モータースポーツ

2010:SUPER GT第4戦

2010シーズン 紫電
2010年07月22日

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柳の下に2匹目のドジョウはいなかった!
予選不通過により最後尾スタート。
昨年の再来と2連覇を狙い、順調に展開していたが・・・。

ハマちゃんこと濱口選手のブログ・レースレポートはこちら 必見!!

 

このレースから、エンジニアのシンタローがブログをかきはじめました。
 機密情報も含めヤバイ内容も多いので賞味期限がかなり短い可能性もあります。

シンタローの危険なブログはこちら 早めに御賞味下さい。


 セパンは紫電にとって最高に相性の良いサーキット。デビュー年2006年でいきなりポールポジション。
 だが、予選は常にシングルなれど、決勝ではなかなか良い結果が得られなかった。
 昨年もスーパーラップでポールタイムを出すものの、車検失格幻となり最後尾スタート。
 しかし決勝では驚異のごぼう抜きで優勝。
 これで、SUPER GT開催、7カ所、全てのサーキットで表彰台を獲得した。
 第3戦富士で不運というか、前代未聞の珍事でレースを落としているが、マシンのポテンシャルに翳りは見られない。
 昨年のセパンの勢いを再び取り戻し、後半戦に向け、いい流れを作りたい。

6月17日 マレーシア着 

 木曜日夕方、マレーシア、クアラルンプール国際空港に到着。
 その日はそのままホテルに直行。5月下旬に船出したマシンとの再開は明日へ・・・・。
 空港から、ホテルのまでは殆ど高速道路だが、初めてこの国にきたのは2002年。
 ここ数年で思うのだが、走っている車が飛躍的に良くなっている。日本の軽自動車、コンパクトカークラスが主流だが、新しくなっている。
 以前はボコボコになった車が殆どだったが、今じゃそんな車も見かけない。(少なくとも高速道路では・・・)
 相変わらず高速をぶっ飛ばすバイク(日本のカブのスポーツヴァージョンタイプ)も多いが、以前に比べて減っているようにも思う。
 こうした部分だけを見ても、発展は目覚しいものがある。
 

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クアラルンプール国際空港。02年のGT参戦以来3度目のワールドカップは、いつもこの時期。
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到着ロビーで待ち受けていた若い娘達。アイドルグループの到着がお目当てでした。
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いつも送迎をしてくれる運転手さん。ハンディタイプの“ETC”を使う。片手運転になるけど ・・・

6月18日 設営 晴れ

 マシンもスタッフも変わらないと、設営も淡々と進む。
 梱包された荷物は毎回殆ど同じ。エンジン積み替えの時のクレーンや、クラッシュ時の外装パーツ等はできればお役に立ってほしくない物は荷をほどく事も無い。
 オーダーしておいたレンタル品確認やサーキット施設の確認は重要で、数年前だとレンタル品は届いていないことや、壊れている事も多く、それらの再手配や修理(取り替えてもらうまで待てない場合もあるので・・)で時間を取られる事もあったが、主催者側が、現地の業者を根気よく?指導し、今は殆ど改善され、チャンと届いているし、最初っから壊れている事はなくなった。とは言え壊れやすい事に変わりはない。
 だがサーキット施設は、ドアの鍵の動きが悪かったり、手洗いの排水が悪かったり、コンセントが壊れていたりと、劣化は相変わらずで、鍵等重要な部分は主催者側を通じ直して貰っているが、そうでもない箇所は自分たちで工夫して、このレースウィークを乗り切っている。

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金曜日3週間振りにマシンと対面
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各種レンタル品。高性能とは言い難いが・・・。
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チャンと届いていて、チャンと作動するだけましかな。と言ったレベル。

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マシンの“穴”を塞いできたダンボールは、帰りにも使用するので保管。この凝った作りはどこを?塞いでいたか?
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どこへ行っても、最初は“定盤”作りから。これをチャンと作らないと、正しいアライメントはとれない。
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船出後増えた、現地スポンサー。ステッカーを貼付。

 毎年、ここセパンの場合はコースの下見という事でレンタカーライドが行われ、ビギナーには貴重なセッションだ。・・った。(過去形)そう、今年からこのレンタカーライドが無くなりコースウォークと変わってしまった。
 このコースを死ぬほど走っている加藤選手に対し、数年前初めてのサーキット走行をここで体験しただけ(と言ってもフォーミュラーBMWで何十周も・・)のハマちゃん。
 加藤選手から、秘密のセパン攻略マップをもらい予習をしており、細かな路面の状態をチェック。
 車で走るより、じっくりと下見ができる、コースウォークだが、炎天下、1周5.5kmのここセパンコースを歩くのはかなり大変。
 多くのドライバーが2~3コーナーでリタイヤしたようだが、自転車と、キックボードを用意した加藤選手とハマちゃんは完走。
 ハマちゃん、明日の実走でどれだけ成果を発揮できるか・・・?

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レインを含め7セット。珍しくレインの出番が無かった。
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各種計測の順番待ち。ここの定盤はチョット“怪しい”ので慎重な測定が必要。
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待ってる間、各チームメカ同士の井戸端会議。

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コモンルームの日除けタペストリー。毎回同じ様な感じだが、一応10Mセパン仕様。
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現地調達した、コースウォーク用自転車と、キックボード。
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1周してきたキックボードのホイール。タイヤラバーの汚れが・・。

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設営完了。陽が沈む前に引き上げ。冷たいビール飲むぞ!!
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ここしばらく緊縮財政の為、新調されなかったが、ハマちゃんご提供の統一ユニフォーム。モデルは松下チーフメカ。
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07年から、IM自販さん手配の運転手付きの送迎。2台に分乗。こうしたミニバンはこの国ではまだ少ない。

6月19日 練習走行 予選 SL 晴れ

 海を渡ってきたセパンに限らず、サーキットでの走り出しは“アウトイン”で1周し、各部をチェック。
 5シーズン4年を経た紫電は、電装系も古くなり、こうした長い航海によるサビ等接触不良も心配されるが、無線も含め概ね問題無し。
 ではボチボチと全力走行に入ろうとピットを離れた加藤選手。
 アウトラップ1周目ピット前を通過、特に問題も無く徐々にペースを上げて行く。
 2周目高速S字(ターン5、6)を過ぎ、我々はデグナー(似てる)とよぶターン7、8を抜け、短いストレートを駆け抜けヘアピンへ。
 ターン10から11は、大きな右Rからそのままチョットきつい右Rへと回りこむ。
 また短いストレートを経て左、右と回り裏ストレートに出るのだが、その左コーナーに入った途端!「ガッガッガガ!」と異音と共にコースアウト。
 明らかに何か壊れた“感”がある。
 「なんだよこれ!」と、加藤選手も思わず声が出るアクシデントのようだ。
 幸いここでのセーフティエリアは、グラベルではなく舗装路であった為、ユルユルとコースに戻ることはできた。
 ステアリング系である事は間違いないが、何とか走ってくる事はできそうだ。
 ピットに戻り、フロントカウルを外す。
 トラブルは直ぐに見て取る事ができた。
 右アッパーアームのジョイント部、スフェリカルベアリングが入ったエンドの破損である。
 レース経験豊富なメカスタッフが見ても、非常に珍しい破損状態らしく、しかもこの部分は鈴鹿の開幕戦でクラッシュした箇所なので新品に交換したパーツ。
 岡山、富士を経て2レース程度の疲労で壊れる事ないだろうから、製品不良だろうと思われる。

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晴れだがパッとしない。雨は無さそう・・・。
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今回は1ブロック2台だったからだが、セパンのピットは広い。
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IM自販さんからの依頼による、現地スポンサーステッカー3種。

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こうして“マレーシア仕様”となる。
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全チーム統一、オフィシャルステッカー。紫電は貼付部分が狭いので一回りサイズが小さい。
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公開車検。向こう側はヨッスィーのいる66号車。3戦富士で速さを見せつけられた。侮れない存在に・・・。

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そのヨッスィーと紫電チームスタッフ、どっちが“檻の中の動物”。
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富士でタイヤカスが転がりこんだダクト。ネットで対策済み。
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本格(今シーズン初)稼働のスポットクーラー。前戦5月の富士はまだ冷え込みを感じたな~。

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本格走行に入った直後、トラブル発生。ユルユルとピットに戻った加藤選手。
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右アッパーアームのスフェリカルベアリングのエンド部が破損。
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メカ曰く、かなり珍しい壊れ方らしい。

 スペアパーツもある事、ここ以外に破損が無かった事、今の“時点”で発生した事等、不幸中の幸いもあり約15分程で修復でき、再びコースに出る事はできた。
 その後はタイヤテストとして順調に周回を重ね・・・と言っても、加藤選手の場合精々1セットを3周、計測1周位で済ませている。
 これまでのデーターから、マシンの基本セッティングは良好で、2′11″208のベストタイム(最終的に5番手タイム)は更に短縮可能で、加藤選手からのコメントも、10秒台前半は充分狙えるマシンになっているようだ。
 それより、ハマちゃんの練習走行に多くの時間を当てたいのはここでも同じ。
 ここセパンでは一日一回はあるスコールも、幸い今日はなさそうだ。
 午前10時からのこのセッション1時間45分と短い。
 残り約1時間ハマちゃんに交代。
 走り始め計測2周目でいきなり12秒台!これは悪くない。
 どころか、これがレース中コンスタントに出せるのあれば充分である。
 計測8周トータル10周のセットを2回。
 ベストタイムは2′12″014と、あと僅かで11秒台!予選では必ず突破するだろう。

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修理後、タイヤ2セットを比較し、ハマちゃんに交代。
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今年の冠スポンサー?「SINGHA(シンハ)はタイのビールブランド。
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影ができないことから陽射しが弱い事が判る。っが、暑くないわけではない。

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ハマちゃん、ここセパンは数年前、初めてのレーシングカー、スリックタイヤを体験した場所だとか・・。
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紫電の稼ぎ所“のひとつ”、高速S字・・・。
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色々“起こる”1、2コーナーのS字。

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マーシャルカーは「シビックタイプRユーロ」日本では昨秋2010台限定販売された稀少車。
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10周も走っていない加藤選手、ウルトラウーマンと暇つぶし。
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ハマちゃんは10周を2セット。あとチョットで11秒台・・までタイムを上げる。

 今回の予選はスーパーラップ方式(以下:SL)、1回目予選の上位8台がSLに進出。
 上位8グリッドを争う事になる。
 練習走行でのタイムから、加藤選手も10秒台でのSL進出も、ハマちゃんの11秒台も問題ないだろう。
 ただSLも、進出できれば良いわけではない。
 狙うは昨年の雪辱を果たす為にもポールポジション。
 その為には、SLも上位(後のスタート)に入りたい。
 と言うのも、こうしたサーキットはマシンが走行すると、コース上にラバーがのり、グリップが向上するのだが、そのグリップのピークはやや気温が下がった頃との事。
 従って、今日のタイムスケジュールからすると、SLもスタートが遅い方が好タイムを期待できるのである。
 レースエンジニアはそうしたサーキットの癖も掴んだ上で、タイヤの選択、レース戦略を練っているのである。・・・そうです。
 予選は300、500の混走30分+300占有が10分。
 まずハマちゃんからスタートし、基準タイムをクリアしたら(と言っても精々3~4周、計測2周で充分)その後加藤選手がSL進出に向けアタックし、更にSLに向けたセッティングも行う予定。・・・だった。
 ハマちゃんコースイン。
 1周のアウトラップ後タイムアタックに入る。
 11秒台へは僅か1000分の15秒とタイム的には大きな意味を持たないが、精神的には重要だ。
 そんな11秒台への闘志と自信を満載した、ハマちゃんから、「何か煙が出た!?」
 熱い闘志が発火したわけでもあるまいし、ピットも「・・・??」一瞬言葉を失う。もう少し状況が判らないと・・・。
 先の富士では(結果的に)ツマラないボヤ騒ぎでレースを失っているだけに“またかよ!”感が漂う。
 とりあえず走れているようだが・・・程なく裏ストレート辺りで「中へも煙が入ってきた!」
 これはまずい「ピットへ入ってください」と指示。

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闘志みなぎるアスリート、ハマちゃん、コンセントレーションを高める。
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11秒台の、どの辺までタイムを上げられるか!?予選コースイン。
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だが僅か2周でピットイン?リヤカウルが外される。まだ未計測。

 まだ予選セッションも序盤。チョット予定が狂ったが、充分仕切り直しは可能だ。
 ピットロードを走ってくるマシンには、炎も勿論、煙も見当たらないが、まずはピット前に停車、リヤカウルを外す。
 これまたトラブルの原因は、直ぐに見て取れた。
 ミッションオイルクーラーのライン(ジョイント部)からのオイル洩れである。
 だが午前中のトラブルと違って、今度は簡単には直せない。
 フィッティング部分に亀裂が入り洩れているので、そのフィッティングからオイルクーラーまでの(同じスペアではないが・・)、ホースを交換すればいいのだが、オイルクーラー側のフィッティングを外すにはテールカウル部分を外す必要があり、時間的には20分~30分は掛かってしまい、ゴリギリ予選セッションが終わってしまう。
 短時間で走行できる方法もある。
 オイルクーラーを通さず、バイパスさせてしまえば良いのだ。
 だが万一ミッションが焼き付いてしまったら、 スペアパーツの兼ね合いから、それこそ明日の決勝は絶望となってしまう。
 もっと気温が低ければ、そのリスクも低いだろうが、よりによってここセパンである。
 結局“バイパス”案は却下。とりあえずテールカウルを外し”血管”移植にとりかかる。
 作業時間的に”絶望的”ではないので、一縷の望みを求め作業をテキパキと進める。
 赤旗でも出て、セッションが中断すれば良いのだが、無情にも予選もテキパキと進み、混走セッション、そして300専有セッションも終了。
 両ドライバー共、基準タイムがクリアできず予選落ちが確定・・・・落ちた理由こそ異なるが2年連続、ここセパンで・・とは。
 修復作業も速さ重視から、正確さ重視へと代わり、後部が外れている事からそのままメンテナンスに入る。
 それと同時に始まった作業がある。
 嘆願書の作成である。
 今回の様に、ドライバー、マシンの実力ではなく、トラブルにより予選不通過となり、“グリッドに余裕がある場合”は、競技長に嘆願書を提出する事で明日の出走許可を貰うのである。
 基本的には明日朝のフリー走行の状況を見てからの判断だが、今回の我々の場合問題は無いだろう。
 日本語ヴァージョンを作成し、審査委員室へ・・・すると「そろそろ来ると思ってたよ。」と、通訳スタッフが英語ヴァージョンを製作中。
 今年から、ここセパンでの提出物はチャンと英語で無いとだめなのである。
 無論英語で嘆願書など作れないだろう(確かに)と、既に審査委員会で作成に取り掛かってくれていたのであった。
 「去年も嘆願書だったな。」「何が壊れたの?治るの?」とか、色々冷やかされながらも、「昨年のゲンかつぎかな?」と激励とも取れない声を後に審査委員室を出る。
 他のチームからも「また最後尾優勝狙ってんの?」とからかわれたりと、昨年の雪辱を晴らすというより、昨年と同じ流れが出来始めている。
 ならばこの流れに乗った方が良いかも・・・。
 とすると順番として、明日のフリー走行で、トップタイムを出し速さを見せつけ、決勝レースオープニングラップでは波乱が起き、驚異の順位で帰ってくる。
 まずこの流れ・・・。

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ミッションオイルクーラーのジョイント部からオイル洩れ発生!ピンチ!!
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テールカウル始め、リヤ周りが外される。
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メカ総出で修理に掛かるが・・・。

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予選セッション時間内には間に合わず、そのまま通常メンテナンスへと移行・・・。
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エルボのジョイントから、代品のホースへと代わる。
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この亀裂で洩れたようだ。トラブルはいつもいいタイミングで出るとは限らない。

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昨年初めて提出した嘆願書。2度目がまさか同じサーキットとは・・・。
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両ドライバー、スポンサー向けサービスショット。
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こうした形で嘆願書は受理され、掲示された。

6月20日 フリー走行 サーキットサファリ 決勝 晴れ

 昨年の予選失格はSLで一時的にもポールポジションとなった為、そこからの落胆は大きかった。
 だが今年はそこに至る以前で最後尾となったので、精神的な落ち込みは殆ど無い。
 慣れたから・・・?
 最後尾から上位入賞などありえない!って事もないので、チームのムードは全く悪くない。

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今朝も“スッキリ”しない晴れ。
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この国のバイクは概ねこんなんばっかりだけど、パドックで見かけたこれは、特に進んでいたと思う。
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閑話休題。昨日良いとこを見せられなかった紫電。今日は大暴れか・・・。

  ただ予選40分が走れなかったので、とにかくハマちゃんの走行時間も、最終的なセットの確認も不足気味。
 最近恒例のフリー走行後のサーキットサファリも、ここセパンでも行われるので、そうした貴重な時間となる。
 フリー走行は満タン状態で加藤選手がいきなり2′10″086!で、2番手7号者に1秒近い差をつけトップタイム。
 ハマちゃんも燃料が増えたこともあり11秒台には入れられなかったが、12″299と練習不足でもある中、まずまずのタイム。
 フリー走行が終了。
 サファリを利用して、決勝用のブレーキの当りをつける為、大急ぎでブレーキローターとパッドを交換。
 作業中にサファリは開始されたが、“タイムスケジュール”では30分予定されているサーキットサファリ、10~15分は走行可能だろう。
 ところが、作業完了と同時くらいにサファリ終了のチェッカーが出てしまった。
 エッまだ時間あるんじゃないの?と、オフィシャルに聞いて見る。
 どうやら、全体的なバスの運行が遅延する可能性がありそうで、前倒しで終了させたようだ。
 まだ時間があると思ってメニューを組んでいた事から、多くのチームが肩すかしを食った格好になった。
 ま~、セパンスケジュールという事か?
 
 段取りが少し狂ったが、“予定通り”フリー走行はトップタイムをマーク、流れは昨年と同じだ。
 昨日の予選不通過は、我々と27号車の2台。
 このフリー走行のタイムからか?最後尾は27号車。
 2号車はブービーとなって決勝レースへの出走が正式に許可された。

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雨もなさそうなので、サイドウィンドーを少し浮かすし風を入れる様にする。
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こんな感じ。セパン仕様というより、夏仕様。
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昨日の修理箇所も再点検。異常なし。

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朝のフリー走行では2番手に1秒近くの差をつけトップタイムをマーク。
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ブレーキパッド。メーカーで熱は入れてもらっているが、ローターとのアタリはついていない。
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サファリの時間にアタリをつける予定で交換を始めたら、なんと早めにサファリが終了。

 決勝レースは、日本での午後2時ではなく、少し日が傾く午後4時から・・。
 それでも気温は33℃、路温は40℃を、共に超えている。
 フォーメーション5分前、マレーシア国歌に続き君が代が流れ、エンジンスタート。
 相変わらずテンションの高い、スタンドの声援が高まる。

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ウォームアップ走行に出る。
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この僅かな走行でもセット変更。
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グリッドについてスタートまで、ピットに戻りしばしの休憩、加藤選手。

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彼女も“セパン仕様”です。
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I・M・JIHANののぼりを持つのは、我々のセパンでのお世話役シャーミー君。日本語、マレー語、英語に堪能。
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みんなでポーズ。今年も後ろは誰もいない(1台いるけど・・。)

 500のスタートに続き300スタート!
 1コーナーへと消えていく。
 1コーナーの右ターンで大外から2台をパス。
 連続の左第2コーナーで、何やらゴタゴタが起こっている。
 180度向きが変わって停車したマシンも数台、それらを避け左右に散らばる前方のマシン群!
 イン側に逃げた、このアクシデントをかわした加藤選手。
 グリッド中段にいたら、巻き込まれていたかも・・・?
 最後尾グリッドの恩恵再び・・・である。
 ここでどれだけ順位が変わったか判らないが、止まっていたマシン分は確実にジャンプUP。
 またアウト側に避けた何台かもパスできたと思われる。
 インフィールドで前を行く、86号車ガイヤルドをパス。
 裏ストレートで前に見える、ヨッスィー乗る66号車には追いつけない。
 オープニングラップを終え、順位は11位!18番手スタートから一気にポジションUP!!
 いい流れ!!
 
 2周目に入ると66号車がペースUP。前にいた46、31号車の2台も抜いて8位へ。
 昨日練習走行ではトップタイム。第3戦、富士表彰台の速さを持ち込んでいる。
 加藤選手の順位は変わらず、眼前のマシンが46号車に代わっただけ。
 3周目にはその46号車を抜き10位へ。タイムも12秒台と本来のペースにあがる。
 この時点でトップはポールスタートの11号車フェラーリ。(ピットが隣同士。)
 続いて33、7、88、3、43、74、66、31そして2号車加藤選手。トップからはマイナス9秒遅れ、まだ“圏内”である。
 4周目その11号車、33号車にトップをあけ渡す。
 唯一11秒台をマークしつつ33号車がじわりと2位以下を引き離しに掛かる。

 加藤選手、5周目31号車をパスし9位。
 6周7周と上位の順位変動は無かったが、その頃66号車(ヨッスィー)にジャンプスタートによるドライビングスルーペナルティの裁定が下る。
 これにより、8周を終え8位へと上がるが、トップ33号車とは既に12秒差。
 タイヤ選択のミスか?ややペースの落ちてきた2位の11号車は、ここセパンで(特に)速い7号車にも抜かれ9周目3位に落ちる。

 12周時点でトップは相変わらず33号車だが、11秒台へとペースの上がってきた、2位7号車には3秒のリードしか築けない。
 3位以下、88、3号車、そしてめっきりペースの落ちた、11号車、続いて43、74号車、2号車加藤選手は8位変わらず。
 だが13周目、43号車に抜かれ順位の落ちた11号車は、74号車を後ろに従えた加藤選手と激しいバトルを展開。
 パワーに勝る11号車だが、既にタイヤが“落ちて”きたのか?各コーナでは紫電にかなわない。後の74号車も虎視眈々と、この2台を狙う。
 このバトルは2周に渡って展開された。(加藤選手はこういうのが大好き。・・・なはず?)
 14周を終え、加藤選手はここまでのベストタイム12″2を出し、何とか引き離しに成功に43号車続く6位にポジションを上げた。
 更に加藤選手はここに来て更にタイムを11~12秒台に上げ、13秒台の43号車の背後に迫る。
 その後13秒台の43号車を抜きあぐね、0.2~0.3秒差のテールtoノーズ展開。
 その間にトップ7号車は、唯一11秒台でドンドンリードを広げる。
 最近のレースではタイヤ無交換作戦を取る7号車だが、今回は交換する為にハイペースで“貯金”を増やしている。
 ズッと43号車の背後からプレッシャーを掛けていた、加藤選手、19周目に入り、得意の高速S字立ち上がりで並び、次の“デグナー”飛び込みで抜き去る。
 フロントウィンドウの視界から、バックモニターの主役となった43号車、ジワリジワリと差をつけ段々小さくなっていく。
 だが裏ストレートで、トップスピードに劣る紫電のバックモニターに、43号車が大きくなってくる。
 19周目最終ヘアピンコーナー、飛び込みでバックモニターから左に消える43号車、接触を避けるためイン側を空け、左に切り込む加藤選手。
 インに並んだ43号車、ややオーバーペース!スピンする形で2号車の左後部に接触!
 双方揃ってスピン!コースアウト!!
 アウト側の2号車はグリーンへ、イン側の43号車はコース上ギリギリでストップ。
 百戦錬磨の加藤選手、テールからコースアウトしながらも、止まったエンジンの再始動にとりかかる・・・・っがすぐに掛からない!
 完全停止してからも、スターターを回すが、コースアウトの際に石でも噛み込んだか?うまく回らない。
 何度かトライ!!43号車は先に復帰、そのままピットへ・・・。
 取り残された2号車加藤選手。スタータースイッチ何度も入れ直しようやく始動、そのままレースに復帰。
 1コーナーまでにハンドリング状態をチェック、ピットからも目視でチェック。
 大きな問題も無いことを確認したら、再び戦闘モードへ・・・!
 12位にまでポジションは下がったが、モチベーションは変わらない・・・どころか、今回の作戦ではリヤタイヤのみ交換を予定していた為、(一応)タイヤ温存走行をしていた加藤選手、一気にぶちきれてしまったか?
 ここまで1周しか出していなかった、11秒台を連発!猛チャージをかける。
  後のピットインで判った事だが、このアクシデントでリヤスタビライザー折れていたが、バランスが変わった状態にも即応できる加藤選手であった。
 24周目には、ポイント圏内の10位へと復帰。
 ただこの頃から各チームピットインが始まり、実際の順位は分からないが、確実に追い上げている事は間違いない。
 そんな状態で見かけの順位上、トップに立った33周を終え、予定周回でピットに入った加藤選手、待ち構えるハマちゃん。
 タイヤ交換はリヤのみから、左側のみに作戦変更。
 “短いピットストップ”は順当に行けば充分5~6位でレースに復帰できるはずである・・・であった。
 ドライバー交代、タイヤ交換、給油、順調に進むが、オフィシャルから43号車との接触で破損した、左リヤ部破損の修理(と言ってもパーツの脱落防止)を指示される。
 予め用意しておいた、ガムテープで補修。これでポイント圏内ギリギリへとポジションダウン・・・で済むはずだった・・。
 ジャッキダウン、と同時にハマちゃんスタータースイッチON!!
 “ガガガガガガッ  ガガガガガッ”とモーターは回っているがギヤが全く噛み合わずエンジンは始動しない。
 順位はアッという間にダウン。どころか戦列復帰も無理か・・・�
��
 ピット内にマシンを入れ、スターターを点検、と言っても目視点検や多少のショック療法程度しか手のうちようが無い。
 結局一度だけ再始動したが、レースに復帰するには、ピットの“外”で自力始動しなくてはならない。
 エンジンを止め、ピット外へ出し再始動を試みたが、不発。
 その後とうとう再始動はできなくなってしまった。

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300クラススタート!トップは遥か先だが・・・。
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オープニング、1コーナーを回るといきなりこんな感じ。
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1周戻ったらこんな感じ。トップ4台は既に1コーナーへ・・・。

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エヴァ31号車を抜いて9位。6周目に入る。それらを切り抜け、着々とポジションを上げるのだが・・・。
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19周目43号車に追突されコースアウト。左後部が破損・・・(だけではなかった。)。その後は、よりハイペースで攻める。
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43号車の追突は、レーシングアクシデントと判定されたが、ダメージは大きかった。

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リヤのスタビライザーが折れていた。
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結局スターターモーターが噛み合わず再スタートできず。

 ハマちゃん降車。リタイアである。
 ここまでの加藤選手の苦労も、ハマちゃんの努力も、全て水泡と化した。
 特にコンセントレーションを高め、後半に臨んだハマちゃんの落胆は大きい。
 例え外観が壊れ、バランスが狂いベスト状態で無いにしろ、危険が伴わなければ走って貰いたかった。
 ルーキーにとっては、どんな状態であれ走って経験値を積み上げる事が、ルーキーを脱する事である。
 ここまでの4戦中、2戦が全く走れないレースとなり、貯まったフラストレーションを、次戦までにモチベーションへと昇華させて貰いたい。