っていた33号車の前に入ったので2位かもしれないが、それは他の上位陣の1回目のピットインが終わるまでのお楽しみ・・・。
 ところがセカンドスティントを担当したハマちゃん、中々ペースが上がらず、33号車の46秒台に対し48秒台!
 24周目には追いつかれ、
シンタロー「33号車は46秒5。濱口さん48秒5。(33号車は)0.9秒後方!」
 と状況を伝えるが、このタイム差では何とかなるわけでもない。
舘さん(ドライビングアドバイサー)「33には刺される(抜かれる)から、しっかりついて行く事!」
 このスティント、ハマちゃんの最初の試練である。
 最終コーナーを立ち上がり、ピタリと着けられている。
 当然ストレートであっさりパスされる。
 ここらで他のマシンも1回目のピットインが始まり、26周を終え15位。
 66・25・74・43・26.3.46・86・51・87・9・7・88号車までの、見かけ上位13台は未だノーピット。
 14位の33号車、そして2号車ハマちゃんとなるが、トップとは66秒差。
 ピットインにより、ロスするタイムはここ富士の場合(ピットロードの長さによって異なる)約35秒、それにピットでの作業時間、ドライバー交代だけでも15~17秒が掛かるので、50~52秒差なら追いつく計算であり、“今なら”26号車の前、6位(33が前にいるはず)辺りまでは復帰できるはずである。
 だが、それも“取らぬ狸の皮算用”で、ハマちゃんのこれからのペース次第である。
 そのハマちゃん、何とか47秒台に入り始めるが、上位グループも、また後方から迫る19・11号車も46秒である。
 30周を終え11位。
シンタロー「FU知らせてくださーい。」
 FUとは燃料消費量で、メーターで読み取る事ができる。次のピットイン時の給油時間(給油量)を、決める(実際には補正だが・・。)重要な情報だ。
ハマちゃん「FUに(メーターが)切り替わらない!モード?ページ?」
 あれこれ指示してメーターの切り替えに成功。
ハマちゃん「FU、5●7!5●7!」
 これもハマちゃんの経験値を上げる事になったようだ。
 レース中のドライバーは忙しい。
 レースは30周を過ぎ、ここまで殆ど45秒台で飛ばして来た、74号車カローラアクシオが66号車と25号車に割って入り2位、そして翌31周目トップに立つ。
 ハマちゃんはジワリジワリとタイムを上げ、35周目47″001 ポジション7。
シンタロー「ベストラップです!がんばりましょう!」と激を飛ばす。
 翌周46″943とベスト更新。
 66号車、43号車がピットイン。
 コース上では、43号車に対し4秒近いリードを築いていた66号車だったが、ピットストップが10秒以上長い為あっさり順位が入れ替わる。
 この2台の間に割り込む形で、37周目74・26・33・43に続いて5位ハマちゃん。後ろに66。
 74・26は未だノーピット。74からマイナス80秒、26からはマイナス51秒。悪くない位置である。
 その2台も38、39周目に相次いでピットイン。
 これで全てのマシンが1回目のピットインを済ませた事になる。
 
 40周目予想通りトップは33号車、続いて74号車、43号車そしてハマちゃんの2号車。予想以上の好ポジション。
 だが2秒後方に、ヨッスィーに代わってベテラン松田選手駆る66号車が迫る。
 47秒中盤のハマちゃん。46秒中盤の松田選手。
 逃げるハマちゃん42周目には46″928のベストタイムをマークするも、43周目に入ったAコーナーでインからバッサリ!
 予想外に、強引に入られたと感じたハマちゃん、チョッとラインが乱れる。
「(66号車に)着いてって!!」と言う舘さんの激は虚しく、紫電が最も得意とする100Rを含む第2セクターだけで大きく遅れ(約2秒)をとってしまい、着いて行く状態では無くなってしまった。

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第2スティンを走るハマちゃん。中盤から徐々にペースが上がるが・・・。
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更に速い、ベテラン松田選手にAコーナーでつかまり・・・。
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その後引き離されて行く。

 そんな荒波に揉まれながら、SUPER GT、2レース目のハマちゃんのスティントも終わろうとしている。
 2回目のピットインが始まる。
 この2回目でタイヤを変えるか?給油時間は?でチェッカーまでの帳尻を合わせなくてはならない。
 1回目を短くして、ここで長くするチームもあると思われる。
 上位グループでは既に33、19号車が2回目のピットを終え、19号車は4本交換している。
 もう1台の33号車、アウトラップ翌周、なんと最終コーナー立ち上がった所でグリーンにマシンを止めている。
 マシントラブルのようだ。ドアが開きドライバーが降りリタイヤだろう。
 上位の一角が崩れた。
 
 我々は1回目同様最短のピットストップを予定。但し給油時間を短めにし、タイヤを左片側のみ交換として、終盤の攻めと、アウトラップの短縮も狙う。
 26周を走ったハマちゃん、49周目ピットへ・・・。各種ホース、無線コードの外し、電源のカット等ピットインの際の仕事を無線で再度伝える。
 ストップボードに向かうスピードがやや遅いが、実戦で初めてのピットイン、慎重、確実が何よりである。
 左側に2名のメカを配置し、シンクロナイズドされたタイヤ交換作業は同時に終了。
 続いて給油6秒。
 ドライバーチェンジも終了。
 ジャッキダウン。
 スタート!
 グッグッ・・・・スターターが回らない!!かと思いきや、永~い2秒程が過ぎ、Gwoooooo!!回った!!
 エンジン始動。
 激しくホイールスピンをさせながら飛び出す加藤選手。
 ピット作業時間そのものは、1回目と大差ないが、この始動遅れと、冷えた左タイヤにより、50周目となるアウトラップ、1回目のそれより6秒ほど遅い。
 
 リセットされた順位は12位。
 74・43・66・3・11・25・7・31・26・46・9・そして2号車加藤選手、そして19号車と続き、前にいる11台は全て未だ1ピット。
 トップ74と、2番手の43とは、100秒近い差があるので厳しいが、次スティントでヨッスィーに代わる66号車の前辺りには行けそうだ。
 そして上位グループも2回目のピットインが始まる。
 まず50周目に11と31が入り10位に・・・。
 加藤選手の46秒5に対し、45秒台の19号車が2秒差に迫る。
加藤選手「大丈夫かな?」??
シンタロー「(右)タイヤがダメですか?」
加藤選手「燃費だよ!ネンピ!!」
シンタロー「違う走りをしたらもたないかも・・・!」
加藤選手「じゃ大丈夫だ。」
 と、左タイヤも暖まり45秒台にペースも上がり、1秒後方の19号車に合わせる形で抑えきる加藤選手。
 55周目にはベストラップ45″190をマーク。トップグループとの差を詰めていく。

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走り終えたハマちゃん。肉体的疲れより、納得の行かない走りに精神的疲労の方が大きいようだ。
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トップを快走中、突然止まった33号車。
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その後、迫る19号車を抑えつつ、好位置をキープする加藤選手だったが・・・。

加藤選手「何か臭いな~?!」
シンタロー「????」
 ストレートで見ても、特に異変は無い。
加藤選手「何か煙も出てる・・・?!」
シンタロー「異常感じるならピット入ってください。」
 外から火や煙が見えると、すぐにモニターに映し出されるがそれも無い。
 
 その間も45秒台で走る紫電は、全くもって快調。
 ワンツーの74、43号車は45秒フラット近いハイペースだが、以下は46~47秒台。
 それらが2回目のピットインをすれば、一気にジャンプUPできるこの状況下、皆の心は“そのまま走って欲しい”だが・・・。
 いくらなんでもそうも行かない。
 
 60周目に突入。
加藤選手「煙出てきた!!」
シンタロー「ピット入ってください!!」
 消化器を準備しむかえる。
 加藤選手ストップ。
 見たところ異常無し。
 すぐさまエンジンフードのロックを外す。
 この時、空気が入り発火する事もあるので緊張が走る。
 エンジン左側から、モワッと白煙が立ち上るが、炎は出ない。
 メカが覗き込む。
 何やら手を入れ、ゴソゴソ・・・・。
 すぐさまエンジンフードを被せ、再びロック。
 再始動し、猛然とスタートする加藤選手!
 勿論煙の原因は無線で知らされている。
 なんと原因はタイヤカスの塊が、エキゾーストパイプに乗っかり燃えたというか、焦げて煙を出していたのである。
 こうした煙、匂いは走行中の背圧で、結構キャビン内に入ってくるのである。
 
 16位で戦列に復帰したもの、この余分なピットインにより、このレースの勝負権はほぼ失った。
 その後の加藤選手、途中ガス欠っぽいエンジン不調が有り、若干ペースが落ちるが、ポンプをサブに切り替える事で切り抜け、その後は相変わらずの45秒台をキープ。
 何とかポイント圏内まで持って行きたいところだが、健闘むなしく13位。
 なんとも悔しいノーポイントレースとなった。

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緊急ピットイン。カウルを開けると煙が・・・。
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その後もポイント圏内に向けてハイペースで飛ばすものの・・・。
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トップから1周遅れ、13位フィニッシュ。

 GT参戦、足掛け10年目となるが、こんな事は初めて。
 タイヤカスも、レース終盤になるとテニスボールくらいの大きさでコースサイドに転がっており、場合によってはフロントウィンドウを割ってしまう事もある。
 またブレーキキャリパー等にこびりつき、ピットストップでモクモクと煙を出している光景はよく見られる。
 しかし通常エンジンルーム内にこうしたタイヤカス、しかも塊で入る事は無い。
 スピン、コースアウト等してグラベルに飛び出せば後ろから砂利と共に飛び込んでくるが・・・。
 エアインレットもいくつかあるが、エンジンルーム内はダクトで冷却部分へ導いており、その中をゴロゴロと転がって来る事は考えられないし、そうしたダクトはエキゾースト部分に導かれていない。
 となるとどこから入ったのか?
 そう、紫電のリヤカウル左右上部には、ルーム内の雰囲気温度を下げる、横10cm縦2cm程の小さなエアインレットが着いている。
 ここから先にはダクトは無く、真下は丁度エキゾースト部分となり、ここから入ったとしか考えられない。
 こんな小穴から入り込むのは、正にホールインワン状態。
 こんな万が一でレースを落とすとは・・・次回から対策が必要になりました。

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エキゾーストに残っていたタイヤカス。
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走行中、このエアインレットから入ったとしか考えられない。正にホールインワン。
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エキゾーストにタイヤカスが乗っかっていたイメージ画像。