SUPER GT 2006SERIES 第5戦 -スポーツランドSUGO-
GTレースレポート
2006年07月24日
2006年7月22・23日 宮城県 スポーツランドSUGO 富士、セパンと2戦連続ポールto4位と徐々に調子の上がってきた紫電、そしてベルノ東海ドリーム28。… |
SUPER GT SUGO GT300km RACE
サーキット 宮城県 スポーツランドSUGO
マシン名 プリヴェチューリッヒ・アップル・紫電
ドライバー 高橋 一穂・加藤 寛規
7月21日(金)フリー走行
晴れ 午後にわか雨
路面 午前ドライ:午後ウェット
富士、セパンと2戦連続ポールto4位と徐々に調子の上がってきた紫電、そしてベルノ東海ドリーム28。しかもここSUGOでは5月の合同テストではTOPタイムと相性は良く、この時に(セパン前に)エンジニア(シンちゃん)のシュミレーションでも「セパンと、菅生は“行けます”。」と不敵な笑顔で予言をしていた。
結果セパンでは、ポールポジションをGet。レースでも4位と予言を的中・・・?と言うことは、“予選番長”“万年4位”が今の組み合わせでの“行けます”なのか?ポールポジションも一か八か?のタイヤと天候の賭けで、無理やり取ったに近いし・・・。
ここでまた予言的中となっても万年4位がより“強固”なものとなるだけか・・?
この時期となれば、いくら東北とは言え、酷暑となるはずだが、今日は朝から濃霧と雨で、気温も20度を切り、“過ごし易い”を通り越し長袖トレーナーが欲しいほどである。
フリー走行1回目もその霧の為20分ほど遅れ、10時過ぎにスタート。しかし1周したところで再び濃霧がコースを覆い、赤旗中断。その後は約1時間、ひま~な時間となる。その間マシンに対し何かできれば良いのだが、突然再開されるかも知れないので、マシンに何も手が出せないのである。
再開された後も10分ほどで今度は豪雨!結局走行時間は合計15分程度で終了。タイム的にもあまり意味も無く、セパン帰りのマシンがチャンと走る事を確認した程度に終わってしまった。
明日の予選でも雨が予想されており、今日のウェットコンディションはそれなりに有意義なのだが、雨も程度問題。濡れてりゃすべて同じでもない。
午後2回目の走行は、霧は晴れたとは言え、20度以下の気温と、ヘビーウェット路面に変わりは無い。このセッションでは、1回目を走行しなかった加藤選手も、高橋選手と走行。
これ程の雨では、タイヤメーカーによる差が出る。正直現在のヨコハマは他社に水を空けられており、明日の予選もコンディションによってはそれらの明暗が分かれる事は必至であろう。
本日のベストタイムは1′38″892。13番手。トップは35秒台。1から4番手のDLタイヤ勢に2番手で食い込んだヨコハマは77号車。新型車開発で今シーズン参戦が遅れていたスバルインプレッサだ。しかもこの路面には打ってつけの4WD(AWD)としてのデビュー戦だ。・・・しかし決勝レースでは、まだ仕上がり不足の為、完走には至らなかった。
明日の“ウェット(が予想される)予選”に向けたデーターは取れた。マシンも良い調子である。メカもたまには早く終わろうと、夕方6時には引き上げ。スタッフ全員で仙台市内に繰り出した。(晩飯を食べる為です・・・)
7月22日(土)予選
晴れ時々雨
路面 午前午後共ドライ
本日は予報通り雨。当然のウェット宣言に加え、ライト点灯指示もでる。霧が濃くなる気配がある。気温も20度を割り、半袖ではいられない。・・人もいるようだ。私は平気だが・・・。いくら東北でも7月下旬。一番暑い時期のはずだが。
こうした天気ではどこの段階のアタックが有利か全くわからない。しかも2人が走らなくてはならない。少なくとも予選開始直後は視界も良いと言う判断であろうから、加藤選手がアタック。しかし1周計測が終わった頃コースアウト車両があり回収の為赤旗中断となる。ところがその間に霧が深くなり視界不良の為約20分中断。
こりゃ、この先どれだけ分断されるかわかったもんじゃない。っと、再開と同時に加藤選手がアタック。アウトラップのすぐ翌周1′34″066。とりあえずこのタイムでも6位。スーパーラップ(以下「SL」:1回目予選上位10台による1台づつのタイムアタック。これによりスターティンググリッドを確定する)は大丈夫そうだ。そそくさと高橋選手に交代。基準タイムをクリアし、とにかくSL進出権を得る。トップグループ=ダンロップ勢は既に33秒台(その中でもZの46号車は32秒台にまで入っていく。)更にダンロップ勢がタイムアップして行く中またまた赤旗中断。結局クラス占有、混走含め、予選セッション中に、なんと都合5回の赤旗中断となり、11時から始まった通常60分の予選が終了した時は午後1時10分を過ぎていた。予選順位は7位、SL出走は4番手。これでもヨコハマ勢ではトップ!1~3位と8位がダンロップ。4位がハンコック!5・6位がミシュラン勢そして7・9・10位がヨコハマと完全にタイヤメーカーで色分けされた。午後(ってこの時点で既に午後)からのSLで同じ路面コンディションであれば、D、M勢には太刀打ちできないだろう。
しとしと雨もそろそろ上がったかな~どうかな~って感じの微妙な天候。ピットウォークで傘をさしているお客さんはいない。“ビシッ”とした日差しは全く無く、14時50分からの2回目予選もウェットタイヤでフルに高橋選手が走り込む。霧雨がもうあがるかな~といった状態。走り始めは午前と変わらぬ、ウェットらしいタイムだったが、途中赤旗中断も含め15分ほども走り込んだ頃には、路面もかなり水がはけ、500が走り始めれば部分的はドライ路面になると踏んだ。
2回目予選も終わりいよいよSL。最初の出走は77号車スバルインプレッサ。4WD(AWD)はこの路面で威力を発揮するはずだったが、皮肉にもその駆動系にトラブルが発生し、SLは棄権する事となり、最初の出走は開幕戦で初優勝した88号車ムルシェラゴ。スリックタイヤでのアタックは1′28″040。完全ドライなら22~23秒台。ウェットなら32~34秒台。とするとこのタイム速いの遅いのか?
今の路面状況はウェットか?ドライか?タイヤはどちらが有利か?天秤がゆっくりと動いていると言った状態か?2回目予選で300の後500の走行だけでも状況は変わっているようだ。特に後の出走になればなるほど“迷い”の時間は長く、先にスタートしたマシンのモニターで路面状況を食い入る様に見ている。
2番目は47号車。どうやらレインタイヤで走行している。この時点で2号車はドライタイヤで既にコースイン、ウォームアップ走行に入っているので、参考にはできない。しかしこの47号車は32秒台と88号車に遠く及ばない。
続いて2号車がアタックラップに入る。今回のSL用BGMも当然ユーミン。ここで初めて松任谷由実(いままではずっと荒井由実)最近の曲「時空のダンス」である。私は昔の曲は知っているので、マシンが走る中、かすかに聞こえる曲でも充分口ずさめるが、最近の曲は殆ど知らない。となるとあのマシンの爆音の中、どんな曲かさっぱりわからずじまいだった。
無論ドライバーは300%知る由も無い。アタックBGMの流れる中、加藤選手のアタックは果敢だ。第1、第2セクターでは88号車と接戦。最終第3セクターをうまくまとめ、0.121秒遅れの1′28″161。3台走っての2位・・・。
ん~~早いのか?遅いのか見当がつかない。この後の出走はモニターで88号車の走行を見てタイヤチョイス(SLセッションに入ったら、ドライ→ウェットは交換OK。逆はNG)をしているので、それなりのタイムを出してくるだろうし、順位が下がるのを見守るだけ・・・。他のミスを願うだけ・・・。ところが続くミシュラン勢(777・101号車)はレインを選択し不発、32秒台。その後のダンロップ勢とハンコックはドライで出走。
ところが、いたる所にウェットパッチが残る、低い路温のコースに苦戦、残り4台全て88・2号車のタイムを上回る事はできず結局88号車の初ポールに続き、セカンドグリッドが転がりこんだ。1回目予選と全く逆転、ヨコハマのワンツーである。
となると、0.121秒差でセカンドポジションてのは実に惜しい。何でもGT戦で3戦連続ポールポジションは過去に例がなかったらしい。加藤選手も「もう少し頑張ればよかった。」と悔しがる。じゃ全力で走っていないのか?と言うものでもない。どれだけ安全マージンを削って走るか?と言う事で、今回の様に微妙な路面での一発勝負、しかも1回目予選からすれば、それほど上位へ行けるとは思えない。まずはミス無く“確実”にタイム出す事に集中し、他がミスをすれば上位へ行こうと言う、“守り”のアタックになるのは当然であろう。結果論として惜しかっただけである。
このスーパーラップが、今レース、最大のドラマだと思われた・・・・。
7月23日(日)決勝
晴れ 路面:ドライ
予選で判るように、路面コンディションによってタイヤメーカーの性能差(得意、不得意の方が判りやすい)が如実に現れる。
ホテルからサーキットへ向かう車中は天気予報の話題でもちきりだ。早朝のNEWS、ネット、携帯サイトでとにかく最新の情報に飢えている。・・で、実際にはどうか?と空を見上げれば、日差しも無く、今一パッとしない。山(サーキット)に入っていくと、昨日、一昨日ほどではないがうっすらと霧も出ている。
朝一フリー走行もウェット宣言が出されたので、高橋選手がとりあえずレインタイヤで出てみる。しかし1周通過し「スリックで行ける、行ける!」と無線。スリックに交換。タイム的にも24~25秒台と空模様に比べコースは乾いているようだ。
正午前から現れた太陽により路面は完全ドライに・・・。レースは定刻の14時に始まった。スタートを努めた高橋選手、オープニングの1コーナー突っ込みで、3番手の96号車に、インにねじ込まれ、ややアウトに・・・。それに乗じて11・46号車にもパスされ、2コーナーを回った時点で5位に落ち、そそまま2周目に突入。そしてその後も14・47・13号車に抜かれ8位に“落ち・・着いた”。高橋選手もタイムとしては全く悪くない。26~27秒台と良いペースであり乱れも無い。この位置をキープしトップからの遅れを最小に留め、加藤選手にマシンを渡せば上位入賞は充分可能だ。トップ46号車は序盤こそ24秒台(2周)もあったがその後は25~26秒台。しかしこのペースは別格。2位の13号車25~26秒台。他の先行マシンもタイムは26~27秒台である。
そんなミスの無い走りが功を奏し、トップグループの中で波乱があり、96号車と11号車が接触コースアウト等、13周目には6位にジャンプアップ。そして24周目トップから32秒差、6位キープでのピットイン。
加藤選手に交代。ピットアウトしてリセット順位は20位。その後はたびたび24秒台もマークする快走。他のピットインも始まり順位はドンドン上がり、18周目16位に上がった時のタイム、24秒743がレースベスト2位である。
25~26秒台のペースで、36周目9位、37周目7位、そして24秒台から時々26秒台とややペースに乱れがでるも、46周目にはピットイン前の6位へ復帰。47周目5位、48周目には4位へ、前は27号車VEMAC。ポイントリーダーである。なんとしてもこの前に行かなくては、ポイント差を詰められない。
その後57周まで、テールtoノーズでプレッシャーをかけ、58周目ついにオーバーテイク3位!初めて表彰台ポジションに駒をすすめた。無論それでもペースを落とすことなく24~26秒台。これは1位の46号車、2位の13号車より速いペースである。
シンタロー(エンジニア)が無線で・・「ポジション3、ポジション3、このペースならトップへも届きますよ~」
加藤選手「そんな簡単に抜かせてくれね~よ!(怒)」・・ごもっともで。
だが狙っていないはずは無い。
62周マイナス8秒
63周マイナス6秒
64周マイナス5秒
65周マイナス3.5秒
66周マイナス1.3秒
そして68周目はマイナス0.5秒・・・!
その後は46・13・2の三つ巴のテールtoノーズ。順位が入れ替わる事は無いが、ワンミスで奈落の底に突き落とされる。その3台の接戦によるペースの乱れに乗じ4位の27号車も接近。
そして75周目に入る4台!直後に500のトップマシンがファイナルラップへ・・。この周回でラップされるだろうから、4台もファイナルラップとなる。問題はどこで抜かれるか?500マシンもこの4台がトップグループで大接戦であることは判っているだろうから、安全にパワーを活かせるレインボーコーナーから馬の背コーナーまでのストレートで3台をパス。そして馬の背からSPコーナーまでに46号車もパス。
4台(3台+1台)のデッドヒートを邪魔するマシンはいなくなり、4台は最終コーナーへ。46・13・2号車僅かに遅れて27号車。しかしここで勝負を掛けた加藤選手のコーナーリングスピードは驚異的に早く、立ち上りで13号車の前に出る。しかしここからの昇りはパワー勝負!モニターテレビはここまで!
地平線から飛び出すように、横一線で3台が坂を駆け上がって来た!チェッカーが振られた。順位は・・・!
モニターを見る、ンタ~サ・ン・イか~!!(3位)
1~3位までのタイム差は0.351秒差。(4位まででも0.78秒差)2位と3位は1000分の34秒差と、どうやらGT史上に残る大接戦らしい。ま~何とも派手な初表彰台となった。
2006年 SUPER GT第6戦 GT300クラス
獲得ポイント
ドライバーポイント11点+3点(予選2位)
+
2点(決勝ベストラップ2位)
いつかこんな日がくるかと思っていたが、こんなに長い時間がかかるとは思っていなかった。
01年の終盤第5戦から中途参戦から、この表彰台まで29戦(鈴鹿1000km等シリーズ戦以外は除く)を要した。
02年フル参戦、2戦富士の予選で、セカンドポジションを得て(決勝はトラブルで完走止まり)、第3戦菅生で、4位入賞。そして第7戦MINEでは初のポールポジション(決勝はトラブルでリタイヤ)。色々波乱もあったが22ポイントをあげ、ランキング16位となる等、ルーキープライベーターとしてはまずまずの活躍ができ、こりゃ表彰台も近いわ。と思っていた。
がっ!甘かった。無論参戦できるだけで“良し”とするつもりで、このGTに参加している訳では無く、翌年以降も、種々の改良を加え参戦を続けたが、4位からあと一段は実に高かった。
このGT戦も13年をむかえ、色々とルールは変わって来ているが、マシンのハードとしては完全に成熟期に入っており、それらの波はプライベート参加が“多いと言われる”この300にも及んでいる。
生半可なマシンで表彰台に上がれる程、甘いレースでは無くなった。
11位からポイント圏の10位へのワンポジションアップと4位から表彰台圏3位へのワンポジションアップは倍も、その倍々も険しかった(物質、精神面、運、等色々な意味で・・)。
あとはどの“レベル”で“継続”できるかがチャンピオンへの舗装路となるのであろう。
これが3位のトロフィー。結構届かないものだった。
「Team BOMEX Dream28」 666号車NSX
周防・山下両選手・NSXのトリオもこれで4戦目。(岡山は周防選手に代わり高崎選手が組んでいる。)両選手共NSXには充分慣れて来ている事かと思うが、まだまだポテンシャルを引き出しているとは思えない。マシンも性能引き上げ措置でリストリクターは「+2」。パワーは“GT350“トップスピードは紫電など歯が立たない。しかし今回は3周遅れの14位。
決勝中のベストタイム1′27″930も、チェッカー直前の69周目にマーク。ここから1~1.5″落ちの28~29秒台から外さない走りができれば良いのだが・・・。またピット作業を含めた、インラップ、アウトラップでも20秒以上は短縮できる。まだまだ課題は多い。