SUZUKA ポッカ耐久1000kmレース
8月某日、雨、岡山・・・
マシン完成!まずはサーキットで走らせよう。いわゆるシェイクダウンってやつです。走り慣れた鈴鹿に行きたいがスケジュールが合わない。8月下旬の「鈴鹿ポッカ1000km」で走る為には、8月始めには走っておかないと、何か不具合があった時に間に合わない。8月に入ってからでは遅いくらいだが・・。
8月初旬の某日、夜大阪を抜け、中国自動車道をNSXを積車に積んでひた走る筆者がいた。 本当に「F1GP」を開催したのか?と誰もが思う山の中、過去2回のF1であのA・セナも走った岡山県、TI英田サーキットに深夜到着。明日ドライバーもやって来る。まずはサーキット内のコテージで就寝。
岡山、朝もやけむる「TI英田サーキット」のコースに隣接のコテージ。こんな風に運んできました。
翌朝、天気があやしい。もつかな・・・。ピットではオスカーのスタッフが準備を始める。このマシンはさすがに我々だけでは面倒が見れないので、レーシングカーの専門知識と経験を持つコンストラクター、シャーシーを「オスカー」、エンジンは「戸田レーシング」からのスタッフが、今後のレースに加わる事になりました。
ついに完成!GT300クラス初のNSX.。カラーリング無しが、シェイクダウンぽい。
エンジンはF3を始め多くのチームが使用する名門「戸田レーシング」
4台目のアメリカンカラー
そして8月26日「鈴鹿ポッカ1000km耐久レース」をデビューレースにするGT300「ドリーム28・アメリカンレーシング・NSX」がカラーリングを施して23日(木)鈴鹿入りしました。
GT500ではお馴染みですが、GT300クラスでは初のNSXである。いつもの「アメリカンレーシングカラー」はこれで4台目である。鈴鹿では結構知られたカラーリングらしい。
アメリカンカラーのマシン。昨年のポッカ1000kmで一生を終えた「NSX」そしてCIVIC・S2000
そして4台目GT300・NSX
今回はドライバーは3名でいつもの高橋選手、木村選手に加え、あの「月刊 カーグラフィック」の副編集長、塚原 久 氏が参加してくれた。塚原選手は軽自動車からF1まで、ありとあらゆるマシンのロードテストをこなし、レーシングドライバーとしても一流の頼もしい助っ人である。
やっと、らしくなってきた
翌24日(金)よりフリー走行。「岡山TI」ではドライバーも「初めてのマシン」「初めてのシーケンシャルシフト」「初めてのコース」しかもウェット路面(しかもどしゃ降り)と、とてもマシンに慣れる状態では無かったが、ここ鈴鹿ではやっと本格的レーシングスピード、しかもドライ路面の走行である。
GT500マシンに割って入り、いよいよ予選スタート
徐々にマシンにも慣れ、3名のドライバー共、2分25秒、23秒、20秒と順調タイムも短縮していく。しかし速くなっていく分、この8月の炎天下の下、体力の消耗も相当な物。はたして1000kmはどうなるか・・・?
25日(土)の予選、ベストは塚原選手の2分18秒628。35台中総合26位GT300クラス10位最下位である。高橋選手20秒299、木村選手19秒789。2人共15秒を切るのを目標にしていただけに、不完全燃焼の予選である。まだまだ練習、レース中でのベストタイムを狙っている。
ステアリング回り。シフトはノブを前後に動かすだけアップ・ダウンを行うシーケンシャル。赤いレバーは乗降時にハンドルを跳ね上げる為のレバー。
初レースは真夏の1000km
クールスーツについて少し。これは冷水を通す細いチューブを縫いこんだチョッキ(ベスト)と氷水が入ってポンプで送り出すタンク(殆どがクーラーBOX)と、その間をつなぐホースで構成されている。
このチョッキ(ベスト)をレーシングスーツの下に着用し、ドライバーの体を冷やす装置である。現在ではGTカーやスーパー耐久マシン等の夏の耐久レースには欠かせ無い装備となっている。勿論フォーミュラーカーには装備されていない(できない)が、F1等は、約300km、2時間弱を1人で走る。やはり彼らは常人の体力では無い。このクールスーツ、耐久性が重要で、これが故障し冷水が回らないと、1枚余分に着込んでいるような物で、かえって始末が悪い物になってしまう。これで脱水症状になり、勝てるレースを落としたトップチームもある。各チームオリジナルで水タンクを作っているがマシンと同様、耐久性に気を配っている。そんなクールスーツが頼りの、真夏の26日決勝日、気温は34度近くまで上がっている。雨も予想されたが何とか行けそうだ。
クールスーツ用BOX。市販のクーラーBOXを改造。配管と電動ポンプで冷水を送る。真夏の耐久レースの命綱。
クールスーツ本体。ベスト状になっており、特殊(少々の事では折れ曲がらない、詰まらない。)細い管が縫いこまれており、そこを冷水が通る。チームマネージャーが徹夜して作ったお手製。
レース中、ドライバー交代ごとに交換する、板氷(もちろん市販品。袋ごと交換。)、水が減っていた時の補給用の水。ピットイン時、助手席側で交換する。
GTは格闘技だ!?
木村選手をスタートドライバーにレースは始まりました。1000kmレースは171周だが、トップとなるであろうGT500クラスとのタイム差から我々は151〜152周でゴールとなるだろうと思う。単純計算1人25周+αで2回走行×3名=150周+α。体力のある最初だけ多めに走って帳尻を合わせる事にする。レースは淡々と進み26周目、総合で16位の頃、予定通り木村選手から塚原選手に交代。
体力に自信のある木村選手が脱水症状でバテバテである。クールスーツは作動しているがこの状態である。マシンも右前に接触した跡があるが、大したことは無い。塚原選手に交代してしばらくした33周目、モニターTVに白いNSXが映し出される!スプーンでコースアウト!脱出できないようだ。しばらくしてオフィシャルカーに牽引してもらいコースに復帰できたものの、すかさずピットイン。マシンにダメージは無い。ドライバー交代無し、タイヤのみ交換しピットアウト。約5分程ロスし25位まで下がってしまう。その後は塚原選手が18位(クラス7位!)まで追い上げ、予定通り56周目、塚原選手から高橋選手に交代。塚原選手もバテバテである。
モニターTVにトップグループにラップされる高橋選手ドライブのNSXが映し出される。トップグループのスープラに抜かれる時、接触した様だ。元々左前フェンダーを失っていたスープラ、これをとどめにピットイン。こちらのNSXはそのまま走行を続ける。
今回接触が多く見られ、特にGT500とGT300はあっちこっちでやっている。JGTCでも同様らしいが、少々の接触ではびくともしないマシンでないとJGTCは戦い抜けないようだ。
1回目のピットイン。この時すでに右前フェンダーとホイールに接触跡が・・。
走行を終えた塚原選手。へたり込んでしまう。相当な暑さだ!スピン後も予選タイムに近い19秒台で追い上げ、順位を回復させた。
給油開始!後に有るケーブルはアース。給油中は必ず接続。リアフェンダーにも接触跡が・・。
ま〜、まずまずかな・・。
その後は何事も無くレースは進み、NSXも着実に順位を上げ、フィニッシュドライバーの高橋選手に交代する頃には総合14位クラス6位の入賞圏内に入っている。上位チームの脱落もあるが、ドライバー3名とも予選タイム近くで決勝中も走っている。高橋選手も決勝中にベストタイムを出している。確実に追い上げている。ライトオンのサイン。
鈴鹿のレースでは2輪の8時間耐久レースと同じく、唯一の四輪の夜間レースである。う〜んヘッドライトはチョット暗いな〜。確かにGT500のNSXは補助ライトを装備している。次回の課題かな。トップ「auセルモスープラ」が171周、終始ハイペースでゴール。「ドリーム28・アメリカンレーシング・NSX」は148周でゴール!
結果は総合13位GT300クラス5位!総合1〜5位がGT500、7〜10位がGT300、タイム的にはGT500と300に、割って入ってくるかと思われた5台の「INT(インターナショナルクラス)」と、3台の「RS」クラスは、6位の「INT」(ポルシェ)と11位の「RS」各1台づつだけ。やはり耐久レース、何があるかはわからないレースである。
今回デビューレース、色々マシンについて学ぶ事も多く有りましたが、この様な結果で終われてまずまずかと・・。次回9月15・16日モテギ、「GT選手権」デビュー戦である。
夜間、フィニッシュドライバー高橋選手へ。左前も接触しているが部品が外れることは無い。丈夫である事もGTカーの条件か?
チームクルーに迎えられゴール。いつもマシンが写らなくてごめんなさい。