AUTOBACS JGTC 2004 Series 第5戦 3/3ページ

決勝:9月5日(日) 午前:雨/ウェット 午後:曇り/ウェットのちドライ

朝ホテルで目覚めて最初にする事は、外を見て天候を確かめる事である。やっぱり・・雨だ。昨日から天気予報をチェックし続けても好天は望めないとは思っていたが、程度によっては"恵み"の雨となる。クムホのレインタイヤは第1戦TIで散々な目に有ったが、その後の改良は目覚しい。しかしまだかなりデリケートな部分が多く、どんな路面状態(雨の量)でもOKとはいかない。グリップをとるか?ライフをとるか?またそのタイヤライフも充分にテストはできていない

しかしスリックで走れない、または迷う様な"生乾き"状態では異常な速さを発揮する事は実証済みである。

だがそんな路面状態は長続きする物ではなく、路面変化の過渡期に過ぎない。そんな状態に合わせたタイヤを普通は作らない。F1の様に、タイヤ交換が数秒でできるのであれば、それぞれの路面状況に応じて、逐一タイヤを交換する事ができるが(程度はある。)GTでは1回余分なタイヤ交換は挽回不可能な場合が多いので、1種のタイヤで、オールランドな路面に対応しており、その多くはしっかり濡れた路面に合わせているといって良い。一部のタイヤメーカーは、水量により溝の深さに種類があるが、パターンはレギュレーションにより1種しか認められていない。

とにかくタイヤ交換は1回という前提(回数に制限は無い。)のGTレース。スタート時にどんなタイヤを履くかはレースを大きく左右する。

photoホテルの窓より。雨だ・・。恵み?の雨。

photo朝、テントの"玄関"を開ける。この雨はチョッと多すぎる。

photo雨のモテギは未経験の高橋選手。渡辺選手からレクチャーを受ける。

photo雨セッティングに変える。手っ取り早いのがスタビライザー。

決勝朝一のフリー走行は雨。豪雨とまではいかないが、迷いようの無いレイン。これ程の雨ではクムホにまだまだアドバンテージ無い。雨用セッティングの確認と、雨のモテギを初めて走る高橋選手の馴らし程度にとどまり、これまた順位は20位。午後の決勝まで雨が残るようだが・・"適度"を期待するばかりである。

スタートドライバーはお昼までに申告が必要で、今回は雨のスタートに馴れた渡辺選手を前半、雨が上がって路面が乾いて行くだろうと言う事で、後半高橋選手となった。(殆どいつもと一緒)

photoフリー走行前に雨はやんだが、しぶきが上がるほどの路面。

photo単独クラッシュのスープラ。破損は派手だが、殆ど外板だけ(みたい?)でも決勝前はつらい。

photoフリー走行が終わると、決勝スタートタイヤが保管解除となる。

お昼のピットウォークは雨にも関わらず、結構な人出。今年は富士でのレースが無く、関東圏初めての開催となるここモテギには、一気にお客さんが集中したようだ。

その後のマーチレースでも雨は止むことがなかったが、GTのウォームアップ走行を皮切りに、スタート進行が始まると、雨は"止まった"。上がったと言うにはまだ早い。太陽も見えない。当然WET宣言がでて、タイヤは自由。だが全車レインタイヤでグリッドに並ぶ。ここからスタートまで、30分以上ある。この間に路面がどうなるか?各チームの迷いと、駆け引きが交錯する。一部のマシンはスリックタイヤでギャンブルに出るが、我々は、タイヤ変更は無し。

photo他のサポートレースを見るのは各所の水溜りの状況も判るから。テント内は生活感一杯。

photo今日のキャンギャルのアンブレラは"実用品"

photoグリッドに並んだ時がこんな路面。

photoスタート前の両選手。この路面なら・・とビミョ〜な笑み。

photo靴底の水気を拭き取り、乗り込む。

photoスタート直前。空はドンより。この為雨が上がっても乾きが遅くなった。

"シットリ"路面の中レースはスタート。1周目から上位グリッドのマシンの混乱も少し有ったが、なんと7位!で帰ってきた。13台パスしてきている!
日もささず、風も無く、路面は"期待"していた、正に"生乾き"状態。クムホにピッタリの路面状態。

その後も徐々に順位を上げ、上位はダンロップ装着の、16号車NSXと52号車セリカ、そして63号車のヴィーマックが元気。またオープニングラップでコースアウトを喫した43号車も最下位付近からグングン追い上げてきている。この43号車は浅溝のBFグッドリッチが装着されており、この路面にピッタリだ。

前を走るマシンが12〜14秒台で走る中、渡辺選手は10〜12秒台。5周目6位、7周目5位、11周目、16号車もパス、2位へ。ピットは沸き返る。前を行く52号車のピットクルーは、スリックタイヤへの交換準備を始めた。確かに路面もライン上は乾き始めている。そろそろスリック優位か?第1ドライバーが22周以上走行しなくては2ピットしなくてはならなくなる。が、それ以前にレインタイヤがもたないからだろう。それを見て13周目、「渡辺さん52号車無理して抜く必要ないですよ〜。」と伝えると、「えっ〜もう今抜いたよ〜・・。」それから十数秒後NSXはピット前をトップで走り抜け、52号車はピットロードへと入って来た。2002年第7戦MINE、そして昨年開幕のTI以来のトップである。「昨日の話は冗談じゃないぞ。」なんて冗談がでる程、ピットの雰囲気は明るい。

photo約40分のセレモニーの間でも、路面状況は全く変わらずシットリ。

photoまだクールスーツ(白い配管)がいるこの季節、しかし今回は両選手共使用しない。

photo13周目なんと!トップへ!

その後も渡辺選手は10〜12秒台でトップを快走。しかし43号車は更に早い9〜10秒台、路面が回復するに従い、8秒台、6秒台で迫ってくる。スリックに変えた52号車も13〜14秒台とまだ"やや濡れ路面"に苦戦中。

ストレートではウェット部を縫うように走りタイヤを冷やす、渡辺選手から、「タイヤ大丈夫かい?」とやや不安そう。タイムは落ちないが、43号車の勢いにはかなわず、22周目パスされ2位。

これを機にそろそろスリックタイヤへ交換か?だが24周目には8秒台のベストタイム、25周目には10秒台をマーク。タイヤ担当の渡辺信太郎はこのタイムならまだ行けると主張。しかしレースディレクター稲葉氏は急遽ピットインを指示。しかもマシンが来るまであと数十秒後。メカニック、ドライバーは大慌てで配置をする。(殆ど準備はしてあるが、クラッシュ等アクシデント以外は1周(ここなら約2分)は流す。)

26周目渡辺選手がピットに入って来る。ドライバー交代、タイヤ交換、燃料補給と順調にこなし、まだ微妙な路面のコースに、新品スリックタイヤへのクルーの心配も乗せて送り出す。順当なら4〜5位辺りで戻って来られるだろう。全クルーの『慎重に行ってくれ〜〜。』の願いは1ラップも続かず、最終コーナーに現れた高橋選手は既にバランスを崩しており、そのまま上位入賞の夢と共にコースアウトしてしまった。

photo泥だらけの各マシン。

photoレインからスリックに交換。順調にこなされたが・・。

photoピットから離れて2分少々・・夢はコースの外へ・・。

牽引車に引かれ、再スタートをするまで2分10数秒。殆どのマシンに抜かれ、19位までドロップダウン。

「いい夢を見させてもらいました。」とばかりにクルーは消沈。反対にプレッシャーから開放されたのか?高橋選手、ほぼドライ路面に回復したコースで徐々にペースを上げ、ポジションを少しずつ回復。

46周目には13位まで挽回。ところがここらで疲れが出たのか?後ろに迫った2周先行するマシンを、追い越させるのに失敗したか?再びコースアウト、1分30秒をロス。

その後は、無難に56周を走り切り、高橋選手は泥だらけでマシンをチェッカーに導いた。

photoパラパラと泥を散らしながらコースに復帰。殆どのマシンに抜かれ19位。

photo淡々と残り周回をこなす。"落差"が激しく、クルーの落胆振りは相当。

2004年GT選手権第5戦 GT300クラス 予選20位:決勝14位 獲得ポイント 0点

今回のトップ走行は全くの偶然。勿論渡辺選手のドライビング加わった事による産物であるが、"路面"が"タイヤ"に合ってくれただけの事である。

しかし長くレースをしていれば、こんな"感じ"でチャンスは巡って来る事もある。正に「千載一遇」 課題はこのチャンスをどう生かすかであろう。

高橋選手は「これからの生き方について考え直したい」と猛省しきり。だが交代ドライバーとして控えている時に、現在のコース状況を伝え、プレッシャーから解き放ち、コースに送り出す。これらメンタルな部分もクルーの務めであろうし、今回は特にそれが充分だったとは思えない。

photoこのリヤフェンダーの空気の流れは、最近のNSXのリヤフェンダーと同じ?

photo積み込み前に汚れと共に、"悪運"を洗い流す。

それにしてもここモテギは色々ある。特にピットアウト後の、1周を無事こなす事がどれほど難しい事か。
一昨年はピットアウト後、火災が発生!そのままピットを戻ろうとし、ピットロード入り口でクラッシュ。0.9周で終わり。

昨年はピットアウトしようとしたらエンジン始動せず。作業の為押し戻されて、-0.1周?し、約20分のロス。
一度お祓いにでも行った方が良いかもね・・?

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