GT CHAMPIONSHIP 2002 Series Round 8

開催日
2002年11月16〜17日
サーキット
三重県:鈴鹿サーキット
マシン名
BOSSベルノ東海AR・NSX
ドライバー
高橋 一穂・渡辺 明

締めくくり。

15日(金):フリー走行 晴れ 路面:ドライ

クールスーツやスポットクーラーが必需品であった頃が、嘘の様な寒い季節となった、第8戦鈴鹿、いよいよGT選手権も最終戦となった。

4月TIサーキット英田で開幕し、初の海外全日本選手権セパン、8月は選手権外鈴鹿ポッカ1000kmとこれまで8戦をこなし、初のフルシーズン参戦で、5戦まで連続完走、連続ポイント獲得、ポールポジションとセカンドポジション1回と、ルーキープライベーターチームとしては素晴らしいシーズンを送ったと言える。

しかしモテギ(火災、クラッシュ)、ミネ(マシントラブル)で連続リタイヤとなり、このままシーズンを終えては、年を越すことはできない。

今年サーキットで起こった主なマシントラブルは、アクセルワイヤー破損、ミッションオイル漏れ、セルモーターの作動不良、フロントスタビ破損、ドライブシャフト、ハーフシャフト破損があり、それらトラブル原因は念入りにメンテを行ったが、その中でもシャフト破損を始めミッション等駆動系は常にこのマシンのアキレス腱だ。とにかく最終戦鈴鹿、万全の体制で挑んだ。

photoポッカ1000km同様、「VERNO」看板下。今回のお隣は「チームタイサン」さん。左は「FKマッシモ」さん。

photo朝は11℃。午後でも殆ど変わらない。

素晴らしい成長!しかし・・。

ここ地元鈴鹿は昨年、渡辺選手と初めて組んだサーキットであり、その時渡辺選手は2分14秒台、今年8月の「ポッカ1000km」で12秒台をマークし、着実にタイムアップをしている。またこの「ポッカ1000km」での走り込みで充分でないかと9月末の合同テストは予算の関係もありキャンセル(実際すごい豪雨で大変なテスト日だった様だ。)したが、先回ミネでの復調もあり、今回は、昨年のコースレコード9秒台を第一目標とし、最終的に8秒台を目指しフリー走行に挑む。気温11℃、路面も12℃としっかりと冷え込み、タイヤのグリップをどれだけ引き出せるか?まずは渡辺選手から午前のフリー走行を開始する。各部を確認しつつ13〜14秒台で流し、10周目に早くも12秒375を記録。ピットインし高橋選手に交代。7周目には高橋選手も自己ベスト13秒246をマーク。

メカとフィーリングのディスカッションを行い、再び渡辺選手に交代し、程なく目標である9秒943をマーク!これはまた好ポジションに付けられると思いきや、トップは既に8秒台!我々のタイムは7番手。

タイヤ屋さんと相談し、まだタイヤの温度が上がらない、性能を出し切れていないと言う事で、午後の走行に向け、再度セッティングを見直す事とした。

スプリング、エア圧、ブレーキバランス等を探りつつ、今度は高橋選手から、午後のフリー走行が始まった。午後とは言え、路面温度が上がらないコースで、徐々にタイヤを慣らし周回を重ね、12周目には何と10秒252!すごい進歩である。

その後、渡辺選手に交代して、サスセッティングを変えたり、フロントカナードを追加したり、走行中にも変えられる、ブレーキバランスなども変え、迷宮から抜け出そうとするが、なかなか午前のタイムどころか、高橋選手のタイムを上回る事もできない。昨年からコンビを組んで初めての事だ。フリー走行終了直前9秒919をマーク。

しかしこれは300クラス全体では、11番手のタイム。既に5台が8秒台に突入している。渡辺選手も思いのほか上がらないタイムに「8秒台はきついな〜。」と、これ程弱気な渡辺選手も初めてである。

photo今シーズンから、無線+TVモニター+ノートPCと、飛躍的に近代化したサインマンセット。でも椅子は10年近く使っている物。

photoガムテープで風量調整。エンジンコンディションを保つスタンダード。

photoブレーキ温度を測る。これも低ければいいと言う訳では無い。

photoインパネ?右下のノブは前後ブレーキ配分を調整する為の物。

16日(土):予選 晴れ 路面:ドライ

予選1回目はいつも通り渡辺選手がアタック。1桁のグリッドを取るには8秒台は必須である。少な目の燃料でスタートし、タイヤを暖め3周目、9秒482!。

更にもう1周。9秒012!

あと一息。その後2周9秒台をマークするが、タイムアップはならず。300クラスの専有走行が終了。高橋選手に交代し、まずは基準タイム通過に務める。僅か3周で11秒722!更にタイムアップを・・。と思った5周目、鈴鹿最高速コーナーの130Rで他車の冷却水にのった「VEMAC」がスピン!その直後に付けていた高橋選手もつられてコースアウト!そのまま赤旗中断となり、1回目の予選は終える事とした。

幸いマシンのダメージは無い。大量の小石を拾った事と、明日決勝用スペアに使用する予定のタイヤ4本が、激しい横滑りにより、フラットスポット(タイヤに極端に減った部分ができる事)ができ、パーになってしまった。
今シーズン鮮烈なデビューを飾った「VEMAC」は現在ランキングTOP。GTのベース車は市販車(お金を出せば誰でも購入できる車)である事が絶対条件。生産販売台数の少なさから、特認車両としてGT戦に参戦している「VEMAC」だが、セッティングが煮詰まってくるにつれ、余りの速さに「GT400」などと揶揄され、成績に応じたウェイトハンディ(既に80kgを積んでいる。)とは別に、先回ミネでもウェイトを積まされているが、今回なんと150kg!を積んでいる。GT戦は参加マシンの性能を均衡させ、常に白熱したレースが展開される様、こういう措置は付きものだが、ランキング2位「ユニシアジェックスシルビア」に1点リードでチャンピオンに王手をかけた「VEMAC」にはつらい足かせだ。

ところがその2位の「ユニシアジェックスシルビア」がトップで何と7秒121!他に7秒台4台、8秒台10台。我々は15番手。路面温度も上がらない午後の予選で、大幅なタイムアップは望めないだろう。決勝へのセットアップと、高橋選手の更なるタイムアップに向け、午後2回目の専有時間は高橋選手から。

photo photo photo
ヘアピンではスピン車両が続出。

決勝に向けて・・。

14、13、12と、どんどんタイムを切り崩し、8周目には9秒681!をマーク。その後渡辺選手に交代セットアップに努める。両ドライバーの、このタイム差(0.66)はシーズンを通じ最少で、渡辺選手の自己ベスト更新(1000km時から3秒4!)も素晴らしいが、高橋選手の進歩は更に著しく、決勝レースで大いに期待ができる。

その後はドライバー交代をメインにピットワークの練習を行う。ちょっと時間の掛かりすぎるドライバー交代を速くすることは、今回の決勝レースでは特に重要であるからだ・・・。30秒位でできる時もあるが、リズムが狂うと、あっという間に5秒、10秒と超過してしまう。いつに無く熱のこもった練習だ。

GT300の予選は結局「ユニシアジェックスシルビア」がポールを取り、1〜3位に与えられる1ポイントにより、その圏外(5位)に沈んだランキング1位の「VEMAC」との差を埋めてしまった。決勝でのチャンピオン争いは、昨年同様最後まで目が離せないレースとなる事は必至となった。500もね・・。

photoなかなか撮れなかった、サインを出す時にマシンが入っている写真。

photo車検で指摘された牽引フックの色あせ。「え〜!カラースプレー無いよ。」て事で他チームからお借りする。」

photoF1の様なタイヤウォーマーは禁止。そこでタイヤを「甲羅干し」してチョットでも暖める。

photo予選は500・300各専有と混走の3セッション各20分づつ。これは300専有を示す。当然タイムアタックチャンス。

photoアタック終了後、今ひとつ納得が行かない渡辺選手。モニターで他ドライバーの走りとタイムを見る。

photo1回目の予選は、最高速コーナー「130R」のコースアウト車両発生で赤旗中断。

photoそれに巻き込まれたが、大量の小石を拾って来た事とタイヤが4本ダメになっただけで済んだ。

photo「VEMAC」は、度重なるウェイト増加に怒りの「ウェイトステッカー」なんと150?!

photo我々には先回ミネの予選、決勝タイムによりウェイト20kgが帰って来た。

photo突如現れた集団は、レスキュー隊。決勝前に一台づつ緊急時の対応訓練。

photoレーシングスーツを着ないと、どうも真剣に見えない、交代練習。でも成果は有り。

photoフリー走行で右後輪がパンクした、「イエローコーンマクラーレン」決勝では左後輪が同様のトラブルに見舞われた。

photoフリー走行時での交代訓練。真剣に見える。

photo500のNSXと接触。フェンダーが少し割れた程度で済んだのは、強靭なカーボン製のおかげ。

photo左が裁定書。右が振込先。GT参戦ではチーム初かな・。

photo「チャリティーポラロイドにご協力くださ〜い。」は鈴木監督。NSXオーナーズクラブ「ドリーム28」の会長でもある。本職は薬局経営。

17日(日) 決勝 晴れ 路面:ドライ

昨日よりやや暖かさを感じるが、相変わらず路面温度は低い決勝日。朝一フリー走行はいつもの様に満タンテスト。渡辺、高橋両ドライバー、12秒、13秒台でまずまずと言ったところ。

その後もドライバー交代と給油練習。こちらも25秒程でこなせるようになってきた。

ところが渡辺選手がコントロールタワーからお呼び出しだ。スプーンカーブで「TAKATA無限×童夢NSX」と接触したのだが、これが危険行為と裁定されたのである。リプレイが写されたが、「う〜ん。確かにそうかも・・。」素直に謝罪して罰金刑。

この最終戦のピットウォークは気のせいかいつになく盛況で、チャリポラ(チャリティーポラロイド)も過去最高だ。やはり地元という事と、先回ミネのポールポジションでちょっと人気がでてきたのかな?

GTレースの前に、今年から始まった「ベルノエキサイティングカップ インテグラワンメイクレース西日本シリーズ最終戦」が行われた。

このレースには今年6月の「クラブマン300kmエンデュランスステージ」で、「ベルノ東海・AR★S2000」を初優勝に導いたベルノ東海の山田選手が、初のインテグラワンメイクに挑んでいる。

そしていよいよ今シーズン締めくくりのレースだ。15番グリッドは寂しいが、最後はキチッと決めたい。52周のレースで、300クラスは47〜48周がゴールだろう。我々は23〜30周の間、SC(セーフティーカー)との相談で、ドライバー交代を予定している。

タイム的に上位に上がることは難しい。ただここ2戦の、リタイヤ癖を払拭し、堅実なレースで完走し、シーズンを締めくくりたいと言う消極的な目標はあるが、トップグループは僅差でチャンピオン争いをしており、彼らが波乱を引き起こしてくれれば、両ドライバーのタイム差から、終始チャージをかけられ、まだ勝機はある。言い古された言葉だがレースは何が起こるか判らない。

午後2時予定通り、渡辺選手をスタートドライバーに、レースは始まった。今シーズンは1周目からスピン等アクシデントが付きものだったが、500クラスの壮烈なバトル以外波乱も無く、オープニングラップを終えた。順位はクラス14位。

序盤は500クラスのコースアウトやトラブルで、総合順位は上がっているが、クラス順位は小康状態。渡辺選手より「前の遅い車がなかなか抜けませ〜ん。」とイライラ無線が入る。直線は早いが、コーナーが遅い車に前を阻まれている様だ。クラス12位に上がった20周辺りから各チーム、ルーティンのピットインが始まり、レースが動き始めた。

photoピットに来訪された菊池選手。スタッフはすかさず甘い物で対応。渡辺選手のS耐でのペアドライバー。

photoグリッド上、キャンギャルの足元でラジエターへの風量調整をする八田メカ。

photoグリッド上での「キョオーツケー」は「君が代」斉唱。毎回スタート前のセレモニー。

photoオープニングラップで、早くもグループ分けができてしまった。 PHOTO by Y.SUZUKI

photoスタートの渡辺選手は着実に周回を重ねるもの・・。PHOTO by Y.SUZUKI

photoなかなか集団から抜け出せず、順位不動のまま周回を重ねる。 PHOTO by Y.SUZUKI

秘策。(って程でも無いですが・・。)

我々はSCが入らない事から、予定通り30周にピットイン。その前の周。
監督「渡辺さんタイヤはどうですか?」
渡辺「OKです。」

そう我々はタイヤ交換をしない作戦を予定していた。冷えたタイヤに交換したアウトラップのタイムの落込みはひどく、2周近く響く場合もあり、無理をしてスピン、コースアウトを起したチームは、前戦ミネでも少なくない。

「BOSSベルノ東海AR・NSX」は、タイヤに優しいマシンで、金曜のフリー走行で60周近く走り込んだタイヤでも、11秒台をマークしており、タイヤライフは確認している。

マシンがピットに滑り込む。

ドライバー交代。

給油(交代時間で充分終了する給油量約40リットル)。24秒で完了。タイヤ同時交換だと更に4〜5秒掛かっただろう。

この作戦を生かすべく、アウトラップからガンガン飛ばす高橋選手。先回ミネは交代前にリタイヤ。その前のモテギは0.9周しか走っていない。3戦振りの決勝レースだ。うっぷんを晴らすかの様に快走するが、2度のハーフスピンがたたり後方から追上げて来た「VEMAC」や「ナインテンポルシェ」に追い付かれ順位を落としてしまう。

photo交代を待つ高橋選手。タイヤは用意されていない。

photo練習の甲斐有り24秒でピットアウト。これは早かった。

photo暖まったタイヤでアウトラップからガンガン飛ばす高橋選手だったが・・。 PHOTO by Y.SUZUKI

その後大きな波乱も無く、レースは進むかと思いきや、45周目モニターTVにシケインでコースアウトした、「BOSSベルノ東海AR・NSX」が映し出される!なんとここまで来て・・と皆が思ったが順位も落とすことなく、何とか自力でコースに復帰。

結局クラス9位でゴール。完走、2ポイントを追加に留まり、地元レースは不発に終わってしまった。終盤はやはりタイヤがたれて来た様で、今回のピット作戦が良かったか、どうかはやや疑問も残る結果となった。

しかし今回の様な上位とのタイム差が大きく、まともに戦っては勝ち目が無いレースで、タイム的に上位に行けなくても、何か策を考えなくては進歩が無い。少しでも上位を狙う気持ちを捨ててはレースをする意味が無い。プライベーターといえども、日本で最高峰の人気レース、GT戦に参加する1チームとして来シーズンも大いなる活躍をして行きたい。

GT選手権第8戦 GT300クラス
予選 15位 : 決勝 9位

photoウィニングラン終了後、ピット前でクルーに迎えられる高橋選手。

photoキャンギャルチームもとりあえず今回で解散。来シーズンもどこかでお会いできるかな。

ドライバーコメント

渡辺選手
去年はこの鈴鹿で乗ってまだまだ車のセットも出来ていなかったのですが、今年になって毎レースこなすごとに、いい足回りができて徐々に順位も結果も良くなって、目標としては優勝あるいはシリーズチャンピオンということでしたが、残念ながらとどかなかったのですが、前回の美祢でポールも獲れましたので、この車、このチームはまだまだ来年に向けて良い材料が出来たなという感じがします。

美祢のポールをステップに来年また一段とひと皮むけたチームになればといいなと思っています。今回のレースに関しては、序盤遅い車にひっかかって20ラップぐらいこなしてしまったんですが、悔いが残ります。その前で走っていればもっといいところでバトンタッチできたと思います。結果として高橋選手が頑張ってくれて、クラス9位まで行くことができポイントがとれましたので来年に向けて勉強に良い課題ができたと思えるレースでした。

高橋選手
今日は優勝を狙っていたのですが、本当は・・、観客も多かったんでみんなに安全なスピンを披露しました。(笑)来年はチャンピオン狙って頑張りたい。なかなか1年間は難しかった。勉強にもなったし来年に向けてなんとか頑張ります。

photo
来シーズン、更なる目標に向けて闘志を燃やす両ドライバー。

ポイントランキング

今回の9位で2ポイント追加。
累計22ポイント
年間ランキング16位
で2002年終了

2002年全8戦中、ポールポジション1回(7戦ミネ)。最高位4位(3戦菅生)完走率75%、ポイント獲得率88%は、プライベートルーキーチームとしてかなりの好成績と、関係者からお褒めの言葉をいただく事ができましたが、目標である、表彰台に届かなかった事は残念!
来期の目標は、表彰台は勿論、初戦からシリーズチャンピオンを狙って行きたいと思います。

良いお年を・・。

フルシーズンを戦った2002年GT選手権。GT300クラスの「BOSSベルノ東海AR・NSX」だけのレースリポート。雑誌にのる事の無い1プライベートチームの日記帳代わりの内容になってしまい、相当偏った内容でお送りいたしましたが、いかがだったでしょうか?

まだまだ秘蔵写真や、マル秘エピソードもありますが、またの機会にまとめたいな思っています。

来シーズンも参戦予定で現在各スポンサー様と交渉中です。カラーリングも含め、GT(特に300クラス)の驚異的進歩に対応すべく、各部の改良をシーズンオフにどれだけ行えるか?昨年にもまして、大事なシーズンオフの模様もお伝えできればと考えております。

今シーズン、各種ご支援、ご協力をいただいた各スポンサー様、誠にありがとうございました。このページをお借りしてお礼申し上げます。

またコースサイドからの、迫力あるマシンの写真をご提供いただいた浜松の鈴木 保範様、本当にありがとうございました。

私が独断で選んでPHOTO ギャラリーをまた開設させていただきたいと思います。

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休息を取る為トランスポーターに積み込まれる「BOSSベルノ東海AR・NSX」。次にここから現れる時はどれだけヴァージョンアップし、どんなカラーリングとなって登場するか?乞うご期待。

 
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