GT CHAMPIONSHIP 2002 Series Round 2

開催日
2002年5月2〜4日
サーキット
静岡県:富士スピードウェイ
マシン名
BOSSベルノ東海AR・NSX
ドライバー
高橋 一穂・渡辺 明

期待のみ、不安無し

2日(木)フリー走行 天候:晴れ

前戦TIサーキットでポイント獲得し、幸先の良い開幕を迎えたチームは、更なる上位を狙い静岡県・富士スピードウェイの第2戦に挑みました。

4月初めの合同テストでは、この高速サーキットとの相性も良く、20台中8番手タイムと好調だっただけに、期待が持てます。また今回はかねてから準備をしていた3,500ccエンジンを投入すると同時に、前戦の成績で我々のマシンを始め、13台に性能引き上げ措置が取られ、リストリクター(空気取り入れ口径制限)を大きくする事ができるなど、プラス要因がある半面、前戦上位入賞マシンは、ウェイトハンディが科せられており、上位を狙うには絶好の機会といえます。

これらの性能調整は、GT選手権の、GT選手権のレースレギュレーションで細かく規定されており予選、決勝レースにおいて好成績を収めると、次回のレースから最低重量に、更にウェイトがプラスされ結果的に性能を引き下げられ、逆に順位を落とすと取り除かれます。また上位に入れなかったマシンや性能差がありすぎると、逆ハンディとしてリストリクターの口径を大きくし、パワーを引き上げる事ができる等、連勝ができにくく、観客にとっては大変面白いレースとなります。この辺りを理解し、観戦すると面白さも倍増します。しかし当初「+1」の性能引き上げあったのですが、エンジンの排気量アップに伴い、結局「+1」は無くなりました。でもJGTCのホームページは「+1」のままなのでエンジン屋さん(TODAレーシング)の担当は「これで速くなったと思われたらシャクだな!」と言っています。もっともです。

GT選手権レースレギュレーション
http://www.jgtc.net/race/whats/s_regul.htm

TODAレーシング
http://www.toda-racing.co.jp/

photo今回より車名を「BOSSベルノ東海AR・NSX」に変更「BOSS」もヴァージョンアップ

photo富士仕様、フロントカナード。ダウンフォースより高速性能を求める。テールウイングも同様に、水平に近い

photoモールとの段差もスムースにする為、ウィンドシールもモール部分まで延長…。気は心

photoウェイトハンディは強さの勲章

photo3,500ccエンジンと言っても外観は変わらない

photo車検場まではかなりの距離を押して行く。(走って行くマシンもある。)観客の方々はGTマシンが間近に見られるチャンスとあって、皆待っている

いいぞいいぞ!

午前のフリー走行1回目は、マシンのチェック、ギアレシオの確認など、慣らしに終始。NEWエンジンにギアレシオも問題無し。しかしタイムは、1'33"849と、合同テストでのベストに迫るタイムを出し、両ドライバーも好タイムへの自信を深めました。そして迎えた、午後2回目フリー走行では何と1'32"629と2番目のタイムを記録。明日の予選を控え、チームのムードは大いに盛り上がりました。こんな好成績は初めて・・!

快走!

3日(金)予選日 天候:晴れ

明けて予選。前戦と打って変わってマシントラブルも無く、メカニックにも余裕がうかがわれる。翌日からの天気が心配だが、今日はまだ好天に恵まれ、富士山もくっきりと望む事ができる。

しかし全国的には下り坂、早めのタイムアタックで好タイムを出しておきたい。

まずは1回目、ここ富士をホームコースとする渡辺選手による、ポールを狙ったタイムアタック。ギリギリの燃料でスタート。

タイヤを暖め、クリアラップ(前後のマシンとの間隔を充分に空け、早いマシンに追われず、遅いマシンにつっかえないようにする、F1でも行われる予選の最も大事な駆け引き。)を計り、アタック。果たして1'32"521!!トップタイムをマーク!

しかしその直後、コースアウト車両が発生。赤旗中断。結局これ以上のアタックは行わず、高橋選手に交代。まずは基準タイムをクリアする事に努める。が、富士は4月の合同テスト以来、まだ2度目という高橋選手も1'33"856と自己ベストを更新。結局2位に0.23秒差のトップタイムで1回目の予選が終了。チームはおおいに湧いたのだが・・。

う〜ん。ちょっと残念

午後2回目の予選は、無理をせずタイムアタックは行わず、各部のセッティングの確認程度にし、他のチームの動向を見守る事にした。しかしタイムは縮めるものの、我々のタイムを上回る事はできず、このままポールを取れるかと思った矢先、GT300専有走行終了5分前にNo.62、新鋭「VEMAC」が渾身タイムアタック。0.14秒差でトップを奪われてしまいました。

しかし初参戦のモテギでは、最後尾スタートの我々のチームが、4戦目にしてセカンドポジションを獲得。充分な戦闘力を見せつけ、各メディア、各チームから注目される事となりピット内も賑やかになってきました。

雨が心配な明日の決勝レース、表彰台を狙う為、綿密なミーティングが行なわれました。

photo予選1回目は渡辺選手がトップタイムをマーク!

photo好天に恵まれた予選。富士山もくっきり。

photo予選1回目、トップタイム!各メディアからインタビューを受ける両ドライバーだったが・・・。

photoメカ、タイヤサービスと明日の決勝のセッティングを打ち合わせる渡辺選手。タイヤの温度分布、前後、左右は勿論、1本の外側、内側でも違う。

大観衆の中・・

4日(土) 決勝日 天候:曇り(コースの一部霧雨)

明けて決勝日、いつ雨が落ちてきても不思議ではない曇り空。朝一のフリー走行は、満タン(100リットル)でのマシンチェック、ピット作業の練習と、いつもと変わる事は無い。セカンドポジションは、チームに程良い緊張感を与えたようだ。

ピットウォークでも注目度は高く、GT300唯一の「HONDA」マシンの快走を期待するファンは少なくない。

決勝レース、グリッドにマシンを並べる。グリッド左最前列、前は全てGT500マシン、GT300の前方グリッドを埋める「MRS」も「シルビア」も全て後方だ。

スタートドライバーの渡辺選手に、上位グリッド常連ドライバーの何人かが声を掛ける。「すぐに追いつきますから、待っててください。」皆、侮れない存在と感じ始めているようだ。

それにしても、ここ富士は関東圏からのファンが多いのかグランドスタンドも満席に近い。この日は7万人以上と発表があった。

今回は114周のレースだが、GT500とのタイム差から、GT300のトップは107〜108周と予想。燃料は200リッター以上、二度の燃料補給が必要である。

1回目は30周前後を予定し、セーフティーカー(以下SC)の具合で臨機応変に対応する事とする。

ドライバーズブリーフィングでも、距離の長いレースを安全に行う為、スピン停車車両の早期撤去、落下物(破片)等除去の為SCはかなり出ると予測されているとの事。

photoGT300唯一の「HONDA」マシンの活躍を期待しているファンは少なくない。これはGT恒例チャリティポラロイド。選手、マシンと一緒に写真

photoアメリカンレーシングの「幸運の女神」今回は少し嫌われたのかな?

photo決勝スタート直前には雨の心配もなくなって来たようだが・・。

photo他のチームも注目され始めた。「ウェッズSports」坂東組、組長となにやら雑談する渡辺選手

photoグランドスタンドの大観衆の前で両ドライバー

闘走!

午後1:40、怪しい曇り空の元、500kmの長丁場レースに向けてローリングが始まる。

大観衆のスタンド前に帰って来る。
ブルーシグナル!
レーススタート。
フル加速。

同じ「TODAチューン」のV6、3,500ccを積む、ポールポジション「VEMAC」に先行される。グリッドと車重の差か・・?

2番手で1コーナーへ。1LAP目でGT500マシンがコースアウト、早くもSCが出る。作戦に変更は無いが、前戦優勝のNo.31「ARTAアペックスMRS」が6番手グリッドから3番手、直ぐ後ろに着けている。

5周目にSCがピットロードへ、レース再開。
猛然と加速するNSX。

しかし7周目、直後につけていたNo.31「ARTAアペックスMRS」にストレートエンドでかれ、3番手に! 50kgのウェイトハンディがあるとは言え、やはり速い!

しかしその後10周以上に渡り、テールtoノーズの追走。新田選手にプレッシャー掛ける。そしてついに18周目、「ARTAアペックスMRS」を、同じストレートエンドで、スリップから抜け出し、鳥肌物のオーバーテイク! 渡辺選手も負けてはいない!

photo突然のセカンドグリッドに、K-oneの小菅社長も、GWの渋滞の中、応援に駆けつけてくれた。

photoグリッドの直ぐ前はGT500マシン。GT戦デビュー時は最後尾だったが4戦目にして高位置に着く事ができた。

なんてこった!

その後じわじわと差を広げるが、トップのNo.62「VEMAC」は33秒前半、NSXは33秒後半、徐々に水をあけられて行く。

2番手、単独走行になり始めた31周目、コース上のバーストタイヤ回収の為、再びSCが入る。作戦どおり32周目、ピットイン。

給油、タイヤ交換、高橋選手に交代。
順調に進む。
エアジャッキ降下!
再スタート!

ところがエンジンが始動しない!スターターモーターが回らない! メカニックが懸命にエンジンルームを覗き込み、点検するが、ピット前に長く停車するのは危険であり、一旦ガレージに・・。リアデフィーザーパネル、アンダーパネルが外される。

ガレージ内なら規定人数以上ででの作業が可能だ。

刻々と時間が過ぎる。モータースポーツでは、「ドライバーが1秒稼ぐのは大変だが、ピット作業で1秒稼ぐのも、遅らせるのも簡単。」と言われている。そんな貴重な時間がどんどん過ぎて行く。

10数分後ようやく始動。すかさずスタート。詳しい原因は不明だが、モーター内のスイッチ系が熱でやられたと思われる。ショックを与えればとりあえず始動する。かといって交換するには時間がかかり過ぎる。

順位は一気に20位近くに落ち込んでしまった。

ここからの上位進出は、無理であろうが、ドライバーは全力で走っている。高橋選手も予選の2〜3秒落ち、35〜36秒でコンスタントに走り続ける。その後、場所によって雨がぱらつき始めた様だが、タイヤを換える程でも無いが、スピン、コースアウト車両が出始め、SCが出る事になり (今回は合計6回!) 波乱の展開となってきた。

photo再スタート!序盤は後「ARTAアペックスMRS」との闘いとなる。

photo隣のピットはモスラー「マッハ号」とフェラーリ。ピットインはお隣のピットと、きちんと打ち合わせてから入れないと、お互いえらい事になる。

これもレース・・

64周目、今回5度目のSCが入った時、2回目のピットイン。高橋選手から渡辺選手に・・。1回目と同様、やはりモーターが回らない。前回と同じ処置により再スタート。順位は18位になっていた。その後、渡辺選手は34秒台で快走。10周以上先行する、2番手(途中ホイールナットの締め付け不足で4番手まで順位を落とした。) No.62、「VEMAC」と競いあい、終盤にも関わらず、共に33秒台を出している。周回遅れになっているとは言え、互角のタイムだ。

そして95周、3時間以上のレースは、無念のゴールを迎えた。

photoピットイン。ドライバー交代も、ピット作業も早くなってきたのだが・・。

photo順調に送りだす筈が、思わぬトラブルにメカもびっくり。

photo一旦ガレージへ。2位快走中だっただけに、場内アナウンスも連呼。TVカメラもやってきた

いつかは近い

GT選手権で500と300に、同じマシンが出走していると言うのは、唯一NSXだけで、元々500専用に作られたシャーシーに、我々プライベーターが300用エンジンに換装し、2001年終盤より挑んだ。

バランス的に不安が無かった訳ではないが、GT300に改造されても、充分トップ争いができる戦闘力があるという自信が、確信に変わったレースでした。

次回第3戦は、宮城:SUGOサーキット。まだ走り込みが不足しておりますが、あと1秒短縮できれば充分上位が狙えます。

JGTC初の500・300両クラス、同じマシンが優勝する日も近いと確信しております。

GT選手権第2戦 GT300クラス 予選2位 : 決勝14位

photo2度目のピットストップも同様。何とかピット前で処置できないかと、メカも奮戦するが・・。やはり無理であった

photoフィニッシュ。14位完走は、したものの惜しい1戦だった

ドライバーコメント

photo

渡辺選手「予選はもう少し詰めれば0.2〜3秒は何とかなったと思いますが、次回の楽しみにしておきます。決勝はマイナートラブルが出てしまい残念でしたが、マシンの調子は悪くないので次はもっと行けると思います。」

高橋選手「レースに「たら」「れば」は言いたくないですが、ピットでのロスタイム約27分。今回のラップタイムで周回すればあと16周でき、110周でぶっちぎり優勝ができたと思うと悔しいです。でも、しようがありません。次回がんばります。」

 
現在の位置:ホーム / レースリポート / GT CHAMPIONSHIP 2002 Series Round 2