モータースポーツ

2008年ル・マン初参戦・フランス紀行(車検・テストデイ)

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いよいよ・・・車検・公式テスト・・・



5月31日(土) 車検

 今日は車検。6月1日の公式テスト走行の為の物だが、ここで通らなくてはお話しにならない。
 プロトマシン(レース専用車両)とは言え、クラージュオレカ社のメーカー車両。
 オレカ社のスタッフも同行、フロントタイヤハウスのルーバーのネットを修正する事と、ブレーキランプが作動しなかった程度で、修正後は殆ど問題無く車検はパス。
 ドライバーも、装備品、書類等の審査を受け、こちらも問題無くパス。
 本日の公式スケジュールはこれで終わりだが、明日からがいよいよレース用の公道を閉鎖しての走行。
 それに備え、ピット内ではマシンは勿論、各機材等の準備も本格的になってきました。

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昨日の滑走路試走の汚れを落とす。
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レースマシンとて、基本は清掃。外装のチェックとして重要です。
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明日のテスト走行に備え、サインエリア等の設営も仕上げに入る。

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ピット上には時計も設置。給油タンクの「13」はクラージュからの借り物で、昨年のゼッケンNo。
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“アキレス腱”と思われるミッション。抜いたオイルを見る限り順調。と言っても昨日の走行ではあまり参考にならないが・・・。
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本日の車検は11時50分から・・。それまでに昨日の走行の後チェックを行う。

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ドライバーの書類審査も問題無く終了。
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車検待ちの光景。彼は全マシンの前で、写真を撮ってもらっているようだ。日本のレースでは見られない文化の違い。
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車検を受ける24号車。多少手直しが必要だが、大きな問題無く車検通過。

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ピット内に設置されたモニター。車検のマシンが戻る前に雨が降って来た。
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しかもかなりの雨!
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一過性だが、とても外に出られる状態ではないほどの雨。

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右のテントはタイヤウォーマー。ガスボンベを燃料として・・・
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このバーナーで熱風を送り、テント内のタイヤを暖める。
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そのタイヤを管理担当するのが、私、竹内(奥)です。

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他、カーズ東海からのスタッフは高橋(中):池田(右)とこの写真を撮ってる尾関の4人です。
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雨で濡れた作業服をトレーラーの荷台に干してある。ハンガーが足りない!
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マシンが戻り再び整備が始まる。

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これはストップボードの作成。
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これは、サインガード側からピットの場所を示す小型のボード。
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これは給油口の蓋。こちらに来てからカッティングシートでカラーリング。こうした事は事前準備が間に合わず現地にて・・・。

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ここはエンジニアのデスクワークの場。マシンから読み込んだデーターを解析し、次のセッティングを決める。
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と言っても、まだまともにデーターが無く、明日のテスト走行は、重要な場となる。基本的にはエンジンとシャーシーは別担当。
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車検合格証と言うわけではないが、クラス表示となるステッカー。

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これは前日完了しているはずのGT2マシンの車検。ウイング部の再検査みたい。
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右側の方がスタッフ唯一の仏語バリバリの内藤さん。この方がいないと全く話が通じない。イカの事を「アシジュポ~ン」等とはけっして言わない。

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検査の終わった給油タンクにはゼッケン「24」が貼られる。
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給油とエア抜きが一本になったこのタイプ。GTでは77号車が使ってる。F1の物とは全く別物。給油タンクへの補給は、地下タンクから汲み上げ、給油量はこのメーターで判るのだが・・・。
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その地下タンク、年に一度?しか使用しない為、大量の水が溜まっており、それらを抜き取る作業が大変。

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汲み上げられ、抜き取った水。半端な量では無い。
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抜いては捨て、抜いては捨てを繰り返し、タンク内を洗浄。
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この作業だけで、50リットル近いガソリンが無駄になった。

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明日のテスト走行に備え、メンテナンスが続く。午後9時、10時でも明るいので、夜遅いとは感じられない。
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午後11時過ぎ、ホテルの部屋から見ると、北の方で花火が上がってる。
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どういうイベントで打ち上げられているかは判らないが、日本に比べるとチョッと地味。

担当:竹内




6月1日(日) テストデイ

 今日はテストデイ。
 ル・マン24時間レースが開催される、サルトサーキットは全長13.6kmと長い。(日本で最長は鈴鹿で約6km)
 もっともその殆ど、地図の見た目では約4分の3は公道。
 残り4分の1が、常設のブガッティサーキットで、ピット、パドック、コントロールタワー、グランドスタンド等サーキット施設を利用する為である。
 またそのブガッティサーキットへのアクセスロードも公道とは隔離されている。
 ですから、サルトサーキットと言うのはこのル・マン24時間レースでのみ“出現”し使用されるサーキットである。(ウィンブルドンテニスのセンターコートと同じかな・・)
 従って、通常ここを(少なくともレーシングスピードで・・)走行する事はできず、セッティングはこのテストデイで行う事になります。
 勿論、他のサーキットでの走行時間が多ければ、それなりに多くのデーターを集め、それらの組み合わせでかなりの方向性を作り出す事はできるが、初参戦の我々は国内テストの時間も殆ど取れていないし、季節も違うし、公道も初体験である。
 ドライバーはと言うと、、ミスタール・マンこと寺田選手は言うに及ばずだが、加藤選手も数年振りとは言え、ル・マンを幾度か経験しており心配無用。
 だが高橋選手は初走行。
 今日のテストデイでなるべく多く走って慣れなくてはならない。(グランツーリスモでは、かなり走りこんでいるが・・・)

 
 日曜のテストってことで町中は交通規制。
 いつもと同じ道では、サーキットに行くことも出来ず、かなり道を選んで行かなければならない。
 朝7時にはサーキット入りし、本番同様耐火スーツに着替え、無線を付けると本番同様の雰囲気が出てくる。
 ピットも観客席も多少人が入ってきて、レースの実感も沸いてきます。
 走行は9時~13時と、14時~18時の各4時間づつ2セッション。 
 1日としてのテスト時間としては充分。と言うか、1日公道を閉鎖したんなら目一杯使おうって事かな?
 マシントラブル、クラッシュ等、何か発生したらこの貴重な1日はふいになってしまう。
 そこまで行かなくても、夜間の内に何か手直し、次の日の走行に備えるとかはできない。
 
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朝7時。未明の雨は止んで、ピット裏でこんな感じ。耐火ウェアは本番用。
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レイン?スリック?どちらも準備。
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エア圧チェックは最重要。

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空はドンヨリ・・・。いつ降りだすやら。
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SUPER GTでは使用禁止の、タイヤウォーマーも稼動。F1の様な電気式では無く、右下のバーナーで、テント内のタイヤを温める温風式。
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ピット前で給油。消火器担当はカーズ東海スタッフ、池田。

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走行開始30分前。ウォームUP中。エンジンチェックはM-TECのメカ。
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サインエリアで雑談中?のドライバー3人とチーフエンジニアの渡辺シンタロー。ビミョーな路面にテストメニューの変更打合せ?
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ピット前のストレートはこんな感じ。これならドライ。スリックタイヤなんだが・・・。テストデイだが、結構観客も入ってきている。

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走行前に、スイッチ類の再確認する高橋選手。
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その高橋選手のヘルメット。“オープンカー”の為、シールドの傷、汚れ対策に、捨てバイザーを装着。スペアシールドも何枚か用意。
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シンプルに黒一色の寺田選手のヘルメット。

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出走直前。最終チェック。超高速に加え、長距離サーキット。念には念を・・・。
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カーボンブレーキはある程度の発熱が重要。気温に合せ、冷却ダクトをガムテープで調整。
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この3つの穴は、ドライバー識別ランプ。

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ひとつ隔てたピットは昨年優勝のアウディチーム。
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9時ジャスト。コースオープン。



 ところが、昨夜の雨で、朝からウエット路面・・。
 雨が降らずドライコンディションになってくれる事を祈るのだが・・・空はどんより鉛色。
 このル・マン24時間レースは、初走行の高橋選手は勿論、2004年以来、4年振りの加藤選手も10周の義務周回があります。
 たった10周と言っても1周が約4分弱はかかるので、乗車、各部チェック、慣熟走行も含めると1人辺り、1時間は費やされます。
 ですが、これをこなさないとレースには出場できないので、セッティングをどうこう以前に、確実に周回する事が第一です。 
 一番走者は加藤選手。
 義務周回数の10周をこなす為の走行とは言え、ピットインを繰り返し少しづつセッティングを詰めて行きます。
 マシン的には悪くなく、攻めたい所ですが、ややウェットコンディションという事もあり攻められません。
 ここはコースが長い分、コース全周の路面状況というか?気象状況が違い、土砂降り地点もあれば晴れ間も望む・・良くわからないコンデシょンです。
 ピット前と、一番遠いミュルサンヌコーナー辺りでは、全く違うコンデションという事も珍しくないようです。
 加藤選手から高橋選手に変り同じく義務周回数クリアの10周を目標と、道を覚える事が今回の課題です。
 その間2.3度の赤旗中断・・雨で滑りやすい上、ロードコースの低ミュー路なのでスリップが多いみたいです。
 あとはベテランの寺田選手が午前中の走行で最後になり2周程でチェッカー。 
 

 午前の走行が終わり、色々なと言うかル・マンならでは課題が出てきました。
 公道は、皆さんご承知の様に、水はけを良くする為カマボコ状ですので、車高を少し高めにしなくてはいけません。
 また予想通りグリップが悪い上に、轍(わだち)があり、これがマシンの直進性を損ない、300km/h以上のユノディエールのストレートでは、ドライバーはかなりハンドリングに集中しなくてはなりません。
 レインタイヤは、通常ドライ路面になると、急速に磨耗が進み、一気に“壊れて”しまうので、水溜りを選んで走ったりしますが、このル・マン用?ウェットタイヤは意外にハードで、それらを気にする必要が無い。と言うと大袈裟であり、通常のレインよりグリップは悪いが、一部ドライとなった様なウェット路面でもいけるようです。
 コースが長く、路面コンディションに大きな“時差”ができるル・マンならではでしょう。
 こうした特徴を持ったタイヤをどういう時に、どうチョイスするかも重要となるでしょう。
 それから一番大きく影響したのが、パワー不足!と言うのも鈴鹿でテストした時に比べ明らかにパワーダウン。
 理由は今年から導入された、ガソリンはエタノールが10%混入されており、無論それらを想定してプログラムを修正はしてあったのですが・・・これは予想以上。
 ウェットコンディションと言う事も手伝ってか?下のクラスP2クラスのマシンをストレートでは引き離せない場面もあります。
 もっとも24号車は4000ccと、P1クラスとしては排気量が小さく(P1クラスは自然吸気ガソリンは6000ccまで・・)元々ここらは厳しいと思ってますが・・。

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まずはチェックをかね、加藤選手が1周しピットイン。
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ピットに押込む際には、マシンの下に台車を入れ、素早く方向転換する。SUPER GT等でも使っているチームはある。
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義務周回をこなしつつ、セッティングの為ピットインを繰り返す。

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我々のピット前を押し戻されて行くのは東海大学の22号車。同じシャーシーである。
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同じ日本からのエントリー。こちらでのメンテナンスも同じガレージでやっていた仲。頑張って貰いたい。でも苦戦中?
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ドライバー迎えるこのボードには「Fuel Reset(燃料消費計のリセット)」と「Radio Check(無線機の作動確認)」が書かれる。耐久レースの生命線。

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サインエリアからもこうして自ピットの位置を表示してサポート。
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ピットに戻ったマシンのブレーキ温度を測定する私、竹内。
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同じく測定したエア圧をミシュランのエンジニアに伝える高橋(左)/td>

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約1時間半の走行で、義務周回とセッティングの方向性を決め、加藤選手から高橋選手に交代。
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しかしこの頃からピット前でも雨脚が強くなり・・・。
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高橋選手、2Dの世界(グランツーリスモ)では幾度と無く走ったル・マンだが、3D(現実)での初走行はウェット!

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全長13Kmのル・マン、サルテサーキットでは、ここピット付近と、遠い地点では天候にかなりの差がある。
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メカが高橋選手からコメントをもらう。向こうはまだドライブしていない寺田選手だが、勿論義務周回10周の必要は無い。

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赤旗中断中。スタンドの屋根が有効に利用でき、ピット“前”で待機中の各マシン。
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その屋根が無いところでは、ピットの中で待機。
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水の汚れが空気の流れを描く。

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久々のル・マン、サルテサーキットを走る加藤選手。
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初のル・マンは高橋選手。怖さから楽しさに変わって行く。
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今日はあまり走れなかった寺田選手。29回目のル・マン。


 
 何はともあれ、ル・マンの軽い洗礼を受け午後セッションに備える。
 エキゾーストの取付け修正や、スプリングの交換等々、色々手直しが多く、午後2時からの走行開始には間に合わないが、この間雨は止み、路面も急速にドライコンディションへと移行していく。
 実はこの時が、この日唯一のドライコンディションで、この間にアタックに出た、プジョー、アウディは軒並み3分30秒を切り、8号車プジョーは昨年のポールタイムを4秒も短縮する3分22秒台をマーク。2番手9号車プジョー、3番手1号車アウディは26秒と続く。
 しかしこの後クラッシュ車両回収の為、約1時間の赤旗中断。
 その間に雨が降り出し、再開後のスタートは加藤選手がウエットタイヤで出て行き数周・・危なくて走ってもリスクが高いって事で一時中断。
 確かに凄い雨が多く、昨日もコース施設内の車用地下トンネルが冠水の為通行止めに成る程でした。約1m位溜まっていた感じです。
 
 昼からも何度か赤旗が出ましたが、その中、雨が小降りになったところで、加藤選手がウエットタイヤのままピットアウト。
 計測3周目、ピット前を通過し、2コーナー辺りで単独でコースアウト!
 コースの至る所でコンディションが異なり、名手加藤選手をもってしても、それらに翻弄されてしまった。
 壁(ガードレール)に接触した模様。幸い加藤選手に怪我は無く、自走は出来るが大事を取って一旦ピットイン。
 マシンチェック後走行不能と判断して、テスト走行は終了。
 マシンは左後ろが接触、その後左前も接触。

 この日のタイムは3分50秒、クラス16番手(21台中)と、完全なドライコンディションでの走行ができず、フラストレーションの溜まるテスト走行なってしまいましたが、実は何度か赤旗直前の区間タイムでは、かなり良いタイムをマークしていた時もあり、マシンのセッティングとしては良い方向に仕上がって来ていますので、11・12日の予選ではもっと上に行けると思われます。
 
 本当なら、もっと高橋選手が走行しコースに慣れてもらいたかった・・・と加藤選手。
 (いきなりのレインコンディションで)怖かったけど、だんだん面白くなってきた・・と高橋選手。

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2回目のセッションに向け、スプリングセット変更。
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インターネットで雨雲を監視。午後も雨か・・・?
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2回目セッション開始時は何とかドライ。

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この日トップタイムをマークしたプジョーチーム。その1台である、この7号車は赤旗の原因となる大クラッシュを演じる事となった。
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しかしドライコンディションは開始早々の僅かな時間のみで、その後は雨脚が酷くなったり・・・
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青空がのぞいたりと、天気に振り回された。

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それらに足をすくわれ、加藤選手がクラッシュ。幸い怪我は無し。この路面と、影からも不順な天候が伺われる。
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かなり丈夫なフロントアンダーパネルが破損。その他、左前後、足回り、エキゾーストも破損。フラストレーションたっぷりで本日は終了。

担当:竹内

DATE:2008/06/06