モータースポーツ

2014:SUPER GT第2戦 富士スピードウェイ

GTレースレポート
2014年05月20日

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SUPER GT第2戦 5月2日 設営日

飛び石となったゴールデンウィークのほぼ中日、第2戦は500kmのロングラン。
最低2回のピットストップが義務付けだが、燃費では厳しいMclarenMP4-12C、何とかこの2回だけで済ませたい。

昨年は2回ストップでいける計算でレースに臨んだが、中盤トラブルに見まわれ、確実なデーターはとれていない。
ピットストップが2回か?3回となるかは、勝負の大きな分かれ目となる。

ここ富士は昨年末のJAFGPにおいて加藤選手により優勝。
「シンティアム・アップルMP4-12C」の得意とするするコース。
加えて高橋選手も、もっとも走り込み、今やホームコースともいえる得意なコース。
マシンの信頼性も一段と向上し、トップスピードも大いに活かせるこのサーキット。
シリーズ戦初ポイントを目指したい。

5月3日 プラクティス・予選

好天で迎えた土曜日プラクティス。
シーズンを通じて、同じスケジュールとなるプラクティスの走行時間は500・300混走100分+それぞれのクラス占有10分。
既に2月のテスト走行で多くのデーターを得ている事もあり、またそれを元にタイヤもできあがり、基本的なセッティングも万全!
加藤選手により走り出しから好タイムをマーク。計測3周目の1′39″156はクラストップ。
その後、ソフトタイヤにも代え、38″906まで更新、ベースセッティングも順調な仕上がりの為、高橋選手に交代、マイレージを稼ぐ。
1回のピットインを挟み23周を走行した高橋選手。
41秒台から直ぐに40秒台へと入れ安定したタイムを刻む高橋選手、だが40秒台中盤・・・区間タイム、セクター1、2と更新するも、セクター3がまとまらず39秒台には入らない。
一旦40″429までマークしたところで加藤選手に再び交代し最終確認、そして10分間の300占有走行は高橋選手がNEWタイヤでアタック。
3周目に40″037のベストをマークするも、あと僅かながら39秒台には入らない・・・だが、予選での更新に自信を見せる。
結局プラクティスは、トップは3号車(GT-R)38″835、2番手9号車(ポルシェ)、そして4号車(BMW)に続き、先の加藤選手のベストタイム38″906でクラス4番手となり、以上トップ4台が38秒台となる。

上位グリッドを争うQ2予選への進出をかける、15分間のQ1予選は、加藤選手の出走で定刻の午後2時から開始された。
午前のプラクティスから5℃以上上がった路温は35℃。
タイヤのウォームアップ周回を減らせるので、セッション開始から約5分が経過してピット離れた加藤選手。
1周目44秒台、2周目42秒台で流し、もっともグリップが上がるであろう計測3周目、1′38″109のベストタイムで2番手タイムを叩き出し、上位13台が進むQ2への権利をほぼ確実にし早々とアタック終了。
このQ1、次のQ2いずれかの使用タイヤが決勝のスタートタイヤとなる為タイヤを温存する。

無論ここでの順位は、グリッドには影響しないが、「シンティアム・アップルMP4-12C」のポテンシャルを見せつける。
続くQ2予選は、Q1出走、上位13台により争われる。(内1台、11号車(メルセデス)はトラブルにより出走せず)

セッション開始と同時に高橋選手コースイン。
計測2周目には“公約”通り39秒台へ入れ、39″744は暫定2位。
連続アタックの翌周、セクター1まではベスト更新となるも、セクター2の途中、ヘアピンでのスピン車両が、前方で再スタート・・・その為やや速度が鈍りこの周回はクールダウンに・・・38秒台はお預け(本人は幻の37秒台とのこと・・・)となり、翌周再アタック。
39″727、そして39″448と着実にタイムを更新するが、結果は10番手。

アタック周回の増えたQ2タイヤ、スタートタイヤとなるかもしれないタイヤとしては負担が大きい。
だが高橋選手のタイムアップは、それを上回り、決勝レースへの期待を大きいものとした。
(結果的に予選後の抽選で、Q2使用タイヤが決勝スタートタイヤとなった。)

明日の決勝10番グリッドは、このマシンとなって、シリーズ戦では最高位グリッド。
マシンの信頼性も昨年とは比較にならないほど格段に向上し、今日の走行を見ても、トラブルの兆しすら見えない。

500kmの長丁場となれば、レースに何かが起こる可能性は大きいが、何かをチャンスに変えるポテンシャルも持ちわせたチームである。
決勝レースご期待ください。

5月4日 フリー走行・決勝レース

前戦開幕の岡山も含め、今シーズンは天候に恵まれているようだ。
第2戦富士、今日も快晴。雨の心配は全く無い。

そうした事もあってか、このゴールデンウィークの決勝レース日、朝のフリー走行から多くの観客が訪れており、午後のフリー走行までには更に増えることだろう。
午前8時30分から、30分間のフリー走行は、既にレースの作戦は決まっているので、決勝シミュレーション。
加藤選手の走り出しで、まず高橋選手に交代、そして2度目のピットインで加藤選手に交代しチェッカーまで・・・
昨シーズン途中(鈴鹿1000km)から、燃料タンク容量が多くなり・・・それまでGT3マシン標準タンクが大きくても110Lに制限されていたので、詰め物をして減らしていたが、それらが取り除かれMP4-12Cは125Lになり2ピットでも充分500km・・300クラスはおそらく460~470km・・・は走り切れる事は判っており、作戦の自由度は若干広がった。

満タンでのフリー走行でもマシンのバランスはよく1′38″929と、31号車(プリウス)に次ぐ2番手タイムで、38秒台はこの2台だけ。
高橋選手も40″554と悪くない・・・どころか、フリー走行後のサーキットサファリのフリー走行において、40″333の8番手タイムをマーク。
レースラップとしては十分すぎるタイム。
加藤選手がリードを築き、高橋選手がキープできれば、長い給油時間を差し引いても、充分ポイント圏内どころか、表彰台も狙える位置にある。
昨秋のJAFGPの優勝がフロックではなく、これが本来のポテンシャルだ!と言わんばかりの快走ぶりである。

今回スタートタイヤ(昨日のQ2予選使用タイヤ)が、ソフトの為、午後から気温、路温が上がった場合のタイムの落ち込みが若干心配ではあるが、良いレースが期待できそうだ。

午後2時の定刻、今シーズンから加わったウォームアップ、そしてフォーメーションラップと2周の後レーススタート。
長丁場とあって、500始め各マシン、オープニングラップは波乱なく、加藤選手は10位、だが2周目に入るストレートで4号車(BMW)をパス!
その2周目には3番、5番グリッドから下がってきた55号車、0号車(共にCR-Z)のBS勢、序盤にタイヤが厳しいのかタイムが43秒前後・・・それに対し41秒台の加藤選手が、再びストレートで2台揃って抜き去り7位へとジャンプアップ。
更に3周目、トラブルを抱えたのか?61号車(SUBARU BRZ)が下がってきて6位へ・・・。
ところが4周目に入ったストレートで、中団グループにいた88号車(ランボルギーニ)が、前行くマシンと接触しスピン!!ガードレールに激突!!前周りが大破。
すかさずセーフティーカー(以下:SC)が入り各ポストイエローコーション。
幸い88号車の青木孝行選手は自力でマシンから降り、手をふり無事をアッピール。
5周を終えストレート上で500、300それぞれ1列となり一旦ストップ。
その後500、300の順で再スタートするものの、ストレートエンドに散乱した破片の撤去の為、3周に渡りSC走行。
その間にピットインは可能だが、この序盤でピットに動くマシンは無い。
SCが退去、レース再開となった9周目、ストレートで前を行く86号車(ランボルギーニ)を抜き去り5位!タイムもファステスト1′39″730と、ここまで唯一の39秒台。
10周を終え1位、2位は3号車、30号車(共にGT-R)、3位は7号車(BMW)、そして前を行くのは31号車(プリウス)、1秒差で追走する加藤選手2号車、この5台が4秒内の集団になってきた。
トップ3が40秒後半に対し、31号車と加藤選手は39秒台。

13周目に31号車が3位の7号車を攻め落とし順位を入れ替え、翌周その7号車を、加藤選手がストレートでパスし4位へと上がり、トップとは2.7秒差。
唯一39秒台で飛ばす、31号車と2号車加藤選手。
この2台がトップ集団にグイグイと切り込んでいく。
14周を終え、トップから3号車、31号車、30号車、そして2号車加藤選手。
15周目には加藤選手も30号車を抜き3位へ・・・17周目に入ったストレートエンドで2位3号車をパス!トップ31号車に続き2位へと上がる。
ところがここで500クラスのマシンから煙が上がり、2コーナー立ち上がりのセーフティーゾーンにストップ、ドライバーは無事脱出したが、白煙と黒煙が上がり、オフィシャルが消火活動に入る、
その為再び全ポストイエローコーション、19周目に入るストレート上で、先のSC介入時と同様、各クラス隊列で停車しSC先導で再スタート。

だが、先のSC先導走行と大きく異なるのは、翌19周目に入り、ピットレーンオープンとなった時点で、約半数の9台がピットに入った事だ。

この500kmレース、2回のピットインが義務付けとなっているが、それとは関係なく、2回は少なくとも給油の為、ピットインが必要なのである。
その1回目のチャンス到来なのである。
SC先導走行時にピットインを行えば、大きな差を付けられる事なく、隊列に復帰できるので、ルーティンピットが“近づいているなら”この機にピットインをするのは常套手段なのだ。

だが2号車加藤選手は、ピットインしない・・・のではない、できないのである。
ピットイン・・・この場合は給油・・・のタイミングは、ゴール周回との逆算で決まる。
今回のレースは300クラスは仮に103周(500は110周:500km)と想定し、仮に満タンで走行できる周回を40周とすると、レース中、2回の満タンで走行できるのは80周・・・とすると、単純計算でスタートしてから103周-80周=23周以上走ってからでないと、2回の満タンでは走り切ることはできないのである。
だが満タンで42周走る事ができるならば103周-84周=19周走った時点で満タンにし、ガス欠まで走って満タンにすればゴールまで走り切る事はできるのである。
これができる燃費のマシンはこの19周目にピットインをしたのであり、できないマシンはそれらのマシンを横目に見ながら、SC走行に付き合わなかればならなかったのである。

2号車マックはそれができないのである。
せめて21周辺りであれば、満タンにし、エコ・ドライブで走り切れるかもしれないが、この周回で満タン給油をしても、一か八かの掛けににすらならない。
レースにならない程のスロー走行なら別だが・・・
加藤選手から

「なんとならねーのかよ~!」

と、ボヤキ無線が入るが、こればかりはどうしようも無い。
ここでSCが入った不運と、マックの燃費を恨むしか無い。

20周目SC退去・・・だが、ここからの加藤選手が鬼神の走りを見せる。
やや曇りになり、路温が思ったほど上がらない為、また2回のSCでタイヤを温存できた事で、タイヤがヘタらず、燃料も少なくなった事もあってか、やけくそか?(笑)ファステストラップを塗り替える39秒台を連発、24周目のストレートエンド、ブレーキングで31号車を抜き去りトップに立つ。
その後も他のマシンが40~41秒台で走る中、異次元の走りを見せ、35周時点でまだピットインをしていない、2位31号車からも7秒のリードを広げるものの、その程度では、我々のルーティンピット後には、下位に下がることは明白だが、少しでも上位を狙う力走である。

2回のSCにより、燃料がやや楽になった為、40周を過ぎても一向にタイムが落ち込まない加藤選手を頼り、予定していた1スティントを延長、ガス欠まで引っ張る事に・・・無論これだけの周回を走られるのはSC走行が有った為で、レーシングスピードではとても40周は走れない。

44周目途中、LoFuelランプ点灯!
既に準備を整えていたピットクルーが待ち構える。
タイヤ4本交換、給油は50秒ほどとさすがに長い・・・加藤選手が高橋選手にアドバイスを告げる等、ドライバー交代にも余裕がある。
ピットアウトの順位は・・・・9位!!ポイント圏内に踏みとどまっている。
10位65号車(メルセデス)2秒後方で41秒台、11位31号車(プリウス)は更に7秒後方だが39秒台、高橋選手はNEWタイヤで42秒台、そして41秒台へとペースを上げるが、既にタイヤができている2台が背後に迫る。
49周目、31号車が65号車をかわし高橋選手の後方コンマ6秒。
40秒台の31号車に対し41秒台の高橋選手・・・時間の問題か・・・。
50周目、ヘアピンを立ち上がり、右300R先のBコーナー、インを行く31号車と、アウトから入った2号車のラインが交錯!!
2号車が押される形で90度スピン、それに前を塞がれた31号車、共にストップ。
すり抜ける65号車が漁夫の利を得て通過。
2号車は右のフロントフェンダーが少し損傷したものの、大事に至らず2台とも再スタート、10位で復帰する。31号車は13位・・・だが12位のマシンにトラブルが発生し労せず12位へ。
その後数周、41秒台で走行する高橋選手と、それに抑えられる形で31号車が続くが、54周目10位のポイント圏内を明け渡し11位へと下がる。
55周を過ぎた辺りから2回目のルーティンピットが始まり、60周目9位、見かけ上の順位が上がって行く。
高橋選手も燃料が軽くなったスティント中盤以降は40~41秒台で周回を重ね、おそらくポジションはキープできていると思われる。
高橋選手は31周を予定、残り周回を計算、それに見合う給油時間を算出。

一見燃費とは無縁の様に思われる、モータースポーツだが、特にレース中、給油のあるSUPER GTでは重要である。
燃費計算は、プラクティス、予選、フリー走行、そしてレース中も常に把握しており、バラツキを補正。
燃料タンクも満タンで、実際に何リットル入るか?それを実際に何リットル吸い上げられるか?給油時間は秒当り何リットルか?
これらは、使い慣れたマシン、給油機器、サーキットでも、毎回計測する重要データーなのである。
それらから、必要な燃料、給油時間を算出しピットクルーが共有し作業にあたるのである。
余裕を持たせ1~2秒余分に給油すれば問題ないが、ここでの1秒も、ドライバーがコース上で削る1秒も同じ事。
ギリギリまで削るが、削り過ぎて最終ラップ付近でガス欠によりレースを失ったチームも珍しい事ではない。

75周を終え、2回目のピットインではタイヤを左側のみの交換として、ピットストップの時間短縮、加藤選手を送り出し、リセットされた順位は・・・10位!ポイント圏内をキープ!!
タイヤ2本交換にも関わらず、飛ばす加藤選手。
直ぐに40秒台から39秒台へ・・・ピットインのマシンもあり79周目9位、81周目には8位へと上がる。
12秒前を行く7位は、序盤、中盤とズッとバトルを続けていた“因縁?”の31号車、この2台だけ39秒台で飛ばし、83周目には加藤選手39″337のファステストラップをマークするも、一進一退で10秒以上の差を詰められない。
しかも、既に5位にも50秒近く離され、“何か”が起こらない限りポジションアップは望めない。
ところが89周目6位を走っていた55号車(CR-Z)突然ピットイン!給油を始めた。おそらく何かの理由でガス欠となったと思われる。(レース後、給油装置のトラブルで2回目給油が正しく行われなかったらしい)
これで棚ボタとはいえ7位へ・・・。
加藤選手「タイヤがきつくなってきた~。」と無線が入る
90周近くになるとタイムは40秒台へと落ちるが、決して遅いペースではない。

100周を超えた時点で、トップ4号車(BMW)とは57秒差、3位の0号車(CR-Z)とは53秒差・・・2回目のSC時にピットインできていたらどこまで食い込む事ができたか?レースにタラレバは禁句だが、トップ5は、全てあのSC時にピットに入っている。
燃費が悪いながら、綿密に立てた作戦で表彰台に絡むレースを狙っていた今回、昨年の9月の富士第6戦と全く同じシチュエーションでSCに翻弄されてしまった。

レースはクラストップと同一周回ながら、500のトップが間に入ってしまった事から6位までが102周、2号車加藤選手は1周遅れの101周となってしまったが、堂々7位フィニッシュ!
昨年デビューから、SUPER GTシリーズ戦において、初のポイント獲得。
今シーズン、“行ける”手応えを実感できるレースとなった。

画像はFacebookアルバムで・・・。