モータースポーツ

2012:SUPER GT第5戦 鈴鹿サーキット

2012シーズン 紫電
2012年09月04日

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2年振りのトリオ。


SUPER GT第5戦 鈴鹿サーキット

伝統の鈴鹿1000kmがSGTに加わったのが紫電デビューの2006年。
鈴鹿という世界屈指のテクニカルサーキットを得意とするEVA紫電は、更に好燃費を武器にこの長距離レースで2007年の優勝を始め常に上位争いを繰り広げていた。
しかし社会情勢等の事情から2009年、10年は700Km、加えて11年は東日本大震災の影響もあり500Kmへと短縮された。
更の義務ピットイン回数や、方法(ピットイン時にはドライバー交代をしなくてはならない)等の特別ルールもでき、EVA紫電のキャラクターを活かす事が難しくなっていた。
だが今年は4年振りに1000Km復活。
速いが燃料消費の多いFIAGTマシンに対し、有利なレース展開ができる・・・と思いきや、FIAGTマシン勢も速さと好燃費を両立するマシン、給油時間分のマージンを十分稼げるバカっ速マシンとキャラクターが分かってきて、長距離レースにおいてもEVA紫電始めJAFGT優位とは言えない展開になってきている。
1000kmという距離は通常レースの3倍以上、しかも真夏の炎天下である。
高橋、加藤両ドライバーの体力消耗を考え、第3ドライバーとして、2010年の紫電ドライバー濱口 弘選手を起用。
10年の紫電によるフル参戦以来、SGT戦には参戦していないものの、GTアジア等のレースにスポット参戦したり、フォーミュラー等でサーキット走行は継続しており、レース勘は全く衰えておらず強力な助っ人となるだろう。

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この週末雨の心配は無さそうだ・・・。ズラッとドライタイヤ。
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“助ドラ”は2年振りの濱口選手。
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サイレンサーは新型。最近ちょっと音大きかったかな・・?
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お隣も“痛車”初音ミク号BMW、4号車、0号車。
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夏のレースの命綱。クールスーツ用クーラーBOX。内部には氷と水。これをポンプでクールスーツに循環。
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このクールスーツをレーシングスーツの下に着る。冷水が青いチューブを循環。今回から腕の部分も冷やせる新型に・・・。

8月18日(土) 練習走行 / 晴れ

レース距離が長く、ドライバーが3人になっても土曜日のスケジュールに大きな違いはない。
昨年までは、決勝レースに、日没以降の夜間走行があり、それに伴い夜間走行練習時間があったが、今年はスタート時間を繰り上げ日没までにレース終了となるので今日の練習走行は午前の120分間だけとなる。
その間に、タイヤの選定、マシンの合せ込み、タイヤ摩耗、燃費等決勝レースに必要なデーター収集、そして3名のドライバーの練習走行となると決して十分な時間とは言えない。
7月中旬に、2日間、述べ8時間のテスト走行を行なったが、殆どウェットコンディションの為、年始に行われた西コースの全面路面改修のデーターは殆ど無く、これらも重要なメニューとなる。
練習走行はいつも通り、加藤選手によるタイヤテスト、合せ込みを行い、高橋、濱口選手がそれを元に走り込み、また予選に備えNEWによるタイムアタック練習。
7月テストのウェットでは非常にスリッピーだった西コースも、ドライではグリップは高く、パワーアップした2012年仕様とも相まって各チームタイムアップ。
昨年のトップタイムを上回る4秒台、3秒台にも入って行く中、66号車(アストンマーチン)は、早くも2秒台に入れてくるが、これにはどこも追いつけない。
加藤選手は02′04″267秒までタイムアップ。
マシンのセッティング、バランスも確認でき、その後高橋選手も06″711と自己ベスト。
続く濱口選手も07秒台、06秒台へとタイムアップ、更にタイムアップを目指し、セクター1、2とベストタイムをマークし攻め込む中、スプーン進入でスピン!
マシンは殆どダメージも無く、簡単なチェックで再び濱口選手コースイン、再アタックは05″458!!
先のスピン時のセクター1・2は遅くてこのタイム。
高橋、濱口両ドライバー共、走りこむ程に早くなり、予選では更なるタイムアップが期待できる。

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ドクターヘリも到着。活躍の場がない事を祈る。
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ピット上の看板は偶然か?主催者の配慮か?「HondaCars」
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加藤選手、順調にタイムアップ。
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高橋選手も走る毎にタイムUP
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2年振りの紫電をドライブする濱口選手。7秒台、6秒台ときてもうすぐ5秒台か・・・?
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スプーンでコースアウト。ピットでチェック後の走行で5秒台に入れる。
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エキゾーストエンド部に亀裂が・・・溶接で補修。
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スポットクーラーで一時の休憩。ややお疲れの松下チーフ
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EVA5人娘も久々に勢揃い。

8月18日(土) ノックアウト予選 / 晴れ

今回の予選はノックアウト予選。
1回目予選Q1で上位16台がQ2に進出。
Q2の上位10台がポールポジションをトップとした上位10グリッドを争う。
出走にあたっては同じドライバーが連続で出走はできない。
Q1は15分、Q2・Q3は10分の為、実質ピットインは不可能、一発勝負である。
Q1は濱口選手。
クリアラップを作る為、他のマシンが殆どピットアウト後コースイン。
NEWタイヤを慣らし、2周目からアタック、2′05″502 この時点で8番手。
そのままもう1周アタック、セクター1でいきなり0.4秒短縮。
4秒台に入れられるか?
だがセクター2でやや遅れ、セクター3で再び短縮の一進一退。
コントロールライン通過!!05″115のベスト更新!アタックは終了。
だが順位はこの時点で12番手。
アタック中の他のマシンが次々とチェッカーを受けアタック終え、2号車の順位を下げて行く。
15番手まで下がったものの、ここでとどまりQ1通過。
濱口選手、大役を果たしQ2加藤選手へと繋ぐ。
500クラスのQ1から10分のインターバルでQ2スタート。
1周のウォームアップからアタック、2′04″281と午前プラクティスを上回らないが、この時点で5番手。
無論このタイムで、この位置が守れるほどこのQ2は甘くない。
1周クールダウンの後再アタック開始。
直後にチェッカーが出され、最後の計測ラップ。
第1セクター、2セクターベスト!!渾身アタック。
他のマシンも続々とチェッカーを受け、順位は既に10番手にまで押し出されている。
EVA紫電不得意な裏ストレートを含む第3セクターもベスト!
コントロールライン通過!!03″655!!!
5番手に浮上!Q1進出決定。
10台で争われるQ3は高橋選手。
だがプロ、若手がひしめくこの上位で、ジェントルマンドライバーの高橋選手が順位を上げるのは厳しい。
この舞台で臆する事なく自己ベスト更新を目指し、明日の決勝でのレースラップの向上に結び付けたい。
そうした目的に向けた高橋選手、各セクターで自己ベストを更新、05″509!!
グリッドこそ10番手タイムにとどまるが、走り込むほどにまだまだタイムアップする高橋選手。
決勝のレースラップに期待できる。
その後、予選トップタイムの66号車(アストンマーチン)が燃料タンク容量の車両規定違反がありタイム抹消。
結果9番グリッドに繰り上がったが、我々にとっても、最後尾となった66号車にとってもグリッド順位は大きな意味を持たない1000kmという長丁場のレース、何が起こるか分からない。

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Q1突破を目指し気合が入る濱口選手。
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上位16台が進出できるQ2へ、ギリギリだがQ1突破!!
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Q2の上位10台が最終Q1に進出できる。加藤選手コースイン。
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加藤選手の渾身アタックは3秒台をマークするも・・・。
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5番手でQ2突破・・・Q1へ・・・。
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激戦の300クラス。トップは2秒台の66号車。これには誰も追いつけない。
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プロドラひしめくQ3で高橋選手10番手、自己ベストは更新。最終トップタイムの66号車が車両規定違反でタイム抹消となり9番グリッドに繰り上がる。
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2年振りのSGTピットウォークで、ファンに応える濱口選手。

■予選後のコメント
■高橋「Q2でカトチャン10位のままで良かったのに・・・5位になっちゃったんでまたやりにくくなっちゃったんだ。(加藤・・笑)やっぱクールスーツが壊れて(パイプの破損で水漏れ)ケツがベタベタになったんがタイム上がらんかった原因だね。(加藤・・笑)・・・・ま~どっちみち予選はこんなもんだ。・・・明日は頑張ってちゃんと走りますから・・・。」
■加藤「予選は終えたんですけど・・明日に向けて確認したいタイヤも、・・戦略的にも固まってきたんで・・・え~明日は良いレースがしたいなと思ってます。予選は・・特にここ1000kmは長くなってるんで、何があるか分からないですし、そんなに重要視してなかったんで・・・それよりコンスタントラップを刻めるようなクルマのセットアップだとか、タイヤのチョイスだとか、そこら辺の方が重要ですから・・・明日に向けて、非常に今日は良い日だったんじゃないかなと思っとります。」
■濱口「Q1突破という使命を・・・結果だけみればとりあえず達成できたんでいいとこなんですが・・・久し振りのドライで・・、紫電は・・2年振りに走らせたんで(7月中旬テスト時はウェットコンディション)最初戸惑うところも多く、(タイム的に)まとめ上げられなかったのは残念ですが、(Q1突破という)結果良ければすべて良しと言うことで・・・」
■渡邊エンジニア「特にないですが・・・地味な感じでしたね。
やはりJAF(GT)勢は・・概ね苦戦してますね。
FIAGT勢がやっぱ早い。
で~今回の鈴鹿は路面の舗装をし直してたりして・・新しい路面コンディションの中走る事になったんですけど・・グリッピが高くてタイムが出るだろうと想定してきたんですけど・・案の定この暑いさなかでもコースレコードが出るくらいみんな早くて・・・っでウチの紫電もこの気温で走る分には、確かにいままででも一番早いタイムとかが出てるのですけど・・・まだ選択したタイヤとのマッチングがまだ取りきれてなかったりして、例年よりは苦戦気味・・・な感じです。
予選自体は・・・ま~可もなく不可もなく(妥当なところ)・・んなところだと思います。
高橋選手も、濱口選手も自己ベストで・・・以前7番手だった事がありますが、その時よりも濱口選手は早いんですが、それ以上に周りが早い感じですね。
明日・・天気が分からないですが簡単には行かないと思う中なんとか頑張ります。」

8月19日(日) フリー走行 / くもり /ウェット

今日の午前中が高かった降水確率だが、フリー走行開始時点で雨はないものの、未明の雨がコースを濡らしておりウェット宣言が出されている。
各マシン、レインタイヤ(深溝)、インターミディタイヤ(浅溝)、また決勝レースに向けた皮むきの為スリックタイヤと入り乱れてのコースインとなった。
フルタンクの決勝仕様にインターミディでコースインしたEVA紫電、加藤選手だが、時折西コースで雨がパラつくコンディションではタイム的には参考にならない。
各ドライバー2~3周の計測でマシンのコンディションを確認、むしろピットワークシュミレーションに重点をおいたフリー走行となった。
今回のレース、173周だが300クラスはおそらく160~161周。
満タンで走れるラップ数はEVA紫電の場合36~37周、「~」となるのはレース中の実際の燃費から、周回が前後するからである。
単純な計算だと(36周?4回)+17周=161周・・・常に給油時に満タンにして4回ピットイン、5スティントとなる。
好燃費のJAFGTマシン勢はこの4回ピット、5スティントとなり、パワーのあるFIAGTマシン勢は1回増える5回ピット、6スティントと予想される。
しかしFIAGTマシンも、最近は若干タイムを落として燃費を稼ぎ、こうした給油時間を削って上位に食い込む作戦を取るマシンもあり、この長丁場では、最終ピットインを終えるまで順位は分からない。
我々としては、短いピットロスを活かし、ドライバー、メカニック、“何事も無く”全てノーミスでレースができれば最終的に高順位に残るという、地味なレース展開を進める事にした。

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決勝日朝、未明の雨でウェットコンディション。
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朝30分のフリー走行のスケジュールを打ち合わせる、ドライバーとエンジニア。
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決勝は間違いなくドライで行けそうなので、ピットワークシミュレーションに重点を置く。

8月19日(日) 決勝レース / 晴れ

レースはスタートは12時30分
ゴール時刻の予想は、午後6時半(レースが遅れた場合でも日没の6時37分がチェッカー)
この為夜間走行が無くなり、1000kmレース独特のライトを点灯し闇夜を疾走するマシン群の姿を見られなくなったのはファンの方々には残念だが、ヘッドライトやサイン照明等のこのレースの為だけの特別な装備がなくなりチームの負担が減ったのはありがたい。
しかし暗くなったコースに戸惑い、ペースが落ちるマシン・・・と言うよりドライバーもいれば、反対に下がった気温、路温を味方にして、暗くなってもペースの落ちないドライバーもいるなど、レース終盤の追い上げ、番狂わせの要因が減ったとも言える。
スタート時間が早くなった為、正午前からコース上ではスターティングセレモニーが始まる。
スターティングドライバーは開幕戦岡山以来の高橋選手。
先の各スティント周回の端数(結局15周予定)を一番最初のショートスティントとして持ってきた。
これにより2スティント目を担当する加藤選手は、300クラスのトップグループと“違う場所”で、バトルすること無く、マイペースでラップする事ができる。
その後はフルタンクが空になるロングスティント(36~37周)でつないで行くのである。
定刻の12時30分フォーメーション開始。
1周の後スタート。先の500クラスのスタートと同様波乱も無く各マシン西コースへと消えて行く。
スタート直後のストレートで4号車(BMW)に抜かれオープニングラップは10位。
続く2周目に入ったストレートで31号車(プリウス)に抜かれはしたものの、裏ストレート中盤までポジションをキープ。
だが裏ストレートエンドで11号車(アウディ)と、130R立ち上がりで52号車(メルセデス)の2台に抜かれ13位。
そして3周目には、早くも最後尾から追い上げてきた66号車(アストンマーチン)にデグナー手前でラップされ14位へ。
しかし、ラップタイムが09~10秒台に安定。
8秒台で飛ばすトップグループからは、僅かずつ離されるものの順位はキープしたまま16周を終えピットイン。
全チーム中、最初のルーティンピットである。
タイヤ4本交換、燃料フルチャージ、ドライバー加藤選手にチェンジ、45秒のピットストップで再スタート。
60km/h制限のピットロードを抜け、フル加速に入ると、早くもトップに立った66号車がストレート駆け抜け1コーナーに飛び込んで行く。
5秒台という異次元のタイムで周回を重ねる66号車はともかく、8秒台の2位グループの前に送り出すことに成功。
トップからは当然1周遅れだが、2位からは約120秒マイナスである。
順位は22位となったが、今回の作戦は順調に進んでいる。

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応援席でファンと共に・・・。
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長丁場のレースなので、一応ウェットタイヤも準備される・・・結果的には出番なし。
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スタートは高橋選手(中)。続いて加藤選手(右)濱口選手(左)の予定。
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定刻12:30フォーメーション開始。そしてスタート、波乱なくオープニング。
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好天気に恵まれた決勝。当然厳しい暑さに見舞われる。
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ファーストスティント終盤、43号車が食らいつく。この後43号車は好燃費を活かし、超ロングランをこなす。

2位グループの7~8秒台に対し、6秒台でラップを重ねる加藤選手。
見えざるライバルにジワリジワリと接近していく。
下位グループからも抜け出し、25周目には18位となり、27周目FIAGT勢で最初にピットに入ったのはトップの66号車。
4ピット、5スティントでこのレース、推定161周を乗り切るには、単純計算でフルタンクで33周走らなくてはならない。
FIAGT勢にはギリギリの周回となる・・・なるだろう。
燃費優先のセッティング、ドライビングで・・・当然タイムは落ちる・・・4ピットとするか?飛ばして1ピット分を稼ぐか?チーム戦略の分水嶺となるが、66号車は間違いなく5ピット作戦である。
その後ほぼ30周前後に各マシン続々とピットイン、ルーティンピットをこなして行く。
32周を終え、順位は12位ながら、トップ・・この時点では未だノーピットの0号車(BMW)・・からの遅れは、106秒のマイナス。
その0号車34周までノーピットで引っ張ったのだが、なんと35周目に入ってガス欠ストップ!
優勝候補の1台が崩れる。
FIAGT勢で4ピットはリスクが高いようだ。
そんな中、33号車は35周目、52号車は36周目まで引っ張り4ピットを狙い、JAFGTマシンでは43号車(Garaiya)が、何と42周まで引っ張っており、これは3ピット4スティントという大胆な作戦が可能であり、これらが成功すればかなりのアドバンテージとなる。
各チーム各様の作戦があり、1000kmというロングレースの見所である。
50周を終え順位は5位。
再びトップとなった66号車との差はマイナス76秒と減少。
給油時間の差が現れたようだ。
そろそろ2回目のピットイン、予定は53周目だが1周引っ張り54周。
こうした調整は、メーターに表示される燃料消費を10周毎にドライバーからの報告を貰い、それらのデーターから周回数を増減させたり、タイムの落ち込み等からタイヤの消耗度を推測、またこの季節、この時間帯によるドライバーの体力消耗も加味され調整される。
54周を終えピットに入ってくる加藤選手。
3スティント目は助っ人サードドライバー濱口選手。
1回目ピットインと同様の作業、だが給油時間は長くなり、ドライバー交代は余裕。
丁度60秒のピットストップでピットを後にした濱口選手、順位は8位。
ところがコースインする直前ヘアピン手前の110Rで52号車クラッシュ!!
セーフティーカー(以下:SC)が出ることとなった。
だがこのSCは我々には全くもってラッキーで、トップ66号車からは既に1周遅れだが2位の61号車(SUBARU BRZ)からは110秒マイナスの同一周回。
SCが入った場合、同一周回の場合のその差は一気に殆ど無くなってしまうのである。
しかも61号車始め多くはまだ2回目のピットインを済ませていない。
ここで大きく順位が入れ替わる事になるだろう。
SCランは5周に渡って行われ、多くはこのSCランの最中に2回目のピットインを済ます事となり、60周終了時にSC退去、レース再開!
61周を終え順位は4位!!トップ66号車からは7秒マイナス、2位88号車(ランボルギーニ)からマイナス5秒、3位14号車(IS350)からは僅かマイナス2秒だが、後ろ5位の3号車(GT-R)からはプラス8秒のリードである。
だが9秒台周回を重ねる濱口選手に対し、後ろの3号車はSC中に2回目のピット作業を終えて、何と05~06秒台で迫ってくる。
前は12~13秒台とペースの遅い周回遅れ2台。
それらを抜きあぐねている間に64周目1コーナー、2コーナー間で3号車にパスされる。
その3号車は、S字で前を行く周回遅れに大柄なボディをグイグイとねじ込むように抜いて行く。
それに便乗して行こうと追いすがるが、ダンロップコーナー頂上付近で追いつかれた4号車(BMW)にリズムを乱され片輪コースアウト。
幸い若干のタイムロスをしただけで済み、ここからは自分のリズムを取り戻し7~8秒台の好タイムで再び追撃体制に入るが、なかなか順位を上げるには至らず5位をキープ。
68周目2位の88号車が3回目のピットインにより自動的に4位に・・・。
70周目3位の14号車が2度目のピットイン、3位。
その後84周まで7~8秒台の安定した周回を重ね3位をキープするが、昨年、一昨年と、このPokka を連覇している61号車が5~7秒台で猛追、85周目にパスされてしまう。
濱口選手タイムの乱れはないものの、ドリンクも飲みきってしまい、かなり体力的に消耗しているようだ。
時刻も午後3時台、ピークは過ぎたが、まだ暑さが衰える事はない。
91周を終え、濱口選手から高橋選手へ交代。
3回目のピットインのルーティン作業は前回と同じ。
降車した濱口選手、高橋選手のドライバーサポートを終え、ピットに歩いて引き上げたが、ピットに入った所でフラリと倒れてしまった。
熱中症の様でそのまま医務室に運び込まれ治療を受ける。
終盤でもタイムが乱れる事なく走りこなした精神力は大したものだ。
高橋選手の2スティント目も36周予定のロングスティント、果たして体力は大丈夫か?

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セカンドスティントは加藤選手。トップグループとは“違う場所”で、追い上げる。
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Rd4優勝の3号車との4位争い。
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満タンを使い切った加藤選手から濱口選手へ・・・同じくガス使い切るまで・・・の予定。
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ピットアウト直後にSCが入り、これは我々には良い流れとなった。
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序盤の混戦でペースが乱れたが、中盤からは安定。キッチリと37周をこなす。
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4スティント目は高橋選手。降車した濱口選手は、ピットに引き上げた直後倒れる。

ピットアウト後の順位は4位と変わらず、トップ61号車から115秒マイナス・・・これは殆ど後ろに来ている状態である。
2位66号車からはマイナス約100秒、3位は3号車マイナス35秒。
5位21号車(アウディ)からはプラス2秒と僅かなリード。
だが、まだ残りのピット予定は各チームまちまち。
今後どう順位が入れ替わるかわからない。
そんな番狂わせの一つがトップ61号車に起こる。
93周目に入りガス欠で止まってしまったが、同じ周回に21号車に抜かれたので順位は変わらず4位。
続く5位は88号車(ランボルギーニ)は70秒後方と大きく開いているが、高橋選手のタイムが12秒台とペースが遅い。
6~7秒台でラップする88号車が脅威となる。
だが98周辺りから高橋選手も8~9秒台へとペースアップ。
加藤選手への最終スティントまで、ポジションはキープできそうだ。
115周目、ポジション4。
5位の88号車は12秒後方。
渡邉エンジニア「残り10ラップ、体大丈夫ですか?」の問いに・・・
高橋選手「ぜんぜん大丈夫!大丈夫!」
アラカン(アラウンド還暦)ドライバー恐るべし。
渡邉エンジニア「10秒後方5番手88号車来ます!!」
と状況を伝える。
だが117周目88号車はピットイン、ここで満タン給油を行なっても、残り周回約40周以上は走れないのでもう一回のピットインは余儀なくされるだろう。
“順調に行けば”あと一回のピットインしか予定していない我々2号車EVA紫電の脅威では無くなった。
126周目“最後”のピットイン。
高橋選手から最終スティントの加藤選手へ・・・。
最終スティントも35周のロングスティントであるが、午後5時を回り気温も路温も下がって来ている。
全チーム同じ条件ではあるが、加藤選手はハイペースで締めくくってくれるだろう。
ピットアウト後の順位は5位。
トップは66号車。続いて3号車、21号車、88号車そして2号車EVA紫電だ。
前4台は全てあと1回のピットインを残している。
トップ66号車とは既に1周以上の差がついているので、逆転は難しいが、2位3号車とは90秒差、ここからの加藤選手の追い上げがあればピットストップも含め逆転圏内である。
ところがそんなチームの期待を、奈落の底に突き落とす言葉が無線に飛び込んできた。
加藤選手「エンジンおかしい!パワーが無い!!」
どうもエンジンブロー等、破壊では無くパワーが落ちた様だ。
スロー走行のままピットに帰ってくる。
そのまま頭からピットへ・・・・。
エンジンカウルが外される。
エンジン担当の戸田レーシングのエンジニアがデーターを読み取る。
センサー等電気系ならばこうしたデーターからの解析となる。
メカニックはエンジンルームを覗き込み、何かパーツの破損等が無いか目視点検を行う。
僅か数十秒、数分で表彰台圏内、入賞圏内がスルスルとこぼれ落ちていく。
程なく原因が見つかった。
エキゾーストパイプが割れてしまっている。
これではパワーダウンしてしまう。
急遽修理に取りかかる。
走行直後で最も熱のある部分の取り外しであるが、メカニックはものともせず手を入れる。
部品の取り外しにかかる一方、スペアパーツの準備を始めて・・・気がついた。
このエキゾーストは、今シーズン、リストリクター(エンジンの空気吸入口の口径:ここの増減でパワーが調整される)の拡大に伴い、エンジンの大幅改良が行われた際に、全く新しく作られたパーツで、パッと見は似ているが互換性は無い。
交換するなら1本だけではなく左右含め8本全て、またサイレンサー部に至るまで交換しなくてはバランスが崩れてしまう。
そもそも、今までのエキゾーストパイプは3年以上もったので、今年作った新パーツが、こんなに早く破損するとは考えてもいなかったのだ。
そうなると余りに時間が足りずレースは殆ど終了してしまう。
ん~・・・リタイヤか・・?
っと、思ったが、「そうだ、溶接機がある!!」
最近、エキゾーストエンド部のフィニッシャー部に、よく亀裂が入る現地で修理ができるよう、小型の溶接機を持ってきていたのである。
それを思い出し、急遽溶接修理に取り掛かる。
幸い破断面は凹凸はあるものの、パズルの様にピッタリ。
約30分掛かって修理完了。
再び加藤選手によりコースイン。
この直前に、500クラスで大きなクラッシュがあり、丁度本日2度めのSCとなっていた。
もし、EVA紫電にこのトラブルが無く順調に走行を続けていられれば、トップ66号車との大差も一気に縮まり、終盤トップ争いを演じる事ができたかもしれない・・・・
等などタラレバレースをしてもしようがないが、レース戦略的にはほぼ完璧だっただけに惜しいトラブルであった。
レースの勝負権は完全に失ったが、完走というリザルトを残す事はできる。
またパワーダウンの原因がこれで間違いなかったか?他にも複合的なトラブルは無いか?それらの確認はやはりサーキットを走らせないと確認はできない。
次回のレースにしろ、テストにしろ、マシンのメインテナンス後の試走としてここで確認しておくことは重要である。
レースは144周で完走にとどまり、こうした結果は残念だが、ドライバー、メカともノーミスで、レース戦略的にも大成功と言え、今後の貴重なデーター、また大いな自信につなげる事ができたと思う。

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最終スティントの準備に入る加藤選手。
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4スティント終盤。戦略は着々と“完成”に近づいていたのだが・・・。
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最終スティント、ピットアウト直後、エンジン不調!エキゾーストパイプの破損。
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スペアが無いので、溶接修理。再スタートまで約30分を要する。
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夜間走行は無くなったが、夕闇迫る中、ラストスパート。
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リザルトは完走。チェッカー後ピット前を通って車両保管に向かう中、クルーに迎えられる加藤選手。

■決勝レース後のコメント
■高橋「タラレバだったら優勝できとったな、2位じゃなかった。(・・GT-Rよりは前におった・・ヨッシーたちの・・・ペナルティストップが・・・加藤選手、濱口選手たちと議論)ま、ま~タラレバしとってもしゃーないわ。そんなもん(爆笑)」
■加藤「荒れた展開のなか、ウチは確実な戦略でかなり上位までこれて・・・自分たちがとってきた事、セッティングとか戦略とか、非常にうまく回ってたんですけど・・・残念ながらエキゾーストの破損に関してはもうこれは誰のせいでも無いですし・・・非常に残念ですけど次に向けてまた手をうって頑張りたいと思います。応援ありがとうございました。」
■濱口「僕が命を掛けて戦ったスティントが、途中までは活きててとても嬉しかったですが、結果機械(マシン)が壊れてしようがないですが・・・残念ですがタラレバなら優勝か?2位ということで・・・またこのチームで参加できてよかったです。」
■渡邊エンジニア「レースはリタイヤ・・・にはなってませんが・・・完走扱いですが、内容的にはリタイアと同じ。
エキゾーストが壊れた言うことが原因なんですけど・・ま~物的には本年度新規で製作したものだったんで・・・これまでの・・過去実績からすれば壊れる距離ではないはずだったんですが、それが壊れてしまったんで・・・我々としては想定外だったトラブルでレースを終えてしまいましたが、レースの内容的には高橋選手スタートで、ショートスティントで切って、その後ロングでつなぐという作戦で・・この意図としては・・今の紫電・・紫電に関わらずJAFGT勢とFIAGT勢が競い合ってる今のGTにおいて、仮にラップタイムが同じでも、それこそクルマのパワーが100馬力レベルで違うんで(FIAGTが高い)抜かれる事はあっても抜く事ができないって状況になっちゃうんですよね・・・今のJAF車両は・・・。
っで紫電もまさにその典型的な例で、ストレートスピードが鈴鹿の裏ストレートで20km位違う車両を相手にバトルをしなくてはならないっていう事を考えると・・できるだけバトルをせずに上位に上がるというのが我々の作戦のキーとしてあるんです。
レースだけど争わない。 イメージとしては“勝ち残る”。
っでそれを実現する為に・・・初めに短く・・今回は15周・・計算上、燃費とレース周回数を逆算(今回300クラスは161周)して使用するガス(ガソリン量)を出すんですが、大体それぐらいの数字・・克つその15周を走ってる間にトップとの差が30~40秒で抑えられれば、次にピットアウトする・・・2番目に乗った加藤選手をGT300クラスのトップ集団の前に送り出す事ができると・・・。
と、あくまで机上の理論なんですが、それを実現すべくレースを行ったんですが・・・ま~若干ファーストスティントで、想像より遅れてしまったんですが、まさにトップに後ろに・・2番手に・・実際2番手では無いですが・・2番手の位置に加藤選手を送り込む事に成功して、そこから・・その前後に、早いクルマとは間があいているんでバトルする事無くマイペースでレースが進める事ができた。
その後濱口選手に代わって・・・っで、濱口選手も復帰した場所がFIAGT勢の混戦の中に復帰する形になっちゃって、初めのうち手こずってましたが、・・・ま~大体トップ・・・今回トップ(66号車)早かったんですが、トップ10に残るラップタイムで走り続ける事ができたんで良かった。
次に高橋選手に代わる・・・その前にSCが入って、更にレースが我々の方にポジティブに働いて、高橋選手に代わって・・・高橋選手、苦戦してましたけどチャンとキッチリ予定周回走り切ってくれたんで・・接触する事もなく・・・っで最後加藤選手代わって、それこそ計測1周目にエンジン壊れちゃったと・・・でもチェックしたらエンジンではなくてエキゾーストだったと言うことでレースが終わちゃった。
これ僕の個人的な意見なんですが、今僕らが持っている、ドライバー、スタッフ、ツール・・タイヤだったりクルマだったり、あとコースの特性だったり作戦だったりというレースというマネージメントやハードウェア、ソフトウェア総合的に考た場合・・・結果的にリタイヤ(相当)・・・エキゾーストが壊れちゃったんですけど・・・あのまま壊れないでゴールした順位・・最終的には、他ペナルティとかがあって多分2番手になっただろうと想像できるんですが、それがほぼ我々のMAX・・・力じゃないかな・・・それがほぼ途中まで実現できてたんで・・・何事もなくゴールしたかったんですけど・・。
ただそれで得たゴールって・・レースなんで色んな事があった上でのゴールが表彰台だったと思うんですけど、その“色んな事”がない状態でも、今回のレースの進め方、考え方っていうのは、僕、個人的にはかなり満足しているっていうか・・・、フルに戦った感が有るんですね。
レース、年間通して考えるとこういうのを落としちゃったりしてるのは痛いんですけど・・・SUGOも接触とかで落としちゃってるので・・・得意なとこで連続して落としちゃってるので残念ですけど・・・持っているパワーをフルに発揮できた感は有るかなって思います。
それで予定通り進んでたんで、それがすごく良かった。壊れたことだけが予定外。
逆に言うと、予定通りに進んでそういう結果(今回なら2位)得られるんだという事が確認できたし、チームの皆も分かったんで、まだ我々の考え方が劣ってないな、廃ってないなという確認もできた。
順位も出てないのに偉そうな事も言えないんですけど、得た物は大きいというか、感じた物は大きいと思います。
次回富士は真っ直ぐが長く、(紫電には)ツライツライと言われていますが・・・なぜか入賞の確率が高い。富士は(5月の500km等)長いレースが多いんで、加藤選手の激しいプッシュと・・・さっき言った、ケンカをしない場所で一人相撲をとって最終的に上に行くってのがうまくハマりやすいコースだと思ってます。
でも次300kmなんで、高橋選手、加藤選手二人にフルにポテンシャルを発揮してもらって、どこまで行けるか?っていうのでは面白いかと思いますが、正直、クルマ、現状FIAGT勢との差は、人の努力で埋められるという物ではないので・・精一杯頑張りますとしか言えません。」