モータースポーツ

SUPER GT 2008SERIES 第4戦 マレーシア・セパンサーキット

今シーズンも3戦が終了。リザルトもともかく、昨年最終戦から内容の良いレースが続いている。
ここセパン、昨年は散々だったが、得意なコース。だが最高位は一昨年の4位。今回は表彰台を狙うのだが・・・。
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SUPER GT INTERNATIONAL SERIES MALAYSIA



開催日:2008年6月21・22日
サーキット:マレーシア セパンサーキット
マシン名:プリヴェKENZOアセット・紫電
ドライバー名:高橋 一穂・加藤 寛規




6月19日(木) 設営日

 今年のセパンはいつもと違う。
 それはSUPER GT第4戦として何かが違う訳ではない。
 チームの“移動”が違うのである。
 第4戦決勝は6月22日だが、その1週間前14・15日に行われたル・マン24時間レースに、高橋、加藤両選手始め、殆どのチームスタッフが参加しており、ドライバー以外のスタッフはそのままマレーシア、セパンへ入っているのである。
 殆ど不眠となった24時間レースを終え、翌日撤収作業、そしてパリからマレーシアへ・・・。
 惨敗のル・マン24時間レースから、チャンピオン奪取(3戦終了時時点でランキング2位)の掛かったSUPER GT。
 前半の山場となろうセパン戦。
 疲労、時差ボケを直すにはやや不十分なまま、本日から気持ちを切替である。
  ル・マンの“感傷”にひたる間も無く、慌しく移動した彼らにとっては、今日の設営日は、やっとレースを振り返り、語り合える日となった。

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長期の苦労の末、ル・マン24時間レースのスタートにたったスタッフだったが、本当の苦労はこれからだった。
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序盤から予想外のトラブルが続き、ピット内へ・・・。
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昼夜を問わずピット作業が続き、トータルピットストップ時間は7時間にも及んだ。詳しくはル・マンNEWSを・・。



 今回は仕事の都合で、両ドライバーはル・マン終了後一旦帰国。今日夕方マレーシア入りした為、ギリギリの時間でレンタカーライドを行った。
 今更コース下見はいらないんじゃ無いかと思われるが、昨年はレース直前にコース改修があり、タイヤ選択、セッティングで各チーム明暗を分けた。
 下見ができるならそれに越した事はない。
 練習量の少ない、高橋選手にとっては、このレンタカーライドだけでも“コース勘”を取り戻すに、重要かつ貴重なセッション。
 特に、ル・マン24時間から僅か4日を経て、全く異なるレーシングマシン、コースを走る事など無く、そうした“時差”ボケを戻さなくてはらない。
 それとは対象的に、加藤選手は、ここセパンで毎年8月下旬に行われている、MMEという12時間耐久レースに参戦し、目をつぶっても走れる(そんな人はいない・・)ほど得意なサーキットである。

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約半月の船旅で届いたマシン、機材の確認。マシンの穴と言う穴は塞がれている。
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扇風機、給水機等レンタル品の確認も・・・。
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すぐに焼けてしまう変圧器と、いつも交換が必要な40リットルの給湯器。今回も変圧器は3台焼けて、給湯器も作動せず交換した。

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ブラウン管TVも、4台中1台故障し交換。
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曇り空で、30度を超えた程度。だが蒸し暑く汗が噴き出す。
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大まかな設営も終わり、マシンのセッティングにはいる。

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現地の運転手に案内して貰い、買出しに出かけたらすごいスコール。
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セパンとクアラルンプール中間に位置する行政新首都として開発中のPutrajaya(プトラジャヤ)にあった、Carrefour(カルフール)。東海地方では馴染みが無いが、ル・マン帰りには懐かしいショッピングセンター。
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店内で見かけた便利アイテム。小型のバスケットを犬の散歩のごとく引き回せる様キャスターが着いている。

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駐車場の料金所ゲート。なんだか狭いな~っと思ったら2輪車専用。
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ここマレーシア戦はI・M JIHAN仕様



第3戦富士を今シーズン2回目、3位表彰台で終え、5月末の船積までの間、紫電は通常のメンテナンスに加え、新たなアイテムが加わった。
 Pankl社のホイールナットである。
 この業界にとっては、特別目新しいパーツでは無く、F1等では全くスタンダードなパーツであり、GTでも500クラスは殆ど100%(言葉がおかしい)、300クラスでもかなりのマシンに装着されている。
 仮に紫電の場合、これまでの普通の6角ナットに比べ、1ホイール当り1秒は早く作業ができると思われ、前後輪で約2秒はピットストップを短縮できるはずであり、ミスも起こり難いのである。
 何故そんなパーツこれまで使用しなかったのか?高価だからである。
 ナットだけでは無く、ハブも交換しなくてはならず、それも紫電用にサイズを合わせた特注品である。
 従来品が紫電のベースシャーシに着いていたので、これまでそのまま使用していたのである。
 ン百万の費用を掛けて、ピットストップの2秒を稼ぐより、他にもっと安い費用で稼げる部分が有るからである。
 加藤選手がレースでアベレージタイムをコンマ数秒上げるのは難しいが、高橋選手にはその“伸び代”がまだ充分ある。(極論すれば、加藤選手のとのタイム差分はあるはず・・)
 ここで、コンマ数秒稼ぐ方が安価で容易である。

 しかし昨年最終戦富士の様に、最終ラップまで接戦の末破れ(2.7秒差)チャンピオン逃す様なレースとなると、このピットストップでの2秒は大きい。
 事実このレースでは、ピットストップ時間がライバルより約2秒長かったのである。
 この僅か2秒が、“焼け石に水”となるか?どうかは、マシンの仕上がり、ドライバーの走り次第であるのだが・・・。
 先の最終戦や、今期の開幕戦鈴鹿の様に、アウトラップも、アベレージタイムも上がり、ピット作業もミスの無いレースとなれば、こうしたアイテムの価値も発揮されると言える。

 
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今回から投入されたPankl社の特殊ホイールナット。決して目新しい物では無い。
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外周に埋め込まれた丸い永久磁石がナットをホールド。タイヤ交換作業時間の短縮に繋がる。レース内容によっては明暗を分けるか?焼け石に水になるか?
 



6月20日(金) 練習日 晴れ

 11時半からの開始は加藤選手からの走行。いつもどおり長い船旅を終えたマシンのチェックを1周。
 その後セッティングの確認、変更の為、1回のピットインを行い、7周程走ったところで「何かブレーキおかしいよ!!」と加藤選手。
 「あぶない様でしたらゆっくり帰ってきてくださ~い。」と、ピットから・・。
 ゆっくりとピットに戻った加藤選手。
 点検すると右前ホイールにガタ!
 ホイールナットの緩みでは無く、ハブそのもののガタが出ている。

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この時間の28℃はセパンにとっては“異常”とも思える低温。
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だけどこのスポットクーラーは必要。今季初登場。
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今回から導入されたPANKL社ナット。タイヤ交換に威力を発揮するはずだったが・・・。

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カナードの変更や・・・
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スプリングの交換等、開始早々に各種セット変更をうが・・・。
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1回目セッションは、数周でホイール周りのトラブルが発生。。



 今回から、PANKL社のナットを使用する為に変えた、ハブのロックナットが緩んだのが原因のようだ。
 あたりが付くまでの初期的な緩みか?原因と、内部のベアリング等への影響が判らないので、単純に締め直しという訳にもいかないので、従来品のハブに交換。せっかくのNEWアイテムは、対策を施し次戦まで使用延期となった。
 だが、ここ1箇所だけの緩みで終わるとは限らない。少なくともフロントは左右交換が必要だろうし、これ以降のホイール交換時に前後のナットが違っていては、いちいちナットに合わせインパクト、トルクレンチのソケットをはめ変えなくてならない。

 それも不都合なので、この機会に前後共ハブを従来品に交換する事にする。
 どうやらこの作業時間だけで、本日1回目の練習走行1時間30分は無くなりそうだ。
 大急ぎで行えば、多少は走行時間は残るだろうが、ハブはブレーキパーツを外す必要があり、最も“熱い”パーツ。
 レースならいざ知らず、メカも火傷でもしたら危険である。(プロだからそんな事は百も承知だが・・・)
 足回りでもあり、ゆっくりとは言わないが、慎重な作業に努め1回目のセッションはこれで終了。
 走行準備を済ませていた、高橋選手は肩すかし。
 本来なら、高橋選手も1回目セッションを走行し、そのロガーや車載ビデオを加藤選手と比較し、2回目練習走行で復習し、タイムを整えていくのが“必勝パターン”なのだが、今回は加藤選手の車載ビデオのみの学習となった。
 テストも無く、年1回しか走れないここセパンサーキットにおいて、この1回のセッションが走れないのは、高橋選手にとっては結構痛手である。
 と言ってもしようが無い。
 1回目を走行して加藤選手のコメントそしてデーターロガーとの相談により、ミッションのレシオ変更も行う。
 今シーズン仕様のエンジンは低回転型となり、事前に机上計算により変更はしてきているが、やはり現地での微調整は必要で、レシオ変更は今シーズンの恒例の“行事”となった。
 いつもであれば、午前、午後セッションと(私は)よぶのだが、ここマレーシアでは、1回目セッションが午前11時半から行われるので、“午前”セッションとは言いがたいので1回目セッション。
 これは最も暑い時間帯を避けての事で、決勝レースも午後4時スタートと、通常の日本のレースより2時間ほど遅い。
 だがピットでは、最も暑い時間帯に“熱い”作業が続いている。
 1回目の走行では、8周の周回で2′11″304で9番手。
 トップ77号車は前戦富士からの速さを持続・・いや、増して9秒329。2番手4号車にコンマ6秒の差をつけている。
 以後、15番手までが10~11秒台。今回は激戦が予想される。

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右前ハブを取り外して点検。原因はハブのガタ。
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右前だけの交換とはいかず、4輪とも交換する事に・・・。
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ついで、と言うわけでもないが、今シーズン恒例のギアレシオも変更。

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交換作業も終わりアライメントチェック。この辺りのクラスのマシンは、とにかくアライメントのチェックが最重要。レースウィーク中、何度と無く行われる。
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誰がセパンに持込んだか?謎の北海道カレー3種。その後、食したのか?持ち帰ったか忽然と消えた。本レースと全く関係無し。



 2回目セッションは午後4時過ぎからだが、やや曇り空だった午前中から比較すると、この時間帯の方が雲が切れ、日差しも強く、気温も高くなり32度に達し路面温度も軽く40度を越えている。
 組みあがったマシンを確認する為、加藤選手がピットを離れる。
 その後計測を3周。タイム的には2分10秒台とまずまずの手応え。
 本格的なタイムアタックはもう少し気温が下がってからとし、高橋選手に交代。
 途中、1回ピットインして、冷えたタイヤに交換しアウトラップシミュレーションを行うなど連続17周を走行。
 その間、コースサイドから舘師匠のアドバイスが飛ぶ。
 「遅い遅い!もっと踏んで!」
 今回いつに無く厳しい口調である。
 その甲斐有ってか?虚しくか?徐々にタイムは上がるが、13秒台止まり。
 当面の目標11秒台には程遠い。
 このまま練習を続けたいが、そういう訳にも行かない。明日の予選に備えたタイヤテスト、セットUPも必要だ。

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2回目の走行開始。1周しピットイン。チェック、問題無し。
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2回目セッションも、本格的な走行に入る。タイム的にもまずまず・・・。
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だが、この1セッションのみで、タイヤをテストし、セッティングを出し、高橋選手の練習も行うには時間が不足。

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高橋選手にとっては1年ぶりのセパンサーキット。やっと走行が始まるが・・。
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高橋選手も1セッション分“練習不足”
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全体的には高速コーナーで構成されたセパンは、紫電が得意とするコース。ここは高速S字。


 まだまだやりたいメニューはあるが、時間が1セッション分不足している。
 再び加藤選手に交代し、2種のタイヤテストを行い、混走セッションから300クラス占有時間に入って9秒121までタイムUP。
 現在トップは4号車の8秒638で、我々は5番手タイムと、まずまずの感触である。
 このマシンの状態を知っておいてもらおうと、セッション終了間際に再度高橋選手に交代。
 アウトラップ1周した所で500占有ボードが表示され、このままピットへ・・・と言うこのラップ、裏の高速S字コーナー(Genting Curve)の右コーナー出口でコースアウト。
 幸いクラッシュには至らずコースに戻るが、何度かバウンドしているので無傷とは思えない・・・。
 ピットに戻ると、左後ホイールから後のフィン始め、テールランプごと外装パネルが無くなっている。
 足回りそのものに大きなダメージはなさそうだが、この外装パネルは部分的にはスペアもあるが、不足部分もある。
 コントロールタワーに行き、コースオフィシャルに脱落部品の確認をして貰い、(どういう状態かは判らないが)飛散したパーツがある事を確認。
 これらをつなぎ合わせれば、修復のめどもつきメカも一安心。
 これで本日の走行も終わり、メカもやっと早い晩飯ならぬ、遅い昼食となった。
 「やり逃げでゴメンネ・・。」と言う挨拶で高橋選手はホテルに引き上げるが、これからのメカの仕事が深夜にまで及んだのは言うまでもない。

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セッション終了間際の“ヤッチマッタ!”今回はコンテナスペースの関係で、持ってきていないパーツもあり破片が無いと修理が厄介。
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コースオフィシャルにお願いして、パーツを回収してもらった。普通は回収され、大きなパーツはピットに持ってきてくれる。
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しばらくしてテールランプも帰還。何とか修理の目処もたった。

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メカも遅い昼食をとり残業に備える。何が“メイン”か?判らない。ル・マンからの直入組みにとってはカップうどんやおにぎりかな・・?
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このツギハギ部分のスペアを持ってきていなかった。つなぐ分には何とでもなる。
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程度が軽かった事。時間がある事、そもそもこうした工作仕事が嫌いで無い事など、諸所の事情で作業現場は冗談も出て(これはいつも)意外に“明るい”。

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だからと言って、こうしたアクシデントを容認するわけではない(当たり前)。これはカッティングシートで外観を補修する私。
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何事も無かったかの様に(ツギハギが判る)補修完了。足回りにダメージが無かったのが幸い。
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ほうきと、ちりとりを忘れた為、現地で購入した。“レーシング”ムードとは程遠い。




6月21日(土) 予選 晴れ

 前日に何があろうが、いつも朝は何事も無かった様にマシンは仕上がっている。
 破損箇所の修復、アライメント確認、その他通常メンテナンスは、日にちの変わる頃にまで及んだ。
 それらに報いる為にも、ドライバーはドライバーとしての仕事に精力を注ぎ込む。
 そのドライバーとメカとの相乗効果は、これまで紫電が参戦した21戦全て完走という結果にも現れており、予選、SUPER LAP:スーパーラップ(予選上位10台のみ、1台づつのタイムアタックによりスターティンググリッド順位が確定する。以後「SL」)への進出率も高く、06年に3回進出できなかっただけで、07年はパーフェクトであった。(第7戦モテギはSL方式ではなかったが、8番グリッド)
 08年は前戦富士が雨に翻弄されSL落ちとなったが・・・それでもかなりの進出率だと思う。
 それを更に伸ばせるか?
 かなりの激戦が予想される、今日の予選は午前11時から始まった。
 やや雲も厚く蒸し暑い。気温、路温(それぞれ30度、37度)は昨日と大差無いが、まだまだ上がりそうだ。

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朝きたらコモンルーム前はセパン限定スポンサーさん「I・M JIHAN」カラーに・・・
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朝から28度。といってもこの国では大した暑さではない。
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マーキングタイヤ3セットの内1セットは、抽選で決勝スタートで使われる。その日の気温をどう予測したか?で明暗を分ける事になった。

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ハンディウェイト40kgって、こんな10kg×4枚も貼ってたかな??ま~いいけど。
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従来の、6角ナットタイプに戻されたハブ。
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激G用の車載ビデオは今回SANYO Xacti 高橋選手学習用と同じタイプでWXactiとなった。


 予選開始から10分経過、加藤選手がピットを離れる。
 アウトラップ、そして2周目2′09″491続いてはクリアラップ確保の為、ペースを落とし、4周目、09″691。
 更に5周目、08″613これで7番手。
 8番手以降は、31号車09″022、46号車、09″092、110号車、09″048までが10番手。
 11番手以下も僅差で続くがとりあえずこのままの順位で300占有セッションは終了。
 混走セッションで10番手以内への入れ替わりはありそうだが、混走セッションは高橋選手の練習を予定している。
 気温、路温もやや上がり、混走でコンマ4秒(我々と11番手とのタイム差)以上詰めてくるマシンが3台以上はこないだろうと楽観視・・。
 因みにトップは昨日から好調な77号車、なんと06″930!!2番手81号車の08″324とは1秒4差の驚速タイムである。
 2番手から10番手の9台が、コンマ8秒以内にひしめいていることからすると、このトップタイムがいかに抜きん出ているかがわかる。

 
 混走セッション開始のボードが出ると同時に高橋選手がコースイン。
 11秒台を含み、12秒台で周回を重ねる。
 その間下位(11位以下)から10番手以内に入ってくるマシンを“監視”
 11番以下の7号車、62号車、そして9番、10番手だった46号車、110号車がSL進出をより確実にする為、2セット目のNEWタイヤでアタックに入る。
 予選で使用できるタイヤはマーキングされた2セットのみで、できればSL用に温存しておきたいが、SL進出できなければ宝の持ち腐れとなる。
 そんな中、残り5分程で、まず110号車が6番手に飛び込んでくる。紫電は8番手に・・・。
 無論この残り時間では、我々もNEWタイヤを投入しての再アタックは間に合わない。祈るだけである。
 残り1分、7号車が8番手に!紫電9番手にダウン!
 チェッカーが降られる。この周回まで計測されている。
 果たしてどんでん返しがあるか!!
 31号車が、10番手に入っていた62号車を押し出し、10番手に食い込んで来た。
 以降、上位10台の変動は無く予選1回目は終了。
 9位でSL進出である。

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既に予選が始まり5分。エンジニアのシンチャンとモニターを見る加藤選手。ここセパンでも横断幕は健在!
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10分が過ぎピットを離れる加藤選手。
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占有セッションを7位で終え、ラップモニターを見る加藤選手。SL進出には微妙な順位。

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混走セッションに向かう高橋選手。
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予選日の観客は5000人少々と、国内戦と比べると極端に少ない中、ピットウォークの混雑振りは変わらない。全員来てるんじゃないのかな?
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F1、MotoGP等と同様、マレーシアで、このレースは1大イベントなのかなと思わせる。


 午後4時の2回目予選が始まるまでに雲が広がり、大粒の雨が落ちてきた。
 この雨、粒は大きいがザーッと降る事はなく、適度な打ち水となる。
 この後のフォーミュラールノーのレースも全車スリックタイヤである。
 モニターでレースを見ていると、殆どドライコンディションの様だが、時折水しぶきが上がる場所もある。
 レインタイヤの準備もしつつも、セッティングはドライのままでよさそうか・・・。


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昨日の作業は深夜に及んだが、今日1回目から2回目の予選までの時間帯は、しばしノンビリできた松下チーフメカ。
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ここで振り出した雨は大粒だが大量には降らなかった不思議な雨。
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だが、今決勝ウォームUPの始まったフォーミュラールノーのスタッフにとっては一大事。グリッドに走る。


 2回目予選は加藤選手のみの走行。
 2周程計測してピットイン。
 ここでSL用のNEWタイヤに交換。
 1周“皮むき”に出る。
 いつもなら、SL出走間際にNEWタイヤを装着するが、今回チョイスしたタイヤ(決勝スタートタイヤと予選用タイヤ2セットは同じ仕様)は、暖まりに少し時間が掛かるので、この1周は、SLアタックへの重要な布石である。

 SLスタート順は2番手。路面は完全ドライ。
 できれば後半で雨でも降ってきて、SLを大きく掻き回してくれるといいが・・・。
 先頭の31号車が09″363と1回目予選タイムを下回る。
 続いてアタックに入った加藤選手。
 各コーナーでマシンが暴れるる姿がモニターに映しだされる。
 これはレースでやってはタイヤがもたない、加藤選手の“本気アタックモード”である。
 08″465!1回目予選タイムをコンマ15秒短縮。
 これ以後続いた、7号車、110号車はNEWタイヤでのアタックができず、4番目出走の4号車も下位に沈む。
 4台がアタックを終え、6番グリッドは確実となった。
 だがあとのマシンは確実にタイムUP。
 これ以降順位が上がる事は無く、3列目6番グリッドとなった。


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2回目予選終了間際、SL用NEWタイヤに交換し1周。皮むきを行う。このタイヤのキャラクターは決勝で生きた。
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SL直前まで車高を“攻める”
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SLスタート待機。1回目予選9位は2番手出走。終了後の雨を期待したが、そんなムシのいい話にはならない。

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加藤選手のアタックモードは“ON”となり、果敢な攻めは暫定6位を得る。
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SLアタックを終えピットに戻る加藤選手。
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メカに押され、ピットに戻るマシン。昨晩の苦労が報われた?6番グリッドはまずまずか。

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ここが外されるのは・・昨日に続きレシオ変更。
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ねじりハチマキはやる気モードの八田メカ。外気を車内に入れる為、サイドウインドウの前部び隙間を作る。



6月22日(日) 決勝 晴れ

 今朝のフリー走行は恒例のサーキットサファリが行われるが、いつもと異なり先にGTマシンのみのフリー走行が30分行われ、その後サファリとなった。
 満タンで出た加藤選手は、ブレーキの“焼き”に2周程費やしたあと09~10秒台で走行できる事を確認、高橋選手に交代。
 このままサファリを含め高橋選手が走る。
 この状態でも5周目には11秒台をマークするも、そこに至るまでの周回が掛かかりすぎる様だ。
 とっ、ここで思わぬトラブルが、高橋選手から無線の応答が無い。
 返事をしない事はよくあるが、何の呼びかけにも応じない。
 交代前、加藤選手の時は正常に作動していたはず。
 ピンジャックが入っていなくても走行中にさし直しは可能である。
 その後ピットサインと、チェッカーフラッグに従ってピットイン。(チャンと見ていた!)
 走行終了後の点検で、車載無線機の電源コードがちぎれている。
 恐らくドライバー交代時に、シューズに引っかかって断線した物と思われる。
 原因もアッサリ見つかり一安心。
 決勝レースに向けて、マシンはおおむね順調な仕上がり、通常メンテナンスに入る。

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ほぼ毎日同じ気温。同じ空模様。セッション中の雨も無い。
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用意されたレインタイヤも出番はなさそうか・・・。
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レース毎に新品のブレーキローターに交換するが、ウォームアップ走行で当たりをつける。

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サファリのバスが入る前のピットは混雑。珍しく斜め止めの作業となった。
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殆ど練習はしていないが、マシンの押し戻し、誘導、給油ホースを避ける等、各スタッフの役割は承知しておりスムーズにスタート。
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サファリに入ったバスは全部で8台!ウォームアップ走行後に行うのは初めてかな。

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無線が不通に・・・。運転席左の隙間を通っている無線のカプラーが靴に引っかかったようだ。
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カプラーがプッツリ。今後の対策も必要かな。
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以前も発生したステアリングが重いと言う訴えも出た。シャフトの潤滑剤が熱で変質して粘りが出てしまうようだ。


 午後3時過ぎ、スタート進行が始まる。
 ウォームアップで最終確認。
 一旦ピットへ戻りレース用NEWタイヤへ交換。
 通常なら、この状態で待機してグリッドへ向かうのだが、再びコースへ。
 1周してピットイン。タイヤに一度熱を入れる。
 リヤウイングのガーニーを外す等、“おまじない”的セッティングの変更。(効果が無い訳ではない。)
 今年のセパンは結構気温が低い。(昨年は連日気温34~35度。路温45度近く。)
 例年の気温を想定して準備したタイヤでは、暖まりが遅いので、レーススタート直後のタイヤの暖まりを助ける為である。 

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決勝スタート用タイヤの保管解除。こうして各チームメカが受取に行く。
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日本のピットウォークとの違いは、サーキットのスタッフ(オレンジのベスト)数名が一緒にエンジョイしてる事。
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ここでも決勝用NEWタイヤを早めに装着。いつもより多めにまわして(周回)おります。

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グリッド上ではスターターモーターをエアで冷却。傘と扇子はレースクイーンのマネージャー。
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曇り空からの雨に備え、浅溝、深溝のレインタイヤを準備したが、不要となり撤収。だが可能性はあり。
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ル・マンの惨敗から1週間。気持ちを切り替え、チャンピオン奪取へ・・!


 気温31度、路温40度は、昨日とほぼ同様蒸し暑い。空模様も雲は多いがおおむね晴れ。。
 但しスターティングセレモニーの間でもスコールの可能性は高いので、レインタイヤも深溝、浅溝両方をグリッドに準備。
 しかしその心配(望みかも・・?)も無用となり、定刻午後4時、フォーメーション開始。そしてスタート。

  1コーナーで、先にスタートした500クラスに混乱があったが、300クラスのスタート時にはクリアとなり、きれいに1コーナーへ・・・。
 しかし次の2コーナーで上位の3台、2、4、5番グリッドからスタートした、19、11、81号車が追突!接触!スピン!が発生!!(ここセパンの1、2コーナーは右から左にもっともクイックに切り返す連続コーナー)
 19号車はそのままリタイヤ。11、81号車は最後尾まで下がってしまった。
 これに巻き込まれなかった加藤選手は、77、43号車に続いて3位でオープニングラップを終える。
 トップ77号車には3秒近くリードされたが、2位の43号車とはコンマ1秒差。
 2周目にはペースの上がらない43号車をアッサリと抜き去り2位へ!
 しかし77号車にはジワリジワリと水を空けられて行く。
 金曜からの調子では、正直この77号車にはトラブルかミスでも無い限り絶対勝てない。
 下手に食らい付いて行けば、こちらが自滅しかねない。
 まずは上位3台に1ポイント与えられるベストラップ狙いで10秒台から9秒台にペースを上げる。
 後方から、4号車、7号車が同じ様なペースで追い上げて来る。

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定刻スタート。77号車はポールを活かし、磐石のポジションをキープしている。
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2コーナーで既に2位ISに1車身差。この後19号車IS、後の81号車Z、11号車赤のフェラーリに・・・
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コースサイドでは3台で混乱が・・!破片が飛び散っている。

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19、11号車がストップ。81号車も大きくロス。11号車はレースに復帰したが19号車はこれでリタイヤ。
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2周目には強敵43号車もパスして2位へ・・・。
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その後7号車にパスされるも、ピタリと追従、かつ4位との差を広げる加藤選手。

 4号車にコンマ4秒まで迫られた8周目に09″567でベストをマーク・・・するが、ベスト3には入らない。
 この頃から500が追いついて来たが、これらを巧みに利用し4号車との差を広げる加藤選手。
 そしてこの同じ状況を利用して、7号車と4号車が入れ替わる。
 流石に、ここセパンで4勝を上げている7号車ドンドンとペースが上がり、1周毎にコンマ5秒以上は早い!
 15周目には7号車にパスされ、3位へ
 エンジニアのシンタローは無線で
 シンタロー「ポイントリーダーのガライヤ(43号車)より前でゴールしたい。」
 加藤選手「簡単に言うね~」
 シンタロー「乗ってないから簡単に言える」
 と、他愛の無い余裕のやりとりが・・・。

 その後暫くは7号車と1~2秒差のまま3位をキープ。
 トップ77号車は別次元として、2位7号車とはピット勝負でも充分逆転可能な差である。
 4位以下は、4・46・66・31号車と続く。
 21周あたりまでレースは小康状態。
 シンタロー「予定ではあと10ラップ(でピットイン)。体とタイヤダイジョーブ~。」
 加藤選手「大丈夫!大丈夫!」と元気な応答。

 23周辺りから上位グループのピットインが始まる。
 まず4号車。
 25周目(ほぼ300クラスのレース周回予定の半分)には46号車、翌26周目には77・7号車もピットイン。
 当然2号車加藤選手は暫定トップに上がる。

 シンタロー「10秒台保てるなら1~2周伸ばしま~す?」
 加藤選手「OK!OK!」
 の約束通り、10秒台をキープ。
 NEWタイヤとなった上位マシン群も、77号車を除き、なかなか10秒台のペースに戻らない。
 見えざる1位77号車はトップをキープだが、リードされていた7号車とは恐らく逆転できているのでは・・・?
 と言うより、実質2位は、先のピットインで46号車となり、以下4・7号車と続く。
 34周を終え加藤選手ピットイン。
 高橋選手に交代。
 順調に作業は進みピットアウト。
 実質2位“だった”46号車の前に送り出す事ができたが、アウトラップを終えてそのリードは僅かコンマ3秒!
 しかも相手はミシュラン勢で今日最も速く、既にコンディションも出来上がっている。
 それに対しコールドタイヤの高橋選手は、翌36周目は15秒台、10秒台の46号車にアッサリパスされ、3位へ。
 その後にはやはり10秒台で追う、2秒差の4号車、更にコンマ5秒差で7号車が続く。
 続く37周、38周目も共に13秒台となかなかペースが上がらぬ高橋選手は、4号車、7号車に各周回でパスされ5位にまでダウン!
 このペースでは前との差より、後との差が心配となり、ピットサインもマイナス○秒から、プラス○秒への表示へと変わる。
 しかもその数字は確実に減っていく!
 6位は、前戦富士と同様、31号車MRSで、20秒後方から11秒台で迫ってくる。
 この頃、ピットではトラブルでピットインしてきた500クラスの32号車が破損した後部から出火!
 消火作業で大きく白煙が立ちのぼる。

 舘師匠「ピットで煙が出てるけど関係無いから~」
 と無線連絡、ドライビングに集中させる。

 その後ペースは12秒台から時折11秒台に上がったものの、31号車の方が約1秒ほどペースが速い。
 だが高橋選手が抜いた、周回遅れのマシンや、500のマシンの処理に31号車が手間取ったりする場面もあり、最終ラップ、3.5秒まで詰め寄られたが何とか5位でフィニッシュ。

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待機中の松下チーフメカ。今回は人数が少なく、タイムキーパーがいないので、給油マンがストップウォッチを見ながら給油を行い作業開始はそれらの動作を目視で確認していた。ピット作業の様子
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2位で復帰した高橋選手は、序盤ペースが上がらず、ポジションダウン。
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5位でフィニッシュ。マシンは殆ど無傷だったが、心の傷は大きいかも・・・。


  
2008年 SUPER GT第3戦 GT300クラス
予選6位 : 決勝5位
獲得ポイント チームポイント6点+2点(トップから1周遅れによるポイント)累計44点
ランキング 3位
ドライバーポイント6点 累計38点
ランキング 3位

 このレース、序盤で前方グリッドのマシンが3台も脱落し、労せず(加藤選手の危険回避能力によりますが・・)スリーポジションもUP。
 また例年の暑さ(35度前後)を予測してタイヤ選定をし、グリッド上位を占めたが、思わぬ低温(といっても30度超え)となり、レースで序盤からペースが上がらぬマシンも出てくる中、代わって加藤選手も含めたグリッド下位マシンがレースをリードする事となった。
 これほどの好条件が揃ったレースでは、是が比でもチャンスを生かさなくてはならない。
 そのカギを握る高橋選手、昨年最終戦から、今年の1戦2戦3戦と、内容の良いレース展開が続いただけに、今回はなんとも不甲斐ないレースとなってしまった。
 高橋選手のアウトラップからのペースが極端に悪く、加藤選手の貯めた貯金を、殆ど食いつぶしてしまった。
 昨シーズン終了後、最強アマと評される様になった高橋選手。
 確かにここ数戦のレースを見ていると、上位グループの中で、加藤選手の様に“貯金”ができる程のラップタイムではないが、貯金を保つ事ができる様になった。
 勿論レースは相対的な物なので、いくら頑張ってもライバルがそれを上回れば結果はいたしかたない。
 結果的に順位が落ちても、その“頑張り”が見られるレース展開だった。
 ところが今回、突然“大きな壁”に当って突き返されてしまったかの惨敗振り!
 練習セッションを1回失ってしまった事は大きかったかもしれない。
 本人も、レース終了後に「レースの最終ラップが一番早いんです。」などと言う事もあるが、それでは・・・
 今後は僅かな練習時間で“レース勘”を取り戻せる事も課題かも・・・。
 少なくとも冒頭に出てくる、「PANKL社」の特殊ナットを導入した元が取れる様にはしなくては。
 “大きな壁”は、意外と”重い扉”だったりして・・・次の菅生では、それを押し開けて行きたい。

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 紫電、22戦連続完走!

DATE:2008/07/04