モータースポーツ

2015 SUPER GT第7戦:オートポリス

2015シーズン LOTUS EVORA
2015年11月10日

GT_Rd7_・・151101GT_Rd7_2050

10月30日 設営

今シーズンも終盤・・・第7戦は九州オートポリス。
3週間前のタイヤメーカーテストに参加したが、初日にクラッシュ!!現地での修理不能の為、得意なはずのサーキットでのデータを殆ど得ること無く早々に撤収。
満を持して投入した、マザーシャーシのLOTUS EVORA・・・ハードそのものの初期トラブル、不具合に加えて、こうしたヒューマンエラー等、マシンを進化、アップデートする以前に、マシンを普通に作動させる事、修復する事に多くの時間を取られてしまった今シーズンだが、ここオートポリスを含め残り2戦・・・。
GT300クラスはここらでチャンピオンも決まるかも・・・といった上位陣とは全く無縁の我々は低空飛行を続けているが、かつては、数シーズンもチャンピオン争いに加わったチームの意地として、単なる消化レースとする事無く来シーズンを見据えたレースにしたい。
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10月31日(土)プラクティス/晴れ/ドライ

快晴で迎えた、プラクティス。セッション開始の午前9時の気温は約9度、路温13度と冷え込むが、充分想定内・・・これは徐々に上昇して行くだろう。
修復した足回り左後ろ部分・・・それらを確認すべく走り出しは加藤選手。
しかし、それらの心配は杞憂に終わった。
本格タイム計測に入ると、程なくマークした1′45″022はトップタイム。
その後も多少のセット変更を行うが、それらは迷いでは無く、確実に一方向に向かったセット変更・・・3週間前のタイヤメーカーテストの僅かな走行(と言っても30周以上、約1時間)から得られたデーターから解析した持ち込みのセッティングはほぼ大当たり!!
マシンもそれに応える完璧な修復が行われていた。
加藤選手は最終的には43″776の2番手タイムにまで上げる。
これは従来のコースレコード45″335を軽く上回るが、8番手までが同様の好タイム。
一方の高橋選手は、14周の走行で46″089がベスト・・・45秒台前半がボーダーと思われるQ1予選(上位13台がQ2予選に進出)突破にはかなり難しいタイム。
このプラクティス・・・序盤の赤旗による約20分の中断は延長される事無くオンタイムで進行。
もう少し走り込めばタイムアップも可能と思われる高橋選手だが、予定していた走行はできずセッション終了。
それらを埋め合わせるべく臨んだプラクティス後のサーキットサファリだったが、高橋選手はあろうことかサファリ中にスピン!!
赤旗中断となってしまい、走行終了。
だが、その数周回で何かを掴んだ高橋選手、45秒台前半に絶対の自信を持ち、Q1予選出走を志願!!
Q1、Q2予選システムになって初のQ1へ出走する事となった。
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予選 Q1 晴れ/ドライ

高橋選手によるプラクティス、サファリでの走行で、各セクタータイムのいいとこ取りをした仮想ベストタイムは45秒後半だが、実際の走行ではまとまりきれず記録した事は無い。
Q1予選突破予想タイムは45秒台前半・・・果たして・・?
セッション開始・・1分ほどしてピットを離れる高橋選手。
2周の暖気でアタック!!
まずは47″018はトップタイムとなるが、こんなタイムでQ1突破は望むべくもなく、1周のクールダウンの後、再アタック・・・今回セットした、ソフトタイヤが最高のグリップを発揮すると思われるこの周回・・・活かせるか!!
セクター1ベスト!セクター2もベスト!!
そしてLOTUS EVORAが得意とする最も長いセクター3は・・・・ここでもベスト!!
そのタイムは何と44″159!!!  なんと3番手!!!!
並み居るプロドライバーに割って入る堂々たるタイム!!アマチュアドライバーとしては驚異的なタイムと言って良いだろう。
Q1突破は充分とみてアタックは終了。3番手は変わること無くQ1セッション終了。
予想以上の好タイムで、Q1突破を果たし、高橋選手の戻ったピットはまるで優勝したかの歓喜に包まれる。
初めて自力で加藤選手をQ2に送り込む事ができた高橋選手は喜びと自信に溢れている。
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予選 Q2 晴れ/ドライ

第3ドライバー濱口選手の力走によりQ1突破した、今年Rd5鈴鹿Pokka以来、2回目のQ2予選に臨む加藤選手。
今回は2006年以来、長年のパートナーである高橋選手から送られたQ2の切符・・・それに応えるべく、いつにない気合をいれてコースイン。狙うは12回目のポールポジション!!
脅威は、31号車・・ハイブリッドマシン プリウス。プラクティスでもQ1予選でもトップタイム、共に43秒台をマークしている。
ここでも2周の暖気後アタック開始!!
高橋選手同様セクター1ベスト、更にセクター2はクラスベスト!!43秒前半は硬い!!!
抜群に速いセクター3は・・・最終コーナーを縁石イッパイに立ち上がる・・速い!!
何と43″001!!トップタイムだ!!!
31号車がアタックに入っている為、更にトップを確実にすべく連続アタックに入る加藤選手。
セクター1更新するも、セクター2は僅かに更新ならず、セクター3では取り返せず43″431・・・。
だがその直前にアタックを終えた31号車のベストタイムは、43″002と1000分の1秒差!!
僅差とはいえ、加藤選手12回目のポールポジションが確定した。
鈴鹿でのポール獲得でもそうだったが、この時点では加藤選手にポール獲得回数が上積みされただけであるが、今回は高橋選手の大躍進によるものである。
初優勝にしろ、大クラッシュにしろ、何かが起こるここオートポリス・・・今年の何かは?これに留まる事で無いことを決勝レースに期待したい。
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11月1日 決勝日、フリー走行

フリー走行 曇り/ドライ
昨日の予選では、高橋選手のQ1初突破!!それも並み居る強豪ドライバーの中で3番手と予想を遥かに上回った。
そのQ2を“プレゼント”された加藤選手はそれに応える渾身アタックで、何と1000分の1秒差でポールポジションGET!!
バカッ速のハイブリッドマシン31号車(プリウス)には敵わないと思っていただけに、ピット内は優勝かと思われるほどテンションUP!!
一夜明けた決勝日、朝のフリー走行・・・決勝に向けて確認したいのは、燃料満タンでのバランス、そして予選でドンピシャだったソフトタイヤのグリップの落ち込み・・・ライフである。
後者は1ヶ月前のテストで行うべきメニューだったのでイチかバチかであるが、前者のバランス確認はこのセッション最重要と言うべきメニューである。
午前8時半、いつもどおり走行30分前の暖機開始である。
まずは油圧を上げるだけのクランキング(点火せず空回し)・・・そしてイグニッションを入れスターターを回す。
ところが「ギイィ~ン!!ギイィ~ン!!」とギアが噛み合わず空転音のみ。
シーズン序盤に頻発したスタータートラブルである。
その後各部を、見直し改良を加え、またモーターを含めた構成パーツの交換頻度を上げ、シーズン中盤には完全とはいかないが“かなり”改善され、始動に問題は無くなった。
もしそうした症状が出た場合の、チョットしたコツも分かってきて、“とりあえず今シーズン”はこれで乗りきれると思われた。
幾度か繰り返すが、虚しく空転音ばかり・・・今朝はそのコツも通じない・・・どうする!?
とにかくこのままではどうしようもない。
まずはスターターモーターを取り外し、これで可能な構成パーツの交換だ。
これ“だけ”ならセッション途中には走行ができるかもしれない。
マシンに飛びつくメカニック。今シーズン幾度と無く行われたジョブである。
午前9時、セッション開始直前には既にスターターは取外され、モーター、構成パーツの交換にも取り掛かるが、エンジン側(正確にはエンジンとミッションを繋ぐエクステンションケース)に組込まれた中間のギア部品は目視、触診しかできない・・・っが、どうもこちらもよろしくない・・・。
だが、このエンジン側に組み付けられたギア部品を交換するには、エンジンとミッションを分離しなくてはならず、3時間以上はかかる。
どうする?・・・ここから組付ければフリー走行で少しは走れるかもしれないが、再発の可能性も高い。
エンジニア、チーフメカが出した結論は、システム全体の構成パーツを交換する為このセッションは捨てる事!!
次のタイムリミットはウォームアップ開始の12時50分・・・約3時間30分後・・暖機時間を考慮すると、3時間少々といったところだが、これも現場(サーキットのピット)で幾度となく行われた作業であり、時間も読めている・・・充分な時間である。
このセッションのキャンセルは痛いが、いいタイミングでトラブル発生とポジティブに捉えたい。
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決勝レース 曇りのち雨/ドライ

ミッションとエンジンの分離には1時間も掛からず、内部パーツの加工交換、作動チェック等も含め、12時20分組付け完了・・・ほぼ予定通りである。
暖機始動を始める。
油圧を上げるために空回し・・・スターター快調。
イグニッションONにし始動・・・スターター快調・・・「ボフッ!!」とエンジン始動。
一同安堵・・・だがなんか排気音がおかしい・・・冷間始動では多少こんな事もあり、いつもすぐに快調なエキゾーストノートとなるが、今回は違う。
明らかにおかしい。
V8エンジンがV7、V6になっているようだ。  この予想外の展開にピット内は大騒ぎ!!
とはならない・・・冷静に電気配線、燃料ライン等の点検、接続されたPCでの各部チェックを始めると同時にマザーシャーシー共通「GTA V8」エンジンの担当エンジニアに連絡。
淡々と各部チェックの結果、1気筒が爆発していない・・・ただ原因が分からない時は、時間読めない、焦る・・・タイムリミット(ウォームアップ開始時刻)が迫る。
同時進行で点検作業は進むが、大勢でやれる場所ではない。
インダクションBOXを外しインテークの点検・・・異常無し。
プラグ交換・・・症状変わらず・・・  イグニッションコイル交換・・・「ボワッ!!」快調なエキゾーストノートが轟く。
ウォームアップ開始4分前・・・外したパーツの組み付け、タイヤ装着、ドライバー乗車。
慌ただしく、走行準備に入る。
ウォームアップ走行開始・・隣のマシンがピットを離れて行く。
ジャッキダウン、メカがピット前に押し出す。
スターターON「ギーッ!」空回り!!
もう一度・・・・
「ボワッ!!」始動!!
残り5分・・計測2周くらいは行けるだろう。
始動にまだ若干の不安はあるが、“コツ”が通用するだけ安心だ。
計測1周目1′48″201・・バランスは悪くないようだ。
2周目はなんと46″000!!2番手以降の47秒台と比べると飛ばし過ぎ(笑)であるが、朝のセッションを走れなかった我々にとっては、単なるウォームアップではない。
満タンバランスは悪くない、あとはタイヤライフだけだが、これは本番でスタートドライバーの加藤選手にお任せである。
メカの奮闘で“無事”ポールポジションにマシンをセットする事ができ、あとはスタートを待つばかり。
そこに(我々にとっては)朗報が・・・セカンドポジションの31号車(プリウス)がトラブルでピットスタートとなった。
ストレートスピードで勝るハイブリッドマシン31号車には、1コーナーまでに先行される可能性が高かった。
その脅威が消え、よほどの事がない限りホールショットは加藤選手が奪うだろうし、今回の速さ、抜きどころの少ないこのサーキットであれば、トップをキープする事は可能だろう。
気温15度、路温18度・・・14:00定刻にパレードラップ開始、加藤選手から「一発で(エンジン)掛かったよ。」と、うれしい無線。
その後のフォーメーションラップ1周でレースはスタート。
セカンドポジションに脅かされる事なく1コーナーに先頭で飛び込む2号車加藤選手。
オープニングラップ、2位55号車(CR-Z)から3秒のリード、4周目4秒、5周目5秒・・・更に6秒遅れて3位0号車(メルセデス)が4位以下をフタする形・・早くも逃げ切り体制に・・・。
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7周辺りまでは45~47秒台と飛ばしたが、以降タイヤの温存と500クラスの絡みもあり48~50秒台にペースダウンするも、2位55号車との差は12周時点で約10秒と余裕のリード。
3位以下は、ペースの落ちた0号車のフタが開き、21号車(アウディ)、61号車(スバルBRZ)、3号車(GT-R)と顔ぶれが変わったが、2号車加藤選手とラップタイムに大きな差は無い。
だがソフトタイヤは厳しく「タイヤキツイナ~・・・」と愚痴無線が入り、タイムも50~51秒台へと落ちる。
だが15周を過ぎると、コースの一部(第1ヘアピン周辺)で少し雨との情報・・・ラップタイムに影響が出るほどの降りではないが、「キツクなった」タイヤには良かったようで、再び49~50秒でコンスタントに周回を重ねる。
20周目に5位を走行していた、3号車(GT-R)が、クラス最初のルーティンピットに入る。
ペースの上げられない集団から早めに離脱して、下位でペースを上げる作戦だろう。
20周を過ぎればルーティンピットの始まる周回数だが、コース一部の小雨は24~25周にやや範囲が広がったようで、この雨が今後どうなるか?
それも含めて各チーム、タイミングを見計らっているようだ。
25周で2位55号車からプラス16秒、3位は再び0号車だが55号車のすぐ後についており、4位以下も団子状態。
ところが27周目、これまでフタをしてくれていた55号車も、0号車にコジ開けられ3位へと後退。
加藤選手の独走が続いているかに見えるが、30周を過ぎ、0号車からは12秒のリードと僅かづつ詰められている。
しかし最大の脅威は先にピットインを済ませた3号車で、ピットアウト直後21周目87秒だった差は、30周には74秒となり、見かけの順位(16位)こそ大きく離れているが48~49秒台のハイペースで追い上げている。
32周辺りでやや雨が強くなるが、まだドライタイヤで充分なコースコンディション、雨によるタイムの落ち込みもなく、雨雲レーダーでも、この後それほど雨が強くなる事はないと思われ、その判断は各チーム同様で、ルーティンピットが始まり、各チーム、タイヤ交換する、しない、入り混じりながらも、全車ドライタイヤで送り出す。
我々は41~42周を辺りを予定していたが、20~25周辺り50~51秒台に落ち込んだ時、もう少し早めのピットインを考えていた。
だが燃料が減り、軽くなったマシンで、3号車と互角の49秒台で飛ばす加藤選手・・・当初の予定通り42周まで引っ張る事にした。
42周を終え、クラス最後のピットインとなった加藤選手。
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直前の周回で3号車は73秒後方・・・ピットロードでのロスタイム約36秒、タイヤ交換約16秒、給油約16秒、合計68秒、順調に作業が進めば4~5秒のリードでトップはキープできると思われるが、タイヤ交換後(冷えたタイヤで)のアウトラップ・・高橋選手がどこまで踏ん張れるか・・!?。
給油、タイヤ交換、ウィンドウフィルム剥がし・・・一連の作業は順調に終わりジャッキダウン!!
スターターON!!
「バフォー!!」理想的な始動!!猛然とピットを離れる高橋選手・・・と言っても50km/h。3号車はまだ来ない。
ピットロードを抜け、1コーナーへ向けフル加速に入ると最終コーナーから3号車が立ち上がってくる。計算通り5~6秒差か?
第1セクターで4.3秒差、第2セクターでは1.6秒差にまで詰められ、アウトラップの43周目こそ0.2秒差で首位をキープするが、トップスピードで勝るGT-Rにストレート中盤で軽くぶち抜かれてしまった。
その後アウトラップから2~3周はペースが上がらず、加藤選手の貯めた貯金を使い切ってしまう高橋選手・・・は過去の話・・・今回は全く違う!!
翌周51秒台、翌々周には50秒台で3号車から3.8秒差で食らいつく。
その後は周回遅れや、500マシンとの混戦の中、3号車をも凌ぐタイムで追走、47周目で1秒差にまで接近。
ワンチャンスでトップを狙える位置をキープ。
3位の10号車(GT-R)から10秒のリードだが、この10号車は48~49秒台でトップ2台に迫る。
レースも終盤、一進一退で追撃の手綱を緩めない高橋選手。
49周を終え、50周目に入ったストレート、残り周回は恐らく11周・・・ミス、トラブルさえなければ2011年5月、富士の2位表彰台以来の表彰台は充分な位置である。ミス、トラブルさえなければ・・・
ところがここで2号車高橋選手に襲いかかったのはミスではなくアクシデント!!
何とストレート中盤で左リヤタイヤがバースト!!
8月の富士で襲われたアクシデント再び!!である。
今回も高橋選手は冷静に対処、全くコントロールを失う事無く1コーナー、アウト側グリーンにマシンを止める。
コース終盤ならともかく、1コーナーでは戻れない。リタイヤである(リザルトは規定周回に達したので完走扱い。)
後半スティントに使用したタイヤは、周回数的にバーストする程のタイヤではない。
おそらくは、富士同様コース上のマシンの破片を踏んだと思われる・・・全くの不運である。
「運も実力の内」と言われるとすると、まだ実力が無かったのか・・・・。
次は最終戦モテギだが、9月下旬のテスト走行ではウェットコンディションの中、好タイムをマークしている高橋選手。
2日間のテストでドライコンディションの2日目、高橋選手は不参加の為ドライコンディションは未知数だが、今回の走りを見るからには、昨年までのGT3マシンと異なり2012年までの名車「紫電」の時の走りを彷彿とさせる、キレた走りが蘇っている。
こりゃ最終戦も多いに期待していいだろう。
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