SUPER GT 2007SERIES 第2戦 岡山国際サーキット
2007シーズン 紫電
2007年05月17日
昨シーズン、モテギ、最終戦富士と並んでノーポイントとなり、ここ岡山は得意とは言えないサーキットのひとつとなったが、これは“紫電”にとって経験不足からの事。 この一年でマシンもドライバーも大きくヴァージョンUP。果してどれほどの進歩を見せるか・・? |
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4月5日(木)設営
開幕鈴鹿を2位と好調な滑り出しの2007年シーズン。舞台は岡山へ・・。紫電デビューの昨年度のここでの成績は11位と、シーズン3回のノーポイントレースのひとつがここ岡山。
あの時は、前戦鈴鹿の101号車と同様、パワーステアリングのトラブルで、ズルズルと順位を下げてしまった。
またスターターモーターのトラブルで、フリー走行日、丸一日をフイにし、充分なセッティングと走り込みができなかった事、また開発初期段階の戸田エンジンも充分なパワーを得ていなかった等、不本意な“調理”で出された“料理”は美味しくはなかった。
結果11位、モテギ、最終戦富士と並んでノーポイントとなり、ここ岡山は得意とは言えないサーキットのひとつとなったが、これは“紫電”にとって経験不足からの事。この一年でマシンもドライバーも大きくヴァージョンUP。果してどれほどの進歩を見せるか・・?
4月6日(金)フリー走行 晴れ
例年木曜日は、ここ岡山はテスト走行日となるが、今年は金曜のフリー走行が最初の走行となる。
昨日に続き、おおむね快晴。このレースウィーク、雨もありそうだが、どこで来るのやら・・・。
気温は低く10度以下。チームブルゾンは大体この2戦までと、最終2戦から必要である。
この1年のデーターから、エンジニア、シンタローは岡山に最適なセッティングをチョイス。この基本セッティングにより、わりと容易に高タイムをマーク。
午前の走行では加藤選手の1’31”750で3番手!高橋選手も昨年の自己ベストを軽く1秒ほど更新。
午後は更にセッティングを絞り込み、走行時間の最終、300専有セッション加藤選手はNEWタイヤでのアタックは31”505と本日のクラストップをマーク。
明日の予選に向け、充分な手応えが感じられた。
4月7日(土)予選/スーパーラップ 午前 晴れのち雨 午後 晴れ
7日予選日。早朝雨がパラついたものの曇り空の下、午前1回目予選が行われた。最初の20分間の300専有走行では加藤選手が8分ほど他チームの動きを見、じっくり“タメ”てコースイン。この時点でトップ、88号車は既に30″749。その後101、26号車が31秒台へ。
スーパーラップ(以下「SL」:1回目予選上位10台による1台づつのタイムアタック。これによりスターティンググリッドを確定する)への進出は、31秒台前半は必須であろう。日が射さない路面は、温度は低く、2周の暖気で充分タイヤを暖めアタック開始。
各セクターでベストタイムをマークし31″089!この時点で2番手タイム。
その後13、46号車のZ勢や62号車VEMAC等有力チームが好タイムをマークし、5番手まで下がったが、SL進出を果たす。
この後500との混走中、32″470と自己ベストを更に塗り替えた高橋選手。
これは決勝レースでも充分上位争い可能なタイムである。このセッション終盤では小雨が降り始め、「WET宣言」が出された。
午後の降水確率は高く、SLは雨となる可能性もあるので、高橋選手をピットインさせ、SL用にレインタイヤを“皮むき”し、準備を・・・。
通常この予選は、マーキングタイヤしか使用できないが、WET宣言が出た場合タイヤは自由となる。
このチャンスを活かした作業だ。・・・がっ、それを行った時のドライバーは高橋選手、ピットイン、タイヤ交換(ドライ→レインへ)。
ところが、ゆっくりスタートしなくてはならないのに、通常のスタート練習と勘違いしたか?白煙を上げ、猛然とスタートしてしまった。おいしい“レア”になるはずのレインタイヤは一気に“ヘビーウェルダン”になってしまった。
シンタロー、ヨコハマのエンジニア等の口がOの字になったのは言うまでもない。高橋選手の“アマ”が出てしまった一幕でした。
抜き所の少ない、ここ岡山国際サーキットではスターティンググリッドは重要。
極力高位置を得る為、急遽ギアレシオを始め、一部セッティングを変更。またそれらの確認の為、午後予選は、加藤選手のみの走行。
いつもならSLは、まっさらのNEWタイヤで出走するが、今日は気温が低く、SLのウォームアップラン2周だけでは不十分と考え、SL用NEWタイヤ予選終了間際に皮むき、熱を入れる等、いつになく万全の体制を整えた。
それらの策が実るか?否か?SLは6番手スタート。
幸い?雨は落ちてこず、ここまでは1回目予選順通りで、番狂わせは無い。
3周目、アタックに入った加藤選手、各コーナーでスライドする姿がモニターに写し出される中、各セクターでベストタイムをマーク!30″401と順当にトップたった。
しかし2番手とは0.2秒と僅差。残る4台のアタックからトップを堅守する事は無理だろうと思われた。
アタックを終えた加藤選手も「(13号車の影山選手)正美君にいかれたぁ~っ!」っと、ギブアップ宣言。
ところがその後アタックした4台は、ことごとくタイムUPできず下位に沈み、終わってみれば大きくジャンプアップ!今シーズン初、紫電通産4回目のポールポジションを得る事となった。
4月8日(日)決勝 くもりのち晴れ
予選午後から予想された雨は、SL終了後しばらくしてから降り始め、それは決勝日未明まで続いたようだ。
早朝のフリー走行は、コース一部にウェットパッチを残し、ウェット宣言の出される中開始された。
しかしマシンは全てドライタイヤで出走。2号車は満タンでのセッティング確認は勿論だが、ピットワークの練習に重点を置き、都合3回、実戦想定で行い、決勝レースに備えた。
天気は薄日が差す事もあるが、今ひとつ。グリッド上では霧雨の様な物を感じるが、用意したウェットタイヤを選択するチームは無い。
レースは定刻午後2時、加藤選手によりスタートが切られた。早くも1コーナーでは500クラスの混乱がありイエローフラッグ振られ、追い越し禁止に・・・。
ポールポジションを活かしトップで第1コーナーへ・・。その後もグリッド通り、101・62・43・13・88号車が続く。
2周目には31″955のファステストをマークし(恐らく)1ポイントGET。2位101号車に早くも2秒弱のリード。
その後更に引離そうとしたが、101号車MRーSの、F3若手ペアの大嶋選手は、加藤選手と変わらぬペースで追走してくる。チョッと誤算。
500クラスが追いついてきて、それらが絡んでくると、少しずつ101号車との間隔が広がるが、ほぼこの2台で3位以下を引離すレース展開となった。
加藤選手は序盤、いつも無線で、色々しゃべってくる・・・。
加藤「(マシン)アンダーぎみだな~」
エンジニアのシンタロー「アンダーにセットしましたから~」
加藤「気温上がんねーな~。」とか
またミラー、バックモニターに映らない後方集団の様子を知りたがっている。
特に今回は「正美(敬称略)はどの辺り?」と、13号車のベテラン影山選手の動向を気にしている。
33~34秒台で周回が刻まれるそんな中、レースが動いたのは、まず15周目、3位の62号車が13号車と接触、1コーナーでコースアウト。復帰するがリヤバンパー破損により、オレンジボールが出され後退。
続いて17周目43号車もアトウッドコーナーでコースアウト。
20周目には88号車が最終コーナーでコースアウト、リタイヤとなる等、なんと上位グループが次々と脱落。
更に21周目には、62号車への接触のペナルティで13号車がドライブスルーとこれまた後退。
これを伝える無線・・。
シンタロー「13号車ドライブスルーペナルティです~」
加藤「りょ~か~~い~♪(了解)」と妙に明るい返事。
よほどプレッシャーだったのか?
22周を終え、101号車からは+2.5秒のリード、3位となった26号車とは、更に+13秒となり、後方の脅威は101号車“のみ”となった。(かに思われた。)
37周辺りから300クラスのピットインが始まると再びレースが動く。
40周目101号車がピットイン。順調に作業を終え、コースに復帰。
モニター上の“見かけ”の順位が交錯し6位となるが、タイヤに熱の入った42周目には32秒台の快走を見せる。
反面、この頃加藤選手は34秒中盤での走行。このタイムをキープできるか?どうか?が重要だが・・・予定より1周早く49周目ピットイン。
作業は順調に行われ、高橋選手をトップのままコースに送り出す。
っが、そのアウトラップ背後に101号車、石浦選手が迫る。
開幕鈴鹿の逆のパターンである。違いはタイヤの温まりで、101号車は既に充分。アウトラップ1周を何とか押さえた高橋選手だったが、1コーナーアウト側より101号車に先行を許してしまい、鈴鹿のリベンジをされてしまった。
しかしその後は、この101号車を駆る、F3界のホープと、殆ど変わる事の無い34秒台のタイムで追走。10周以上に渡って3秒ほどの遅れを維持する。
途中500マシンが迫るタイミングにより、リードを広げられる場面もあるが、無線で「あきらめんよ~」と自分に気合を入れ、モチベーションを下げる事無く走行を続ける高橋選手に、終盤、思わぬ伏兵が現れる。
中盤より3位を走る26号車ポルシェが、70周辺りから33秒台の猛追で6秒後方に迫っているのである。
300クラスのチェッカーは76~77周と思われるので、このタイムで迫られては捕まってしまう可能性もある。
しかし、無線で26号車の接近を知らされ、再度“ムチ”を入れ冷静にペースを上げる。
ファイナルラップ。26号車には2.5秒まで迫られたが、その猛追もここまで。不運にもガス欠症状が出たようで、結局9秒以上の差がつきチェッカー。
開幕戦と同じく2位と、初の2戦連続表彰台となった。
予選1位 : 決勝2位
獲得ポイント チームポイント18点 (15点+3点:トップ同一周回ポイント)累計36点 ランキング 2位
ドライバーポイント19点(15点+3点:予選1位+1点:決勝ベストラップ)累計35点 ランキング 2位
鈴鹿、岡山と2戦連続の2位表彰台、これ自体が初であるが、なんと言っても内容が良い。
昨年序盤は高橋選手がスタート、後半を加藤選手が担当するというレース展開であった。
これは500も混在し、レースが揉まれて来た後半に、高橋選手がアウトラップで飛込むより、序盤300群の中でレースを進めた方が、リスクが少ない事から取られた展開であったが、初優勝のオートポリスから、加藤選手のスタートで逃切り、そこでできた貯金を高橋選手が“食い潰し”ポジションを“キープ”する。と言う、一見進歩しているようだが、まだまだ消極的な“高橋選手的”には“不本意”なレースの組み立てである。
今シーズンもこの展開は変わらないが、(よほどグリッドが下位に沈まない限り・・)鈴鹿と、ここ岡山の2戦は、全く前述の様な、“不本意”な展開とはなっていない。
今回は結果的には鈴鹿のリベンジを喰らった形だが、101号車に対し、加藤選手が作ったマージンは、先にピットインした101号車と、2号車がピットインするまでの9周の間に、全て無くなっていた。
高橋選手がピットアウトした時点で101号車の僅かに前であったが、タイヤの出来上がった101号車を抑えきる事は無理であり、これで順位が入れ替わっても高橋選手の責任とはいえない。
加藤選手のピットイン時で、既にトップは奪われていたも同然なのである。
重要なのはその後で、101号車と変わらぬタイムで追走した事。
終盤26号車が迫って来てからも、振り切ろうとタイムを上げられた事。
“前”と“後”を見ながらのレース運び、ペース配分、これらをこの“表彰台圏内”で展開した事。
これは単に1周のベストタイムを出す事以上に、重要な資質であり、今後のレース戦略の幅を広げる事となるだろう。
そうした意味では、高橋選手のGT参戦以来、最も大きな進歩を見た1戦と言える。(少なくとも私は・・・)
でも、いつまでも“オーナー(高橋選手)ハンディ”があるチームと思っていただいた方が、油断していただけてやり易いかも・・・。