2008年ル・マン初参戦・フランス紀行(公開車検・予選)
ル・マン24時間
2008年06月12日
公開車検・予選1日目・予選2日目
6月10日(火) 公開車検
ル・マン24時間レースが、ヨーロッパにおけるモータースポーツの確固たる地位を得ていると最も感じたのがこの公開車検!
車検そのものは11日前の5月31日、ブガッティサーキットで行われ、そのまま翌日のテストデイを走り、ずっとサーキットのピットでメンテナンスを進めている。
ところがこの公開車検、そのから8km程(直線距離でも約5km)離れた、ル・マン市内のほぼ中心
サンジェリオン大聖堂前のジャコバン広場で行われるのである。
マシンを運ぶにも、一般車両も走る公道を自走する訳にも行かないので、何らかの方法で運ばなくてはならない。
何故こんな面倒な事をするのか?
それはこの公開車検、ル・マン24時間レースを街を挙げて盛り上げる、正に“お祭り”レースウィークの始まりなのである。
この車検、各チームマシンを持ち込む時間が決まっていて約10分間隔でマシンが持ち込まれてくるが、55台のマシンの為、約9~10時間かかる。
3分の1は前日の9日午後から始まり、残り3分の2は翌10日の朝から行われる。
このジャコバン広場の周りは多くの観客が集まり、次から次へと現れるマシンとドライバーにシャッターを切り、サインを求める。
フェンス越しとは言え、サインに応えるドライバー。勿論レーシングスーツ姿。
その前を、揃いのユニフォーム姿のチームクルーに押されたマシンが車検場に向かう。
皆一様に“俺たちのマシンを見てくれ”と言わんばかりである。
この場所に来るまでの苦労と、まだ明日からの苦労も、この時ばかりは微塵も見せない。
この伝統あるレースはマシン、ドライバー、チームクルー全てが主役である事を感じさせてくれるし、古くからこのレースを愛し、育てたル・マンに集まった人々はその事をよく知っている。
我々24号車の車検は、2日目の10日(火)、優勝候補のプジョーチームが終えたあと、全マシンの“トリ”を務め、無事終了。
午前11時ホテル前で集合。今日の公開車検は初体験の晴舞台かも・・・。 |
“磨き込まれた”マシンはピット前で積車に積み込まれる。持込予定時間は16時50分。ただ今15時。 |
車検と言っても、マシンが先日の車検と同じ状態であれば、セレモニー的なイベント。。 |
複数台エントリーのチームはトレーラーで輸送するが、多くはこうして1台積みで運ぶ。 |
ピット上のボードは、主催者が全チームに用意している。いよいよレースウィークに突入。 |
ここがサンジェリオン大聖堂。ここの前の広場(駐車場)で公開車検が行われる。 |
マシンの通路には多くのファンが集まる。 |
磨き込まれたマシン。 |
これだけの人数が必要なほど重いマシンではないが・・・。 |
この公開車検に全クルーが集まったのには訳がある。 |
すぐ前の車検はプジョー。 |
これを機会にあっちこっちと覗き込む。 |
テストデイでは驚速のトップタイム。優勝はまずこれかアウディだろう。 |
勿論、車検は問題無し。 |
車検を終えると広い場所に運ばれ・・・ |
この横断幕の前で・・・。 |
ヘルメットの位置も決め・・。 |
恒例のドライバー、全チームクルー、マシンの集合写真。これは全チーム撮影される。
スタイルは色々みたい。 |
サインに応える加藤選手。 |
ル・マンでは無名の高橋選手も・・・紫電の写真にサインを求めるファンもいたとか・・。 |
インタビューに応える寺田選手が大型スクリーンに映し出される。 |
広場には、全チームのマシンが何時頃登場するかが掲示されている。ファンサービスもなかなか・・。 |
24号車はプジョーチームのあと、最後となった。 |
最後なので、色々と記念写真を・・撮影しているのは高橋選手。 |
担当:竹内
6月11日(水) 予選1日目
昨日公開車検の興奮冷めやらず、今日から予選である。
予選である以上、このタイムでスターティンググリッドが決まるのですが、24時間もの長丁場レースともなるとポールポジションによる名誉を獲得する以外には、大した意味はありません。
ですが、充分な走行が、特にドライコンディションを全くと言っていいほど走行していない、我々にとってはこの予選は決勝セッティングの為の重要なセッションとなる。(上位チーム以外は殆どそうだと思う。)
レースウィークとなってから、公道は閉鎖され、24時間レースの予選は夜からとなるが、日中は他のサポートレースの走行が行われている。
夜からの予選と言っても19時から2時間。
この時間帯まだ充分明るいです。
1時間のインターバルを経て22時からの2時間はナイトセッション。
各ドライバーはこのナイトセッションで、3周以上は走らなくてはなりません。
この予選は、明日2日目も同じタイムスケジュールで行われます。
テストデイからセッティングの方向性としては良いようで、更に煮詰めて行くのですが、「何としてもタイムを出そう!」と言う事ではなく、決勝レースをいかに走り易くするか?と言った感じです。
その為にはある程度のアタックは当然必要で、加藤選手がそれを行います。
幾周かのセット確認、調整の後アタックした加藤選手のこの日のベストタイムは3分37秒560。
セミウェットのテストデイからは格段のタイムアップですが、まだ詰める事はできそうです。
また昨日からカメラマンの益田さんが、来てくれましたので素晴らしい写真もご覧いただきたいと思います。
P1クラスのトップは、テストデイと変わらずプジョー8号車。
タイムはテストデイの驚速タイム3分22秒を更に縮める3分18秒5!!
僚友9号車も18秒。大破した7号車も車両変更が認められ(ル・マンはテストデイからの車両変更は認められないが、今回は修復不能な大破の為OK。)それで20秒台である。
続く4、5、6番手のアウディがそれぞれ24、24、27秒台である事からすると、いかにこのタイムが驚異的か!が伺えますが、アウディは本気でアタックというより、決勝に向けたロング走行に終始していたようで、3連覇に照準を合わせているのでしょう。
間違い無く、優勝争いはこのプジョー、アウディで展開されると思います。
このアウディ、プジョーの6台は全てディーゼルエンジン車で、今のル・マンは確実にディーゼル優位な状態です。
だからと言っても、どこもがこのディーゼルエンジンを入手できるわけではなく、現在この6台のみ。
そんな中、24号車と同様、ガソリンエンジンのトップはクラス7番手の16号車が28秒台、そして日本からNEWマシンでエントリーの童夢11号車が29秒台の8番手です。
超高速での夜間走行を初体験の高橋選手も、十勝24時間や鈴鹿1000kmで夜間走行は経験しているものの、ここのそれは全くの異次元!それはそれは恐ろしい様です。
何しろここの平均速度は、GT300の最高速ぐらいなのです。
300km/h以上ではブレーキングポイントが、全く判らなくなってしまうようです。
ヘッドライトの重要性(光軸、光量等)、またインパネのライト類も明るすぎて眩しいとか、通常のレースとは異なる問題点も出てきました。
明日2日目の予選までは、忙しくなりそうです。
担当:竹内
6月12日(木) 予選2日目
“タイムアタック”という意味での予選は昨日で終わりです。
今日は完全に決勝に向けたセッティング、並びにドライビングに集中した“練習日”となりました。
この長いコースでは、国内サーキットの様に、ピットインを繰り返し、セット変更をして“タイム”を出す為のマシン作りをしていたら、あっという間に時間が過ぎてしまいます。
またここで数秒のタイムアップが決勝レースでは、大したアドバンテージとはなりません。
それより、寺田選手にはマシンに慣れてもらい、高橋選手はマシンに加え、コースに慣れてもらい、共にアベレージタイムを上げて貰うほうが決勝レースには効果的です。
マシンもほぼ決勝仕様に変更。
例えばブレーキも、制動力の強いスプリント用から、24時間もつものに変えたので、当然制動力が落ちるので、ドライバーはこれに慣れてもらう。
また、加藤選手も、昨日のタイムアタックモードの走行から、省エネ運転へ切り替え。
今まで2速で走っていた所を、3速にし回転を落とすなど、燃費向上を目的とした走法に変えています。
そんな中、セットも煮詰まり本日のベストは加藤選手の3分40秒。
高橋選手も4分を切り、3分52秒のベスト。
ですが、まだタイム的にはまったく安定しておりません。
初のル・マンで、遅いマシンと早いマシンでは共に30秒近い差があり、それらが前にいたり、後から迫ってきた場合の対処は、直ぐに慣れるものではないでしょう。
特に夜間走行では一気にタイムが落ち込み、寺田選手が夜間になっても大きなタイム差ができないのとは対照的です。
これは正に経験の差と言えるでしょう。
明日の決勝レース、とにかくミス無く、壊さず走りきれば、結果は自然に付いてきます。
完全な夜間、約7時間少々は、慣れた寺田選手、加藤選手に任せ、その前後、薄暮(日の入り前後)時と、薄明(日の出前後)時は高橋選手が走るようです。
その方がリスクが少ない。というより、もっとコースに慣れないと、ここでの夜間レースは危険だろうと思われます。
今日までのデーターでは、一度の満タンで走れるのは恐らく12LAP。
加藤さんはペースを上げてもらい11LAP。
これを1スティントとして、1人のドライバーが2スティントづつ連続で走り、大きなトラブル無く、雨も無いとすれば・・・詳細は秘密・・340周以上は行けるのではと皮算用。
これならシングルリザルトとなりそうですね。
などと言うのはどこのチームも考える事。
去年も一昨年も、完走率は約6割のこのレース。(P1クラスの完走は、昨年は15台中9台、一昨年は11台中なんと4台!)
4割の仲間に入らぬよう、明日の決勝に向けたメンテナンスは徹底的なものになりそうです。
担当:竹内