2015 SUPER GT第1戦:岡山国際サーキット
GTレースレポート
2015年04月10日
設営
NEWマシン「シンティアム・アップル・ロータス」こと「EVORA(エヴォーラ)」のデビュー戦となる。
今シーズン、GT300クラスにはマザーシャーシマシンが何台かデビューするのだが、この「EVORA」は唯一のミッドシップ車両で、既に多くの注目と話題を集め、その期待に応えるべく万全の体制で開幕に臨む・・・・はずだった。
3月に入り、鈴鹿、岡山、富士と、3回(6日間)合計26時間のテストスケジュールがあったのだが、最初の鈴鹿でクラッシュ!
大修理を要す為、ここ岡山を含む2回のテストをキャンセルせざるを得ない事態になってしまった。
修理が完了したのが、何と3月末!カラーリングが完了したのが岡山へのトランスポーター積込の前日。
“万全”とは大きくかけ離れ、シェイクダウンよりややまし・・・という程度の仕上がり。
ライバルには大きく水をあけられてしまい、不安要素もタップリだが、鈴鹿の僅かなテストで素性の良さを発揮。
また走りこみの少ない高橋選手も、つい先日、ここ岡山で“コソ練”を敢行。
このNEWマシンのデビュー戦にご期待ください。
4月4日 プラクティス/曇り/セミウェット
前夜の雨は上がったものの、コースコンディションはウェット・・加藤選手による走り出しはインターミディ(浅ミゾレインタイヤ)によるマシンチェック1周。
その後計測に入り、セッション開始から15分ほど経過し、加藤選手の1′37″723は4番手につけるが、こうした微妙なコンディションでは各チーム、マシンの目指す方角は異なり、順位に大きな意味は無い。
その後も予報とは裏腹に曇り空から雨が降る様子はなく、おそらくマシンが走りこめばすぐにドライコンディションになっていくと思われたが、日も射さず風もない状況ではなかなか乾かないが、様子見でスリックでコースに出るマシン、ピットで待機するマシンも出始める。
6周程でインターミディタイヤのまま加藤選手から高橋選手に交代。
1分46、43秒台・・更に42秒台まで上げるが、既に路面はドライへと移行、インターミディでは厳しい状況になってきているので、スリックタイヤにチェンジすると共に、再び加藤選手に交代、予選に向けたセットアップに入る。
だがまだ完全ドライには至らず、また2度の赤旗中断もありタイヤの暖機もままならず31秒台。
加えて準備したタイヤが、このマシンにはやや硬すぎ、500クラスとの混走セッション85分の終盤になり、ようやく完全ドライコンデションとなり、毎ラップベストタイムを更新するも、28″962をマークして13番手。(最終的には16番手)
Q1予選の上位13台が挑むQ2予選へは、厳しさが予想される。
トップは既に26秒台、27秒台に4台、28秒台に11台・・・
更にセットアップを進めたいところだが、残り時間は10分のGT300専有走行時間プラス少々・・・まだドライコンディションを走っていない高橋選手へと交代。
ところが高橋選手が乗込み、ピットロードへ押し出し、いざスタート!ところがエンジンが掛からない。
スターターモーターから明らかに異音が・・・。
再びピットに押込み、メカが飛びつく!!・・・結果、短時間では修復は不可能と診断、高橋選手はドライコンディションを走る事ができず、プラクティスは終了。
幸いスターターのトラブルはスペアパーツがあり修復は可能だが、時間が掛かる箇所・・・ランチタイムを無くし修理が完了したのはQ1ノックアウト予選開始時刻14:50直前となった。
Q1ノックアウト予選 /曇り/ドライ
Q1予選に挑むのは加藤選手。
午前のプラクティスでタイヤの暖まりが悪く、グリップ不足だった為、慎重に暖機を行い5周目アタックに入る。
28″458!!は13番!弱い
連続アタックはタイム更新できず、更に翌周のアタックは28″382とベストタイム!!だが15番手・・・。
もう1周と挑んだが、セクター1、2と不発・・・タイム更新は難しいと判断。残り時間も無く、エンジニアから「ピットに戻ってくださ~い」と指示が飛ぶ。
このタイヤは決勝スタートタイヤとなる為、タイム更新の見込の無い周回は無くしたいのである。
結局Q1予選は17番手となり、13番手とはコンマ26秒差でQ2進出はならず。
この開幕戦までのテストは鈴鹿のみ、そのデーターのみで、ここ岡山での仕様を変えたタイヤ用意したが、本来なら2週間前の岡山合同テストに参加できていれば、これほどの惨敗とはならなかったであろう。
また、スターターのトラブルも、NEWマシンの初期トラブルであり、テスト不足が露呈した事となった。
だが、今となってはどうにかなるものではない。
明日の決勝レースは全力で挑み、以降のレースに活きる多くを収穫したいものである。
4月5日 フリー走行&決勝レース 雨
フリー走行 / 雨
昨日のプラクティス終盤に発生したスターターのトラブルは、午後のQ1ノックアウトまでに何とか修理が完了。
Q2進出はならなかったものの、28台中17番手のグリッドを得る事ができた。
ところが、そのQ1終了後、先のトラブル箇所を点検すると・・・やはり同様に破損があり、このままではエンジン始動はできない可能性が高い。
破損箇所を再度応急的に修理は行ったが、抜本的に部品を作り変えなくてはならない。
NEWマシンにおいて、こうした信頼性を高める為にもテスト走行が欠かせないのだが、ご承知の様にこのマシン、テスト走行が全くといっていい程できていない。
今回のトラブルもテストに参加できていれば充分発見できる部位であろう。
しかし今をそれを悔やんでもこの場で何とかなるわけではない。どうする!!
応急処置でも数回はエンジンスタートはできるだろうが、2~3回か?5~6回か?フリー走行、決勝レース含め、全てをこなすことはかなり難しいだろう。
スターターの使用回数を極力温存し、決勝レースに送り込ませる為、朝のフリー走行はキャンセル、更に決勝レース前のウォームアップ走行、更に通常のスタート手順・・・ウォームアップ終了後、グリッドに向かい、フォーメーションラップの後スタート・・・をも全てキャンセルした。
当然ピットスタートとなり、最後尾グリッドの更に後ろ、全車がスタート後、ピットロードエンドからのスタートなる。
一旦エンジンがかかれば、走行に関しては全く問題ないので、今我々にとって重要なのは、このマシンをとにかく多く走らせる事であり、それは今日の決勝レースを走らせる事である。
決勝レース/ くもりのち雨
13時20分ウォームアップラン開始。
天候は曇り、雨こそないが、路面はウェット・・・だがスタートは1時間後・・タイヤ選択は悩ましいところである。
グリッド上では華やか開幕戦のスターティングセレモニー、スタート進行が行われる中、我々はピットで待機。
朝の雨は上がったが、空は曇り風も無く、路面は乾かない・・・我々2号車はレインタイヤを選択、グリッド上ではインターミディや、スリックタイヤで賭けに出るマシンもあった。
岡山県警のパトカー、白バイによるパレードラップ1周が終わりフォーメーションラップに入る頃、ピット前で加藤選手が乗り込んだEVORA、エンジン始動。
一発で始動はしたが、すぐにエンスト・・・果たして再始動は・・・クー!クー!と空回り音!!これはダメか!と思われたが、2、3度繰り返したのち始動成功!!
3分程の暖機を終え、レッドシグナルが灯るピットロードエンドへとマシンを進め、フォーメーションラップの隊列を待つ。
路面コンデイションから、セーフティーカー先導のスタートになるかとも思われたが、1周のフォーメーションラップでレーススタート。
500、そして300が1コーナーに入る頃、ピットロードエンドのシグナルがブルーへ・・・
もう1台のピットスタートのマシン(奇しくも同じマザーシャーシのマシン)と共に、充分温まっていないミッション、駆動系をいたわり(わりと)ゆっくりと1コーナーへ。
1周目は25位と、ほぼ最後尾(決勝スタートは27台)だが、3周目22位、4周目20位、6周目19位と加藤選手は着実に順位を上げ、タイムもトップ31号車(プリウス)だけ39秒台と異次元の走りだが、以下の上位陣は42秒台・・・対し43秒台の加藤選手。
これはタイヤのキャラクターの差でもあり、またスリック勢はまだ威力を発揮できるコンディションではなく大きく順位を落とし、7周目辺りで早くも周回遅れにとなっていく。
その後はラップタイムは41、40秒台まで上がるが、順位を大きく上げる事はできない。
20周を過ぎると徐々にスリック勢がタイムを上げ、22周辺りでレインタイヤ勢と拮抗、24周前後には逆転する。
だがスリック勢は既に2周程周回遅れとなったので、未だ脅威とはならないが、マシンによっては35~36秒台のタイム。
このまま路面が乾いていけば、更にタイムは上がるだろうが、そろそろピットインのタイミング。
スリックで行けるのであれば、ピットに入ってタイヤを履き替えるるマシンも有っていいはずだが、そんな動きはない。
何故なら空模様はいつ雨が落ちても不思議ではないほどの曇り・・・どころか30周を過ぎると再び雨がパラつき、スリックは完全に見放されたしまった。
ルーティンピットインも始まり、2号車も見かけの順位が上がっていく。
40周が過ぎ見かけは9位・・・ピットインが迫る。
雨は振り続け、霧雨?小雨・と言った感じだが、今後の雨量次第ではレインタイヤも深溝か?浅溝のインターミディか?コース上の加藤選手に無線で呼びかける。
加藤選手「インター(ミディ)だね。」
50周を終え加藤選手ピットイン。
昨年までのMclaren、紫電は給油ホースが、給油とエア抜きとが、左右に振り分けられていたが、このマシンは2本同じ側に、しかも運転席側(右側)に配置され、またドライバー乗降も右側に変わり、無線、ドリンク、クーラー関連の配線、配管が変わる。
全てがこれまで変わった、EVORA初のピットワーク。
マシンが滑りこむ、燃費の良いNAエンジンの為、給油時間も短縮されドライバー交代も早さが要求される。
高橋選手が乗りこみ、加藤選手がサポート。
タイヤはインターミディ4本交換・・・右後輪が若干手間取るが概ね順調に作業は進みジャッキダウン!スターターが回る・・・!!
が、クー!!クー!!と3回ほどモーターの空転音・・・万事休す・・・と思われた時、グオーッ!!エンジン始動。
ピットロードへと向かう高橋選手。
岡山に来て、昨日僅か10周程度しか走る事ができておらず、このNEWマシンでトータル20周程度、慣熟不十分なマシンと共に、13位で戦線に加わる。
アウトラップで87号車(ランボールギーニ)に先行され14位に下がるものの追走。
59周目、2台の前を行く12位の360号車(GT-R)が後退、87、2号車共に12、13位へと上がる。
87号車とは一旦3秒程の差をつけられるが、46~47秒台の87号車に対し、45~46秒台の高橋選手、ジワリジワリと追い上げ、60周目にはマイナス0.4秒に迫るがオーバーテイクには至らない。
「落ち着いてついていけばチャンスはあります。」と無線で激を送る。
65周を過ぎ少し雨脚が強くなり、67周目ダブルヘアピンでラインを外れやや水をあけられ、翌68周目2コーナー先でスピン!!コースアウトには至らなかったがエンジンストップ・・・!!幸い再始動は成功したが大きく順位を落とし16位に交代。
その後も雨脚は衰えず、また残り周回も少なく、トップグループもタイム差が大きく、初戦のリザルトを確実にすべく慎重にレースを締めくくろうとトップグループも含め各マシン、タイムが3~5秒程落ちる。
そうした難しいコースコンディションの中、高橋選手もスピン後は安定したタイムで、74周を走りきりチェッカーを受ける。
トップから3周遅れの16位・・・寂しいリザルトだが、この完走で得た物は大きい。
ドライバーの習熟は勿論、各種データー、問題、改善点・・・次戦富士まで1ヶ月弱、充分なインターバルとは言えないが・・・因みに2006年デビューのあの名車紫電の開幕戦(この時は鈴鹿)も、このEVORAと同じくピットスタートとつまずいたが、その後はご承知の活躍。同じ道が歩める様応援いただきたいです。