Super GT 2006 Series 第1戦 -鈴鹿サーキット-
GTレースレポート
2006年03月20日
この時期では雪も降る事もあり、覚悟はしていたが、寒い。オマケに… |
サーキット 三重県 鈴鹿サーキット
マシン名 プリヴェチューリッヒ・アップル・紫電
ドライバー 高橋 一穂・加藤 寛規
3月17日(金)フリー走行 くもりのち晴れ
路面:ウェットのちドライ
この時期では雪も降る事もあり、覚悟はしていたが、寒い。オマケに風が強く、体感温度は気温の7度よりも寒く感じる。
早朝の雨は止んだがコースはしっかりウェット。紫電にとっては初めてウェットタイヤでの走行である。週間天気予報で、決勝日は雨が予想され、いきなりでは全くデーターが無いので、高橋、加藤、両選手にとっては勿論、エンジニアにとっても貴重なセッションと言える。
まずは加藤選手からコースイン。雨セッティングの確認の為、1回のピットインを含め、とりあえず2′20″963をベストタイムに、9周程でピットイン。ドライ状態になる前に高橋選手に交代。
と、ここで、赤旗!出鼻をくじかれた高橋選手マシンに乗ったまま再開を待つ。10分ほど待ったところでコースイン。高橋選手も紫電で初めてのレインタイヤ走行である。しかし7~8周程で「そろそろドライ(タイヤ)かな~・・。」と高橋選手から無線。その直前のタイムで19″523。その次18″343と、コースが乾き始めたタイムになってきた。また一部のチームでは、スリックへ履き替えている。
19周目のピットインで加藤選手への交代と同時にドライタイヤへの交換。残り20分を走りきる。その3周目2′06″931が午前セッションのベスト、クラス4番手となり、本格アタックは午後のセッションで行う事になった。
午後は完全ドライ。予選に向けて、とは限らず、データーの少ない紫電にとっては、セッセと走ってデーター収集。合同テストでも、クラストップから3秒以上の差をつけられ真ん中辺りと、マシンの注目度とは裏腹に、タイムが冴えない。ここらで“花火”を上げないと見捨てられてしまう。
加藤選手、高橋選手、交互に幾度かのピットインを繰り返す。セットUPは徐々に良い方向に向かっており、300・500混走セッションが終了し、300占有時間。加藤選手によるアタックを行う。ピットアウトして2周目。出た!ベストタイム2′05″120!しかし合同テストでの13号車のトップタイムから遅れる事1秒弱・・。まだまだかな~っと思ったらなんとこれが、(僅差だが)本日のクラストップタイム! SUPER GT NETでも写真がUPされ、とりあえずこれまでの苦労が少しは報われたかな・・。
3月18日(土)予選 午前:晴れ 午後:雨
路面:午前ドライ 午後ウェット
予定されていた雨は本日に前倒しとなった。午後は間違いなく雨となるだろう。今年も、昨年から始まったスーパーラップ(以下「SL」)は行われる。これは午前予選で上位10台が選抜され、午後これらの1台づつのタイムアタックにより決勝グリッドを決めると言う、かなりイベント性の強いものだが・・・・。とにかく午前予選は10位以内なら、いくら頑張ってもさほど意味は無い。SLでミスれば最下位(10番グリッド)である。
SL権を得るだけの実力は、マシン、ドライバー共心配はないが、雨が更に前倒しになり午前予選中降り出すと厄介だ。しかし曇り空だが雨が降り出す気配はなさそうだ。
まずは1周してピットイン。昨日のセンサー交換はエンジンを降ろしているので、各配管等洩れチェックの為である。
AM9:50、予選は300クラス占有から始まる。いつもなら我先にコースインするのだが、パラッパラッとしか出て行かない 。
2号車、紫電のアタッカー加藤選手も、予選開始から7~8分程経って(他のマシンの動きを見て)「そろそろ行こっかー。」とゆっくりコースイン。
この時既に62号車、110号車が4秒台に入れてきている。
2周目を2分8秒台で戻ってきた加藤選手・・・3周目。紫電初の本格タイムアタックである。最終コーナーに姿を現す紫電。速い!4秒前半は確実。2分3秒787!! なんとなんと!!まさかのコースレコード!この時点でトップ。「(ストレートの速い)ポルシェのスリップ(ストリーム)使ったからだよー。」と加藤選手。「SLは確実なのでそのままピットへ戻ってください~。」と無線連絡
紫電最初の公式タイムはこうして予選1位という華々しいデビューとなるかと思ったが300占有時間終了直前に13号車、Z、景山正美選手のアタックは2分3秒708!
僅差により、2位に落ちる。ま~これでグリッドが決まるわけではないのでSLでがんばればいいや。と言いたいが、お昼過ぎには予報通り雨。
ウェットコンディションのデーターは昨日午前しか無く、そんな“付け焼刃”セッティングでSL出走の10台に立ち向かうのはかなり厳しいだろう
それに追い討ちをかけるかのようにSLは開始から徐々に雨脚は強くなり、後の出走マシンはスピン、コースアウトが続出。9番手出走の加藤選手も「全然グリップしないなー。」と言うボヤキを残しながらアタック開始。今年もSLアタックBGMは勿論ユーミン。今回は「曇り空」。天気にピッタリか。
各セクターのタイムは伸びず、タイム的にはトップから6秒遅れの26秒556この時点で5番手。しかし最後の13号車がこのタイムを下回る事はなく6番グリッド確定。
デビュー戦としてはまずまずと言ったところか・・・。
3月19日(日)決勝 晴れ
路面:ドライ
昨日の雨と打って変わった晴天でむかえた決勝日。紫電にとって初レース。(紫電には、何でも初)朝の満タンフリー走行は加藤選手、7″702で3番手タイム。悪くない。今日スタートドライバーを努める高橋選手も9″731とクラス中位に位置する。
紫電は参戦発表以後、各雑誌で取り上げ、久々のNEWマシン、スーパーカーと言う事で話題を集め、お昼のピットウォークではピット前は黒山の観客で埋もれた。
続いて加藤選手、4周目に5″641とトップタイムをマーク。両ドライバー共絶好調である。今季、いや参戦以来の最高位を狙うに充分な仕上がりと言える。・・・あとは天候次第。しかし番狂わせは全チームに可能性がある。
そんな多くのファンの期待と、プレスの注目を集め、決勝ウォームアップ走行が始まる。
高橋選手のドライブで3周ほどしてピットに戻る。そしてガソリンを“なみなみ”に給油する。そしてリヤカウルを外す。実は朝のフリー走行が終了後、燃料ラインでの漏れが見つかり、修理をしている。そこの再確認である。
ところが、なんと!またも燃料漏れが発生している!完治していなかったのか・・!どうやら満タン時にタンク内圧が上がって、通常では発見できなかった部位で漏れが発生したようだ。
しかし発見はできても直ぐに修理ができるとは限らない。グリッドへ向かう為にピットロードが開放され3分後に閉鎖されるまでにピットを離れ、コースにでなくてはならない。時間が刻々と過ぎて行く。
各チームクルーがグリッドに向かう。
カウルが装着される。同時にセルが回される。「バウ!」一瞬エンジンが掛かるが、直ぐにSTOP。ピット内で始動してコースに出ることはできない。ピットから押し出し、再度セルを回す。
「キュルキュル・・」始動しない!!
再びピット内に押し戻しリヤカウルが外される。燃料ラインを修復した時に外した、配線を接続し忘れて直ぐ接続。しかしこの頃ピット出口は時間切れ、既に閉鎖されていた。
高橋選手が、再始動してグリッドに向かう為、各チームクルーで混み合うピットロードに走りこむ。これらと殆ど同時に無線で「ピット出口は閉鎖!閉鎖!止まって!」とエンジニアのしんちゃんが叫ぶ。
数十メートル走って停車。ピットロードでバックはできないので、メカが駆け寄りマシンを押し戻し再びピット内に収まる。
今年でGTフル参戦5年目を迎えるが、ピットスタートは初めてである。
ピットスタートはレースが始まる時、ピットロード出口で待機し、全車がスタートした後、レースに加わるという、極めて不利なレースを強いられる、一種のペナルティである。
しかしこうなった事を悔やんでもしようが無い。これもレースである。何十、何百億と掛けたF1でもスターティンググリッドで止まってそのままリタイヤする事もあるのだから・・。
起こった事をポジティブに捉えよう。スタートまでのセレモニーの間約40分。再点検に費やす事もできるし、こんなトラブル、レース中に出なくて幸いであった。またこの季節とは言え、雪混じりの小雨に加え、風も強く体感温度はかなり低い。こんな日にグリッドは、とても居られたものでは無い。ブツブツ・・・
紫電の行く末を暗示するかの様な、多難なデビューレースとなりそうだ・・・。
レースは定刻にローリング開始。しかし300クラスの隊列は長く、トップが1コーナーに差し掛かっても最後尾はまだピットロードエンドを通過しない。トップが2コーナーに差し掛かり、高橋選手のドライブする紫電がスタート。停止状態からのスタートの為、最後尾からも離され、尚且つタイヤも冷えており1周目でかなり差がつけられてしまう。厳しいペナルティだ。
最後尾を捉え順位を1つ上げ、23位に・・。ここまで5周を費やす。(1台は4周目にマシントラブルでリタイヤ)その後はマシントラブルによる1台も含め、6周目21位へと着実に順位を上げるが、8周辺りで「バ*△ロー!★ポ*◎ェ~□$」とノイズのひどい無線が入る。しんちゃんから「もう一回言ってくださ~い。」と返信。「前を行くポルシェの悪口を言っただけー!」と高橋選手。どうやらストレートの速いポルシェを抜きあぐんでいた様だ。9周目「やっと抜いたわ~!!」20位へ。「ご苦労様です。」と無線のやり取り。
12周目18位。ピットイン予定は当初15周から1周伸ばし16周だが、15周目の1コーナー「飛び出した~」と高橋選手。コースに復帰する紫電がモニターに映し出される。既にヘルメットを被って待機中の加藤選手、それを見て「(ピットに)入れた方が良い!」と指示。「ピット入ってくださ~い。」すかさず無線連絡。15周が終了しクラス最初のピットイン。加藤選手に交代。
ガス満、NEWタイヤ紫電を戦列に戻す。しかしこの時点で23位。最下位だが、18周目辺りから他のマシンのピットインが始まり、自動的に順位が上がる。まずは20位へ。19周目19位、22周目17位、24周目14位、そしてベストトラップ(3位)2′06″885をマークした27周目には13位まで浮上!
各チームのピットインがほぼ終わった、28周目11位、29周目9位、32周目には7位と、上位陣のトラブル、アクシデントがあったとは言え、ピットスタートしたマシンとは思えぬ快進撃である。 。
ここからは数周は淡々とラップを重ねる・・・・っと、どうも前を行く6位27号車のペース上がらない様だ。36周目で13秒差。残りは11~12周。ここまでの2号車と27号車のラップからすれば、充分届く距離であろう。マイナス表示(タイム差)サインが出される。38周目には9秒差。40周目5秒差と完全に射程内に入る。27号車は何かあったのか?当然2号車が迫っている事は判っているだろうが、ここまで9~10秒台と全くペースが上がらない。それに対し7~8秒台で追う加藤選手
ついに44周目サイドバイサイドでストレートを駆け抜け、6位に上がる。
そして47周チェッカー!紫電、そして高橋、加藤両選手のNEWコンビによるデビューレースは6位というリザルトで終えた。
予選6位 : 決勝 6位
獲得ポイント 獲得ポイント チームポイント5点
ドライバーポイント5点+1点(決勝ベストラップ3位)
シェイクダウン、合同テストと順調に仕上がってきていた紫電だったが、ここ、しかも決勝レース直前になってトラブルが出るとは・・・
「タラ」「レバ」レースなら間違い無く、表彰台であっただろうが、「タラ」「レバ」は優勝した以外の全チーム考える事。
しかし機械(マシン)と言うハードを使って行うスポーツなので、これらもしようがない。全くの新型車と考えればここまでが順調過ぎたのだろう。
最近のNEWマシン、03年のGaraiyaや、フェラーリ、Z、セリカ等デビュー年からそのポテンシャルの片鱗は覗かせているし、02年VEMACに至ってはデビューウインである。
反対に他のチームを例に出して恐縮ですが、今回3位表彰台を得た110号車ボクスターは昨年デビューの新型車だが、デビュー戦最後尾グリッド。そしてシーズンを通じて常に下位争いしかできず本当に生みの苦しみを味わっている。
それがシーズンオフの並々ならぬテスト、改良で今シーズン劇的に速くなっており、チーム関係者の苦労が報われたというものだろう。
この110号車を例にすれば、デビュー時点で、素性が悪い(というか、戦闘力が低い)マシンは、シーズン中の改良ではなんとも取り返しはつかないのだろう。
今シーズン500クラスでデビュー予定だったマセラティも同様で、このままシーズン戦に突入し、レースに参加しつつ、データーを得ることより、不参加とし、改良に時間とコストを費やす事の方が重要と考えての参戦延期である。
それからすれば、今シーズン充分な戦闘力を持って、闘えるポテンシャルがある事は確認できた、紫電の幸先は充分明るいと思って良いだろう。
「Team BOMEX Dream28」 666号車NSX
周防、山下両ドライバー共まだまだ走り込みが不足。予選は山下選手の2′10″321とクラス23台中22位と低迷。合同テスト、フリー走行と徐々にタイムは向上しているとは言え、このNSXの本来の性能を出し切れてはいない。
決勝レースは18周目、裏ストレートでエンジンブロー。周防選手に交代する事無くリタイヤとなった。原因はオイルポンプのベルト破損による油圧低下と思われる。
今年は参加台数が多い為、次戦の岡山と菅生等ピットの少ないサーキットでは、基準タイムをクリアしても予選落ちもある。早くマシンのポテンシャルを発揮させる為には、こうした実践レースでの走り込みが重要なだけに、完走できなかった事は残念であった。