モータースポーツ

特別戦 JAF GrandPrix

2011シーズン 紫電
2011年12月18日

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JAF主催の「JAFグランプリ」は、1969年から始まり、かつては全日本選手権の1戦が組み込まれ、途中(71~73年)中断はあったものの、1990年まで続いた伝統の1戦でもある。
20年振りとなる昨年、「JAF グランプリ:フジスプリントカップ」として復活開催された。
レースはSUPER GT、フォーミュラーニッポン始め、F4、ヴィッツ等多くのカテゴリーのレースを盛り込んだ、ノンタイトル戦として行われる。
特にSUPER  GTに関しては、通常のレースとは大きく異なるのも興味深い。
レース周回が22周と100kmに満たないスプリントレースとなり、土曜、日曜に、それぞれ第1、第2レースとして行われ、第1、第2ドライバーが、ドライバー交代なしで、それぞれ単独でレースを行なうので、タイヤ交換も、給油もなし、ピットイン無しの純粋スプリントレースとなる。
スタートも通常のローリングスタートではなく、停車状態からスタートする、スタンディングスタートとなり、ファンにとっては、いつものGT戦とは違った面白さを味わえるレースとなるのだが、「エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電」にとっては厳しいレースとなるのである。

11月11日(金) 練習走行 / 雨

気温12度、冷たい雨となった富士スピードウェイ。
今日は午前練習走行と、午後から第1レース第2レースの予選が行われる。
各カテゴリーのレースやイベントでスケジュールがタイトな為、練習走行は1時間のみ。
午後の予選まで雨予報の為、この練習走行時間は重要だ。
だが加藤選手で始まったセッション開始から10数分後、最終コーナーでクラッシュ発生!赤旗で約15分程走行中断。
タイムスケジュールの関係から延長はなく、練習時間が短縮されてしまったので、走行再開後、2′04″679をベストに早々に高橋選手に交代。残り約20分を走り込む。
上位マシンは走行中断の前後、若干雨量が弱まった時点で2分を切り、57~58秒台にまでタイムアップしていたが、セッション中盤以降、雨脚が強くなり、以後殆どタイムアップはせず、高橋選手も2′07″952に留まる。

第1レース予選 / 雨

ここまでにフォーミュラーニッポンや、ヴィッツの走行もあったが、終始完全ウェットコンディションが続き、午後1時50分からの第1レース予選も迷う事無くウェット。
第1レースは高橋選手。
通常のレースにおいて、スタートドライバーや、予選アタックドライバーはセッション当日に申告を行うが、この第1、第2レースのドライバーはレース1ヶ月程前のエントリー段階で決定していることで、当日のコンディション等で変更はできない。
午前の走行とコンディションに変わらず、気温も路温も殆ど変化は無い中、高橋選手コースイン。
タイヤの温まりも悪く、3周目で2′01″103で18台中14番手。
上位10台程は既に2分を切り、56~57秒台に入る。
6周目に59秒台。
20分が経過、チェッカー代わりの500ボードが提示され予選終了、この9周目の58″478がベストで14番グリッドとなる。

第2レース予選 / 雨

スケジュール通りなら第1レース予選終了後15分程で第2レース予選が始まるはずだったが、500セッションの終わり頃に雨が強くなり、予選開始が遅れる。
だがその後も雨脚は衰えず、一部に霧も出始め、結局この日の第2レース予選はキャンセル、明日の朝一番に順延となった。

第1レース(高橋選手出場)予選後のコメント

■渡邊エンジニア
「完全ウェット状態だったんで・・・ドライとウェットだと、高橋選手の場合ウェットでのタイムの落ち幅は・・・例えば加藤選手と比べると(大きく)・・・、周りとの相対比較っていうと、ウェットは難しいコンディションと思うんで、なかなかタイムを出すことはできなく・・・終わっちゃたんですけど決勝は(予報では)ドライで走れるんで、どこまで挽回できるか?期待してます。ただ(明日の決勝は)今週初めてスリックで走る事になるで、これまた難しいと思います。レースが終わる頃にベストラップかもしれません。

■高橋選手
「タイヤの選択をミスしました。(笑)タイヤも悪かったし(笑)(横から加藤選手「コーナーよみきれずにセッティングが合いませんでした。(笑)」)チョットエンジンも不調だったし(笑)ガス欠症状出たし・・(笑) ま~決勝頑張ります。」

11月12日(土) 第2レース予選 / 晴れ

本日のスケジュールに影響を与えない朝7時50分、第2レース予選が始まった。
空は晴れ渡っているものの、夜半まで降り続いた雨で路面は乾かずハーフウェット。
選択肢としてはドライ、スリックタイヤか?浅ミゾのインターミディエイトか?といった所。
一旦どちらかで出て、コースコンディションを見極め、途中交換としたいところだが、走行時間が20分間から15分間に短縮されたので、ひとつ間違えば共に中途半端に終わってしまう。
しばらくコースを見て、加藤選手はインターミディエイトを選択。
渡邊エンジニアからは「タイヤを(スリックに)換えるなら、コースインした周に決めてください。ストレートを通過(2周目)したらもうタイヤが温まりませんよ。スリックの準備はしておきます。」と念を押されコースイン。
だがすぐに「これでOK!」と加藤選手。
案の定、スリックでコースインした数台、多くは上位に入ると思われるマシンは続々とピットに戻って、インターミディエイトタイヤに交換し始めた。
その間に加藤選手は計測1周目58秒、2周目55秒、3周目54秒台でラップモニターの最上位を占める。
マシンが走る事で、コースコンディションも徐々に良くなり他のマシンもタイムアップし一旦3番手に下がるも、6周目53″609のベストタイムで2位に上がる。
だが加藤選手のアタックが終わった最終ラップに入り、FIAGT勢がタイムアップ、4番手に留まった。

第2レース(加藤選手出場)予選後のコメント

■渡邊エンジニア
「ん~~~、スリックで行くか?インターミディエイトタイヤで行くか?微妙なとこだったんですが、うちはインターで行って・・最後の最後(ラインが乾いたら)スリックで、もしタイムが出せるという形で終われればそれが間違いなくトップタイムを取る流れだと思っていたんですが・・・ん~まだ走り始める段階では路面がまだ路面が濡れてたんで・・・うちとしてはインターで出てって、ドライバーに路面判断してもらって、それでスリックに換えようという考えでクルマを出したんですけど・・・ま~予選の時間も本当は20分あるところが15分に短縮された上に気温も低いんで・・・ドライバーも15分では乾かないだろうと言う事でインターミディのまま走り続けた感じですね。ま~富士だとどうしてもパワー勝負のコースなんでうまく行っても3列目・・・か4列目6番手、7番手辺りかな・・・といったところだったんで・・・そういった不安定な路面状況中での加藤選手のドライビングが光ったと思うんです。それで結果的に2列目4番手を獲得できてよかったなと思います。でも明日(決勝レース)は間違いなくドライで走れると思うんで、一番怖いのは1コーナーまでに何台か拔かれるんじゃないかって事ですね(笑)。まっ予選に関しては良かったと思います。

■加藤選手
「予選は(雨は止んでいるが)ウェットコンディションだったので、ドライで行くか?インターミディエイトで行くか、散々迷ったんですが、最終的に自分のいままでの経験を信じて、タイヤをチョイスさせてもらって・・・それが何とかいい方向に当たったんで・・・か・な・り(力強く)富士としては良い、2列目4番手ですね!獲得できました。レースはまた明日ドライなんですけど、それはそれでチョット楽しみたいなと思っています。

第1レース決勝 / 晴れ

朝の濡れた路面も、ラインから大きく外れた場所以外は乾き、ほぼドライとなった。
12時45分からの決勝レースに向けスタート進行が始まる。
通常のレースなら、決勝当日の朝30分のフリー走行があるが、今日はこのスタート直前の8分間のウォームアップ走行だけ。
ピットから離れ、1周でメインストレート上のグリッドに着くのだが、2周以上走る場合はピットロードを減速して通過して行く。フォーミュラーニッポン、F3等で行われるウォームアップの手順である。
このレースウィークで始めてドライコンディション、スリックタイヤで走る高橋選手にとっては最重要とも言えるウォームアップ走行である。
ピット前を2回通過しグリッドに着く。
フォーメーション開始3分前。
高橋選手の健闘を祈り、メカがグリッドから離れる。
22周のレースはスプリントレースかもしれないが、高橋選手にとっては9月の第6戦富士で加藤選手から託された後半スティントは17周。
それよりも多いロングレースである。
フォーメーションを終えグリッドに着く。
順次点灯するレッドシグナルが5つ、そして全消灯!スタート!
車重も重く、パワーの乏しいエヴァ紫電、加速が鈍い!
後方グリッドのマシンが、左右から視界に入り込み、1コーナーの進入時点で最下位に落ちてしまった。
スタート直後に26号車(ポルシェ)ストップ、そしてヘアピン進入で41号車(フェラーリ)をパスし16位。
更にヘアピン立ち上がりでは66号車(アストンマーチン)がスピン、Bコーナー(ダンロップコーナー)立ち上がりで31号車(カローラ)がスローダウンと、波乱のオープニングラップは14位で通過。
3周目の1コーナー出口では22号車(VEMAC)を抜き13位。
そして同周最終コーナーで87号車(ランボルギーニ)をインから抜くものの、ストレートで抜き返される・・・っが、1コーナーブレーキングで再び抜き返し12位へと、徐々に追い上げる。
タイムも46秒台と良いペースだ。
だが前を行く74号車(カローラ)は45?46秒台で既に6秒差、抜いた87号車は高橋選手と同様46秒台。
バックモニターから消えない87号車。
前を追うより、後ろから逃げ切らなくてはならない。
ストレートで迫る87号車、コーナーで逃げる2号車エヴァ紫電、高橋選手。
ポジションをキープしたまま10周目ストレートエンド、ブレーキング、インに着けない!オーバーラン!
エスケープゾーンに助けられコースに戻るが、87号車に2秒ほど先行されるがひるむ事無く追撃!
47秒台で逃げる87号車に、変わらぬラップタイム喰らい付きチャンスを伺う高橋選手。
14周目に入ると3周目に抜いた22号車が迫り、新たなバトルとなる。
1コーナー入口でインから22号車に先行されるが、立ちがリで抜き返す。
100R、ヘアピン、Bコーナーから終盤テクニカルセクションは押さえきるが、ストレート再び先行され、そのまま1コーナーへ・・・ポジション13。
タイヤがきつくなり15周目辺りからタイムが49秒台に落ち、一旦差が広がるが、18周目から持ち直し47秒台に戻すが届かず22周を終え13位でチェッカーとなる。

第1レース(高橋選手出場)決勝レース後のコメント

■渡邊エンジニア
「チョット苦しかったですね・・レース自体は・・。ま~前回(モテギ)もそうだったんですけど、予選までがウェットで、決勝がドライ・・・。でいきなりドライを決勝で走るってのは高橋さんにとっては練習が全くできない状態で決勝をむかえる事になっちゃったんで、そこが・・ま~・・しょいうがいんですが・・・苦労しちゃったかな。っていう感じでした。あとは・・・何か・・ん~・・・若干クルマがオーバーステア・・曲がり過ぎな傾向がチョット出てたんでアジャストして、明日加藤選手の第2レースに繋げたいと思います。また(高橋選手にとっては)普段のレースよりチョット多めになるのかな・・・距離にもよるけど。今回に関しては他のチームにとっては完全にスプリントレースのガチンコ勝負なんで、ピットワークなどが順位に反映できないので・・・なかなか難しい所です。クルマも・・富士なんで・・特にこのクルマ(紫電は)ストレート遅いんで・・・その辺り難しいところがありますね。明日の第2レース。加藤選手は4番手なんですが・・・・厳しいと思いますが、頑張ります。

■高橋選手
「スタート失敗して・・・(横から加藤選手「紫電としてはスタートはしょうがないです。」)失速して・・スタートで全部拔かれて、1コーナーでドベになって、少しは挽回したけど・・・また抜いたり拔かれたりで・・・レースとしては面白かったけど・・・ま~あんなもんです。」

11月13日(日) 第2レース決勝 / 晴れ

昨日の第1レースと同様の手順で午後1時35分、8分間のウォームアップ開始。
このレースウィークでドライ、スリックで走行していないのは、この第2レースの加藤選手も同様だが、百戦錬磨の加藤選手にとっては大した問題では無い。
だがこのウォームアップ走行で「アンダー(ステア)が出る。」との無線連絡。
渡邊エンジニア「(時間的に)ピットでは何もできない。グリッドでダンパーを触るか、リヤガーニー(ウィング装着してある空力パーツ)を外す程度。」
だが2周のウォームアップ走行の結果、「現状キープでOK」となった。
4番グリッドに着くと、すぐ前2番グリッドの66号車(アストンマーチン)がいない。
どうやらトラブルでピットに入ってしまい、仮に修復できたとしてもピットスタートとなる。(結局出走できなかった。)
これはかなり有利となり、表彰台が1歩近づいたと思われた・・・・。
1周のフォーメーションを終え、前方が大きく見開いたグリッドに着き、レッドシグナルが消灯!スタート!
ところが何と加藤選手にあるまじきエンジンストール!
直ぐ再始動し動きまだすまで約3秒間、後方14台のマシンが先行するには十分な時間。
前方グリッドでのエンジンストールは、追突される危険がある。
だがうまくよけてくれたので、幸いにもレースに加わることができたが、1コーナー進入時には最下位。
折角の4番グリッドは一瞬にしてフイになった。
ところがオープニングラップは接触で62号車(スバル)が遅れ、トラブル抱えたマシンもあり、いきなりポジション14!
2周目12位、3周目10位、6周目には8位と快進撃!
トップは11号車(フェラーリ)以下、4号車(BMW)43号車(Garaiya)、33号車(ポルシェ)、27号車(フェラーリ)86号車(ランボルギーニ)、そして7位87号車(ランボルギーニ)からマイナス2秒に2号車エヴァ紫電が続く。
だが7周目を終えたストレート、オープニングラップで遅れた62号車が45秒台でエヴァ紫電をパス、46秒0とここまでのベストタイムで走る加藤選手もこれにはついて行けない。ポジション9。
9周目、前の87号車をエヴァ紫電得意の100Rでアウトからパス、ポジション8に戻す。
7位だった62号車は、44?45秒台と驚異的なラップで6位の86号車を飲み込み、その後5位の27号車とも順位を入れ替えて行く。
12周目には、86号車を1秒の射程内にとらえる。
47秒台から、46秒台にペースを上げる86号車だったが、加藤選手は45″496とベストを更新。
翌13周目も86はベストタイム46″215で逃げるが、加藤選手も45″530と、勢いは完全に加藤選手!
14周目87号車と同様100Rアウトから86号車をパスし、次なるターゲットを7秒先の27号車へと移す。
残り周回は8周。
47秒台の27号車に対し、45秒台で追う加藤選手。
ストレートで、1コーナーに入る白い27号車の横腹が見える。タイム差は6秒!
追いつくには十分と思われたが、27号車は16周目入ると46秒台にペースを上げ逃げに入る。
変わらず45秒台で追う加藤選手。
Bコーナーでは入口に2号車、出口に27号車、タイム差は約4秒。
20周目には27号車45″797、2号車加藤選手44″949と共にベストタイムをマーク!
タイム差は1.8秒差にまで迫り残り2周。
21周目45秒フラットの加藤選手に対し、46秒前半の27号車、最終コーナーでは殆どテールtoノーズとなるも、パワーを活かしストレートで逃げ切る27号車。
ファイナルラップに入る。
仮に27号車を抜いても、最終コーナーからコントロールラインまで逃げ切れるリードが作れるか?
ストレートで大きく離されるものの、1コーナーブレーキングで一気に詰め寄り、得意の100R、出口からヘアピン進入でついにオーバーテイク成功!・・・っと思われたが、ヘアピンから、Bコーナーまでのフル加速で再び先行される。
Bコーナーの進入で激しいラインの奪い合い!
イン側についた加藤選手とアウト側の27号車、殆ど並走状態でシケインを抜けるが27号車の方が脱出が僅かに速い!
続くプリウスコーナー、パナソニックコーナーでも追撃を緩めぬ加藤選手。
だがここからではミスが無い限りオーバーテイクは不可能。
インからプレッシャーを掛けるが、最終コーナー出口は前周同様27号車が先行。
見る見る離れる27号車が先にチェッカー!
2号車エヴァ紫電は0.5秒遅れで惜しい7位チェッカーを受ける。

第2レース(加藤選手出場)決勝レース後のコメント

■渡邊エンジニア
「ま~~スタート失敗したのが全てじゃないかなと思います。ラップタイムも・・・クルマのバランスとか、タイヤのグリップとか加藤選手言ってましたが、周りから考えるにそんなに悪くなかったんじゃないかなと・・・個人的には思っています。前にクルマ(27号車)がいたとはいえ、特に18周・・・22周のレースですけど・・・残り5周に関しては圧倒的に全体の中でも加藤選手が早い状態で・・・ただやっぱり富士の様な特性のコースにおいて、紫電が不得意だと言われる部分がモロに出てしまった感じがする。抜かれはするが抜きにくい。ストレートスピードの差が20km以上ある様な状況でクルマ走ってますんで・・・あれでスタートミスって後ろに落っこちゃった、てのが全てかな。アベレージラップてのはトータルでも3番4番辺りだったと思うんで、表彰台充分狙えたかなと思うんですけど・・・。ま~しょうがないですね。見てた人は楽しかったって言ってくれてたんで(笑)エンターテイメント的な部分ではよかったんじゃないですか・・・ま~しようがないですね・・これは。ミスしたくてしてるわけじゃないですし・・・でも大方、内容的にはすごく良かったと思います。」

■加藤選手
「・・・・ま~今日のレースはスタートが全てでしたね。え~・・動き出したんですが回転がおっこって。(横から高橋選手「素直に失敗しましたって言えば(笑)」)エンジンが止まってしまって。すぐにスターターで掛けたんですが・・・間に合いませんでしたね。レースも序盤から結構激しいバトルをしてて、抜けた頃には前はもうだいぶ離れちゃってて7位までしか上がれませんでした。悔しいですけど・・・まとめ切れないのは今シーズンの流れの最終的な一端なのかな・・・と?来年に向けてチョットもう一度いろいろ考えなおして・・・対策してまた来年迎えたいと思います。1年間ありがとうございました。」