モータースポーツ

SUPER GT 2008SERIES 第2戦 岡山国際サーキット

シーズン2戦目にして、クラス中、最も重いマシンとなってしまい、はっきり言って打つ手無し。さあどうしようか…? 08r1hpgp-013.jpg




SUPER GT OKAYAMA 300km  



開催日:2008年4月12・13日
サーキット:岡山県 岡山国際サーキット
マシン名:プリヴェKENZOアセット・紫電
ドライバー名:高橋 一穂・加藤 寛規




4月10日(木) 設営

 
 満開のピークは過ぎたが、まだ見ごろの桜があちらこちらに見られる、4月半ば、SUPER GT第2戦が岡山国際サーキットで開催された。

 しかし、今日の設営日はあいにくの“花散らし”の雨となった。

 鈴鹿開幕戦ではポールポジションから、7号車と共にトップ争いを演じ、惜しくも2位となったが幸先良いシーズンスタートとなった。

 今回の紫電、鈴鹿から比べると、リザルトによるハンディウェイト40kg、それに加え“チョッと”速過ぎますね、と言う事で、特別性能調整プラス15kgの合計55kgが増量されている。

 ポッチャリ型の彼女を乗せて走る程度の重量増しだが、レーシングマシンとしては十分致命的な重量。

 明日からの走行時間は、とにかくマシンのバランスを高め、タイヤの性能を十二分に発揮させ、ドライバーにがんばってもらうだけ…。

 まったくもって当たり前の事に徹するだけで、秘策も、試すべきNEWアイテムも何もない。

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雨の設営は嫌ですね。“撤収の時”も嫌だけど…。
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表示されるウェイトハンディはこれだけだが、“特別性能調整”として更に+15kgが加わっている。
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4シーズン使用したプリンターに別れを告げ、新しくなったプリンター。メーカーも代わったが、4年の間の性能向上に驚き!

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今レース最大の悲劇は、この日に起きた。工具やビス類を収納してあるキャビネットが横転!中身がご覧の通り。
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ビス類は完全にシャッフルされてしまった。この恐ろしさはご経験者なら想像できますね。
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かくして時間の合間に、皆で仕分け作業を行う。最終決勝日まで掛かった。これでメカの厄払いは済んだととの声も…。



4月11日(金) 練習走行 晴れ

 昨日からの雨は上がったが、コースは一部ウェットと思われ、浅溝レインタイヤでコースイン。

 加藤選手によりマシンの確認。

 それから、これはどこのサーキットでも行う事だが、無線の確認。

 加藤選手から「今ヘアピン!」と、いつもに比べクリアな無線が返ってくる。

 これはコース上の各地点、特に最も遠い場所での通話状況は重要で、ここの場合裏ストレート手前のヘアピンが最も遠い。(鈴鹿はスプーンカーブ)

 「今便所裏!」これはパイパーコーナーと、ダブルヘアピンの間、ちょうどパドックの真裏の、短いストレートの真ん中辺りにトイレがある(勿論、フェンス越しのパドック内)ので、ドライバー達での隠語であり、公式な呼び名ではない。

 「ダブルヘアピン~!」…「ピット入ったよ」これでコース1周。

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風があるとやや肌寒いが、日中は非常に過ごし易い。
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話題の新型車IS。52号車以外にも19号車としても次戦からデビュー。
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各チームスタッフも興味津々。しかしこのマシン、今回全く走る事はなかった。まだ“完全な”未完成。詳しい写真はゆらたくブログをご覧ください。

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今回新たに装着されたアイテム。突出したバルブの内側にセンサーがついており、走行中のタイヤ内圧が、信号でコックピットに送られる。
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こうしてタイヤ内圧が表示される。これは今、前左右とも1.48と表示されている。勿論これは早く走る為のアイテムでは無い。セッティングの補助。特に最先端のアイテムと言う程ではないらしい。
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この辺りが“便所ウラ”と呼ばれる(勿論隠語)、パドック裏ストレートの中間点。



 ところどころ濡れたところもあるけど、ほとんどドライ。充分スリックでOKということで、スリックタイヤに交換。
 多くのチームも同様な感じだが、逆にスリックで出たが、インターミディ(浅溝レイン)に交換するマシンもある。
 というくらい微妙な路面とも言えるが、これも序盤だけで、直ぐにドライコンディションとなり、いつも通りの各種セッティング確認であるが、午前午後を通し、高橋選手のロング走行を多くおこなった。
 今の状況では、高橋選手のアベレージタイムをコンマ数秒でも上げる事が、最も重要かつ、“簡単?”な戦闘力UPである。 
 タイム的には加藤選手が1′33″265。高橋選手は1′34″923。
 この日は46号車32″599をトップに32秒台が4台。
 今シーズン、300クラスはリストリクターが絞られ、パワーダウンとなった。
 その事により予選タイムが、昨年と比べどれ程のタイムダウンとなるか?
 テストデイが無かった、ここ岡山は推測するしかないのだが、昨年のトップは加藤選手の30″401。
 今日のタイムからすると31秒中盤あたりかな…?


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最初だけ浅溝レイン。部分的に湿ったところはあるが、スリックで充分。
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セッティングも、後の車高調整や…
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ダンパー調整程度。無論やれば良いってものではない。これまでのデーターがあり、持込んだ時点での仕上がりが良いから。

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ここ岡山の名物?Wヘアピン。結構な上り坂の為、パワー勝負。
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左のWヘアピンもそうだが、ここ岡山はパワーがものを言うサーキット。ってもパワーが不利なサーキットなど、まずない。
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九州オートポリスと、ここ岡山はテストデイの無いサーキット。午前、午後含め、高橋選手のロング走行は正に“練習”

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ここ岡山サーキットは、シリーズ戦で国内唯一、ピット内にモニターTVが無い。こうして壁掛けにしておいて…
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時折こうして外し、ドライバーが確認する。F1ほどスマートではないが。
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応援横断幕は、どこのサーキットでも、いつも特等席に飾られる。ご苦労様です。

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昨年までのインテグラに代わり、今年から始まったシビックワンメイクレース。東日本に続き、こちら西日本とインターシリーズでの初レース。
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天気も良く、マシンも順調。メカにとっては平和な時間が流れる。
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しかし明日の予選に備え、レシオの変更作業が行われる。



4月12日(土) 予選 晴れ

 昨日のタイムでは、鈴鹿の様にポールを狙うなどはとても無理。

 しかし少しでも有利なグリッドを得る為、SUPER LAP:スーパーラップ(予選上位10台のみ、1台づつのタイムアタックによりスターティンググリッド順位が確定する。以後「SL」)への進出は果たさなくてはならない。

 加藤選手は予選開始から8分経過で準備を開始、マシンに乗り込みピットをゆっくりと離れる。20分間の300占有時間も残り10分。

 ウォームアップ後でも4周は計測可能だろう。

 これで充分SL権は得られる…いつもなら。

 しかし今回は勝手が違う。

 計測3周目に1′32″636と、昨日のベストをコンマ6秒上回る、ベストタイムをマーク。しかし順位は11位!

 SLに僅かに届かない。

 「まだ1周行ける?!」と加藤選手。

 「大丈夫です!」とシンタロー。

 再度アタック!

 しかしタイムはうわまわらない。もうタイヤがついてこれなくなった。そこに500ボードが出て、占有時間終了。

 この時点で19号車が割って入り、12番手に…。

 この追い抜きが難しい岡山では、スターティンググリッドが重要だ。

 少しでも前に行くには、SL進出は必須である。

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公開車検は並べる位置が決まっているので、実に整然としている。
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車椅子に乗ったファン。チャンピオンマークが付いてる!これは頑張らなくては…。
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左画像、車椅子のホイールカバーに描かれたデザインは、正にこれ。

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予選出走を待つ加藤選手。って言うか、この時既に300クラスは始まっている。
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予選開始8分を過ぎ、他車のタイムを見ながら準備をする加藤選手。
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300占有、残り10分を切ってこの状態。「いいかしら?」って思うけど、いつものパターン。

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しかしこの時のアタックは不発!ではなく、他が速過ぎ!僅差で12番手に…。



 20分後の500との混走セッションにおいて、もう1セットのNEWタイヤで、加藤選手が再アタックを行う事になった。
 通常SL用に温存しておくNEWタイヤだが、出られなければ宝の持ち腐れである。
 ただ500との混走でクリアラップを取れるか?どうか?
 これはマシンの性能とは別の能力。加藤選手の経験と、ピットからの誘導次第である。
 500占有時間もそろそろ終わり、混走に移ろうかという頃、まず高橋選手が乗込み、先の予選で使用したタイヤで予選に挑む。
 基準タイムのクリアが目的だが、通常この走行も練習時間に充てている高橋選手に、今回与えられる時間少ない。
 だがこの短い岡山では4周の計測ができ34″856と、このレースウィークのベストタイムをマーク。
 36秒台をコンスタンに刻めれば、充分決勝でも戦える。その為にも一発34秒台は必須であろう。本人は33秒までは行きたかったのだが…。
 さっさとピットへ戻り、NEWタイヤへ交換、加藤選手が乗込みコースイン。
 1周、2周とタイヤを暖める、その間に、前との車間を調整。これが実に絶妙で、3周目のアタックは殆どクリアラップ。
 32″194とコンマ5秒も短縮!一気に6番手に躍進!
 残り時間からしても、もう逆転される事もないだろうし、このタイヤはSL用に温存しなくてはならないので、すかさずピットイン。
 その後、予選終了後の車検で66号車がリストリクター違反で失格となった為、ひとつ繰り上がり5番手となった。
 暫定ポールはZの46号車が31″767だが、SL進出を果たした10番手までが0.64秒以内という大激戦の予選だった。

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1回目予選で2セット目NEWタイヤを投入するのは初めて。以前10番手ギリギリ状態で、SLに備えNEWを温存し、予選終了間際にひっくり返された事がある。
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SLでのグリッド上位への可能性は“少なく”なるが行かなくては意味がない。NEWタイヤへ交換。
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500混走の中、自己ベストをマークした高橋選手に代わり、NEWタイヤでSL進出を目指し加藤選手が乗り込む。


 
 午後予選は高橋選手の練習に費やし、SLに挑む。
 だが今回のSLは殆ど期待ができない。SL出走10台中、NEWタイヤで無いのは我々2号車だけである。
 美味しい部分を無くしたタイヤで、上位へ行けるほど甘いものではない。
 他のマシンのミスを願うしかない。
 5番目に出走した加藤選手、第1セクターで既に+0.16秒、第2セクターでは更に差が広がり+0.45秒。
 これ程遅れる加藤選手は見た事が無い。
 ポール奪取に向かう加藤選手のいつもの“イッパツモード”は1回目のSL奪取で、タイヤと共に使い果たしてしまったようだ?
 確かにタイヤは使ってしまったが…。
 終わってみれば33″003で6台中で3番手。残り5台にミスが無い限り8番グリッドである…
 結局タイムだけ見ればその通りとなった…と、思われた。
 ところが、今シーズン好調で、このSLでも好タイムをマークした、唯一の4輪駆動車、77号車が最低地上高違反(低すぎ)により、SLタイム抹消となり10番グリッドに下がってしまった。
 おかげ様で、ひとつ繰り上がり明日の決勝は7番グリッドからのスタートとなった。

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SL進出を果たした加藤選手に、ファンからカトチャン人形贈呈。勿論これは、知る人ぞ知る結婚披露宴仕様
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SLスタート10秒前。加藤選手曰く「今日は“SLスイッチ”入れちゃったからな…」
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第1セクターは5台中のTOP、77号車から0.17秒遅れ。

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第2セクターでは更に遅れ0.45秒へ…。
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結局77号車から1秒遅れ。だがこの77号車のタイムは、幻となってしまった。
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SL下位に沈み、早々に再車検も終了。マシンを引き上げるメカ。



4月13日(日) 決勝 晴れ一時小雨

 今日の天気は快晴といえない微妙な空。
 雨の予報も出ているが、夕方から。だがこれも少しずつ早まって来ているので、レース中の雨も予想される。
 朝のフリー走行では、ここ岡山では、初めてサーキットサファリが行われ、2台のバスがコース内に入った。
 その為10分延長された40分間のフリー走行の多くは、高橋選手の練習時簡に充てられた。
 グリッド上位マシンはここでも好調。恐らく満タンで走っているはずだが、46号車は予選より1秒遅い唯一32秒台。
 また車検でタイム抹消となり下位に沈んだ、66号車、77号車だが、5番手、3番手タイムをマークし、レースにおいて脅威の存在である事に変わりはない。
 このレース、自力で上位進出は難しく、順位を落とさず、上位のミスを待つしかない。
 また、雨でも落ちてきて、レースをかき回してくれる事を望むのだが、こちらが“かき回され”ないとも限らないのだが…。

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備前のホテルからみた早朝の空。夕方から雨の予報。だんだん早くなってきている。
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昨日のカトチャン人形。紫電の絵入りミニチョコ。そしてプログラムには紫電のイラストと、紫電ずくし。
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朝のフリー走行も、徐々に乗れてきた高橋選手の走行に費やす。

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ここ岡山では初めてのサーキットサファリ。
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「チッセーな~」と、パワーを削られたリストリクターを、恨めしそうに覗き込む高橋選手。
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リストリクターとはこんな大きさ。4500ccエンジンに対し、この大きさ2個からエアを吸い込む。排気量を大きくしたり、車重を軽くすると更に小さくしなくてはならない。その逆も可。




 午後2時スタートの決勝に向け、スターティングセレモニーが進む。
 空は曇り。グリッドに向かう各チーム、皆一様にレインタイヤを用意している。
 グリッドで待つ間にも、本当に僅かではあるが雨は落ちてきた。
 よほど神経を尖らせていないと判らない程度で、無論タイヤを交換するほどではないが、どうやら雨は早まりそうである。
 レースは定刻にフォーメーション開始。
 ピットではいつも通りバックアップ用のスリックタイヤに加え、レインタイヤも準備され、スタートに備えた。
 500クラスに続き、300クラスもスタートが切られ、オープニングラップを加藤選手はグリッド順位通り7位で通過。
 トップは43号車。続いて46・11・81・26・31号車そして2号車紫電。
 2周目も変わらずだが、10位からスタートした77号車が順位を上げてきており、3周目には早くもパスされ8位に後退。
 この77号車参加車中、唯一のAWD(4輪駆動車)で、06年はのデビュー時から各ハードの信頼性が低く、まだまだ上位には来ないと思われたが、昨年の菅生ではスタート直前の雨により、下位からトップにまで躍進、マシントラブルでリタイヤしたもののAWDの実力を見せつけた。
 ところが今シーズン開幕戦から富士テスト、そして今回も、速さに、信頼性も加わり絶好調である。
 今の追い上げも、路面のμに助けらての事ではない。これで本格的に雨が来たら独壇場になるかもしれない。

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グリッドについた紫電。空はシャキッとしない。今にも降り出しそう。
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グリッドにはレインタイヤも運び込まれている。
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そこに現れたのは、GTアソシエイション委員長改め、株式会社GTアソシエイション代表、坂東社長。加藤選手の05年19号車のチーム監督。

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スタート前のツーショット。
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グリッドボードを掲げて、レースクイーンを引率するプロダクションのスタッフ。早く引き上げないとレース始るよ。
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後にいる、26・77号車はサッサと前に行っちゃいそう。



 7周目31号車をパスし再び7位へ…。
 ここから加藤選手はずっと7位をキープする事になるが、15周辺りの上位、43号車は独走状態。既に26秒先行。続いて46・11・81・26・77号車だが4~6位はダンゴ状態の接近戦を演じている。
 それを後ろから見ている加藤選手、「前、面白いよ~。」と、特等席からの感想を伝えてくる。
 余裕あるな~…。それとも3台が絡んでくれるよう“念”を送っているのか?
 20周辺りで雨が少し落ちてくるが、まだタイムに影響が出るほどではなく、加藤選手も35秒台をキープしている。
  シンタロー「雨は大丈夫~?」
  加藤選手「(どうせなら)もっと降ってほしい。」
 と、波乱に乗じたジャンプアップを狙っている。

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スタート。オープニングラップ上位に変動は無かったが…。
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3周目には早くも10番グリッドの77号車が迫り、8位に下がる。
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しかし7周目には31号車をパスし再び7位へ。

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前の方では色々順位が変わっているが、(26・77号車がかき回している…)加藤選手はずっと7位をキープ。
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ピットではスリックより、レインタイヤが前面に準備されている。



 レースは25周目。ここまでで、不動の43号車以下で順位が入れ替わり、2位以下26・77・46・11・81・2号車と、顔ぶれに変わりはないが、タイヤのせいかタイムの落ち始めた43号車に26号車が接近。
 まだ雨の恩恵を受けているとは思えない77号車も、3位にまで上がっている。
 6位の81号車に対しコンマ4秒差と、射程距離に入れた加藤選手
  加藤選手「(後ろに)500いない?絡めないと抜けないな~。」
 そうした中、26周目その81号車を抜き、6位。今レース始めて順位が上がった。
 この頃から、雨が路面を濡らし始め、各マシン、ライン取りに変化が出始めた。
 300のレース(500は82周、300は推定76~77周)は、そろそろ3分の1を消化。ドライバー交代も可能だが、できればレインタイヤへの交換とシンクロさせたい。
 ピットではレインタイヤの準備を始めるが、まだまだスリック優位な路面状況であり、雨量も増してこない。
 そうした微妙な路面で、27周目5位。29周目4位まで上がる。こうしたコンディションでの加藤選手は速い。
 しかし3位の77号車との差は12秒。これは簡単には届かない。
 30周目、スタートから単独走行を続けていたトップ43号車が、26号車につかまり2位へ。
 タイヤが辛くなったのだろうか?32周目にまず43号車がピットイン。
 29秒!と言う短い時間でコースに戻る。
 その後、81、46号車、そして37周目には26号車もピットインを済ませる。
 暫定トップの77号車に遅れる事20秒(ドンドン広がる)となった43周目、リボルバーコーナーで7号車と接触!加藤選手、紫電に“影響”は無かったが、7号車折目選手はスピンを喫してしまった。
 開幕戦覇者の7号車も、ハンディウェイト55kg+特別性能調整25kgがしっかり効き、全く精彩が無く予選13位、この時も周回遅れ!となっていて、ブルーフラッグが降られる状況だった為、レーシングアクシデントとして扱われた。
 右前の接触と言う事で、ストレートを通過する際に、ピットからも見てみるが、特に目視確認できる“ダメージは無い”と思われた…。
 46周目、トップ77号車もピットイン。これで暫定トップとなる。
 タイムは相変わらず35~36秒台。雨は完全に止んでいるとも言えないが、タイムに大きく影響が出るほどでもない。
 我々もそろそろドライバー交代、ピットインの時期をむかえるが、今のところレインタイヤの必要はなさそうだ。
 小径リストリクター、唯一の恩恵とも言える、好燃費のお陰で、昨年より給油時間は僅かに短くなり、ピット勝負も有利となった。

 50周を終え、2号車、加藤選手もピットに入って来た。
 待ち構えるクルー。
 ストップ!ジャッキUP。
 タイヤが浮き上る前からホイールナットを外し、浮き上ると同時にホイールを外す…! はずだが、前輪、右側メカの動きがおかしい。
 左側は既に交換完了の合図として手を上げているが、右側は未だにナットすら外れていない。
 どころか、インパクトのソケットすら入らないのだ!
 そばにいたタイムキーパーのメカが、とりあえず先に給油を済ませようと、メカにマシンから離れる様指示。(給油中は、ドライバーサポート以外の作業は一切禁止)
 給油を終え後輪の交換に取り掛かるが、これ以上のロスはレースの勝負権を失う事になる。
 決断!右前輪は交換せず、高橋選手をコース送り出す。
  シンタロー「高橋さん、右前タイヤは交換してません。バランス気をつけてください。磨耗は問題ありません~。」
  高橋選手「了解~。」
 ピットストップ30秒以下の予定が55秒近くを費やしてしまった。


 ピット作業を終えた後、メカニックが事態の把握を行う。
 ナットの変形か?ソケットが全く入らなかった。
 当然インパクトにより緩めていないので、ホイール脱落等の心配はない。
 外観からは特にダメージは見当たらないが、7号車との接触で何らかの影響を受けたのだろう。
 今日の気温、外した左タイヤの状況、昨日までのロング走行のデーター、またこの(右回り)コースにおけるタイヤへ負担割合を考えた場合、後半レースにおいて破損、磨耗の心配は要らない。
 但し、アクシデントや、特に雨が降ってきてタイヤ交換を余儀なくされたらどうするか?
 ピット内では、それに備えた準備も進められる。

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ピット作業。左前輪は既に終わったが、右側はまだ外せない。先に給油を済まそうと、タイムキーパーに制止された。こういう時は周りからの判断が重要。
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YOKOHAMAのエンジニアが、
外したタイヤの状態、残量をチェック。交換できなかった側の判断をする。
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思わぬトラブルをものともせず、快走する高橋選手だったが、終盤、別のトラブルに襲われる事に…。





 高橋選手はコースに復帰し、全車ピットインが完了した時点での順位は7位。
 55周時点で、トップは前半と変わらず43号車。続いて、26・46・77・81・62・2号車、後ろに110・33号車の順である。
 ここら辺りでやや雨が強くなる。と言っても相変わらず、スリックでも充分な程度の雨量だが、ライン取りは変わって来ている。
 ピットから「縁石(コーナーインサイド、アウトサイドの赤白のエリア)乗らないよ~に~。」と、注意が飛ぶ。
 59周目最終コーナーで500クラスの派手なクラッシュが発生。
 雨で滑り易いコーナーにマシンはストップ、クラッシュパッドが散乱するが、幸い2次事故に至らず、レースは続行される。
 63周目の順位は43・26・77・46・81・62・2・33・66号車の順で7位キープとは言え、33号車は既に真後ろ。
 66号車も最後尾グリッドからここまで追い上げてきている。
 実はこ60周を超えた辺りから
  高橋選手「シフトがおかしい~。」
 とミッション不調を訴えていた。
 ギアが入らない時があるようで、タイムも36~37秒台から、37~40秒台へダウン。かと思いきや、36秒台もあるなど、大きくバラつき始めた。
 64周目には33号車に先行され8位へ…。66号車も後方6秒に迫る。
 68周目、4.4秒まで迫られ、73周目2秒以内へ…!
 何とかこの順位に踏ん張ろうとするが、ミッションは言うことをきかず、最終ラップとなる75周目、ついに66号車に捕まり9位へと順位を落としチェッカーを受ける。

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ドライバー交代して、しばらくすると雨がやや強くなってきた。レインタイヤに交換できるのか?まだタイム的にはスリック有利で、交換するチームは無いが…。
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そんな天候の下、縁石が滑り易くなった最終コーナーで起きたクラッシュ。幸いドライバーは無事。コースをふさぐ事も無かったので、イエローフラッグ対応となった。
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終盤ミッションの不調が出始め、順位を落とす事になる。



 
2008年 SUPER GT第2戦 GT300クラス
予選7位 : 決勝9位
獲得ポイント チームポイント2点+2点(トップと同一周回ポイント)累計22点
ランキング 4位
ドライバーポイント2点 累計21点
ランキング 4位



 チェッカーを受け、マシンが車両保管に入る前に、チーフメカと共に、いつもイグニッションスイッチと、外観の確認等、走行後のチェック行う。
 特に今回は、問題の右前輪だ。
 パッと見ただけでは外傷は見当たらないが、よく見るとシャフトの中心のキャップが僅かに変形している。
 どうやらこれが原因で、ナット脱落防止用の“爪”が引っ込まなくなってしまったようだ。
 この“爪”は通常、突出していて万一ナットが緩んでも、ここで食い止められ、ホイールの脱落に至らない。
 その間に、ホイールのガタが発生、ドライバーに異常を知らせ、マシンを安全に停車させる為の安全装置である。
 専用のソケットレンチを差し込めば、この“爪”は殆ど抵抗感も無くシャフト内に引き込まれてナットを緩める事ができるのだが、これが“ガッチリ”とロックされた様に、引き込まなくなってしまった為、ソケットレンチが入らなかったのである。

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レース後問題の右前ホイールを検証。外装には殆ど損傷が無かったが…。
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シャフトのキャップ部分が損傷。この為か?(は、分解点検が必要)ナット外れ防止装置(クサビ上の突起)が引き込まなくなりソケットレンチが入らなくなった。ナット脱落防止装置の動きはこちらで。
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レースが終わった頃に本格的な雨が…。エキゾーストノートが雨雲に影響し、こういう事はよくある。という都市伝説が…ないか?結局このレースウィーク始まりと終わりが雨。



 よく“レースは何が起きるかわからない”と言われるが、チーム側にとっては、そんなに予想外の事は起こるものでもない。
 スタート直後、1コーナーでの多重クラッシュ。ピットアウト後のホイール脱落。ピット作業時、給油直後の火災。レース終盤のガス欠ストップ等々、毎度あるわけでは無いが、1~2シーズンも経験していれば1度か2度は目にする光景である。(どんなシチュエーションで起きるか?で、ドラマはあるが…)
 どこのチームもそれなりの事態に対して、マシン、設備の対策、戦略を練っている。
 前述の脱落防止装置も、そのひとつである。
 中盤7号車との接触があり、そうした場合、外観の損傷、またドライバーからハンドリングの異常が連絡されたりすれば、それらを想定した準備を行う。
 特にデリケートな足回りは、ホイール等の接触でも、何かしらハンドリングに影響が出る事が多く、レースが続行可能か?すぐにでもピットインが必要か?ドライバーのコメントから判断される。
 今回は緊急度合いが低そうなので、ピット前を通過した際に目視での確認も行った。
 その結果、通常のピット作業のつもりで待ち受けたいたメカにとっては、不意打ちを食らった事になった。
 しかしレースは結果的に9位。
 この順位は、ハンディウェイトを最も多く降ろす事ができ、尚且つ最もポイントが高い(2ポイント)絶妙な位置。
  ※ハンディウェイトは決勝結果が下位の場合、次回のレースでは軽減される。5位+-0kgだが以下5kgづつ軽減。9位以下は全て-20kg。ポイントは10位まで。但しハンディウェイトが無いマシンは軽減されない。
 次回第3戦富士は、シリーズ中2番目に長い500km。こうしたウェイトはタイムは当然のこと、タイヤへの負担も大きいので、この20kg軽減は有利にはたらくであろう。
 今回のレース結果は、まさに不幸中の幸いと言える。
 またピット作業はビデオ撮影されており、右タイヤ担当メカの、(クルーの中では一番若く新人)こうしたアクシデント時の“素”の動きがよくわかり、学習用としても参考になった。
 というより、笑い話のネタになった。

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 片側タイヤ無交換でのピットアウトについて高橋選手の後日談…
 「そんな練習した事ないで、1コーナーでブレーキかけたら横向いちゃえへんかしらって、どえらい不安だったて。でもしばらく走ったら、結構いけるなと思ったで、あとは大丈夫だった。」(ほぼ原文名古屋弁含む。)
 一昨年の最終戦富士において、前輪のみ交換時に翻弄された高橋選手でしたが、こうして“引き出し”が増えていきます。
 

DATE:2008/04/21