Super GT 2006 Series 第8戦 -オートポリスサーキット-
GTレースレポート
2006年10月14日
2006年10月14・15日 大分県 オートポリスサーキット 前戦モテギは最悪の無得点だった為、ドライバーズランキングは、 16点差と開き3位へ。そして… |
SUPER GT IN KYUSHU GT300km
サーキット 大分県 オートポリスサーキット
マシン名 プリヴェチューリッヒ・紫電
ドライバー 高橋 一穂・加藤 寛規
10月12日(木)設営
前戦モテギは最悪の無得点だった為、ドライバーズランキングは、16点差と開き3位へ。そしてむかえた残り2戦。ここで前2台7号車と61号車より高得点となる上位に入らなくては後が無い。
ところが9月末の富士テストから、ここまでに朗報が入った。これまで伸び悩んでいた、トップスピードに改善の兆しが見えたのである。
エンジンチューナーである戸田レーシングがベンチで計ったパワーに対し、実走ではかなりかけ離れていた。(サーキットでベンチテストを行うわけでは無く、データーロガーとドライバーからのフィーリングであるが・・・。)
このSUPER GTシリーズでは、過給機の有無や、排気量の増大に対し、空気吸入口が絞られ(リストリクター)、パワーを制限されるので、単純に「排気量が大きい=ハイパワー」とは限らない。(最近の傾向として大排気量でNAが有利・・と言う傾向にはあるようだが・・・。)
そうした事を充分踏まえて、ベストチューニングを行っているはずだが、思う様なパワーフィーリングとならなかった。
ところがベンチテストでのエキゾーストパイプと、実車に装着されているエキゾーストパイプとに僅かな寸法違いがある事が判明。実車の走行テストを行う事はできないが、実車のエキゾーストパイプを戸田レーシングに送り、装着しベンチテストを行うと、これまでの実走で得られる(よろしくない)データーと殆ど同じとなった。
急遽エキゾーストを改良。オートポリスに乗り込む事となった。 外観的にはエキゾーストエンド部(マフラーカッター)の変更が目に付くが、個人的な趣味で言えば「カッコ悪~い」である。
10月13日(金)フリー走行
8月31・1日の合同テストではトップタイムだったとは言え、参加が3台の為、ライバルとの比較とはなりにくいが、ここで得たデーターと、改良エキゾーストの成果は今日の練習走行でいきなり開花した。
午前セッションでは加藤選手が1′51″151とトップタイムをマーク!高橋選手は・・と言えばここまでのペナルティ累積ポイントで本日午前の練習走行はできない。セパン以来2度目に”免停“である。
しかし午後からは高橋選手を中心に走行。レースモードとしては充分な54秒台の安定した走行。決勝に向け明るい話題を提供した。
ところがその後、改良したエキゾーストのパーツが脱落すると言うトラブルが発生。残り30分中の、300クラス占有時間に予定していたNEWタイヤによる、予選シミュレーション走行はキャンセルとなった。
10月14日(土)予選
晴れ 路面 午前午後共ドライ
このレースウィークは、全く雨の心配は不要。今日の予選も素晴しい秋晴れだ。
ここ2戦逃し続けた、スーパーラップ、(以下「SL」:1回目予選上位10台による1台づつのタイムアタック。これによりスターティンググリッドを確定する)今回はただ進出に留まらず、ポール奪取を狙う。その為の1回目予選、開始後8分まで他車のタイムを充分確認。充分“タメ”て加藤寛規選手がスタート。計測2周目で1′50″475!でトップタイム。SL進出はほぼ確定。ピットに戻る。その後300占有終了直前に96号車がコースレコードとなる50″155をマークしSLの“トリ”を奪われる。」 チャンピオン争いのライバルとなる7号車は3番手と僅差。61号車は12番手でSL進出を逃し、大きく後退した。
だがこれでグリッド決まった訳では無い。グリッド10番手に落ちる可能性だってありうる。
高橋選手は500との混走の中、53″195をベストに53秒台を連発。昨日の走行不足を感じさせない走りを示し、決勝への期待を抱かせる。
SLに向けて更なるタイムアップ、要するにポール奪取に向けてセッティングを煮詰める。そのひとつがギヤレシオの変更。これを外すと、午後2回目の予選が終了してもSLまでには戻せない。が、テストも含めたデーターから、確信を持って挑む。
午後2回目予選終了。ギヤレシオも問題無い。その直後に始まったSL。10台中9番目にスタートした、加藤選手。この時点でトップは7号車。51″026。路面コンディションの変化か?ここまでの8台は全て1回目予選タイムを下回っている。
加藤選手はトップスピードが影響する第1セクターこそ、7号車に遅れたものの、第2セクターで取り返す。そして登りコーナーの連続する最終第3セクターでは、大きくスライドしているのが、モニター画面でも見て判る。ロスしたか?
横っ飛びで最終コーナーから現れる。ゴールラインを通過!タイムは・・・?んっ??モニターに出ない?数秒の間をおいて表示されたのはナッ、なんと我が目を疑う49″941!!7号車に1秒以上差をつけダントツである。勿論1回目予選、96号車のコースレコードもとりあえず塗り替えである。
ほぼポールポジションを手中にし、最終96号車のアタックを見守る。
96号車はトップスピードを生かし第1セクターはややリードしたものの、第2、第3セクターではそれを守れず後退。結果50″584と我々にはありがたい、7号車に割って入る2番グリッドとなった。
我々を含め、3台しか参加しなかった合同テスト。その内の1台96号車がセカンドポジションに納まり、“プリヴェチューリッヒ紫電”、今シーズン3度目のポールポジションが確定、コースレコードの“おまけ付”(これは何も出ない。)である。
10月15日(日)決勝
晴れ 路面:ドライ
昨日に続き、素晴しい秋晴れでむかえた15日決勝日。朝のフリー走行で、満タン状態の高橋選手がやや伸び悩む。そこで今回は加藤選手がスタートを務め、とにかく先行、後半高橋選手は燃料を必要分のみにし逃げ切る作戦とした。また500に周回遅れになる前に、レースベストラップをマークし、1点でもポイントを稼ごうという狙いもある。
その作戦のカギはスタートにある。ポールポジションという位置を生かし、ホールショットを奪う事。
午後2時レースは定刻にスタート。第1コーナーから加藤選手のGood Job!その後方2位以下に多少の混乱があり、1周目で3秒ものリード!2周目には1′52″254のベストタイムをマーク。着実に“仕事”を片付けていき、このまま2位以下を引き離すかに見えたが6周目、その集団からヌルヌルと7号車が抜け出し、7秒弱まで広げたリードを縮め始めた。
その後は、この2台で3位をドンドンと引き離し、そろそろピットインが始まる20周辺りでは3位(55号車)とは30秒以上の差が付き、7号車との一騎打ちの様相を呈してきた。
ランキング1位の61号車は12位スタートの為、まだ“来ないが”、ランキング2位の7号車の前でのフィニッシュする事も今回の仕事のひとつだが・・・。
リードが約8秒と開いた34周目、その7号車がピットイン。ところがNEWタイヤとなった7号車のペースに対し、加藤選手のペースはまだまだ速い!そして目一杯引っぱった、「プリヴェチューリッヒ・紫電」、加藤選手も42周が終了しピットイン。高橋選手に交代、7号車より短いピット作業と早いアウトラップで、リセット後のタイム差は約30秒となった。
残り周回18~19周を7号車と変わらぬペースで逃げる高橋選手。しかし既に殆どのマシンを周回遅れとしてしまった終盤、それらのマシンのオーバーテイクを慎重に行なった為、7号車とのマージンを削って行くが、エンジニアのシンタローからは「今のペースで行ってください。」と、焦らせないよう無線でマイペースを指示。
ピットでは「早くレースが終ってくれ」と祈るばかり。(追い上げている時は逆に「もっとレースが続け」と祈る。)
61周目ファイナルラップ!トップを一度も明け渡す事無く、2位7号車に12秒、そして3位以下を全て周回遅れ(500のトップが割り込んだ為だが・・)という大差を付けフィニッシュ!01年参戦以来、待望のGT戦初優勝を飾った。
しかもコースレコード付きの予選1位、ファステストラップ1位と、取れるポイントは全て獲得。ここまでランキング1位の61号車がリタイヤ、無得点でレースを終えた為、ランキング1位に躍り出る堂々たる優勝である。
2006年 SUPER GT第8戦 GT300クラス
予選1位 : 決勝1位
獲得ポイント チームポイント20点 累計63点 ランキング 3位
ドライバーポイント20点+4点(予選1位)+3点(決勝ベストラップ1位)
累計86点 ランキング 1位
いつかこんな日が来るだろうと思っていたが、こんなに早く来るとは思っていなかった。と言っても、第5戦菅生で3位初表彰台から3戦目。表彰台に上がるほど勢いがあるシーズンだからこそ優勝もできたのであり当然の結果かもしれない。
このレースの直前の雑誌で高橋選手の紹介がされ、自らを「アマチュアドライバーである」と言っている。(自ら言わなくても判っているが・・)一方の加藤選手は自他(”自“はよく判らないが・・。)共に認めるプロドライバーである。昨今こうしたペアチームが表彰台に上がる、ましてや優勝などは快挙と言える。
確かにその加藤選手がレースの3分の2を走行すると言う、過重労働を強いて、残りを高橋選手が受持つと言うレーススタイルであるが、だから優勝できるほど甘いクラスではない事は、他のドライバーの顔ぶれ、マシン、チームから容易に想像できる。
多くのプロドライバーが、とうに引退している年齢で走る高橋選手。普通ならレースを楽しむ為、ともすればストレスの消化レース的参加となるのだが、高橋選手は、車載映像や、加藤選手からのレクチャー、コースサイドから舘”師匠“による指導とスキルアップには貪欲であり、それらをコース上で発揮し続けている発展途上である。
そうした高橋選手のスキルアップと、加藤選手の卓越したマシンセッティング能力(ドライビングは論外!)、それらに応えたムーンクラフト、戸田レーシングのエンジニア、メカニック、それら全てが結実した値千金の1戦と言える。
「Team BOMEX Dream28」 666号車NSX
今回も、周防選手が仕事上の都合で、参戦を見合わせます。 ここ九州オートポリスは遠征先としては経費も時間的にもばかにならず、300クラスのエントリーも21台と、前戦モテギの26台から少なくなっている。
2001年からの「Dream28」による、NSXの参戦も今年限りで、次回最終戦富士が最後レースとなる。