GT CHAMPIONSHIP 2003 Series Round 1 開幕前夜
2003年シーズン開幕前夜
GT500の無限X童夢NSXのシャーシーを得て、GT300仕様のエンジンを積みGT300初のHondaマシンとして2001年終盤から参戦を開始し、2002年はGT戦フル参戦を果たし、我ながらルーキーチームとしては結構な活躍ができたのではないかと思っている。
このトップクラスのシャーシーをプライベーターで維持するには、当初は走るのが精一杯だろうと思われていた。それがポールポジション、セカンドポジション共に一回。レースでも常に一桁順位を争っている。GT300クラスに無くてはならないマシンにまで成長した。(と、勝手に思っているのですが・・。)
11月鈴鹿最終戦以降、2003年にどう挑むか?マシン規定もGT始まって依頼の大幅改定となり、「・・ベルノ東海NSX」も1.5シーズン戦った今、シーズンオフ、大幅な改造、整備を行う事にした。そこへ今シーズンのメインスポンサーである「翼システム」より、「グループの「中古車情報誌:カッチャオ」の関西版創刊発表会でチーム発表を行いたいので、新カラーリングでマシンを展示できないでしょうか?」との打診があり、まだ分解に入る前だったので、「展示しましょう。」と言う事で、発表会である1月26日までは、整備としては手がつけられなくなった。
じゃあ、ついでにって事で、年末年始はベルノ東海の拠点で展示を行った。間近に見られるという事で多くのファンを集め、「地域密着GTカー」として、シーズンオフも結構活躍をしたベルノ東海NSXでした。
「空中浮遊」のNSX。普通の車は、この様に屋根で吊り上げるのは解体覚悟の(事故車)時。しかしロールケージを通したGTカーは全く問題無い
こうして積車(普段は10tトレーラー)に積み込むので、ガレージでの乗せ降ろしは楽々。
こうして拠点に運び込み、年末年始を、ファンと共にベルノ東海名和店のショールームですごす。
人気の有った、このカラーリングもここで見納め。2003年は新スポンサーカラーへ・・。
1月の冷え込みの中、ドライヤーをあて、ステッカーを剥がす。根気の手作業。
そして新カラーリングに・・。今回は臨時のお披露目の為、全てカッティングシートを張り込む。第7戦ミネでのバンパー接触部分のパテも痛々しい。
ベース色塗り分けだけでは、なんかピンとこないが・・。
文字ステッカーを貼り込むと、一気にレーシングカーっぽくなる。
1月中旬からは発表会に向け、カラーリング変更。まずは昨シーズンのカラー(これもカッティングシート)を剥がし、白の下地として、ここに塗装では無く、すべてカッティングシートで新カラーリング施す。全て手作業。私の仕事だ。延べ4日を掛け、発表前日に完成。大阪へ搬入。発表会場では一際目を引いた。これほど大々的に発表となると、プライベーターとは言え、生半可なレースはできない。チーム一同、気が引き締まる。
大阪の発表会場へ搬入。GTカーにこの段差はきつい。
トレーラーから僅か30m程の距離を約30分、四苦八苦して何とか2階へのエレベーターへ・・。
発表会で今シーズンの抱負を語る高橋選手。左:三上選手等のS耐マシンも同じカラーリング(多分)。
発表会以降のパーティーが続く中、会場設営の業者さんたちに手伝ってもらって搬出作業。
この後からは2ヶ月後の開幕に向けて本格的な改造、整備に入る。前述のマシン規定の変更に伴う、改造だ。今回の改訂の柱で「・・やっても良い。」と言う部分は、参加可能車を広げる事と、プライベーターでも戦闘力の高いマシンに仕上げる事が可能になり、「・・しなくてはならない。」と言うのは、昨今のF1の様にレーススピード、特にコーナリングスピードを抑える狙いと、ハンドル、シート等事故時の安全性向上にある。
とは言え、我々の改造は「エンジンの搭載方向を変更しても良い。」と言うのに対し、GT500NSXの様に、「縦置」に変えると言う事では無い。(・・とてもできない。)
「・・やっても良い。」という内容ではなく「・・しなくてはならない。」という部分である。果たして間に合うのか・・。ここでは可能な範囲で改造した所をお見せしたいと思います。
ボディーを裏返し、ホイールベース間に渡る、一畳分以上のカーボンパネルを作ってフラットボトムに加工。
ディフィーザーも低く、傾斜角も変わる。エキゾーストが見えるがこの部分も遮蔽される。(下の写真)
遮蔽部分は放熱の為、ルーバーが設けられた手のこんだカーボン。フラットボトムとか、ここらの事はものすごく細かい車両規則がある。
加工中の室内。
FIA公認基準8855−1999に合致したフルバケットはBRID製。乗り降りが辛そうだ。
ステアリング部。従来の跳ね上げ式はそのままで、クイックレリーズで脱着式が義務付けとなった。「ボス」の長さ分全体が短くなるよう加工。スイッチの取り付けも変更。
ステアリング操作が重いのは参戦当初からで、バックスキンもツルツルになってしまい、握力も余計にいるので今回新品に・・。
各ファスナーにコーション矢印を添付。
ウイングの高さ上限が、従来の屋根の高さからフロントウインド上端までとなり約4cm程低くなった。これにより外観の印象が大きく変わったマシンもある。
これは2002年の「タイサンバイパー」ウィングが高い。フロンとウィンドウからルーフパネルまでの高さが大きいと・・。
これは2003年、今年の「タイサンバイパー」このマシンは特に大きく印象が変わった。
ここからは今シーズンに向けて行った任意改造とでも言うのか・・。リニューアル部分である。
何と言っても2002年モデルの前回りに変えた事。これは空力的に、ドラッグが少ないと言われている。
インパネ部分がバックスキン(埃がとりにくかった)から艶無しのビニールレザーに変更。バックモニターの取付方法等も変わり、シート、ハンドルと共にドライバーの生活空間がリフレッシュされ、精神的チューニングアップとなるかも。
奥から。加工中のボディー、信頼性抜群の戸田チューンエンジン、そして参戦当初オイル漏れ、パーツ破損に悩まされたNSX専用ヒューランドミッション。秘策でもって、今はかなり解消された。
3月初旬までバラバラ状態。各パーツをチェック。大きな損傷は無く、必要な消耗品の交換、補修で済んだようだ。
1シーズンを終え、メカニックもマシンの隅々まで熟知。ツボを抑えたオーバーホールも淡々と進んだが、前回りや、新車両規定対応の改造には時間を食われ、完成は開幕第1戦の直前。全く走らせる事無く持ち込む事になるだろう。結果やいかに?「大丈夫ですよ。」は八田メカ。
マシンメンテナンスを行っている「SKデザイン」の八田メカ。「ベルノ東海NSX」を隅々まで知っている。
GTやチームに関してどんな質問でも結構です。解る範囲、差し支えない範囲でお答えします。専門的な事は各雑誌をご覧いただけば解るかと思いますので、できれば素朴な質問がありがたいですが・・。
こちらへvtgotoh.vac00@honda-auto.ne.jp