モータースポーツ

2007年SUPER GT 第3戦GT300紫電レース速報!

ニュース
2007年05月05日

SUPER GT第3戦は、5月3・4日静岡県、富士スピードウェイで行われた。

SANY0211.jpg

 1戦2戦共、2位、初連続表彰台と、初物づくしの07年シーズン。鈴鹿と並んで、年2回開催の高速サーキット富士。トップスピードが辛い紫電にとっては正念場である。


不得意と言われるが、昨年はこの5月の第3戦でポールポジション、決勝は4位と、噂と実力は一致するとは限らないかも・・・。
 しかし今年は前記のリザルトにより、昨年より既にハンディウェイト、+50kgでこのレースをむかえる事になり、このハンディウェイトは今日の練習走行でも大きく響いている。

練習走行、午前はやや湿った路面。
天気予報では、雨はここまで・・。

ウェイトは+50kg。
昨年の同レースは0kgその差は大きかった。

 ゴールデンウィーク真っ最中の5月2日は練習走行。午前の走行は、曇り空ながら、昨日からの雨で、所々ウェットパッチが残るコンディション。
序盤はレインタイヤでの走行となるが、ライン上は乾き始め、レイン、インターミディ、スリックと、各マシン各様の混走となり、各車のタイムも大きくばらつき、セッティング作業もままならない。
 マシンコンディションは、戸田レーシングのNEWヴァージョンエンジンとあいまって順調。最高速も僅かにUP。やっと人並み・・か?
 だがタイム的には加藤選手が1′43″401と昨年の予選タイムを下回る。昨今の進歩からすると、いまひとつかと思われたが、これでクラス3番手。全体に伸び悩みか?別の思惑か・・。しかしトップ62号車が42″924と、このコンマ5秒差は大きい。

練習走行でレインタイヤの走行は僅か。
すぐにライン上はドライに・・。

NEWヴァージョンエンジンは、
トップスピードを僅かに引き上げた。

 3日の予選は朝から快晴。関東圏の富士ではGT人気も高く、サーキットには多くの観客が訪れた。
 昨日の練習走行からも、今回はかなりの激戦が予想され、午前予選で上位10台を選抜し、1台ずつのアタックによりグリッドが決まるスーパーラップ(以下SL)への進出は100分の1秒が命取りになりかねない。
 500kmの長丁場レースの為、スターティンググリッドはさほど影響が無いと思われるが、今のGTレースで、500kmはチーム(マシン)によっては1回のピットストップで行えるスプリントの延長に過ぎない。グリッド位置が有利であるに越した事は無い。
 10時20分予選開始。アタッカー加藤選手は、いつも通りモニターでターゲットタイムをチェック。残り12分でゆっくりコースに出て行き、計測2周目、1′42″954!4番手タイム。SL進出は硬い所だろう。
トップは88号車の42″515だが、なんとそこから1秒以内に15台が、SL進出枠はコンマ76秒内に10台と、予想通りの激戦となった。
 とっ、ここで、加藤選手から「メーターの表示がおかしい」との連絡。そのままピットに戻ってきた。特に走行そのものに支障は無いようだが、表示がすべて消えてしまい、回転数やシフトインジケーター(何速に入っているかを表示)、シフトランプ(シフトUPの適正回転を青、赤で表示する結構重要なランプ)等ドライビングをサポートするランプ類も全て表示しない。
 続く混走セッションまでの短時間の点検では、修復はできず、そのままの状態で高橋選手は混走セッションでアタック。44″653のベストを出し、基準タイムクリア、決勝レースにも期待をだかせる。

予選日(と言っても祝日)にも関わらず。
多くの観客が詰め掛ける富士SW。

4番手で激戦のSL進出を決める。
 

 午後2回目予選、SLまでの時間でメーター関連の配線類を点検するがこれといった原因が特定できず、エンジンそのものや、走行に支障は無さそう(恐らく・・)なので、そのまま出走。SLセッティングの確認。
 むかえたSL、7番手出走(10位からスタート)の加藤選手は第1セクターで、その時点でのトップタイム(62号車)を上回ったものの、ウェイトハンディの効く後半で伸びず、42″350は暫定4位。このまま、残り3台が好タイムで前に行かれ(たら)、7番グリッドかと思われたが、最後に走った88号車のトップタイムだけが、割り込んだだけで、他2台は下位に沈み、SLの結果は5位(5番グリッド)となった。
 ところが、SL終了後の再車検で3台の最低地上高違反が判明、グリッドは降格となった。その内2台は2位、4位(101号車)だった為、2号車は88・33号車に続き3番グリッドへとジャンプUP。後ろは43・26号車である。
 ランキング争いのトップ、101号車が8番グリッドに下がったのは全くもってラッキー!しかもウェイト0kgで1ポイント追加となり、2号車にとっては“良い風”が吹いているようだ。

昨年の最終戦デビューの予選用アイテム。
ホイールカバー。富士専用である。

SLは5番手を得るが、その後うれしい2つ繰上り。
3位グリッドとなる。


 4日決勝は快晴。いつも通り満タン走行だが、いつもに比べ、綿密な燃費確認を行う。
 この500kmレースは300クラスの場合、マシン、タイヤ選択、ドライビングによっては、1ピットで行ける、ギリギリの距離であり、“それなり”のアベレージタイムを出せれば、1ピットが絶対有利であろうと、今回は1ストップ作戦で行くことにしたからである。
 但し、タイヤと、燃料をもたせるエコドライブに徹し、“それなり”のタイムを刻むのはドライバーの技量が問われる。だからといって2ピット作戦で“勝ち”に行くにもまた別の技量が必要ではあるが・・・。
 高橋選手のスキルUPに伴う、次なるステップと言う事でもある。
 午後2時からの決勝。気温は26度と高めだが、ストレートの追い風が、ドライバー以外の体感温度をやや下げている。
 決勝は110周。300クラスは102周辺りがゴールとなる。1ストップ作戦を取るには、両ドライバーともほぼ50%づつの走行が必須で、これまでの様に、加藤選手がレギュレーションの3分の2を走る事はできない。高橋選手も50周近くを走行する事になる。
 スタートは加藤選手。前の2台、88・33号車は2ピット作戦であろうから、それらのペースに巻き込まれず、後ろの101、43号車等、1ピット予定のマシンにリードを築けるタイムを、淡々と刻み続けてもらいたい。
 どこのマシンが1ピットか?は、ラップタイムと、1回目のピットインで推定するが、それらも重要だ。

朝のフリー走行。
燃費重視のドライビングデーターを得る。

決勝レース直前。
快晴に恵まれた観客席はかなり埋まっている。

 レースはフォーメションラップ中、1台の500マシンがトラブル。コース上で止まった為、もう1周追加された。これでレースは1周減算されるので、燃費にはありがたい。
スタート直後から43、26号車に抜かれ5位に・・・。43号車は1ピットであろうはずだが、かなりのハイペースである。
 序盤は88号が逃げ、リードを広げるが、その後43、33、2号車に26号車も加わりダンゴ状態である。
 単独と言うにはまだ早いが3位をキープし始めた15周辺りで、加藤選手から「ガライヤ(43号車)何秒で走ってる!」と聞いてくる。「44秒後半!」。1秒も早い43号車ガライヤに「きついな~」とほぼギブアップ宣言。6秒後方からは、7位の101号車もヒタヒタと迫り来る。
 18周頃には62号車が迫り、翌周パスされ、加藤選手「62号車に抜かれた~」とガックリ。「(2ピットの)62はしようがないです~」と慰め、自分たちのペースでレースをすすめる。

グリッド上でのツーショット。
今回は両ドライバーほぼ半々づつの走行予定。
 

スタートの1コーナーは無難に・・。
その後43・26号車に先行される。26は2ピットだからしようがないが、
1ピットの43号車は脅威のラップでレースを進める。

 が、その後101号車も追いついて来て、24~25周には101号車とのサイドbyサイド、テールtoノーズの接戦を押さえきる。先は長い為、101号車がとりあえず諦めたのか・・・?
30周前後から、“2ピット”チームのピットインが始まり、“1ピット”チームの順位変動等、レースが動く。
そんな中、33周目101号車が他車に当てられスピン!62号車ピットイン。4位に上がった7号車もピットイン。43周目62号車がストップ!
 46周辺りで“2ピット”チームクルーは殆ど1回目の仕事を終え、この時点で1位は43号車、22秒遅れて我々の2号車、スピンを喫した101号車が更に20秒以上離れ、43号車は別格として、101号車を引き離すという、当初の目的は(プロセスはともかく)達成された。
 10周毎にメーターに表示される、消費燃料をチェックしているが、これまた順調。“1ピット”必勝作戦としての舞台は出来上がってきた。

今シーズンは常に101号車と絡むレース展開。
加藤選手は楽しいようだが・・・。

交換用タイヤは
自然のタイヤウォーマーを利用し準備する。

 ところが50周(500クラスの53周目)に入った時、この作戦を狂わせるアクシデントが起こった!ネッツコーナーで500と300マシンの接触により火災が発生!赤旗によりレース中断となったのである。
 これにより、1位43号車との差が埋まるのだが、後の101号車に対して築いた25秒近いマージンも無くなってしまった。我々とこの2台は1ピット作戦だが、まだピット作業は済ませていない。
24分の後、セーフティーカーの先導によりレース再開。その1周後、丁度レースの50%が消化した時点で43・101号車が同時ピットイン。
 我々もそうしても良かったが、満タン給油で残り50~51周を走り切れるか?どうか?未知数の為、せめて、もう1周でも走り、高橋選手の周回数を減らしたかったのである。
 レース中でのクイックチャージでの給油は、レース前“ジックリ”給油するより、実給油量が僅かに少ない場合がある。それ程ギリギリの燃費計算なのである。あと1周でガス欠に見舞われ、順位を落としたチームは、昨年の最終戦を例に出すまでも無く、過去にいくらでもある。
 53周を終えピットイン。給油とタイヤ交換。ジャッキ降下と同時に最高のスタートダッシュで高橋選手がコースに復帰。
 88・13・43号車に次ぐ4番手。3~4秒うしろには、またも101号車、石浦選手が迫っており、57、58周と因縁めいたテールtoノーズとなる。
 ピットから「先が長いので、無理にブロックして、タイヤを傷めないで~!」とペースを保つ様指示。

昨年から幾度か練習した、赤旗時の対応。
実践は今回が初めて。

ほぼ燃料を使い切った53周を終え、ピットイン。
給油時間が長い。

 60周を過ぎ、26号車や、46、47号車の2ピットマシンも加わるが、先行させ8位をキープ。88・13・43・26・101・46・47・そして2号車である。
 この中から2ピット目に入る事で、順位が入れ替わるが、タイム差から我々の後ろに下がるのは、26・46・47号車の3台で、それは82周目に5位に上がった事で確定した。
 その後は13号車と101号車の競合い以外、上位の変動は無く、淡々とラップを刻む。
 っと、ここで作戦会議。今シーズンは6戦までの内、高ポイントの4戦しか累積されない。要するに0ポイントレースが2回あってもそれはカウント除外となるのだ。ならばこのレースでのポイントは無視し、ウェイトを降ろせる順位(6位以下)まで落とし、少しでも軽くしようと言う、このSUPER GTならではの順当な作戦である。
 しかし次戦や、この先6戦までに、否応無しに0ポイントレースに遭遇する可能性はある。そうなった時に、今回落とすポイントが、悔やまれるかもしれない。昨年も1ポイントでチャンピオンを逃している。
 このまま行く事が決定。プライベーターらしく目の前のレースに全力をつくそうと・・。
 90周を過ぎた辺りで、緊急給油の体制を整えるが、それらは杞憂に終わり101周、5位でフィニッシュとなった。ウェイトの増減は0kgである。

猛然とスタートする高橋選手。
残り47~8周のロングラン。
 

結果こそ5位とやや寂しいリザルトだが、ランキング2位はキープ。1ピット作戦敢行はチームに、ソフト、ハード共、新たなデーターをもたらした。

レースの激しさを物語る、車両保管解除後の紫電。