モータースポーツ

2015 SUPER GT第4戦:富士スピードウェイ

2015シーズン LOTUS EVORA
2015年08月15日

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8月7日(金) 設営

第3戦タイ戦から1ヶ月半、3ヶ月ぶりの国内戦は富士スピードウェイ。  SUPER GT唯一の同一サーキットの開催である。
世界屈指のこの高速サーキットではトップスピードが重要であり、ハイパワーのGT3マシンが絶対有利である。
だがAコーナー(コカコーラコーナー)から先の高速コーナーの第2セクター、Bコーナー(ダンロップコーナー)から先、テクニカルセクションの第3セクターが決まれば、パワーに劣るマザーシャーシマシンでも充分太刀打ちはできるはず・・・。
だがそれらを実証するべく5月の富士500kmでは、マザーシャーシ勢はことごとく敗退・・・特に我々「シンティアム・アップル・ロータス」はマシントラブルによりわずか4周でレースを終えており、マシンの信頼性アップが最大の課題であったが、勿論長いインターバルを黙って過ごしたわけではない。
それらも実り、第3戦タイではポイントを獲得を惜しくも逃す11位で完走。
まだまだ、多くの問題点はあるものの確実に信頼性を増し、7月末のSUGO公式テストにおいては2日間、午前、午後合計4セッション全てをトップタイムをマークし、確実に速さも増している。
更に今回はこの高速サーキットに合わせ込むべく、ギリギリまで風洞実験を行い新デバイスも開発、満を持して乗り込んだ。  シーズンも中盤・・・次戦のチームの地元、東海地方鈴鹿Pokka1000kmへ向けての勢いをつけたいものだ。
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8月8日(土) プラクティス 晴れ/ドライ

昨日から全く富士山が拝めない富士スピードウェイ。
日本各地で猛暑が続く中、ここ小山町は今日も曇り・・・そのせいか気温も30度を越えず26~27度・・・しかし湿度は高くムシムシ感は相変わらずである。
朝8時50分からのプラクティス(練習走行)は加藤選手からの走り出しで各部チェック。
大きな問題は無いが、想定外の気温の低さに、準備したタイヤはベストではない。
しかしそれら手持ちの“コマ”で合わせ込むべく、直ぐに計測ラップに入る。
2周の暖気を終えペースアップ・・・1分40秒台で6番手、翌周39″592で4番手、更に39″574までタイムを上げ同じく4番手。
持ち込みのバランスは悪くないので、タイヤを変え本格的なセットアップに入ろうかという矢先、ピット前に押し出されたマシンのエンジンが掛からない。
岡山、富士で発生したスターターモーターのトラブルでが再発。
改良を施した部位の、思いがけぬトラブルにピット内に重い空気が漂うが、手を加えていく中でのトライ・アンド・エラーとポジティブに捉え、スペアパーツもあることから修理にとりかかる。
しかしこのトラブルの代償は大きく、残された約1時間以上の走行時間を失い、予選使用予定のもう1種のタイヤ比較、また予選に向けたセットアップができず、また高橋選手は5月の富士500kmに続き、ここでも全く走行できず午後の予選に臨むこととなる。
だが、トラブル前に加藤選手の出した39″574の4番手タイムはプラクティスが終わってみても、トップ65号車(メルセデス)の38″895が唯一の38秒台・・・、以下14位までが39秒台という接戦の中、9番手タイムと決して悪い位置ではない。
勿論、各チームこのプラクティスの捉え方は異なるので、このポジションは大きな意味を持たないが、パワー勝負の富士において、まだプラクティスの“助走段階”でのタイムで、このポジション・・・この先が楽しみでもある。
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8月8日(土) Q1予選 晴れ/ドライ

午後からのQ1予選は加藤選手の走行。
プロドライバーひしめく現在のSUPER GTにおいて、アマチュアドライバーの高橋選手がQ2予選に進出する為の上位13台に加わるのはかなり難しい。
だが、これまでも富士スピードウェイ、そしてSUGOテストでも好タイムをマークし、走り込めば伸びを見せる高橋選手・・・今回も、プラクティスおいて、走行時間を長く予定していて、タイム如何ではQ1予選出走も視野に入れていたのだが、それもかなわず加藤選手のQ1出走となった。
午後2時15分の定刻・・・15分間のQ1予選開始。
気温は午前と殆ど変わらぬ、28度前後・・路温も34、5度、と想定外の低さ。
セットアップを行っていないタイヤによるQ1アタックとなるが、手持ちの僅かなデータでどの程度の合わせこみができているか・・・あとは加藤選手に託すのみ・・・。
開始から5分、ピットで待機し各マシンのタイムをチェック、残り10分となりコースイン。
だがストップ車両があり直ぐに赤旗中断で出鼻をくじかれた。
勿論そんな事でリズムを崩すことはなく、リスタート後の3周目38″985の8番手タイム!!
だがこのタイムでは弱く、更に翌周アタックの38″278はトップタイム!!
しかしこのトップタイムは一瞬で直ぐに55号車(CR-Z)の37″797に抜かれるが、Q2進出をほぼ確定した。
Q1予選は55号車が唯一の37秒台、以下加藤選手の38秒台トップから14位までの13台が38秒台という接戦となった。

8月8日(土) Q2予選 晴れ/ドライ

Q1予選の赤旗中断により8分遅れでスタートしたQ2予選。
Q2は10分間の為、開始早々直ぐにコースイン・・・ところが再びスタータトラブル!
「ギャーーンギャーーン」と、金属音が響き、なかなかスターターのギアがうまく噛み込まない。
この時点ではメカもなす術がない。
幾度か繰り返し、何とか噛み込みエンジン始動。
安堵の空気の中ピットを離れる高橋選手。
この10分は予選だが、高橋選手にとっては重要な練習走行である。
だが計測に入った2周目、最終コーナー一つ前の左コーナー(プリウスコーナー)でスピン!エンストしてしまった。
普通ならどうって事ないが、今回はスターターが・・・  ピットアウト時同様、数回の繰り返しで再始動成功。
その後のアタックが40秒台、40秒台と続き、ベストラップは39″744と健闘したものの13番手・・・12番手とは0.03秒差。
SUGOテストでの走りこみで、かなりマシンには慣れ、それを富士に活かしていけばまだまだタイムは伸びるはずだったが、プラクティスで走りこむ事ができなかったのが悔やまれるところだ。
予選後、直ぐにメカはスターター修理に取り掛かる。
ポジティブに、良いタイミングでのトラブル発生と捉え、現在持ちうる万全の体制で決勝に臨みたい。
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8月9日(日) フリー走行 晴れ/ドライ

昨日、一昨日と、ここ富士スピードウェイに来てからというもの、ズッと拝むことができなかった富士山が今日は焦げ茶の山体を見せている。
青空の所々に白い雲が浮かび、爽やかな夏空で迎えた決勝日・・・。
昨晩、行ったスターター系の修理は完璧で、今朝は全く問題ない。
岡山、富士ではまだシステムとしての完成度に欠けていたが、前戦タイでシステムとしてはほぼ完成したが、あとは駆動ギアの材質、加工といったところで、今後もそうした改良は続けられる。
9時35分から30分間のフリー走行が開始された。
高橋選手は5月富士500km決勝時の数周と、昨日のQ2・・・このマシンでは未だ10数周しか走っていない事もあり、フリー走行では開始と同時にコースイン、極力周回を稼ぐ事に・・・。
決勝レース想定のタイヤ、積載燃料で、計測10周と、ようやくコンスタントに周回を重ねる事ができ、その甲斐あって41~42秒台前半とレースラップとしては申し分ないタイムである。
残り8分でピットイン、高橋選手から加藤選手に交代。
レース想定としては、ドライバーの順序は異なるが、他の作業はレース想定のピットワークシュミレーションが行われる。
残り時間を加藤選手がチェック、1′40″674は10番手・・・とはいえトップ7号車(BMW)40″238からは僅0.4秒差。
17番手までが40秒台。トップから1秒以内が20番手まで・・!!接戦必至
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8月9日(日) 決勝レース 晴れ/ドライ

今シーズン、Rd1岡山、Rd2富士はスタータートラブル、Rd3タイはエアコントラブルと決勝レース直前まで、全く休まる事なくトラブルに見舞われたが、今シーズン初めて余裕を持って決勝レースを迎える事ができた。
朝からの好天は、途中サポートレース時に雲間が広がったものの、おおむね午後も爽やかな夏空となった。
気温は32℃を超え、路面温度も50℃に届こうとしているが、スタート時刻はタイと同じく午後3時と、通常より1時間遅く、気温のピークは過ぎたこれからは徐々に下がっていくと思われる。
スタートは加藤選手、今シーズンも恒例となった地元警察車両先導の元、1周のパレードラップ、その後1周フォーメーションラップでレースはスタート。
混乱の予想される1コーナーをコース中央から進入・・・アウトから14番グリッドの360号車(GT-R)に先行され、オープニングラップは14位。
中位にいた、86号車(AudiR-8)と3号車(GT-R)がBコーナーで接触、共にピットに入り早くも戦線離脱・・・波乱を予感させるも、それ以外大きな混乱はなくレースは2周目に入るが、15番グリッドからの88号車(ランボールギーニ)が、270km/hのトップスピードにモノを言わせ、2号車加藤選手のみならず、前を行く61号車(SUBARU BR-Z)もろとも一気に抜き去って行く。(6~8km/h以上速い!)
だが順位を下げるのはここまで・・・15位のまま3周目に入るストレートで、2週間前のSUGOテストでクラッシュ炎上から完全復活した61号車をパスし14位へ。
同じ周には、真っ赤なフェラーリ、77号車をヘアピンからの立ち上がりで抜き去り13位に上がり、再び88号車を追尾するが、ストレートの差を100Rで詰め、ヘアピンからのパワー差を、Bコーナーから最終コーナーまでにテールtoノーズにまでリカバリーするもストレートで振り出しに・・・。
そんな攻防も7周目、500クラスの乱入により転機が訪れる。
だがそれは88号車への追い風となり、前を行く12位51号車(BMW)と11位25号車(マザーシャーシ86)を抜き去り、この2台が加藤選手の次のライバルへと入れ替わった。
特に直ぐ前の25号車は、FRでエンジンレイアウトこそ異なるものの、同じマザーシャーシ、同じエンジン、負けたくない1台である。
8周目のAコーナーで51号車が11位へ上がり、25号車が12位へと入れ替わり、それを100Rでアウトから抜きに掛かる加藤選手だったが、オーバーラン!!
半身がコースからはみ出すも、大きなロスはなくコースに復帰。
次のストレートでは25号車の横に並びブレーキングでオーバーテイク、初めて25号車の前に出る!!
だが、Bコーナー立ち上がりで、51号車に抜かれた33号車(ポルシェ)がアウトにはらみ、2号車の進路を塞ぐ形に・・・その一瞬を突いて再び25号車が前に出て、そのまま最終パナソニックコーナーで33号車もパスして行く。
こうして中団グループの順位は刻々と入れ替わるが、加藤選手の順位は13位のまま・・。
しばらく33号車の後に着けるが14周目最終パナソニックコーナーでインを開けた33号車を抜き去りコントロールライン上では12位を記録するが、1コーナーブレーキング手前でトップスピードで勝る33号車が前に出、再び最終コーナーで2号車加藤選手が前、1コーナー手前で33号車が前・・・とシーソーゲームが続く。
だが、翌16周目は最終コーナー一つ手前、プリウスコーナーで33号車をパス、ストレートで抜き返されないマージンを作り、それが功を奏し1コーナーに先に飛び込む。
バックモニターで徐々に小さくなる33号車、2号車はようやく12位を確かなモノにする。
4.5秒前方、51号車(BMW)が11位。
ところが、17周辺りから、開幕戦優勝の31号車(プリウス)が44、45秒台へとペースダウン・・・51号車と順位を入れ替える。
また、トラブルの発生か?360号車(GT-R)のピットインや、6位走行中の10号車(GT-R)が1コーナーで集団に巻き込まれスピン!その遅れもあり、9位31号車、そのマイナス2.7秒まで2号車が迫る。
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19周目、プリウスは43秒台へとペースを上げるが、43秒前半の加藤選手は既にマイナス0.2秒についている。
20周目、加藤選手は1コーナーブレーキング、ヘアピンと攻め続けるが果たせず、最終コーナーでようやくインからパス、21周目に入るストレート、バックモニターに映る31号車は徐々に大きくなり、ストレート終盤でモニターから左に消える!!
っが、先に1コーナーに飛び込んだのは2号車加藤選手9位!!
20周を超えるとルーティンピットに入るマシンが現れ、見かけの順位が上がる。
今回からピットレーンの速度が60km/hから50km/h となり、まだるっこしい遅さだ・・・予定外のピット、ドライブスルーペナルティを受ければ“傷口”はより大きくなる事になる。
トップは55号車(CR-Z)、17秒前方 今回300クラスは60~61周がレース周回となるが、加藤選手は42周を予定。
その半分を超え、燃料も減り、軽くなり、加藤選手のペースも41秒台・・・そして40秒台へと上がり始める。
10位以内の、未だピットに入っていないマシンの多くは41~42秒台・・・ピット作業を終え(NEWタイヤとなった)戦列復帰したマシンも多くは41秒台と、加藤選手のハイペースが冴える。
そのハイペースは、クラス最後のルーティンピットインで高橋選手に交代するまで続き、42周を終えピットイン!!
エンジニア渡邊シンタローの計算では、ピットワークが順調に済めば充分入賞圏内に入るはず・・・。
高橋選手に交代、決勝レース前のウォームアップで皮むきを行ったタイヤ4本に交換、給油・・・38秒でピットを離れる。
アウトラップの順位は・・・トップ55号車(CR-Z)以下、65(メルセデス)、11(メルセデス)、51(BMW)、25(マザーシャーシ86)と続き、6位、10号車(GT-R)からマイナス5秒の7位!!予想以上の好位置だ!!
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12秒後方にレース序盤に争った88号車(ランボールギーニ)、9位は更に4秒後方に31号車(プリウス)である。
だが44周、45周共44秒台の高橋選手に対し、41秒台の88号車との差は7秒に迫る。
今朝のフリー走行時のペースに上がらない・・・500、300混戦の中、コース上にはタイヤカスは勿論、至る所にマシンの接触によるデブリ(破片等)が散らばっており、マシンの条件は同じでもコースの条件が変わっているので当然だ。
その後リズムを掴み43、42秒へとペースが上がった高橋選手、47周を終えて5秒リードの7位を守るものの、41秒台の88号車にジワリジワリと詰め寄られる。
50周を過ぎ安定したラップを刻む高橋選手に対し、88号車も同じ42秒台で1.5秒後ろに着けるが、トップスピードで10km近く速いGT3車両の88号車、コーナーではなくストレートで難なくオーバーテイクが可能である。
レース終盤、コースが荒れてくればコーナリングマシンの2号車もラインの自由度は少なくなる。
一度抜かれれば容易に挽回はできない。
残り周回はあと10周・・・8位後退も時間の問題か・・・?
52周を終え、88号車からのリードは0.5秒、9位は31号車から61号車(SUBARU BR-Z)に変わり更に10秒後方を41~42秒台で走行。
我々のチームは、通常レース中マシンを見ているのは、サインエリアのエンジニアの渡邊シンタローとサインマンの二人。
その他のスタッフはピット内のモニター・・・ライブ映像とタイム・・・を見ているだけ。
ライブ映像も、殆どが各クラスのトップグループや、デッドヒートシーンで、淡々と中位を走るマシンは映ることも少ない。
その“タイム表示”では53周のコントロールラインは、まだ2号車が僅かに前とわかった。
っが、その通過と殆ど同時に 無線でシンタローが「あっ!!タイヤバースト!!」と叫ぶ。
一瞬何の事か?どこかのマシンの事か?と思ったが、なんとそれは高橋選手ドライブの2号車に起こった。
モニターのライブ映像もこのアクシデントに切り替わるが、ストレートエンド(ピットレーンエンド辺り)で、既にコース左側に寄せ、グリーンにマシンを止める寸前の映像である。
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タイヤバーストは、高速での突然のタイヤ破裂で、決して珍しいトラブルでもないが、コントロールが乱れ非常に危険を伴うアクシデントである。
だが、今回のバーストでは高橋選手も冷静に対処、殆どまっすぐにマシンを減速、充分な速度でグリーンに出てマシンを止めている。
他のマシンやガードレールへの接触も無い・・・が、右リヤフェンダーはバラバラに吹き飛んでいる。だがタイヤバーストでの損傷としては軽い。
残り7周でのアクシデントは、破片をストレート上に散らばらせ、他のマシン達、特に500クラスのトップ争いには思わぬ障害物となってしまい、多少レース結果を左右してしまったかもしれない・・・が、これもレースアクシデント。
タイヤバーストは、摩耗、過熱等々、色々な原因があるが、ボディのカーボンパーツは非常に鋭く、他のマシンとの接触や、コース上に落ちている破片を踏んでタイヤに亀裂が入ってしまう事も多い。
大きな破片はオフィシャルにより撤去されるが、小さな破片は通常そのままで、周回が増えていけばライン上から無くなっていくが、タイヤカス同様、ライン外に集まってくるので、レース終盤、レコードラインを外す事はリスクを伴うのである。
亀裂が入り、少しずつエアが抜けるスローパンクチャーなら、完全破壊の前にドライバーが気がつきスロー走行でピットに戻って来ることもできるが、場合によっては、こうした突然のバーストに見舞われる。
我々のマシンも、20周・・・ウォームアップを含めても24周程度の磨耗でタイヤバーストが起こる事は考えられない。
タイヤバースト珍しいトラブルではないとは思うが、我々のチームは、これまでのGT参戦15年の間で、KUMHOタイヤ初参戦の2004年に1回だけで、YOKOHAMAタイヤでは初めての経験だ。
おそらくはどこかで破片を踏んでしまったのだろう。
結果はチェッカーは受けられなかったが、53周はトップから8周少ない22位完走扱いとなった。
前戦タイは、接触により・・・そして今回はアクシデントによりポイントを逃す結果となったが、マシンの速さは加藤選手のタイムで実証され、あとはレースにおいてリザルトを確実なものにする事・・・それもあと一歩。
次戦は鈴鹿1000kmの長丁場での耐久性にはまだまだ不安はあるものの、これまでのデータ、ノウハウを結集し、更にアップデートを重ね地元鈴鹿でのポイント初獲得を狙う。
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