モータースポーツ

SUPER GT第8戦 栃木県ツインリンクモテギ

GTレースレポート
2013年11月10日

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SUPER GT第8戦 栃木県ツインリンクモテギ

 NEWマシンで挑んだ2013年シーズンも、はや最終戦。
 ここ最終戦のツインリンクモテギは、レーススケジュールの関係から、合同テストにも参加できず、今回が初走行、このマシンのデーターは全く無い。
 果たしてどれ程のパフォーマンスを発揮するのかは未知数。

 ポイントランキング争いなど、全く異次元の話となり、ただ完走することだけしかできなかったが、不調原因も究明、少しづつだか対策もとられ、終盤には本来のポテンシャルを見せはじめた「エヴァRT初号機アップル・MP4-12C」。
 リザルトはまだ伴わないが、確実に手応えは感じている。

 最終戦にむけ、更にエンジンMAP改良、より理想に近いタイヤの投入・・等々、まだ“勢い”という程の物はないが、最後まで全力で挑みたい。

11月2日(土) 練習走行 / 晴れ

 やや肌寒い気温13度、薄曇りの朝、プラクティス・・練習走行が、まずは加藤選手により始まる。
 タイヤに熱が入った、計測2周目1分51秒台、クラス10番手、その後50″950まで上げるが10番手変わらず。トップは既に49秒台。

 最終コーナーでのコースアウト車両回収の為、赤旗中断の間に、車高を調整、そして50″854までタイムアップ。
 更にタイヤ比較を行い、ベスト50″436は暫定9番手。
 12周の計測、延べ18周を終え、大方足回りもまとまってきたところで高橋選手に交代。

 合同テスト参加もなく、今シーズン初めてのモテギとなる高橋選手。
 58、57、56秒台と、コースとマシンに慣れるに従い徐々にペースアップするものの、タイムアップが遅い・・・。
 55秒台に入ったところで、頭打ちとなってしまう。
 一旦ピットに戻り、加藤選手のデーターロガー(コース全周におけるアクセルやブレーキ等、ドライバーの操作に伴う、速度等マシンの動きをグラフ化したデーター)とを重ね、比較し、問題点を探る。
 それが功を奏し、54秒台にタイムを上げるが、加藤選手とのタイム差が大きい。
 10分間の300占有走行時間も高橋選手の走行に充て、延べ110分間のプラクティスは終了。
 加藤選手のベストタイムは最終的に10番手となった。

 ここモテギはフルブレーキングからフル加速という正にSTOP&GOサーキット。
 ダウンフォースが少なく、フルブレーキングの安定性に欠けるマシンには、タイムアップがやや難しいサーキット。
 もっと走りこめばタイムアップが見込めるだろうが・・・。
 次のQ1予選を加藤選手が突破し、Q2予選にコマを進めるまで走るチャンスのない高橋選手、車載ビデオ学習でウィークポイントの克服をはかる。

11月2日(土) 予選 / 晴れ

 ノックアウトQ1予選、クラス全車の計測タイム上位13台がQ2に進み、そこでポールポジション以下のグリッドを決める予選方式である。

 午後2時からの予選Q1、陽射しも出て気温は16~17度まで上がり心地よい。路温は20度。
 まず15分間のQ1は加藤選手が出走、プラクティスでは10番手タイムだったが、まだ各マシンタイムアップの可能性も高く、13番手以内はかなりの激戦が予想される。
 セッション終盤の方がタイムが出ると言われるこのモテギ、またタイヤグリップのピークと思われる3~4周目辺りをそこに持ち込むべく開始から3分ほど待ってピットを離れる。
 ところが、1周、2周とタイヤを温め、アタックに入る直前、55号車(CR-Z)がコースアウト、自力でコース復帰できない為赤旗中断。
 アタックに入る直前だったのは幸いだったが、中断によるタイヤの冷えが心配である。
 予選は直ぐに再開され、計測1周目49″893のベストタイムをマーク、暫定2番手!!
 だが、同周回で各マシンもタイムアップ、みるみる順位が下がり、11番手。
 勿論それを承知の加藤選手は更に翌周もアタック、ベストに僅かに及ばぬ49″968。
 Q1突破を確実にしたい加藤選手は、もう1周アタックに入り、第1セクターまではベストタイムをマークするも、既にタイヤグリップのピークは過ぎたと判断、明日の決勝スタートタイヤになるかもしれない、このタイヤを温存する事にし、アタックを終える。
 結果は13番手、紙一重でQ1突破。
 トップ16号車(CR-Z)は48″636と、飛び抜けたものの、2番手49″090から、13番手、加藤選手の49″893まで、コンマ8秒に12台が入る激戦となった。

 500のQ1、そして10分間のインターバルの後、午後2時40分からは、12分間のQ2予選。
 周回数の欲しい高橋選手、セッション開始と同時にコースイン。
 タイヤも温まった3周目のアタックは52秒台!翌周52″238ベスト。
 低迷したプラクティスから一気に2秒の短縮。
 連続3周目のアタックはミス、不発となった。
 このタイヤもスタートタイヤとなるかもしれないので、(スタートタイヤはQ1、Q2いずれかのタイヤが抽選で決まる)Q2終了。
 結果は12番手グリッドを得る。
 今シーズン、割りと多い、平凡なグリッド位置となるが、直ぐ前はポイント圏内(10位以内)、高橋選手の伸び代も期待できる。
 最終戦決勝、全力で挑むだけ。
■予選後のコメント
■高橋選手「 まだダメだね。練習時間が少なすぎてなかなか厳しいね。テストも来てないし・・・タイムはまだ上がるけど…決勝の時(終わり)の方が速くなるし・・・。」
■加藤選手「 練習走行からセットアップを少し変えて予選に臨んだんですけど、思うように・・うーん・・ちょっと・・・・足りてなかったっていうか、その中でもQ1は突破できたんで良かったかなと思っています。多分我々のチョイスしたタイヤは、レースでかなり強いと思うので、予選はそこそこですけど、レースはちょっと期待ができるかなと思っています。」
■渡邊エンジニア「 ギリギリでQ2進出と言う感じだったんですけど・・・ドライバーも若干ミスがあったみたいなので、・・でもま~、パフォーマンスは、10位前後をウロウロする感じでしょうし、現場それ以上っていうのはなかなか見えてこないという感じで・・・相変わらず苦戦しておりますね。シーズン当初にあったトラブル、システム上のトラブルとかは解決されているんで、まぁ・・レースは・・明日うまく運べれたらいいなと思っています。250kmレースなんでちょっと通常と・・・(違う作戦)この段階で明言できないんですけど、できるだけピットストップが短くなるような、作戦を考えてます。・・・ポイントランキングにしても(まともに)車が走り出したのがシーズン後半なんで、ちょっとチャレンジングな事を、明日はして行こうかな思っています。」

11月3日(日) フリー走行 / 晴れ

 レースウィーク3日目となる決勝日、サーキット全体が霧に覆われ、走行にさほど支障はないもののライトオンで、朝一のフリー走行は始まる。
 決勝想定の燃料を積み込み加藤選手がストレート1本、その後は高橋選手が計測8周と周回を稼ぐ。
 最後再び加藤選手で数周といった具合で全体的なバランスの確認といった感じで、高橋選手、加藤選手、それぞれ1′53″226、と1′54″215でクラス21番手と特に見るべきものは無い。
 サーキットサファリは全て高橋選手が走行。
 レース想定のマシンで54秒台は“十分”決勝レースで戦えるタイムだろう。

11月3日(日) 決勝レース / 晴れ

 この最終戦モテギは、2つ、シリーズ戦と異なる事がある。
 通常シリーズポイントの2倍の「kg」ウェイトハンディが積まれるが、この最終戦では、それが全てゼロになる。(前戦オートポリスはシリーズポイント分の「kg」)
 早い話が、今シーズン強かったマシンが、より速くなるのであり、残念ながら、今シーズンの我々には殆ど関係無い話である。(3ポイント=3kgは降ろせる。)
 もうひとつは、レース距離が250kmとシリーズ戦では最も走行距離が短いのである。
 この短さから、チームによってはタイヤ2本交換として、ピットストップ短縮を狙う事だろう。
 だが2号車「エヴァRT初号機アップルMP4-12C」は更に奇策としてタイヤ無交換作戦をとる。
 またこの距離なら、スタート時に燃料を満タン(実際には計算により満タンよりやや少ない)でスタートすれば給油時間も短くできる。
 ピットストップで必ず行わなくてはならないドライバー交代は15~17秒、これはいくら練習しても大幅に短縮はできないので、その間はしっかりと給油のみに当て、最も短いピットストップにする事ができるのである。
 フリー走行後には両ドライバーが交代練習に励んでいる。
 昨年までの紫電はいつも給油時間が短く、タイヤ無交換作戦を取る事も多かったので、ドライバー交代タイムはかなり重要だったが、今年は常に給油時間が長く(約30秒前後)、交代にも十分余裕があった。
 早い交代の勘を取り戻すべく、幾度と無く交代練習をし、最終的には納得の行く時間にまで短縮する事ができ、決勝レースへの準備は整った。

 決勝レースはいつもと異なり30分早い13時30分スタート。
 レース終了後の年間表彰や全ドライバー参加のグランドフェイナーレ等イベントが遅くなると、日没が早くなった事と相まって、冷え込みも厳しくなる。
 その為の、ファンへの配慮である。
 
 スタートドライバーの加藤選手が、ウォームアップ走行を終え、セット変更のリクエスト、車高を若干調整。
 テストデーターのないサーキットだけに、試しておきたい点も多々あるが、決勝レース直前とあっては多少バクチ的な点も否めない。
 
 薄曇とはいえ、気温20度前後、寒さを感じるほどの事はないすごし易い陽気で始まった決勝レース。
 オープニングラップで12位から13位、3周目には14位そして、翌4周目には16位へ序盤から大きく順位を落とす。

 直前の車高調整で“少し”アンダーステア方向にしたのだが、行き過ぎたようでアンダーステアとの格闘中ドンドン抜かれて行く。
 とは言え、トップ3台、11号車(メルセデス)、61号車(BR-Z)16号車(CR-Z)はドンドン先行するが、4位から加藤選手の16位まで13台が10秒以内に入るグループを形成し53~54秒でレースが進む。
 15周を過ぎるとルーティンピットも始まり見かけ上の順位は上がっていく。
 やはり殆どのチームがタイヤ2本交換でコースに復帰して行くが、タイヤが冷えているアウトラップのロスはまぬがれない。
 それに対して周回を重ねる毎に燃料が減り、これが功を奏し強いアンダーステアも解消され、タイヤの磨耗が進んでいると思われるが全くタイムの落ちない加藤選手・・・どころか、29周目にはベストタイム52″691をマーク!翌30周目も52秒台と他のマシンピットインに伴い、見かけ上の順位ではなく実質順位も上がってきているのである。

 23周目「残り10周(33周ピットイン予定)ですが、タイヤどうです?」との渡邊エンジニアの無線に「大丈夫!!大丈夫!!」と応える加藤選手・
 予定通りタイヤ無交換作戦決行である。

 33周を終え、見かけ上の順位が3位になってピットイン。
 加藤選手から高橋選手に交代。
 給油時間は17秒。
 この間にドライバー交代を終え、すぐスタートできれば計算上8位辺りで復帰でき、タイヤもそのままなので、交換時のアウトラップのロスも少ない。
 だが給油を終えても、まだドライバー交代が完了していない・・・というか、ドアは閉まったがまだ発進できない。
 僅か3~4秒とはいえ、接戦中では順位を落とすに十分なロス。
 コースインした時点で10位。
 ところがアウトラップ、12位にドロップ!!タイムも他の多くのマシンのアウトラップに比べ5秒以上遅い。
 その後2周に渡りタイムは上がらず、2分00秒台、順位も35周目14位、36周目17位と目を覆いたくなるほど落ちて行く。
 渡邊エンジニアも「何かマシンの調子がおかしいですか?おかしいようならピット入ってください!」と心配するほど・・・。
 だが特に何かトラブルを抱えているわけではなさそうだ。
 その後59秒台から57秒台、そして終盤47周を過ぎた辺りから56秒台に入るが、既に17位~18位で推移・・・50周を終え17位でチェッカー。

 プラクティス、フリー走行では十分なタイムを出していた高橋選手だが、レースになったら完全にリズムにのる事ができず低迷。
 直前のセッティング変更や、タイヤ無交換が裏目に出たのか?
 だが高橋選手は、同じマシンに乗って、加藤選手が出せるタイムを、自分が出せない事をマシンの性にはしない「完全に自分が悪い。」と反省の弁。 
 現在、SUPER GTのドライバーはプロ+プロのペアが殆どで、高橋選手の様なアマチュアが加わっての上位入賞はかなり難しい・・というより不可能と言ってもいい状況である。

 高橋選手も、マシン+コースの慣れが、ここモテギに関しては全く不足して、最終戦に臨んでおり、もっと走りこんでいれば、もっと良い結果が出せたとであろう。
 “練習”して早くなるのはアマチュアだとも言われるが、このSUPER GTというカテゴリーにプロ、アマチュアの区別は無い。
 このカテゴリーに挑む以上、アマチュアとしてやれるべき努力は惜しまない高橋選手である。
 この悔しさを来シーズンにむけ、どう昇華されるか?
 これで終わりのアマチュアドライバーではない。

■決勝レース後のコメント
■高橋選手「 皆さん本当にすいません。私が悪うございました。(タイヤとかの問題じゃなくて)人間の問題です。 (オートポリスの時の様な)タイヤカスやなんかも人間のせいだ。(横から)加藤選手「俺セッティング失敗したって言ったんですけどね。」・・そんな事関係無い。あれもう一人加藤寛規だったら、失敗でも何でもない。(横から)加藤選手「でも何秒で走れるかって事でしょうから・・・。」まぁ、それでもどうせ53秒54秒で走っとるでしょう。(両ドライバー:笑)来年に向けては・・・根本的に人生考え直したいと思います。(両ドライバー:笑)」
■加藤選手「 レース前のフリー走行から、ちょっと先を見越してセッティングを変えたんですけど、・・・ちょっとやり過ぎちゃったかなぁ・・・。前半かなり苦しみました。そこでストレート速い車にかなり抜かれちゃったんで、その後抜き返すのが大変でした。もうちょっと・・・そうですねぇ車のバランスが良ければ、もうちょっと何とかなったかな~・・と反省してます。ですが、これも逆にデータとして今後に生かしていきたいと思いますんで、次は富士かんばります。」
■渡邊エンジニア「 う~・・ちょっと~・・・予選順位もボチボチ、で~・・ほぼ真ん中あたりからスタートするということで、ここはレースも短い250kmレースなんで・・・ここずっと言ってるですけど、まだ車のすべてをまだわかりかねてて、やっといろいろとわかってきたんで実験的な意味も含めて、タイヤの無交換をトライしようということになって、レースはスタートしました。ちょっと満タンで車が重たい時・・特にマクラーレンの場合燃料タンクが大きいのが許されている関係で、加藤選手もペースがあげられなくて、最初の何周か、苦しんでる時に抜かれちゃったんですが、ある程度全部が落ち着いた状態では非常に早くてですね・・・特にTOP3 、JAF GT 2台と、ダンロップのメルセデスは、ずば抜けて3台は早かったんですが、それ以外と言う・・言い方をしてもいいかどうか・・なんなんですが・・からすればほぼトップクラスのラップタイムで走れてたんですね。一応僕の計算上・・ラップチャートにも書いてるんですが、非常に3位から18位くらいまでがものすごく団子で、10台以上が10秒の中に入ってる位の接戦なんで、うちが予定していたタイヤの無交換で(ピットから)出すって言うメリットが、非常に出るかなと思ったんで・・・。途中僕の計算では6から7番手あたりで復帰できるかなと・・特にここはピットロスが少ないコースなんで、その辺計算しやすいんですけど・・・で実際入ってみて・・チョットドライバー交代でミスが有って、僕の手計測だと給油で17秒、ドライバー交代で15秒から16秒の予定だったんですけど、多分ドライバー交代は22秒かかってると思うんですね.その間に2台いかれてしまって、まぁ7、8番手あたりで、復帰できたと思うんですけど・・・・その後高橋選手が車の方で苦戦して、ずるずると順位が押してしまってフィニッシュしてしまった・・ま~あう言う形ですね。特に今のところ何かが壊れたという感じじゃないんで・・ 。来年に向けてもうちょっとデータを見直して、もう少し上の順位でゴールできるように頑張ろうと思います。ただもう正直に・・ストレートに言うと、今アマチュアドライバーのチームには相当厳しくて・・もう10番(ポイント圏内)に入ると言うのが、既に難しくて、いろいろ調べてもらうとわかるんですけど、13番手以内はほぼプロプロか?セミプロプロのコンビばかりになっちゃってて・・もう、プロ、セミプロと同じタイムで2人が走れなきゃ・・・今日なんかも加藤選手が52秒とかでトップクラスのタイムと同じペースはしてるんですけど・・・やっぱりもう相棒さん(高橋選手)も53秒台で走らないとトップテンにすら入らないと言う状態なんですね。それはもうアマチュアのオーナーチームとしては、今年は厳しいというか、ここ数年こういう傾向になってしまったんですけど、ここは本当に・・・車もそうなんですけど、ドライビングのスキルもどんどん磨いて、高橋選手もレベルアップしていかないと、また1年苦しい年になるんじゃないかと思いますんで、このシーズンオフ、有効に使って来年の準備をしたいと思います。」