モータースポーツ

2011:SUPER GT第7戦

2011シーズン 紫電
2011年12月17日

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昨年開催中止となった九州オートポリス。ファンからの強い要望もあり2年振りに復活。
エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電にとっては06年デビューイヤーでの初優勝を飾ったゲンの良いサーキット。
無論、単に“ゲン”の問題では無く、コースレイアウトが紫電のキャラクターにピッタリなのである。
得意とするサーキットでの開催が復活したのはありがたい。
チャンピオンシップは既に数台に絞られ、我々はシーズン前半の不振が響き、エヴァ紫電デビュー以来初めて最終戦でのチャンピオンに残ることができなかった。
しかし参戦する以上は常にランキング上位を目指し、ここオートポリスでも表彰台は勿論、優勝を目指しランキング上位陣をかき回していきたいと思う。

10月1日(土) 練習走行 / 晴れ

2年振りの開催とはいえ、コース改修等は無いので、当時のデーターが活きる。
性能が向上したタイヤの合せ込みができれば、十分トップタイムを狙えるだろう。
重要なのは高橋選手。
他のサーキットと異なり、テストデイや、スポーツ走行を利用しての走行が全くできない為、純粋に3年振りの走行となる。
いつも通り加藤選手の走り出しでセットアップ。
異なるタイヤを試し、ベスト1′51″877はクラストップ(その後クラス3位)となる。
やはりここオートポリスは相性が良いようだ。
その後高橋選手交代、3年前の走りを取り戻すべく、長い走行時間を取る。
だが加藤選手と同様のタイヤを試すものの、ベストは55″117。
レースラップとして悪くないが、第1セクター、第2セクターが良いが、第3セクターで大幅に遅い。
ここがまとまれば、充分53秒台に入るだけに、予選までの課題となった。

予選1回目 /晴れ

オートポリスはスーパーラップ(以下:SL)方式で、この1回目予選の上位10台がSLに進出できる。
練習走行では、今ひとつタイムの伸びなかった高橋選手だったが、持ち前の学習能力で、車載ビデオ、データーロガーで徹底的に学習。
予選計測2周目でいきなり53″435をマーク。5番手に付ける。
5周計測のラストには更に第1、第2セクターでベストを更新し、まだまだ伸びしろを見せる。
加藤選手は300占有時間で51″265のベストタイムで2番手に着けまずSL進出を果たし、更にアタックを続け、やはり第1、第2セクターでベストタイムをマーク、トップを狙うが第3セクターでやや失速(と言っても51″415)、2番手のままSLは9番手出走権を得る。

スーパーラップ / 晴れ

SLでは4番目に出走した62号車(スバルレガシー)が50″447と、1回目予選のトップタイム(25号車の51″001)よりかなりタイムアップ。
SLは先に走ったマシンのタイムから路面コンディションを推理する事もでき、場合によっては急遽セッティング変更する事も可能である。
その62号車のタイムからウィングのセットを若干変更、SLに臨んだ。
ところが、路面コンディションに変化は無く、第1セクターで既に、マイナスコンマ5秒の遅れ、第2セクターでコンマ7秒。
結果51″418とトップ62号車から約1秒の差を着けられ4番グリッドとなったが、2番手86号車(ランボールギーニ)からはコンマ1秒差、3番手25号車からは100分の15秒差と僅差。
レースでは表彰台争いを展開できるだろう。

■予選後のコメント

■渡邊エンジニア
ウーンまわり速かったすね。・・・・・あとスーパーラップに関してはチョット予定していた程のグリップを得れなくて・・エ~・・チョットタイムアップは無かったんですけど・・・全体的にタイムも落ちてたんで・・・トップの62号車に関してはチョットあのタイムは“見えない”。リストリクターの大きかった頃のエヴァ紫電のタイムを持ってきても追いつかないぐらい、あの・・チョット・・圧倒的でしたね。それ以外は全体的にスーパーラップに関しては落ちてたんで・・・うちもその流れに乗っかっちゃった感じで、タイムアップする事なく終わっちゃった感じですね。もうちょい午前中の感じだと行けるかな~っていう期待はあったんですけど・・チョットそれは残念だったかな~っと。基本的にバランスは悪くないのでレースは頑張ります。

■加藤選手
(予選)1回目は順調にきてて、2回目で62号車が素晴らしいタイムを出したんで・・アッ路面が良いんだなと思って急遽セッティングを変えてもらったんですけど・・それが全然騙されたと言うか・・・(笑)はい、そんな状態だったので・・・でも何とか2列目(四番グリッド)で収まってくれたんで・・ま~スタート位置としては良いポジションですから、明日のレースはまた・・(横から:渡邊エンジニア「高橋さんも早そうなんで」) ハイ高橋さんも早そうなんで、みんなでみんなで戦って表彰台に上がれたらいいなと思います。

■高橋選手
みんな「速そう」って言うけど、ハッキリ言って速いです。(横で渡邊、加藤両名爆笑)大丈夫!大丈夫!明日はコンマ5秒速くなるから・・・また更に・・・。 大丈夫!明日はブッチぎって優勝狙っていきます。・・・・ま~カトチャン次第なんだけどね。(横で渡邊、加藤両名爆笑)加藤:ま~62号車次第なんですけどね。

10月2日(日) フリー走行 / 晴れ

ここオートポリスはタイヤの摩耗が激しいサーキットで、500クラスではタイヤ2回交換も戦略オプションに入る程で、300クラスでもタイヤ交換は必須であり、エヴァ紫電では定番となりつつあるタイヤ無交換はここでは無理である。
ピットワークは給油、タイヤ交換のフルセットである。
ここオートポリスは、他のサーキットと異なり、ピットがマシンから見て左側に来る。
それに伴い、メカニックの配置も“オートポリス仕様”となる。
エヴァ紫電のエアジャッキの差し込み口はルーフにあるが、通常右側となるので、エアジャッキ担当はジャッキアップを行なったあと、右ドアを開けクールスーツの氷交換、そしてドライバー交代に伴うトランスポンダー(タイム計測用の発信器)の差替えを行うのであるが、今回はエアジャッキの差し込み口が左側に移設させているので、これ以外の作業ができない。
従って、右側にも1名配置しなくてはならない。
このSUPER GT、レース中、作業エリアに出ることができる人数が7名に限られており、給油中はドライバー交代、クールスーツ用氷交換、トランスポンダーの差替え以外の作業(マシンに触れる)事はできない。
タイヤ交換は2名までと限定されており、(F1の様に1輪に付き3名もの配置はできない。)この2名で4本交換するか、左右または前後のいずれか2本のみを交換するかは自由である。
タイヤ無交換の場合、他の作業に当たっても構わないが、そんなシチュエーションはまず無い。
給油はエヴァ紫電の場合、左右(給油とエア抜き)で各1名。消火器1名で合計7名(タイヤ2・給油2・消火1・ジャッキ1・右ドア側1)の配置となる。
他にも若干の作業手順の変更を加えたオートポリス専用配置のピットワークシュミレーションも、今朝のフリー走行での重要なプログラムである。
加藤選手からのフリー走行、5周程計測、54″350がベスト。
そしてピットワークシミュレーション。
高橋選手に交代、タイヤも実際に決勝で想定される、冷えたタイヤを装着し、アウトラップの練習である。
決勝レースのピットイン時においてNEWタイヤを装着したとしても、冷えた状態(タイヤウォーマーは禁止)によるアウトラップのタイムの落込みは無視できず、その後の順位を大きく左右する事は珍しくない。
スタートから使用したタイヤのタイムの落ち込み、このアウトラップ時のタイムロス、タイヤ交換そのものの時間、これらを残り周回と照らし合せ、“タイヤ交換”をするかしないかの判断をするのだが、今回は交換前提ある。
高橋選手はアウトラップから飛ばし、直ぐに56秒台から55秒台に入れ、54″732と昨日の予選タイムには及ばないもののレースラップとしては申し分ないタイムをマークする。
昨日の62号車の速さは驚異的。ポールからまともに走られたら全く太刀打ちは不可能である。
しかしマシンのバランスも悪くない。高橋選手のシンクロ率もまだまだ上がる。
2位表彰台までなら届かない位置ではない。

決勝レース / 晴れ

朝から多かった雲は、この頃にも変わらず、一応グリッド上にウェットタイヤも準備されるが・・・交換する事にはならない。
4番グリッド・・・2列目左側。54周(300は50周前後がチェッカー)先で、どこまで上がれるか・・?
午後3時、フォーメーションラップ開始・・・そしてスタート。
オープニングラップはトップ62号車(スバルレガシー)が、既に2位86号車(ランボルギーニ)、3位25号車(ポルシェ)、そして2号車エヴァ紫電、2位から4位の3台は1秒以内だが、トップは既に2秒もリード!
早くも“独走”状態が出来上がってきた。
2周目に入る第1コーナーで25号車が86号車をパスするも、62号車を追うには至らず、2位グループの先頭に立ったに過ぎず、この周を終えた時点で4秒のリードと、別次元のレースを展開。
2位からの3台も、僅かづつ5位以下を引き離しに掛かる・・・が、62号車程の勢いではない。
途中の給油時間を短縮すべく、ほぼ満タンでスタートした2号車加藤選手、5周目に53″858の(結果的に)ベストタイムをマーク、その後は54秒前半から55秒台で走行、ポジションとしては4位だが、86号車より勢いは上。
だがなかなかオーバーテイクには至らず、86号車にプレッシャーを掛けチャンスを伺う。
10周頃になると2ピット作戦の500が1回目のピットイン。いつもより多くの500との“混戦”となりそうだ。
加藤選手「(ピットに入ったら)フロントウィンド拭いて!」と、”思わぬ”課題が与えられる。
ピットから渡邊エンジニア「やります!」とは言ったものの、今朝のピットワークシミュレーションには窓拭きは組み込まれていない。
いつもであれば、全く問題無いオプション作業として組み込み可能・・と言うか、窓拭きは想定済みであるが、状態によっては下手に拭かない方が良く、ドライバーの要請で判断しており、直前に言われても可能である。(チームによっては薄いフィルムが貼ってあり、剥がす事で視界を回復できる)
その加藤選手早くも窓拭き要請があると言うのは、よほど汚れが酷く後半スティントに支障をきたすということと、作業手順の練り直す為である。
松下チーフメカがピットワークを再構築、右ドア側担当が、フロントタイヤ交換中に、フロントウィンドを拭き、給油開始と同時に右ドアに回り氷を替えるのだが、作業中スタッフが移動する事となるが、実際のシミュレーションは行なっていない。
コース上でコンマ数秒もが、ピットワークでの数秒も結果は同じ。稼ぐのは大変だが、失うのは簡単で、些細な事で起こりうる・・・。
20周辺りになると加藤選手「(86号車が)抜けない!抜けない!」愚痴が入る。
前半スティントも半分以上が終了し、タイヤの状態からプッシュに転じたいところだがなかなか“前へ”進めない。
この頃になっても上位グループの順位は変わらず、トップは62号車と変わらないが一時2位と10秒弱のリードは8秒となる。
2位25号車、3位86号車、そして4位の2号車エヴァ紫電の3台は1.1秒内の接近戦、5位4号車(BMW)とは13秒離れている。
24周を終え、トップ62号車がピットイン。余程のミスが無ければトップは変わらないだろう。
27周目に入り、終盤登りのテクニカルセクション、アンダーパスの手前右60Rで86号車がミス、イン側が開く。
それを逃さず加藤選手「抜いた!!」見かけは2位、実質62・25号車に次ぐ3位に上がる。
渡邊エンジニア「残り10周タイヤ使い切っちゃってください。」
上位陣のピットストップもあり、見かけの順位も変動。
ここオートポリスでは殆どの全てと言っていいチームがタイヤを交換しているので、ピットアウト後のタイムが大幅に上がり、早めのピットインにより見かけの順位が落ちたが、かなり追い上げているチームもある。v 特に14号車、11号車(フェラーリ)は、それぞれ17周、19周と早めのピットイン、その後2秒近くタイムアップして追い上げている。
33周を終え、2号車加藤選手に「BOX(ピットイン)」のサインが出される。
既に25号車もピットインを済ませ、見かけ上の順位はトップとなった2号車、予定している短い給油時間ならその25号車の前、2位で復帰できるはずだ。
ルーティンピットとしては最も遅い34周を終えピットロードに入った加藤選手2号車エヴァ紫電。
待ち構えるピットクルー。
停車と同時に、ジャッキアップ、ドライバー交代、窓拭き、フロントタイヤ交換がスタート。前方でストップボードを片付けた消火マンが後方に回る。
フロントタイヤ交換終了と同時に給油開始。
僅か4秒の短い給油時間中に窓拭きは右ドア側に回り氷交換、タイヤマンはリヤタイヤ側に移動。
給油終了と同時にリヤタイヤ交換スタート。
タイヤ交換終了と同時にジャッキダウン!
その直前にドライバーも準備完了、着地と同時にエンジンスタート。
一発スタートと同時にエヴァ紫電発進!
“オートポリスヴァージョン”のピットワークは完璧!今シーズン最高と言える一連の作業は約23秒で完了。
実質2位で送り出すことに成功。
アウトラップ終了時点でトップ62号車からマイナス15秒、3位14号車からプラス4秒。4位11号車は更に3秒後方にいる。
タイヤに熱も入り、ペースを上げようとする高橋選手だったが、第2セクターまでを周回遅れに阻まれ翌36周目は58秒台と遅れ、3位14号車に1.7秒差に詰められるが、翌周55″069と自己のペースを取り戻し、その後も55?56秒前半のペースで周回を重ねる。
14号車は僅かに速く、1秒以内に接近しつつも容易に抜ける程のタイム差ではない。
その2台に11号車も加わり、1.5秒以内に3台が入る接近戦となる。
14号車インペラトーリ選手、11号車平中選手と、若手プロ2人のプレッシャーに屈する事無く2位を堅持する高橋選手。
この3台による見応えのある2位争いは46周目まで展開され、残り4周となった47周目、1コーナーで14号車が高橋選手に仕掛ける。
トップスピードが大差ない14号車、スリップストリームを使い接近、ブレーキングで僅かに前に出る、と殆ど同時にコーナーリング入る高橋選手。
2台は軽く接触、共に姿勢を乱す!
この接触の機を逃さず“漁夫の利”を得た11号車がインから2台を抜きさり2位にジャンプアップ、それに14号車が続く。
だが不運にもアウト側の2号車は左側タイヤがコースから脱輪!スピードが鈍り、見る見る2台に差を着けられる。
幸いマシンにダメージは無く、追撃を開始するも残り周回も少なく、50周、単独4位でフィニッシュをむかえる。
惜しくも表彰台は逃したが、シーズン前半の残念なレースと異なり、ドライバー、ピットクルー共、中身の濃いレースに満足感は漂う。
2週間後の第8戦モテギにこのムードを持込、是非とも最終戦で再びファンと共に表彰台に集いたい。

決勝レース後のコメント

■渡邊エンジニア
ストレートに言うと僕としては、レースとしては良かったレースだと思います。2位で復帰して高橋さんのセッションで結果的に4位にまでなっちゃたんですけど、高橋さん自身のラップタイムと言うのはトップ5を走るぐらいのラップタイムで走ってたんですね。それが単純にまだトップ3に若干足りないと言うだけで、ただ・・すごい・・・。完全な・・若者たちのプロを相手にすごいレースして戦っているのは・・チョット・・僕・・感動しました。ええ・・正直。 内容は4番になっちゃいましたけど、僕的には・・すごい内容が濃いレースだったんじゃないかな。今回走り出しから高橋さんやっぱ速かったんで・・・イメージ的には以前乗られてた頃よりも、前回富士、今回のオートポリス・・ま~間違いなく進化してる・・・特にレースの精度が高くなってる様な気がします。ま~彼ら(14号車、11号車)もプロなんで、逆にアマチュア(高橋選手)に負けたんじゃ「プロじゃないじゃん」って話なんで・・そこは僕らも彼らを相手にレースしなくちゃいけないんですけど、そんな中、対等に渡り合ったってのはすごく評価されるべき事じゃないかなって・・・本当に・・僕は感動しました。内容的には良かったと思ってます。あとピットがすごく早くて、みんなもすごく精度良くやってくれたんで・・・あと加藤さんの方で・・すごく燃費がセーブできたんで・・ほんとにチョットしか給油してないですね。それも良かったかなって感じです。

■加藤選手
え~・・・(トランスポーター内で加藤選手のインタビューを始めようとしたら、高橋選手が入って来て・・・)高橋選手:「(僕が)戻って来たから喋れなくなったね。」加藤:笑
いえいえ何も考えて無かったんですよ。・・・レースか~?・・・あまり流れがよく分かってないんで・・・。
自分のところだけ言うと・・・10周目辺りで周りのペースが多分落ちてきてそこから勝負だと思ってたんですが、思ったよりなかなか(ペースが)落ちてこず、帰って(86号車に)蓋をされてしまって・・・結局(抜くのに)25周目まで掛かったんだね。(横から渡邊エンジニア「あれ速い」)・・・意外に速いですよみんな。そんな圧倒的なアドバンテージのあるコーナーも無いんで、相手がミスをするように誘って抜いてきたんですけど・・・。ただクルマは非常に良かったし、タイヤもすごく良かったんでうまくレースをコントロールして走れたおかげで、ピット作業短くできたんで、トータルで考えれば、良かったと思います。

■高橋選手
え~・・・(4位に落ち)皆さんには申し訳ない。(加藤選手、渡邊エンジニア横で笑)・・・もうそれだけです。(反省の為)チョット穴籠りします。