モータースポーツ

SUPER GT第7戦 大分県 オートポリス

2013シーズン マクラーレン
2013年10月10日

13rd07-000.jpg

SUPER GT第7戦 大分県オートポリス 

 全8戦シリーズの第7戦は、2006年チーム初優勝の地、オートポリス。
 しかしマシンが変われば、過去の栄光はなんの手助けをしてくれる物でもない。
 今シーズン、全く良い所が見せられずノーポイントが続いたが、2週間前のアジアン・ル・マン富士、シリーズ戦ではないが善戦し、5位入賞と今シーズンの初のドライバーズポイント3点を獲る。
 マシンもこれまでにないパフォーマンスを発揮、本来のポテンシャルを垣間見せたレースとなった。
 この時に使用したガソリンこそ、「エヴァRT初号機アップルMP4-12C」とのシンクロ率が最高となるガソリンだが、日本のレースでは・・・要は今回のレースでは使用できない為、マイナス要素もあるが、メーカーもこうした経験値を得て、僅かづつとはいえ、確実に前進させており、かなり下がった気温と合わせ、これまでのシリーズ戦以上のパフォーマンスを発揮できる事だろう。
 
 加えて、8月末のオートポリステストのデーターを踏まえ、タイヤもここ2戦で絞りこまれ、まだまだ“全て”がベストとはいえない状態だが、シリーズ戦終盤での活躍を期待してもいいだろう。
 しかし、心配された台風は逸れて行ったが、明日の天候は雨予報・・・う~ん難しい週末だ・・・。

10月5日(土) 練習走行 /予選:キャンセル 雨

 予報通り朝から雨。
 サーキットに向かうミルクロードは濃い霧に見まわれ、午前7時過ぎのサーキットにおいては更に雨脚は強くなる。
 プラクティス開始時刻、午前9時になってもそれらは衰える事はなく、完全ウェットコンディションの中、加藤選手がコースイン。
 数周のラップでレインタイヤを暖め徐々にペースを上げようかという頃、500マシンがコースアウト、小破!!回収の為赤旗中断となる。
 しかしその間に更に雨脚は強くなり、再開後にコースインした他のマシンもストレート中盤でアクセルを戻している。
 ハイドロプレーニング現象という、コース上の水にタイヤが浮いてしまい、ブレーキもステアリングも効かなくなる危険な状態である。
 
 こうなっては全くペースも上げられず、データーを得るべき走行とはならない。(殆ど罰ゲーム状態・・)
 コースに出ていた数台のマシンもピットに引き上げ、コース上からマシンの姿が消えたところに、“濃い”濃霧がコースを多い、視界不良により再び赤旗。
 強い雨脚が続きつつも、時折小降りとなるが、視界は全く回復せず、この赤旗は、セッション最後まで続き、午前11時セッション終了。
 無論「エヴァ初号機RTアップルMP4-12C」のタイム、(2′09″131、18番手)は、全く意味のないタイムとなった。
 午後2時にはノックアウト予選となるが、この間のサポートレースイベントが視界不良でキャンセルとなる等、雨と濃霧はこの日のスケージュールを大き狂わせ、各チーム、ドライバー、クルーがヤキモキしながらランチを済ませた後、午後1時50分、結局予選セッションは中止が決定、明日7日に午前予選、午後決勝レ-スというスケジュールに変更された。
 今日ウェットコンディションでの予選より、明日午前であればドライコンディションの可能性は高い。
 ウェットのデーターが少ない我々にとっては、ドライコンディションで臨みたい今レース、恵みの雨、濃霧となる・・・はずである。 
 本日の走行加藤選手6周、高橋選手0周・・・・。

10月6日(日) フリー走行は予選に変更 / 晴れ

 昨日予定されていた予選は、雨によるコースコンディション不良、更に濃霧での視界不良のダブルパンチでキャンセルとなった為、通常であれば決勝レース当日、午前中に予定されたフリー走行の時間が、予選セッションに充てられる事となった。
 しかし、未明までの雨で、コースにはまだウェットパッチが各所に残り、ドライ用スリックタイヤか?インターミディ(浅溝レインタイヤ)か?現状でもタイヤ選択が難しいところに加え、やや強い(ストレート上では)向かい風が路面を乾かすかと思えば、霧雨も感じられ、空にも厚い雲が控えている等、不確定の要素山積みの中、予選時刻の午前9時を迎える。
 今回の予選は、通常のノックアウト方式(1回目Q1予選タイムの上位13台が、2回目Q2予選に進み、上位グリッドを決める。)では無く、GT300、500クラスそれぞれ25分間づつ1回の専有走行、ドライバーは2名どちらか1名のみでも、両ドライバー共にドライブしてもどちらでもかまわない、久々のガチンコ予選である。
 タイヤもNEWタイヤが2セット使用可能。
 ただし、それぞれのセットいずれかが、予選終了後の抽選で決勝スタートタイヤとなる為、予選一発勝負でソフトタイヤを使ってタイムを出しても、それがスタートタイヤとなった場合、レースを失う事にもなりかねない。
 2セット目をどこで投入するかも重要で、タイヤが充分温まらなければ不発となる。
 
 午前9時予選開始、61号車(BR-Z)のインターミディ以外、全車スリックタイヤでコースイン。
 全車ファーストレーンを走り去った後、ゆっくりとピットを後にした「エヴァRT初号機アップルMP4-12C」加藤選手。
 陽射しのない曇り空、20度と低い路温、ウェットパッチがまだ残るコースだが、雨は無さそうなので、セッション終盤でコースコンディションは良くなると思われる。
 アウトラップから徐々にペースを上げ5周ほどウォームアップ、6周目のアタックは1′50″764!!暫定6位、翌周クールダウン。
 残り時間10分、2セットを投入するには時間的にリミット。
 多くのマシンは2セット目に履き替えている。
 ここでNEWタイヤに代えて充分なグリップを発揮するか?どうか?微妙なところ・・・判断はステアリングを握る加藤選手に委ねられ、「ここままで行く」こととなった。
 その間に11位に下がるが8周目の再アタック!!49″557とタイムアップ、6位に再浮上!!
 もう1周、前との間隔を空けクリアラップを作り3回目のアタックに入ったが、コース中盤、第2ヘアピン後のダウンヒルストレート(オートポリスはストレートやコーナーに特に呼び名がない)加速中、突然エンジンが吹けなくなってしまった。
 ここぞ!いうところでピットに戻らざる得なくなってしまい、ここで予選を終える。
 結局この後、他のマシンもタイムを上げ、予選は15位・・・。
 8月のテスト走行では、まだエンジンが本調子でない中、47秒台をマークをしていた事を考えると、よりコンディションの良くなった今回の予選、十分シングルポジションが狙えるだけに悔しい結果となった。

 トラブルの原因は程なく分かり、エアインテークの(ターボの加給圧がかかった)ホースが外れてしまったようで、修復は可能だが、狭く手の入り難い場所の為、時間がかかり予選後のサーキットサファリの走行ができなくなってしまった。
 このサファリで走行を予定していた高橋選手、未だ走れず・・・。

■予選後のコメント
■高橋選手「 別にいうことも無いよ。全然走ってもいないんで・・・。金曜も土曜も暇なんで温泉行ってきました。」
■加藤選手「 予選は本当にぶっつけ本番という形になって、ドライでの走行だったんですが・・・ま~まあまあ、バランスもそんなに悪くもなく走れてたんですけれど、最後の最後のアタックが、ちょっとエンジンにトラブルが出てしまってアタックできなかったのが非常に残念ですね。結構いいとこにいけるんじゃないかなと思ってました・・・でもレースは何があるかわかんないのでがんばります。」
■渡邊エンジニア「 実はここ(オートポリス)はテストも来てて、正直車の調子も良かったのでかなり期待して予選に挑んだんですが、しかし微妙に路面の状態とタイヤのマッチングが最初うまくいかなかったんですけど、またタイヤをそのまま代えずにセッション25分間・・・他のチームは代えたりしたんですけど、うちはそのまま走りきるっていう作戦で予定を立てたんですけど最後の最後一番路面の状態が良くなるっていう時に、タイムが出るってという話をドライバーともちゃんとミーティングしてたんですけど、ちょうどその時間帯に車にトラブルが起きてしまって結局フルアタックできずに予選終了って言う形になってしまいました。予選としては15位になってしまったんですが、まぁ普通に走れば今のウォームアップ走行では6番手とかなんで、まぁパフォーマンスとしては今までのコースではいちばん悪くないと思っていますんで決勝レースはかんばりたいと思います。」

10月6日(日) 決勝レース / 晴れ

 シャキッとしない空、時折吹く強い風、幸い霧・・と言っても、実際は雲・・は無く視界良好、路面を濡らす程ではない、時折霧雨がパラつくといった、何とも言い難い微妙なコンディションが続くオートポリスサーキットだが、どうやらレースはドライコンディションで行えそうだ。
 午後の決勝レースのタイムスケジュールは通常のレースと変ることは無いが、ウォームアップ走行が通常の8分から15分の前倒し延長となり、全く走っていない高橋選手、レース前唯一の走行となった。
 ウォームアップ開始と同時にコースイン。
 1ヶ月前のテスト走行、また午前の予選の車載ビデオ学習が活き・・たのか・・クラス中位と、決勝での走りが期待できそうだ。
 残り5分程でスタートの加藤選手に交代、6番手タイムとバランスも良く好調。

 抽選で決まった決勝スタートタイヤは、我々は予選で未使用だったNEWタイヤ、これを活かしスタートは加藤選手で、タイヤ、燃料を使いきるまで引っ張る予定である。

 午後2時、フォーメーションスタート。
 ピットではスタートタイヤの選定に失敗したのか?2台0号車(ポルシェ)と61号車がピットスタートを待つ。
 これは決められたスタート用タイヤを、別のタイヤに変更したい場合に取られる措置で、レーススタートと同時にピット前でタイヤを交換しピットからレースに加わるのである。
 無論グリッドも失う事になり、全車がストレート通過後に戦列に加わるので大幅に遅れる事になるが、レース中に“1回余分”にピットインするよりはロスは少ない。
 1周のフォーメーションを終えレーススタート。
 と同時に1台、62号車(メルセデス)がピットイン、やはりタイヤ交換してピット離れる。
 先のピットスタートの2台と同様、レースのペースが上がり始まる前、早めの1周目に交換する場合もある。
 昨日予定されていたプラクティスは、予選、ひいては決勝タイヤの選定に関し重要なセッションで、そのプラクティスが無くなった事により、タイヤの戦略で各チームを大きく惑わす事となった。

 このピットスタートマシン等により1周目13位で戻るものの、翌周には15位に・・・そして3周目には再び13位と、序盤の攻防が繰り広げられているが、ロングランを見据えた加藤選手はタイヤに負担を掛けず53~54秒台、だが7周目12位、8周目11位、10周目にはポイント圏内の10位ポジションアップして行く。
 10周辺りを過ぎると、タイヤキャラクターの違いか?上位グループの中から大きくタイムを落とし、中位グループに飲み込まれるマシンも現れる。
 そうしたマシンを、51~52秒台で飛ばす加藤選手が飲み込み、11周目には9位、13周目8位、16周目には7位へと上がり、トップ3号車(ポールポジション:GT-R)とは既に45秒差だが、中位グループの中で確実に順位を上げている。
 20周を過ぎるとルーティンピットが始まり、本来装着したかったタイヤに履き代わったマシンもあるだろう。
 これからレースの展開が変る事になるのか・・・。

 そうしたピットインにより加藤選手も見かけの順位が上がり、25周目5位・・この頃になると小雨がパラツキ始め、ワイパーが動き始めるマシンが出始めるが、ウェットタイヤが必要な程ではなく、タイムも全く落ちることはなく、28周目には51″272のベストタイムをマークし見かけの順位は4位。
 その後も51~52秒台で快走、36周目にはベスト更新51″253!!
 そろそろ40周、タンクアラーム(燃料が少なくなると点灯する警告灯)が点灯する頃で、ピットでは、作業の準備に入る。
 そして41周を終え、全チームで最後のルーティンピットイン、給油は満タンではなく残り周回数(恐らく20~21周)分のみ、タイヤは4本交換。
 高橋選手に交代し5位でピットアウトするも、既に迫った後続にアウトラップで抜かれ42周目で7位。
 43周目52″765!!好タイムであると思った、44周目は51″921!!!
 レースラップとしては充分過ぎるタイム。
 エンジニアのシンタローから「良いペースです。前のGT-R(30号車)より早いです!!後のヨコちゃん(0号車、横溝選手)にも追いつかれません。」と前後の状況を知らせる。
 と同時に500クラスの接近を知らせる。
 ところが45周目、54″970、翌周も54秒台・・・その後も54~55秒台とガックリペースが落ちてしまった。
 500にラップされる時はペースが落ちる“場合”があるが、これは落ち過ぎ、また周回が多過ぎる。
 シンタローから「何かクルマのバランスがおかしいですか!!?」と、トラブルが心配されるほどのペースダウンである。
 ポジションこそ7位をキープするものの、後方の蓋をする形となってしまい、53周目0号車にパスされ8位へ。
 その後は堰を切ったの如く後続車にパスされ順位が下がり、60周でチェッカー受けた時は12位となってしまった。(最終結果ではペナルティを受けたマシンが有った為、繰り上がり11位)
 
 ペースダウンの原因はGT500マシンを先行させる為にラインを外した際に、走行ラインの外側に落ちているタイヤカスを拾ってしまい、タイヤの外周にタイヤゴムがこびり付き、それらはタイヤのグリップを落とし、ハンドリングにも大きく影響してしまうのである。
 こうしたレースでは決して珍しい事ではなく、むしろ300クラスをオーバーテイクする為にラインを外す500クラスでは当たり前の事で、彼らを含め“プロ”ドライバーはそうしたこびりついたタイヤカスを剥がす走り方が、ペースを落とすこと無く当たり前にできるのであるが、“アマチュア”ドライバーでは、経験値の差から、先にペースが落ちてしまう。
 ペースを落としてしまうと、剥がれない、剥がれないからペースが上げられない・・・負のスパイラルである。
 中には、こうした状態での、走行時の振動が足回りの異常と感じ、ピットインしてしまうケースもあるほど、ハンドリングに影響が出るのである。
 ここオートポリスサーキットでは特にこのタイヤカスが発生しやすいコースらしいが、他のサーキットでも多かれ少なかれ、レース中コースサイドにはタイヤカスが発生する。
 こうした事も踏まえ、ラインをいかに死守するか?またそうしたリスクを冒してでも抜くか?こうしたコース状況も含め、レースを戦っているレーシングドライバー達なのである。
 またレース終了(チェッカー)後、上位マシン(再車検のあるマシン)が、ラインを外して走ってウィニングランをする場合があるが、あれは“これらを利用”していると・・言われています。

■決勝レース後のコメント
■高橋選手「 出だしはポンポンとタイム出たんでこりゃ楽勝だなと思ったんだけど、タイヤカス着いたら途端にダメなっちゃった。ボロボロですわ。今度タイヤカスいっぱい着けて練習しないかん。」
■加藤選手「 自分の想定していたタイムからはズッと遅かったんですけど、周りがそれ以上に遅かったんで、思っていた以上にj順位か上げられて・・本当に楽しいレースでした。残念ながらポイントは取れなかったんですけど、シーズン追う毎に、車の完成度も上がってきたんで、次は最終戦、モテギでもう一度プッシュし直したいと思います。」
■渡邊エンジニア「 まず1番レースの結果に対して重要なのは・・・ポイントになった部分は予選の順位・・・これが非常に、レースで上に上がるに1番重要、ネックになるというか・・当たり前の事なんですが・・・。予選はミスもあったり、いろいろ歯車が合わなくて沈んだわけで、レース直前のフリー走行で5、6番手で走れるのが確認できたんで、決勝は期待持てたんですけども、ここのコースは非常に抜きにくいというのもあって・・・やっぱりその~・・加藤選手スタートですが、加藤選手より遅い車が前に並んじゃってるんで、結局それを処理するのに大きく時間をとられて20周過ぎる辺りまで遅い車を抜きながらレースをすることになってしまって、結局その間では、TOP3辺りまではもう僕の計測では1分以上逃げてしまってもう基本的に、表彰台圏外なんですね・・・20周走った段階で・・・。そこからできるだけ加藤選手のスティントでアベレージのペースを上げてもらって、引っ張って、ドライバー交代したんですけど・・・あとやはり燃費が極端に他のチームより悪いっていうこともあって・・・特にメルセデス、BMWに対して、うちは8秒ほど給油を長くしなくてはならないというネガティブな要素があるんですけど、でも復帰して高橋選手に代わってからアウトラップということに関しては、5番手で戻したんで、そこから1台2台と(アウトラップで)抜かれ、結局7番手で落ち着いたんですけど、でもまぁ7番手からの2ラップは非常に高橋選手のペースもよかったんですけど・・・コース上にタイヤカス・・いや本当に「タイヤカス」なんですけど、・・転がっていて・・・一般の方には理解し難い物かもしれませんけど、・・・一般乗用車ですとタイヤカスなんて言ったところで、気にならない事なんですけど、レーシングカーのスリックタイヤにタイヤカスが着くと、結構ものすごい振動が
出たり、それに伴ってタイヤの性能を活かせない状態に陥っちゃうんですけど、・・・結局その状態に何度もハマってしまって・・・結局それを上手く走行中・・・加藤選手等プロの選手は上手く取ることができるんですが、それを上手く取ることができず・・・ペースが一気に落ちてしまって・・・、後ろから来た車にドンドン抜かれてしまって、結果的に12番手という形でレースを終えてしまった。今回ちょっと天候が悪かった、てので高橋選手の練習が全くできなかったんで、アマチュアの高橋選手にとってはいい要素が無かったんですが・・・、「とりあえず12番手でゴールしたって。」っていうだけの話のレースなってしまいました。でもポイントを取る、表彰台乗る、っていう話になると、その相手なるっていうのはアマチュアではなく、プロ2人のチームというのを前提に、物事考えなくてはならないので、・・・ま~、あくまでチームとしては勝ちを狙う、表彰台を狙う目的でレースを続ける以上、あまり甘えた事も言ってられないので・・・あと残り1戦になっちゃいましたけど・・・う~ん、チョットその辺の精度を・・・スタッフもドライバーも含め、みんなで、もっと上げて、最後良い形で終われる様に、次のインターバル、色々準備していこうと思います。」