モータースポーツ

SUPER GT第2戦 富士スピードウェイ

2013シーズン マクラーレン
2013年05月10日

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SUPER GT第2戦 富士スピードウェイ

例年5月に入ったゴールデンウィーク中に開催される第2戦富士。
今年は5月中旬に開催予定の韓国でのエキシビションレース(開催延期)のスケジュールもあり1週間前倒しの4月28・29日の開催となった。
真夏の鈴鹿Pokka1000kmに次ぐ、シリーズ2番目の500kmという長丁場。
昨年までのJAFGTマシン紫電は好燃費を活かし、レースを有利に運ぶ絶好のチャンスだが、FIAGTマシンのエヴァRT初号機アップルMP4-12Cには厳しいレースとなりそうだ。
更に前戦岡山の開幕戦においてのEVA Mclarenは、僅か6周でリタイヤ!
貴重な実戦でのデーターが取れず、未だデーター不足は否めず、タイヤ選定もバクチ的要素が無いとは言えない。
無論、ヨコハマのエンジニアの助言もあり、そんな大幅に“外す”ことは無くレースに臨むことはなできるが、レースではコースコンディションが刻々と変わり、それに応じてタイヤの摩耗度も変るし、ドライバーもそれに応じてドライビングを変える等々、そうした要素が複合的に絡んでくるので、マシンセッティングは、何十、何百・・の組合せからベター、そしてベストをいかに早く探し出すかが勝負。
その為には、いかに多く走りこみ、多くのデーター(経験値)を得るかは、シリーズを戦うには最重要とも言える課題なのだが・・・。

13Rd02-019.jpg 富士搬入 13Rd02-034.jpg 定盤の水平出し。ウェイトもWi-Fiで飛ばせる便利もの。 13Rd02-042.jpg 給油タワーセットアップ。リアフェンダー周り、少しカラーリング変更。
13Rd02-065.jpg イギリスから持ち込まれたブーストコントローラー・・・毎回交換してる。 13Rd02-234.jpg パドルシフトの原動力となるコンプレッサー。これがアキレス腱・・?

4月28日(日) 練習走行 / 晴れ

今季は勿論、昨年からも含めSUPER GTイベント(テスト・レース)で、これほどの好天に恵まれるのは久しぶり・・・素晴らしい晴天の今日は、練習走行と、ノックアウト予選。
100分間の500・300混走と10分間クラス占有走行の練習走行時間は、加藤選手からの走り出し。
40秒台から39秒台・・39秒648のベストはとりあえずクラス5番手。
バランスもまずまず、ノントラブルで終えた岡山ラウンドをそのまま引き継ぎ、マシンも快調に周回を重ねる。
計測7周程でベースセッティングを決め、その後はタイヤテストの為、ピットインアウトを繰り返しクラス5~8番手タイムをいったりきたり・・そして更にタイムアップを狙った15周目、第1、第2セクターまでベスト更新!39秒前半まで行けそうだ・・・と思いきや、最終コーナー辺りで、シフトチェンジができないという、以前シェイクダウン時に頻発したトラブルが再発。
幸いピットに戻る事もでき、パーツ交換で直ぐに復旧し、貴重なセッションを大きく失う事無く走行を続ける事はできたが、再発したトラブルに不安がよぎる。
ある程度のセットができた後、高橋選手の走行は、まず10周、その後クラス占有も含め、15周の連続走行に加え、予選想定のNEWタイヤでのアタックと、これまでに無い充実したセッションとなり、走るほどにタイムアップ。
クラストップの38秒880から約2秒差、加藤選手からも約1秒の40秒727。
まだ伸び代を感じさせる走りに加え、マシンもノントラブルで終える事ができた。

4月28日(日) 予選 / 晴れ

午後Q1予選は加藤選手。
気温、路温も上がりコースコンディションは良くなったが、いまひとつセットが合わず、39秒642と不発・・・11番手でQ2(上位13台進出)には進んだものの想定外の低位置。
Q2アタックの高橋選手は、自己ベスト更新の40秒694となるが、他のマシンもタイムアップ、最終12番手となる。
走る毎にタイムを上げる高橋選手、まだ伸び代のある走りは、これまでの走行時間の不足を感じささせない。
決勝レースラップとしては充分で、明日、一番の好材料と言える
そんな不安と期待一杯の決勝、12番グリッドから挑む。

13Rd02-089.jpg 5月とはいえ、まだまだ冷え込む富士。 13Rd02-097.jpg 公開車検・・人気・・期待に報いるリザルトを残したい。 13Rd02-153.jpg 微妙に水温調整。
13Rd02-166.jpg テスト時のリストリクターより小径となった為、トップスピードはやや落ちた。 13Rd02-210.jpg グループ会社に日産ディーラーのステッカーが加わる。 13Rd02-240.jpg 予選用タイヤを温める。

■予選後のコメント
■渡邊エンジニア「何かうまくいかない予選でした。午前(の練習)のフィーリングで行くとトップ5か3くらいに滑り込めるかな・・と思ったんですが、午前中にトラブルが出て、加藤さんはアタックできず・・実際に予選が始まって、Q1で11位という結果になっちゃったんですが、当初考えていた以上に路面が良くなったのか・・コンディションの変化にクルマが合ってなかった様で、強いアンダーステアをドライバーが訴えていて、結局想定していたタイムが出ずに終わってしまった。高橋選手に関しては、乗るたびにドンドン速くなってきているので、逆に明日(決勝日)の朝にかけて・・(レースに向けた)材料として・・高橋選手に関してはポジティブな感じはありますね。予選順位に関しては・・・Q1の加藤選手のアタックが不発だったのが・・僕等としてはハッキリと原因がよく分からないので・・・チョットそれらを踏まえた、明日の朝のフリー走行をする事になってます。決勝は距離も長いんで、燃費に問題をかかえてはいるんですが・・最後までうまくレースを運べるよう頑張ります。」
■高橋選手「コメントしようがない!ダメダメ!◯◯◯◯(選手)にも負けたし・・・バカヤロー(笑)。(加藤選手「(高橋さん)自分に怒ってるだけですから・・ボクが代わりに言います。明日は頑張ります!!以上です。」)」
■加藤選手「え~ようやく(今シーズン)晴天の中、予選ができたんですが、チョットと色んな問題もあり、なかなかセットが詰められなかったんですが、何とかQ1通過でき、高橋さんに繋ぐ事ができたんで・・・ま~ま~良いかな・・・え~決勝に向けては、それなりにチョット戦略と・・決勝のラップタイムもそこそこ見えてるんで、明日はいい戦いができるんじゃないかなと思ってます。」

4月29日(月) 決勝 / 晴れ

500kmの長距離は2回のピットインが義務付けられているが、ハイパワーの代償に燃費の厳しいFIAGTマシン・・とりわけターボエンジンのエヴァRT初号機アップルMP4-12Cは、2回のピットインで済むか?
決勝レースは110周だが、300クラスは500クラスとのタイム差から104周辺りがチェッカーと予測。
これを単純に3スティントで割ると、1スティント35周・・・満タンで35周以上走行できなければ2ストップ作戦は成り立たない。
昨日、また今朝のフリー走行までの燃費データーでは、何とか2回のピットストップ、3スティントで行ける計算だが、実戦レースでのデーター少ない、エヴァRT初号機アップルMP4-12C、行けるかどうか微妙なところ・・・。
多くのチームが2ストップ、3スティント作戦となるであろう、このレース、3回必要となったら上位入賞の可能性は低い。
最初から3回ピット前提で作戦を取る事もできるが、1回のピットインでのロスタイムを、稼ぎ出せるほどのレースラップは無理だろう。
まだ“攻める”だけのデーターが無い我々にとって、エコドライブで2ストップ作戦が常套手段である。

今回のレース、ポールは61号車(BRZ)、2番手、3番手はそれぞれ16号車、55号車(共にCR-Z)そして5番手に31号車(プリウス)と、今季エントリーしているJAFGTマシン4台が、トップ5に入り、速さを見せつけている。
昨シーズンひき続きJAFGTマシンの性能は引き上げられた為、ここ富士においても、これまでの様なFIAGTマシンの独壇場となる事はなさそうだ。

3日連続、好天の富士。
ウォームアップ走行も終わり、ピット内で満タンにしファーストスティント担当の加藤選手がゆっくりとピットを離れる。
ゆっくりとコースを1周、最終コーナーからストレートでエンジンを止め、惰性でグリッドに着く・・・ところが勢いが足らず少し手前で停まってしまうハプニングが・・・。
既に燃費との戦いは始まっており、この1周、更にフォーメーションでも燃料は無駄に使えない。

13Rd02-254.jpg スターティンググリッドに向かう。 13Rd02-371.jpg 10年の紫電ドライバー、濱口選手(中)が応援に・・・。今年GTアジアに参戦予定。 13Rd02-387.jpg スタート前の両ドライバー。加藤→高橋→加藤の予定。

午後1時過ぎからのセレモニー、グリッドウォーク・・・、グランドスタンドはほぼ埋め尽くされ、各コーナースタンドも多くのファンがスタートを待っている。
午後2時、フォーメーション開始・・・1周の後レーススタート。
12番グリッドからのオープニングラップは1台を抜き11位。
その後も3周目、ポールスタートの61号車がトラブルでリタイヤ、JAFGT勢の一角が脱落。
更に同周、フォーメーションラップでスピンし、遅れた55号車がポジション復帰してスタート。
これはスタート手順違反(本来はピットスタート)となり、ドライブスルーペナルティで後退した為労せず9位へ・・。
5周目には7位と順調に順位を上げたが、6周目最終コーナー目の前でスピンした31号車(プリウス)を 間一髪で避ける間に順位を落とす。
だが、上位陣のトラブル、ペナルティ等にも助けられ、また上位集団が42~43秒台に落ちた中、41秒台のハイペースエコドライブで13周目には再び7位、そして15周目には5位、17周目には4位と、各チーム、まだルーティンピット始まっていない中、快進撃を続ける。
10周毎に入る、消費燃料も計算通り
加藤選手の神がかり的、エコドライブは功を奏し、当初予定していた35周目のピットインを1周伸ばす事にも成功(この1周は大きい)、36周を終え、ガソリンもほぼ使い切りピットイン、高橋選手に交代。
タイヤも4本交換、給油時間は長いがしっかりとオーバーフローさせる。
(オーバーフローした瞬間に給油を止め、満タンになりきらず計算違いのガス欠になる事も珍しくない。)
全てが計算通り。
9位でコースに戻った高橋選手、タイヤに熱も入ると、44秒台から43、42秒台とタイムを上げ、ポジションを守る。
プロドライバーが形成する、上位グループと遜色ない41秒台もマーク!快走を続ける。
ところが、47周目の最終コーナー、「シフト(ギアチェンジ)できない!」と無線が入る。
全ての電源が落ち、メーターパネルも真っ暗になってしまった。
最終コーナーにエスケープゾーンにマシンを止める。
残念な事に、このマシンにとって“珍しくない”トラブルが再発。
これまでにも試した復旧処置を行うがダメ。
無線も使えないので、ピットからのアドバイスを貰うこともできない。
走行を諦め、高橋選手がマシンを降りようとしたその瞬間、突然電源が回復。
メーターパネルの表示も復帰。
再びレースに戻るが約3周分のタイムをロス・・・ポイント圏内から大きくはじき出され20位。
遅れを挽回できる順位、周回では無いが、42秒前半の安定したタイムでラップする高橋選手。
悔やまれるトラブル。
60周目、同じトラブルが再発した為ピットイン。
今後のデーター収集の為、一部のパーツを交換、じっくりと各部の点検を行い、再び高橋選手がドライブ。
完全に勝負権は失ったが、今後のデーター収集の為、両ドライバーが走行。
71周を終え、加藤選手に交代、チェッカーまでマシンを運ぶ事となった。。
タイヤは今回のレース想定通り、リヤのみ交換し、ロングランをかけた場合、フロントタイヤのグリップの変化を見る。
そんな中、トップと変わらぬ40~41秒台・・・80周目には40秒232のベストタイムをマーク。
エヴァRT初号機アップルMP4-12Cのポテンシャルを示しつつ、86周を終え、トップから17周遅れの18位完走でチェッカーを受ける。
今回のトラブルは、昨年末のシェイクダウン時から、開幕前のテストまで発生し続けた症 状で、開幕岡山では全く発生しなかったのは対策パーツが功を奏したかと思いきや・・・昨日再び発生し不安材料となっていた。
これはシステム上の問題と思われメカニックも手を出せる部分では無く、歯がゆいシーズ ン序盤・・大きく出遅れである。

13Rd02-396.jpg レース中盤、トラブルでコースサイドに止まるが復帰。だが再発してピットに入る。 13Rd02-417.jpg レースは“失った”が、各種データー収集の為予定通りドライバー交代も含め走行を続ける。 13Rd02-434.jpg とりあえず完走。

■決勝レース後のコメント
■渡邊エンジニア「基本的に決勝レースに臨むに当たって、実はこのクルマ燃費が・・・ターボであるという関係で・・悪くて、通常の500kmであれば、紫電の場合1ピットであるとか、今は2ピットがスタンダードなんですけど・・・それがとれるか?どうか分からないくらい燃費が厳しいという所から始まって・・・、そこはマクラーレンさんから新しいエンジンマップを用意して貰ったり・・また一番大きいのはドライバーの方で、燃費をセーブしたエコ運転してもらうという事で、何とか2ピット及び2回目のタイヤ交換はリヤのみで済ますという戦略で戦ったんですが・・・予選一発はタイムが出なかったんですが・・・レース始まると加藤さんが12番から、同一周回で3位まで上がって・・・実際バランスも良くて、クルマも速かったんですね。選んだタイヤも、なかなかたれにくくて、良い展開で進み、実際、今話した燃費の部分も予想した状況・・プラス1周走れるぐらいな・・完全な展開で1回目のピットまで進み、高橋選手に交代し・・やっぱりタイム落ち着くまで時間かかったりしてたんですけど、決して遅くないペースでタイムを刻んだりして・・・期待がもてたんですが・・・途中で・・まっ~これは・・クルマが来てから、ずっとかかえていたトラブル・・システムトラブルなんで、我々の方ではいかんともしがたい部分があるんですけど・・・(変速の)パドルシフトのパドル操作ができなくなっちゃうという・・具体的にはギアが変わらくなっちゃう・・それが発生してしまいまして・・正直レース除外ですね。ただ、だましだましでも走れるんで・・レースのリザルト狙う走りはできなかったんですが、今後の為を考えて、できるだけの対策をピットで施して、リタイヤせずゴールまでは行く・・という事で予定したタイヤ交換・・スケジュールとか燃費走行とかやったんですが、結果は非常に良くない状態で終わっちゃったんですけど・・走ってるクルマん中では一番最後でしょうね・・多分。 ただ加藤選手の走ってたファーストスティントと、高橋選手のセカンドスティントまで非常に調子が良くて燃費のコントロールも完全で、タイヤのコンディション・・使い方もすごく良かったんで・・正直うまくまとまれば、間違いなくかなり上位は狙える・・・今年はプライベートチームには厳しいルールになっていて、予選も二人で走らなくてはならなくなって、プロ・アマコンビには勝算が少ないルールになっちゃったんですけど、そんな中でも・・まわり争ってるのはプロ・プロの人たちなんで、そんな事もいってられない中、今日のポテンシャルを見る限りでは、表彰台は全然不可能ではないな・・・と感じられたんですが、クルマの方にトラブルが出ちゃうってのが問題ですね。・・次はマレーシアなんですけど、まだいくつか今回出た以外・・不安な要素はあるんですけど、マクラーレン側で対策してもらわないと治らないんで・・これから更に・・実際この後イギリスに行くんで、そこでミーティングを重ねて・・いい形でマレーシアいけたらいいな・・・と思います。」
■高橋選手「ん~~~~~~~ま~~~~どうしょうもないね。クルマがあれじゃ・・。自分の課題もチョットあるんだけど・・・(あの)クルマ許さんぞ。ロンデニスんとこ行って首絞めてこないかん(笑)」
■加藤選手「初めてのチャンとしたレースを戦えるように、クルマのバランスも戦略も、コンサバ的な物にチョイスしていったんですが、予想よりも全然バランスも良くて、ラップタイムも速かったんで、楽しく・・途中まではレースができました。トラブルが出ちゃったのは残念なんですけど、ポテンシャルは皆さんにも見ていただけたと思いますし、あとマクラーレン側と話をしてトラブルを消せる様にして、次のレース・・臨みたいと思います。」