モータースポーツ

Super GT 2006 Series 第6戦 -鈴鹿サーキット-

GTレースレポート
2006年08月21日

モータースポーツは、発祥の地、ヨーロッパで100年以上歴史を持つが、日本のモータースポーツの歴史はその半分の多分50年位かと思う。その中でも… 6list-b.jpg


SUPER GT 35TH INTERNRTIONAL Pokka1000km


2006年8月19・20日
サーキット 三重県 鈴鹿サーキット
マシン名 プリヴェチューリッヒ・紫電
ドライバー 高橋 一穂・加藤 寛規

8月17日(木)設営

モータースポーツは、発祥の地、ヨーロッパで100年以上歴史を持つが、日本のモータースポーツの歴史はその半分の多分50年位かと思う。その中でも40年の歴史を持ち、今年で35回を迎える鈴鹿1000km耐久レース。それに新たなる1ページを飾るべく今年は14年の歴史のGT戦がシリーズの1戦として加えられた。
VERNO TOKAI DREAM28(このレースから「Cars Tokai Dream28」に改名)のGT参戦、6年の歴史の始まりは、01年鈴鹿1000kmからである。
これまで02~04年はクラス3位。昨年はクラス優勝(総合でも3位)と、好成績を収めてきたが、それはこのレースがシリーズ戦とは無縁のイベントレースの為、GT300クラスへの参戦マシンは常に10台にも満たず、「当たり前」的な結果(自信過剰
しかし今年からは20数台のライバルがひしめく激戦!1000kmの戦い方を熟知した活躍ができるか?どうか?
現代のマシンにとって、1000km程度は、耐久レースとは言い難く、今のエントリー面子からすれば、1000kmスプリント、通常のレースを連続3回やるだけに過ぎない。


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ポッカ1000km用ルーフエアインレット。

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屋根からホースで導かれる。

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ラジエターもこのレースを機会にNEWへ。

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今レースからエントラント名も「Cars Tokai Dream28」に変更。


また通常のポイント配分に加え、この1000kmは5ポイントが加算され、通常10位のポイント圏も15位にまで拡大されるなど、この1戦での順位は、後半のランキング争いを大きく左右する分岐点となるだろう。
ところでこのレースには第3ドライバーが登録可能(通常も登録はできるが、戦略上出番は無い。)だ。昨年は今年からペアドライバーとなった加藤寛規選手を起用し、クラス優勝を果たしたが、今年はF1に次ぐカテゴリーと言われるGP2で、目下ヨーロッパ活躍中の若手日本人ドライバー吉本大樹選手が抜擢された。
彼とは04年12月にカルフォルニアサーキットで開催されたGT番外戦オールスター戦で組んでおり、翌年から渡欧、GP2に3戦している。彼が今年日本で走るのは初めて。これまた大いに期待していいかな・・・。


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現在GP2で活躍中。F1に最も近いと言われる吉本選手。

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吉本選手とは04年カルフォルニア戦以来2回目。

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3人のドライバーのサイン入りタペストリー。

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今回よりウェイトは70kgに・・・。厳しい。


8月18日(金) フリー走行
午前晴れのち雨 午後晴れのち雨
路面 午前ウェット 午後ドライ→ウェット夕方ウェット

1000kmとは言え、タイムスケジュールに大きな違いは無い。本日日没直前に夜間セッションとして1時間追加されているだけである。
行うメニューも大差は無いが、久々に“ハコ”に乗る吉本選手に“初”紫電に慣れてもらう事、より緻密な燃費、タイヤの磨耗等長丁場レースの為のデーター取りと言うか、再確認が重要である。
この季節では朝から30度超えは珍しい事ではないが、今朝はやや雲が多く、30度を下回り過ごし易い。決勝日の天候と余りにかけ離れるとデーター取りも意味が無くなるのだが・・・。
正にその通り。セッション直前に雨。それも突然、しかも尋常じゃない。コースオープンとなっても、我々を含め、レインセッティングへの変更の為、しばらくは誰もコースインしない。それほど突然だった。


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雨は予想されていたが、朝は晴れ。もつと思ったが・・・。

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こうしてセッション前に“おしながき(メニュー)”が伝達される。天候、赤旗等により臨機応変に修正される。

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セッション開始10分前に突然この雨。

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急遽レインセッティングに変更。

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コースオープンとなったが、誰も走り出さない。(出せない。)


コースオープンから10分程してまずは加藤選手がコースイン。雨は小降りなってきたが、足をすくわれコースアウト車両も発生。3回の赤旗中断や、再びの豪雨等で全くもっての慌しいセッションとなった。
加藤選手の2′25″463はタイムとしては4番手それ程悪く無さそうだが、殆どが慣熟走行に近い走りで、目安にもなり難いか・・?しかしそんな中やはりDL・MI勢が上位を占めたが、ハンコックが23秒台でトップだったのが印象的であった。
結局このセッションでは吉本選手のドライブするチャンスは無く、と言うか、いきなりのドライブが雨では慣れも何もあった物では無く、午後からの晴れ予想に期待しドライコンディションからドライブしてもらおうと言う事に・・・。


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まずは加藤選手からコースイン。吉本選手も待機中。

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雨は小降りとなったが、日が差すではなく、
このセッション、ウェット走行は必至。

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しかし再び豪雨。他コースアウト車による赤旗でセッションは分断される。

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続いては高橋選手がドライブ。

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幾度かのピットイン、セット調整が行われる。

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空も明るくなり、ドライに向かいつつあるが・・・。

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このコンディションでは・・・と、吉本選手の走行は午後にお預け。


昼前には雨は上がり、日差しも出てきた。2時10分と予定より5分早く始まった2回目セッションはドライで行けそうだ。セッション開始直後に、赤旗中断。しかしこれは再スタート方法の手順のシミュレーションであり、前回モテギの合同テストでも行われたが、レースとしては今回の決勝から採用される。5分速いスタートはこの為だった。
そのまま加藤選手によりフリー走行が再開され、1周計測を終え、予選、決勝に向けたマシン作りに入ろうかと思った直後、逆バンク付近でスロー走行となった2号車をモニターTVが映し出した。無線でも連絡が入り、「エンジンが止まった」との事。そのままコース上に停止してしまった為、赤旗中断となってしまった。(因みにこういうスロー走行からの“コース上での停止”はペナルティの対象となる。)
マーシャルカーに牽引されて戻ってきたマシンを引き取りにメカが走る。単純にフューエルラインのトラブルで燃圧(燃料を送る圧力)が落ちた事が原因で、トラブル箇所も特定でき、応急処置で対処。90分のセッションの中貴重な、約25分を空費し再びコースへ。


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午後、再びドライ用にセットに戻す。(勿論カナードだけではない。)

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ドライタイヤを装着、加藤選手がコースイン。

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ここ鈴鹿でも赤旗再スタートの練習が行われる。

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それを見守る吉本選手。「早く乗りたいな」の図。

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ところが、この貴重なセッションでマシンがストップ。牽引され戻ったマシンを引き取りに・・・。

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原因はフィーエルライン系と判明。いつもながらレース中でなくラッキー。


残り時間も少なくなり、高橋選手に交代。ドライ走行の感触を掴む事だけを目的に3周だけ計測、サッサと吉本選手に交代しようかと思った頃なんと雨!午前の雨ほどでは無くパラパラといった感じだが、吉本選手スリックまま走ってもらった。
無論攻め込む事などできる状況では無いし、スリックで走るには辛い状況になってはきたが、全くドライブしないよりはマシと言った程度の走行しかできない。


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残り25分ほどしかない。高橋選手に交代。

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計測3周で13秒台。残り時間は僅か。

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吉本選手、紫電初ドライブ。
しかしこの頃には既に雨が・・・・。

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イン、アウト含めたった4周のフィーリングを加藤選手とエンジニア、シンタローと確認しあう吉本選手。


午後2回目セッションで出した2′10″486が本日のベストタイムとなった。と言うのも、1000kmだけの夜間セッションが始まる、少し前5時半頃から再び雨!しかもこれまた尋常じゃない豪雨。このセッションはとにかく走れていない吉本選手だけの占有走行にしようと思っていたが、全くの“イジメ”状態となってしまった。開始早々コースに出たが、ストレートでは低いスピードでもハイドロプレーニングが起きてスロットルが踏めない程の雨。いくらなんでもこれは危険と、ピットで30分程待機。他のマシンの走り(タイム)を見て(走行台数もメッキリ減ってしまったが・・)適当な時に再びコースに送り出し、10数周をこなし本日終了。
吉本選手にとっては紫電のポテンシャルを掴むことなく予選、決勝を迎えなくてはならなくなった。


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ナイトセッション直前にまたまた雨。

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一旦コースインしたマシンも続々と戻ってくる。

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坂になっているピット前も、この水溜り。

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赤旗中断ではないが、コンディションがもう少しよくなるのを待つ。

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30分程待機後再びコースに出る吉本選手。

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セッション終了時には雨は上がっていた。

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下側のライトを点灯させたのはこのレースから(のみ)。

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光軸調整もこのレースでは重要。


8月19日(土) 予選
晴れ 路面 午前午後共ドライ

今日も過ごし易い朝を迎えた。空はドンより鉛色。スーパーラップ(以下「SL」:1回目予選上位10台による1台づつのタイムアタック。これによりスターティンググリッドを確定する)進出を決める一回目予選での雨の心配はなさそうだが、午後2回目予選はどうなるか判ったもんじゃない。SL進出については、タイムは勿論だが、2名のドライバーが基準タイムをクリアしなくてはならない。(すれば良い。)そして3名が決勝を走るには2回目予選までには3名共基準クリアは必須である。1回目予選で全員クリアしておかないと、午後2回目予選時に雨でも降られたら、厄介である。


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GTの公開車検、形は違うが、
この1000kmでは既に行われていた。

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昨日、充分セッティングが出来たとは言い難い。


そこで1回目予選は300占有時に加藤選手によるSL進出の為のアタック。そして高橋選手、そして混走に入ったら吉本選手に基準タイムをクリアする事とする。
いつもは予選開始から数分・・、数台がタイムを出してからゆっくりコースインする加藤選手だが、今回は時間が惜しい。開始早々、殆どのマシンがコースインしたら僅かに間を空けてコースイン。
2周目にアタック開始、2′13″228!まだ“弱い”ところが翌周はクリアラップが取れずペースを落とし、4周目9″554!これならいけそうだ!とピットイン。高橋選手に交代。2周目3周目と13秒台で基準クリア。300占有は終了。しかしこの時点で加藤選手のタイムは10位!SL権ギリギリである。果たして混走セッションでどれだけのマシンがここに食込んでくるか
混走セッション開始と同時に吉本選手が初めてのドライコースに駆け出して行く。すぐに12秒台。軽く基準クリア。翌周11″781と、初めてのマシンとは思えない堂々たるタイムである。このまま走行不足時間を補いところだが、10分以上を残しピットイン。待機していた加藤選手に交代。この時点でもまだ10位。SL進出圏内にいる。さてここでNEWタイヤに変え再アタックに入るか?この2セット目はSL用に温存するか?(予選では2セットしかタイヤは使用できない)このままギリギリでもSL進出ができるかも・・・・。モニターを睨み、11位以下のマシンの動向を見守る。当然2セット目のタイヤで再アタックに入るマシンもあるが、台数が多いこの混走時間中にタイムUPするのはかなり難しい。
残り3分を切り、今からコースインしても計測はできないだろうし、このまま逃げ切れるかと思い加藤選手もマシンから降りる。ところが、ここにきて46号車、前戦菅生で優勝した“赤吉兆”Zが9″320で10位に割り込み押し出されてしまった。紫電にとって初のSL落選である。


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予選日でも結構お客さんは入る。

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加藤選手のアタック。とりあえずSL圏内には入れたが・・・。

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続いて高橋選手のアタック。3名共アタックの為大忙し。

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吉本選手は初のドライ走行。

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計測2周目で11秒台と充分なタイムで基準クリア。

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SL権を“確実”にする為待機する加藤選手だったが、
チャンスを逸する。


更に予選終了のラップ7号車タイムアップ9位に食込んでできて12位へ。SLに出られなければこれでスターティンググリッドが決定するわけだが、8″499と3位タイムをマークしていた777号車がペナルティを受けベストラップが抹消され、最終的には11番手グリッドが確定した。
結果論からすれば、2セット目タイヤは温存するのでは無く、使ってダメ押しをし例え10位でもSLに食込むべきだった。旬を過ぎたタイヤでSL上位は望めないかもしれないが、上位マシンがミスをして、グリッド順位を上げる“可能性”は残されているのだから・・・。


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ピットウォークは相変わらずの大盛況。

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“今のところ”大きなトラブルも無く普通にランチを取るメカ。この納豆は加藤選手の本業。むぎとろ納豆


2回目予選はタイムが伸び悩んだ高橋選手が中心で走る。ブレーキ時にややステアリングに振れが出るとのトラブルが発生。確認の為加藤選手もドライブ。昨日のフィーエル系のトラブルといい、いままでも決勝前にトラブルが出て、「いつも良いタイミング(レース中ではなく)で出るなー」などと言っているが、明日は1000km。果たしてトラブル無くチャンと走りきれるか・・?
しかしSLが無い事により、メカは早くから(菅生の時は再車検等で1時間半近くメンテに取り掛かれなかった)整備に取り掛かる事ができたのは何よりだ。

午後2回目予選はタイムの悪かった
高橋選手がメインで走行。

この時ステアリングに違和感が・・。

SLが無くなった時間を利用しドライバー交代練習。

PCデーターを指差すシンタロー。
通常こんな“臭い”ポーズはしない。

ステアリングの違和感も含め1000kmを見据えた
メンテナンスが続く。


8月20日(日)決勝
晴れ 路面:ドライ

今朝は3日間通しで一番雲の量が少なく、どうやら夏の耐久レースらしい1日となりそうだ。予選も、今日朝一のフリー走行も、走行時間は通常のレースと変わらない。となると3人体制のチーム大忙しである。このフリー走行は満タン時のマシンのフィーリング確認する重要なセッションであり、3人共走行は必要である。ましてや昨日、ブレーキ時のステアリング異常が出ており、それらの確認も含めると、30分のフリー走行はかなり短い。各ドライバー計測2周、アウトイン含めると4周づつ、8~9分×3人結構忙しい。
そんな中、明るい材料と、暗い材料が出てきた。“明るい”のは、今回の助っ人ドライバー吉本選手が、2′11″388とこのセッションでは加藤選手を上回り自己ベスト更新。走行時間が少なかったハンディを感じさせない走りを決勝でも期待できそうだ。


いかにも夏っていう雲。
やっと雨の心配の無い1日になりそうだ。

新品ローターを含め、足回りは入念にチェックされた。

4回のピットインが予定される。

入念に立ち位置もチェック。


続いて“暗い”材料。ブレーキ時のハンドル振れは“とりあえず”おさまっているようだが、それとは別のハンドリングの異常を3人のドライバーが全員訴えている点だ。昨日、足回りはチェックと念の為部品を変える等しており、新たなるステアリング系のトラブルは厄介だ。
このレーシングマシンという“料理”、セッティングという“レシピ”はエンジンニアが決め、メンテナンスという“調理”はメカニックが行う。しかし“味見”はドライバーしかできない上、それを食べ切るのもドライバーである。特にこうした操作系のフィーリングに関するトラブルは、原因が“見えにくい”。オマケにこのタイミングでは決勝レースまでに“味見”をする事もできない。いきなり“実食”である。しかも1000km!
しかし3人共同じ訴えである以上、どこに原因があるかと、メカも懸命に探す・・・。
その結果、症状に合致する原因を発見!(内容はチョッと・・・今は秘密で。)
作業は少し手間取る(大勢で作業ができる場所で無い為)が“美味しく”いただける料理になりそうだ。


朝のフリー走行は3人共ドライブ。同じトラブル症状を訴えた。

原因は程なく見つかった。。

が、狭くて1人でしか作業ができない。内容のわりに時間が掛かった。


ここ鈴鹿1000kmでは地元という事もあり、毎年「Honda Cars東海(勿論昨年までは「HONDA VERNO東海」)特別応援観戦券を販売している事から、応援席ができている。今回は応援席への挨拶に行けなかったが、抽選で40名の方にドライバーをガイドにコースを1周するバスツアーを、20名の方はピット前でドライバーとの記念撮影と、いつもと違う趣向でお楽しみいただいた。
フリー走行から決勝レースが始まるまでの時間、ドライバーはファンサービスに努めてもらいました。


RQも乗り込んでのバスツアー。

バスガイドは高橋選手。

和やかなコース1周。

ピット前での記念撮影。マシンは整備中で並べられないので、タペストリーで代用。


決勝レースはいつもより1時間早い、午後1時から。ウォームアップ走行は正午過ぎに始まり、今回スタートを努める加藤選手から、ステアリング問題無しの報が入りメカも一安心。気温は33度とポッカ1000kmにふさわしい。
今年はずっと高橋選手だったが、初めて加藤選手がスタートを努める。というのもこの1000km(300クラスは実質930km前後)4回ピット(給油)が標準的だが、エコランで3回ピットも不可能では無い。っが、ガス欠のリスクは無視できず4回ピット(5スティント)で行く事とし、加藤、吉本選手に4、5スティントと2スティントを走る予定。(場合によっては加藤選手1人で・・)その為の休憩時間を多くとる必要があるからだ。従って、2スティント目は吉本選手、3スティント目を高橋選手が担当する。


これまた入念な打ち合わせ。でも何が起きるか判らない・・・。

暑い中駆けつけてくれたお客さん。“応援団席”はピットのまん前

白いキャップはお配りした特製オリジナル「紫電キャップ」

グリッドについたマシン。加藤選手はどこに?

Aピット前の日陰で休んでいた。佐々木孝太選手と何やら・・。

グリッドでの3ショット。加藤選手がスタートドライバーを努めるのは今シーズン初。


スタート方法はいつもと同じ。定刻午後1時スタート。先は長いので無理なスタートダッシュは避け、ピタリ11秒台のタイム刻む。その内7周目27号車コースアウト10位へ。12周目19号車コースアウト9位へ、46号車がズルズルと下がってきて13周目8位・・・と無理(ドライバーは一生懸命だと思うが・・)せずして順位は上がっていく
と、この辺りから「クラッチが切れね~よ!!」ピットに激震が走った。とりあえず走れる様だが(そりゃつながらないとは逆だから・・)長丁場の初盤からこれではかなり厳しい。シーケンシャルミッションはクラッチを踏まなくても(切らなくても)ギアチェンジは可能だが、クラッチ操作をした方が(できる方が・・)良いに決まっている。なんと言っても、ピットインで止まったらどうやってスタートさせるか?
色々心配のネタは尽きない。・・・タイムも13~15秒台と落ち、加藤選手にしてはバラつきが大きい。
マシンにトラブルが出た場合、危険か?そうでないか?症状が酷くなるか?そうでないか?ピットインをして直ぐに修復ができるか?そうでないか?ドライバーはこれらを総合的に判断し(しかもレースモードで走りながら)そのまま走り続けるか?どうか決める。ルマン24時間をはじめ、耐久経験豊富な加藤選手、時折12秒台に入れる13~14秒台、それも安定したタイムを刻み始めた。どうやら“刺さったトゲ”の痛みになれてきたようだ。

スタート。11番手グリッド、当然中団に埋もれる。

いつものスプリントと比べ、各マシン前後左右に大きく車間を空けている。様に思える。

300となったランボは速い。

序盤にクラッチトラブルが発生。


この間に88号車にパスされたり、62号車をパスしたり一進一退、22周目まで8位を堅持。ここらから300クラスのピットインが始まり、見かけの順位は上がって行き、31周目には前を行く全てのピットインが終わり、とりあえずトップに立つが、35周を終えピットイン。加藤選手から吉本選手に交代。ガス補給タイヤ交換を済ませる。果たしてクラッチの切れないマシンを発進させる事ができるのか?
ジャッキ降下!と殆ど同時にギアを1速に入れたまま、スターターを回す。アクセル全開!鈴鹿のピットレーンの下り坂にも助けられ、激しいホイールスピンでスタート。とりあえずコースに送り出す事に成功。リセットされた順位は変わらぬ8位。
燃料補給後に行う燃料計のリセットを行う指示をしたが、「フューエルリセットってどうやるんですか?」と、各部操作方法を覚える時間が無かった程、走行時間が短かったドライバーとは思えない吉本選手はNEWタイヤの恩恵も受けたとは言え、クラッチ不調の“トゲの痛み”を感じさせぬ13~14秒台の快走!
どうやらクラッチも全く切れないのでは無く、やや引っかかった様な感じで“完全に”切れない。といったレベルで、コツを掴めばさほど支障無く走る事はでき、一抹の不安は残るが“暫く”は大丈夫だろうとの事。
順位は他チームのピットインタイミングの違いもあり、40周目6位、45周目4位、と上がって行くが、我々が次のピット作業終了後が本当の暫定?順位となる。
1000kmともなるとピットイン回数とタイミングは各チームに違いがあり、また自チームのレースも進めなくてはならず、実際にはなかなか情報収集もできない。とにかくそれなりのタイムで、確実に周回を重ねるだけだ・・・。
そんな2号車「プリヴェチューリッヒ・紫電」に2本目の“トゲ”が刺さったようだ。それもマシンにではなく、ドライバーに・・・。
「何かクールスーツが効かないですが~・・・」全スタッフの中で最も若い彼は、大人しい口調で無線を送って着たが、事態は深刻だ。
一昨年のセパンで同じクールスーツの不調で“死にかけた”吉本選手。自己診断では、効かないのでは無く、“効きが弱い”みたいで、加藤選手のドライブ時まで問題無かった事から、ベルトの締め付けか?何かで水が通るチューブが折れ曲がったか?締め付けられているのではないかと推測される。


予定では満タンで走れるギリギリの1歩手前、35~36周毎にピットに入る。・・はずだった。

二人目は吉本選手。しかしクールスーツの不調に付き合わされる事に・・・。


しかし吉本選手を“サウナ”から開放するには、もう少々頑張っていただかなくてはならない。52周目「Z、速ぇ~~・・」と言いつつもその47号車を、実力で抜いて3位に上がった時の声はかなりバテ気味だった。
タイム的には大きく遅れる訳では無いが、いつドライバーが“イって”しまうか判らない。ドライバー交代は71周目の予定だったが、その後の作戦上ミニマムとなる67周が終了した時点でピットイン。高橋選手を送り出す。解放された吉本選手も自力で歩ける程度の体力は残っていたが、大容量のドリンクは全く残っていなかった。大事になる前のピットインは正解だったと思われる。
68周目、アウトラップでリセットされた順位は5位だが、直後からはその少し前にピット作業を終えた11号車、47号車、27号車が12秒台で猛追。14秒台とペースの上がらない高橋選手は抑える事ができず、72周目までに8位に後退。その後は各車のピットインもあり順位は変動。6~7位を行ったり来たりの周回が続く。500クラスが100周を終えた午後4時30分の時点で、300クラストップは52号車で93周。我々は既に1周遅れの92周。


ピットインの準備を進める。見ての通り、午後ピットは日陰になる。に対してスタンド席は暑いだろうな。

着替えた吉本選手。メカにマシンの状況を伝える。


173周のレース、このペースなら300クラストップは159~160周、我々は158周辺りがフィニッシュとなるだろう。300は500のペースにより最終周回数が決まり、当然燃料計算もそれに左右されるので、これらの計算は重要な事になる。
このスティント、35周を託された高橋選手。20周を終えた辺りからタイムがガックリと落ちてきた。確かに開幕の鈴鹿では15周で加藤選手に交代しており、今回はその倍以上。しかも暑さは比では無い。ドライビングスキルのアップはあるが、スタミナの点ではまだアマチュアの域を出ないどころか年齢ハンディがズッシリとある。15秒台すら出なくなって、いてもたってもいられなくなったエンジニア、シンタローは吉本選手同様、早めのドライバー交代を敢行。98周が終了した時点でピットに呼び戻し、加藤選手に交代する事とした。予定ではこの4スティント目で105周が完了しているはずだったが、高橋、吉本両選手が7周の“借り入れ”をしてしまい、その“債務”を加藤選手に押し付ける形となった。
残り周回は推定60周。実はこれを途中1回の給油のみ、タイヤ無交換で加藤選手に“借金返済と貯金”をしてもらおうという予定なのである。(勿論加藤選手の体力如何では、吉本選手の再起用のオプションもある)
これはGT1レース分。気温が下がり始めたとは言え、果たして体力はもつのか?またなんと言ってもタイヤが持つのか?その重責を任された加藤選手が“返済方法”に選択したのはソフトタイヤ!ハードならこの周回は充分もつだろうが、ソフトではタイヤ屋さんもかなり厳しい(無理!)との事。


吉本選手に代わって高橋選手。順調に周回を重ねるに見えたが・・・。

高橋選手もバテて予定周回をこなす前に交代。


現在9位、ハードタイヤで普通に攻めても面白くない。ソフトタイヤで様子を見ながら“攻める”との事。加藤選手も「ま~何とかするわ。」と言い残してコースに出て行った。
103周目にはチームファステスト10″979をマーク。その後も11~13秒台と、1スティント走った疲れも見せず更に先を急ぐ。104周目62号車をパス。8位。そして今回のレース最大(チームとって)ハイライト。(たまたまモニターで映し出されたから・・・)111周目裏ストレート。前を行く47号車を追走する加藤選手。シケインでは追突せんばかりに接近。トップスピード勝負の第1コーナーまでは無理せず、S字は“どこからでも抜けるぞ”と言わんばかりに左右に揺さぶりをかけ、ダンロップコーナー、アウト側から“力技でバッサリ”
シンタロー「ん~、スバラシイ~」加藤選手「もっとほめて!もっとほめて!」(これは本当にあった無線会話です。)
118周目、3回ピット作戦を取るMR-S勢の一角、前を行く777号車が3回目のピットイン。6位に上がる。


午後5時。シケインを抜ける紫電。例年の1000kmより観客は多い。

午後5時半。ダンロップコーナーを登る紫電。かなり西日が強くなってきた。

時刻は5時半、この頃になると気温29度路温33度と、レース開始時のそれぞれ33度、47度から、かなり優しくなってきた。
121周を過ぎたあたりで、「タイヤ交換どうします?」ソフトタイヤで20周以上攻め続け、残り更に倍の40周近くを走るのである。不安は当然。満タンで36周は保証されている事から、134周目の燃料補給時に交換するかどうか?
その問い掛けに対し、加藤選手は「このまま行くしかないんだろー!」おっしゃる通り、その通り。だがタイヤがもっての話。残り周回数分とは言え3分の2の燃料、50kgほど重量も増える。土壇場でタイヤが“逝って”しまったり、タイムが落ちては元も子も無い。
しかしそれらが杞憂であり、加藤選手のマシンの状況把握能力が卓越している事を思い知らされる事となった。

1000kmらしい雰囲気となってきた。午後6時半

夜のVIPルーム。

マシンの不調でスタートしなかった96号車はこの演出の為、夜間のみ出走。目立つ!!


ピットアウト後も殆ど13秒台!昼の空に、夜の空が加わり始める頃になってもそれは変わる事は無く、路温が下がった事を差し引いても40周以上を走ったタイヤとは思えない快走ぶりである。
夜の空がその殆どを支配した午後7時まで数十秒、夜間走行に入ってからもそのタイムを落とす事無く、300トップから遅れること2周、5位、158周でチェッカーを受ける。


前にも後ろにも、追いつき、追いつかれる差ではない。モニターで見守るのみ。

60周(ほぼ1レース分)近くを走りきり、チェッカーを受けピット前を逆走し、パークフェルメに向かう紫電。加藤選手。


2006年 SUPER GT第6戦 GT300クラス
予選11位 : 決勝 5位
獲得ポイント チームポイント11点 累計43点 ランキング 3位
         ドライバーポイント11点 累計59点 ランキング 2位

耐久レースってのは、ル・マン24時間を頂点に、最近では軽の耐久等の草レースまで、ピンからキリまである。
長時間のレースは、通常の300km程度のレースとは、充実感と言うか、終わった時の感動が違う。(特に夜間走行があると格別で、この鈴鹿1000kmも、スタートを1時間ないし30分ほど早くすれば、夜間走行は無くなるのだが、そうはしない。)
“勝ち”でも“負け”でも関係無く、最後まで走り切った感動である。プロチームはそういう訳には行かないだろうが、プライベーター(アマチュア)は、苦労が有れば、有るほど終わった時の精神的(肉体的には死んでも・・)充実感は大きい。・・様な気がする。だからと言って、わざわざ苦労を作る奴はいないだろうが。
私の(スタッフとして)経験した事のあるのは、十勝24時間とか、軽耐久1000km、程度と僅かであるが、この中でも十勝24時間では、前日まで徹夜に近い状態で本番を迎え、完走した時や、S2000で挑んだ鈴鹿1000kmでは、チェッカー10数分前にピットアウトの際、エンジンが掛からなくなり、それを皆で修復しエンジンが掛かった時、ピット上のお客さんが一斉に拍手してくれた事や、軽耐久では、夜間ゴール後、各スタッフが各マシンに乗り込み(殆ど詰込み状態)、全車でコースを1周したり、この1000kmや、十勝24時間でもゴールすれば、全車に対し、全クルーが拍手を送ったりと、勝敗と無関係な感動のネタは至るところにある。
一昨年、クムホタイヤで挑み、上位から全く見放されていたシーズンでは、この1000kmでクラス3位表彰台に上がった。冷静に考えれば、レースは、相対的な物だから、誰と?何台と?戦って何位だったか?と言うシロ物だろう。5台走って4位は“ドベ2”である。(この時のレースが、そうだったわけではない。念の為・・。)
しかし長時間、長距離を走るレースは、そんな打算を払拭する感動がある。
「CarsTokai Dream28」のオーナードライバーである高橋選手も、今でこそ「SuperGT」を全戦追っているが、その前では、この1000kmと鈴鹿クラブマン耐久、十勝24時間と、主に耐久参戦を続けていたし、毎年(今年も)富士で行われる軽耐久にも参戦している。それはスプリントでは味わえない感動がレースの醍醐味と感じているからだろう。かな?・・と、尋ねた事はないです。ただ長い時間、クルクル走り続けたいだけなんだろうな~。

ところで、今回最後のスティントを走った加藤選手。というより、約60周、350kmを走った2号車。タイヤ屋さんもビックリ!あのタイムで!このソフトタイヤで走り切り、磨耗状態はドンピシャ。正に神業的な加藤選手のドライビングでした。

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「Team BOMEX Dream28」 666号車NSX

今回は直前になって周防選手が仕事上、都合がつかなくなり参戦を取り止めました。
こうした長時間の実戦走行は、スポーツ走行の10倍(当社比?)は、良い練習にもなるので何とかして出場できれば・・・と思いましたが。本業あってのプライベーター。やむ負えないでしょうね。
で今回は、666号車の八田メカが2号車の助っ人に来てくれ、ピットイン時のドライバーサポートを担当してくれました。