モータースポーツ

2012:SUPER GT第8戦 ツインリンクモテギ

2012シーズン 紫電
2012年11月15日

12R08-000.jpg なぜ加藤選手がパラソルを・・・?

SUPER GT第8戦 ツインリンクモテギ

 7ヶ月8戦にわたるシリーズ戦もいよいよ最終戦モテギ。
 前戦オートポリスのノーポイント(クラッシュによりプラクティスのみでリタイヤ)の為、完全にチャンピン争いからは外れてしまったが、ランキングをひとつでも上げようというモチベーションを失っては、レースをする意味も資格も無い。
 また、今回このレースはEVA紫電にとってはシリーズ戦ラストレース。
 デビュー以来、数々の名勝負を繰り広げ7年を迎えた長寿マシンに、有終の美を飾らせたいというスタッフの思いは強い。
 しかしこのモテギは、絶対的パワーがタイムに直結するSTOP&GOサーキットで、富士以上にEVA紫電には不得意なサーキット・・・ながらこれまで2度、08年、09年と2度2位表彰台に上がっているが、FIAGTマシンが圧倒的に強い今年、苦戦は必至となろう。

10月27日(土) 練習走行 / 晴れ

 明日は雨予報だが、今日は終日晴れ、ドライ走行となるだろう。
 セッション開始・・・しばらく待つ。
 ここモテギは、セッション開始からしばらく(マシンが走行)した後の方がグリップが増し、タイムが上がるという、コースの特性・・・というか経験上、わかっている。(逆のサーキットもある。)
 グリップの悪い状態ではタイヤの損耗も大きくなるという事もあり、開始から10分以上経過してから加藤選手がコースイン。
 部分的に舗装の改修もあり、ウィング、ダンパーをすこし調整しタイムアタックに入り、1′51″411!
 楽々コースレコード(従来53″147)ながら8番手。

12R08-014.jpg シリーズ戦最後を迎える紫電。 12R08-066.jpg プラクティス開始・・・いまだタイヤも未装着。 12R08-074.jpg ウィング、ダンパーのセットが中心。

 トップは911号車ポルシェ50″199、5番手まで50秒台、12番手までが51秒台。
 その後、足回りの微調整を加えつつアタックを続け、51秒台で安定したあたりで高橋選手に交代。
 程なく53秒台に入るものの、タイム的にはややばらつきが大きいが、自己ベストを3秒以上上回っている。
 500との混走セッション終盤には53秒台前半に安定。
 300クラス占有に入り、NEWタイヤでのアタックも52″810までタイムを上げるが、最終アタックに入った裏ストレートエンドの90°コーナーでスピンコースアウトを喫してしまった。
 マシンは多くの砂利を積んで帰ってきたが、ダメージは無し。
 まだタイムアップが期待できるセクタータイムだっただけに、残念だが、予選、決勝への期待が膨らむ走りだ。
 セッションが終了した結果、2号車EVA紫電以外は、14番手まではすべてFIAGTマシンと、予想通りの勢力図、また20台のマシンが非公式ながらコースレコードを上回るという事態となり、予選、決勝共激戦が予感させる。

10月27日(土) 予選 /晴れ

 今やSUPER GTの主流となったノックアウト予選。
 まず高橋選手が、上位16台が進むQ2目指し、Q1突破に挑む。

12R08-117.jpg 高橋選手コースアウト!! 12R08-122.jpg 大事には至らないが、大量の砂利。 12R08-138.jpg 各部に入り込んだ砂利は、入念に取り除かないと大事に至る。

 Q1予選開始。
 殆どのマシンがコースインした後、高橋選手もピットを離れる。
 タイヤを暖めアタック開始。
 52″701ベスト更新!!だが18番手。
 NEWタイヤの“美味しい”周回域に入る。
 更にアタック52″274 更に短縮!!だが他もタイムアップ19番手。
 この予選に使用するタイヤは、決勝スタートタイヤになるので、温存しておきたいのでこれ以上のアタックはやめておきたいのだが・・・
 高橋選手も好タイムで安定している。
 このまま、この52秒台での連続周回のリズムは明日の決勝レースへの大きな足がかりになるだろうと判断。
 また明日は降水確率は高く、雨が降ればこのタイヤを使用する事はない。
 渡邊エンジニア「もう1周行っても良いですよ!」と無線連絡。
 そのまま3周目のアタック入る高橋選手。
 しかし3周目は52″475!!
 ベスト更新とはならずコンマ5秒及ばず19番手、Q1敗退となった。

12R08-176.jpg 予選Q1は高橋選手のアタック。 12R08-186.jpg Q2進出はならず。しかし中身は良かった。

■予選後のコメント
■渡邊エンジニア「んーーーん チョット例年以上に・・・今回このモテギ・・紫電が不得意だって言うこと毎年言ってるんですが、ま~この・・FIAGT勢の狂速さが出た予選で・・・ま~ガライヤがQ2は行きましたけど・・それ以外はJAFGT勢は下位に沈むような・・・ 高橋選手の走りは・・僕は良かったと思うのですが・・周りはそれに輪をかけて速かったてのがあって、残念ながらQ1敗退してしまったんですが・・・う~んどちらかというと何が・・極端に何が悪いから直せばとか・・あと1秒とか2秒とか 上がんのか?っていうところにいない感覚があるんで・・明日(の決勝レースは)はもう確実に進めていくしかないんかな・・・。何かがこれたとか、バランスが悪いとか何か原因があれば、それに対して対処しようってのあるんですが・・そういう状況じゃなく漠然と遅いんで・・・ま~(トップ)スピード差も20km近くもあるし、正直・・歯が立たない。あまり弱気な事言っても・・勝負なんで・・いってもしようがないいですが・・それを更に輪をかけて・・ガッカリさせられちゃうくらいスピード差があるんで、とにかく明日は確実に・・天気もわるそうなミス無く最後のレースを締めくくれば良いのかなって思います。」
■高橋選手「なんとも言えんね。なんか・・・頑張ったつもりだけど、失敗もあったし・・・でも自分の(これまでの)ベストからいったら4秒以上早いから・・・全然こんなタイム(52秒台)元々見えてないタイムだったけど・・・う~んクルマの差だね。ドライバーの努力では補えない。ま~来年はバシッと行きますから。(まだ明日のレースがあるけど)来年ポールポジションの嵐だ(笑)今に見とれ!!(笑)」
■加藤選手「予選は僕が走ることができなかったんですが、ただ結果から言うと僅差で(Q1で)落ちてしまったんですけど、内容からすると高橋さんもNEWタイヤでタイムを上げられる様になってきましたし、実際車載映像みてましてもかなり攻めれてたので・・・Q1突破できなかったのは残念なんですけど、間違いなく成長できてるんだなと確信がもてたので、今後に繋いで行くんじゃないかなと思ってます。明日は天候が雨の予報なので、荒れるレースになると思うのでうまく混乱に乗じて前の方に行きたいと思います。」

10月28日(日) フリー走行 / 曇り

 フリー走行直前に雨が降り始めるが、実際の走行時間には上がり、ドライの走行とある。
 今回はサーキットサファリを前後に挟んで、フリー走行となる。 
 相変わらず決勝想定のEVA紫電はバランスがよく、加藤選手は51″436と3番手をマーク。
 高橋選手に代わり53秒台が安定するものの53″611がベスト。
 昨日は殆ど同じ条件下で加藤選手の1.4秒マイナスだった事からするとややタイムが悪い。
 
 フリー走行が終了し、2回目のサファリが始まる頃になると、再び雨となり、ドライタイヤでは無理なコンディション。
 ウェット宣言が出され、マーキングタイヤ以外の使用が認められる。
 このサファリで無理な走行は禁物なので、各チーム午後決勝用のタイヤの皮むきが行われ、EVA紫電も同様にウェットタイヤの皮むき、また高橋選手から加藤選手へのドライバー交代練習が行われる。
 そう今回は高橋選手スタートを予定している。

12R08-239.jpg 決勝日朝、フリー走行直前にパラつくがすぐに上がる。 12R08-277.jpg フリー走行後のサファリで再び雨。ウェットの皮むきを行う。

10月28日(日) 決勝 / 雨

 
 朝の予想より早い雨は一旦上がり、午後はドライの可能性もあるかと思われたが、やはり雨。
 しかしスタート直前では小雨。
 グリッド上でも傘を必要とする程ではないが、路面がドライに向かう様子はない。
 スターティングセレモニー中の現時点ではウェットタイヤ、このまま雨が完全にあがるとみてインターミディ(浅みぞ)というチョイスも無くはない。
 だが、雨足はまったく変わることなく、“路面を濡らし続ける”雨が降り続き、ほとんどのマシンがウェットタイヤでスタート。

12R08-307.jpg 決勝、ウォームアップラン。完全ウェットだが、小雨。 12R08-323.jpg グリッド上、渡邊エンジニアを挟んで両選手。スタートは高橋選手。 12R08-336.jpg 最後のレースとしては寂しいグリッド位置。

 レースはこの路面コンディションを鑑み、セーフティーカースタートなった。
 2周を終えセーフティカーがピットに入りレーススタート。
 ウォータースクリーンの中1コーナーへ入る。
 3周目3コーナーで360号車(コルベット)、5コーナー立ち上がりで66号車(アストンマーチン)にパスされ21位に・・・
 4周目には90度コーナー進入で大きくアウトに膨らんだインから14号車(IS350)に抜かれ22位にまで順位を落としてしまった。
 タイヤがグリップせず、コース内にマシンを留めるのが精一杯のようだ。
 中段が2分03~04秒台でラップする中、3周目10秒台、5周目5秒台と全くペースが悪い。
 03~04秒台となったのは6周目から、しかし序盤につけられた差は埋まらず、順位こそ9周目に21位、14周目に20位となるが、共に他のマシンのトラブル、コースアウトによるもので、レースが出来てる状態ではないが、こうしたコンディションでは、まず確実に周回を重ね確実に生き残る事が大切である。
 今回がEVA紫電のシリーズ戦ラストレース、なんとしてもチェッカーは受けさせてやらなくては・・・。
 9周目には4コーナーで追いついてきた500が、オーバーテイクのタイミングを測り、後方で右から左へとマシンを振った際、右後部が軽く接触。
 大きなショックもなく、走行に影響も出なかった程だが、実際には翼端板が吹っ飛び、テールランプ取り付け部が破損、テールランプがぶら下がっている状態となった。
 オレンジボール(何らかのメカニカルトラブルがある場合にカーナンバーとともに出される旗(黒地にオレンジの丸)のこと。)が出るかもしれないと思われたが、コードでぶら下がっており直ぐに脱落の危険性はなさそうだが、ルーティンピット時に修復するようオフィシャルから指示が出される。
 16周を終えピット前にマシンを止めた高橋選手から加藤選手に交代。
 タイヤは用意してあるが、当初の予定通り無交換。
 給油のみでピットアウトの予定だったが、右後部、テールランプの修復が必要な為、落下防止としてガムテープで止める。
 濡れたボディにガムテープがうまくつかず、修復に時間が掛かる。
 結局約2分20秒ほど要し、ようやくピットアウト、21位でレース復帰だが、このピットストップで、トップから2周遅れとなり完全に勝負権は失った。
 加藤選手のタイムはすぐに03秒台から01秒台にペースアップ。
 しかしトップグループの58~59秒台には遠く及ばない。
 21周過ぎから他のマシンもルーティンピットに入り、順位が入れ替わるが、2号車EVA紫電はそれらの影響を受けること無く20位辺りをウロウロするだけで、途中02~03秒台で周回する中位グループを形成するマシンに追いつくが、彼らからも既に1周遅れとなっており、積極果敢にバトルができる”立場”にない。
 コースコンディションは終始ウェットとなった為、終盤に入ってコースアウトするマシンも出た事もあり、トップから3周遅れの48周を終え、16位でチェッカーを受ける事となった。
 数々の名勝負を繰り広げ、幾度も優勝、表彰台にも上がらせてくれた、名車紫電、そのシリーズラストランとしてはあまりに寂しいリザルトとなってしまった。 

12R08-350.jpg 終始ウェットのレース。ラストリザルトは16位。 12R08-372.jpg 汚れたマシンを拭きあげる。お疲れ様でした。 12R08-380.jpg リザルトは寂しいがチェッカーを受けさせてやれてなにより・・。

■決勝レース後のコメント
■渡邊エンジニア「今年最後のレースがあまり気持ちの良くない形で終わったんですけど・・・予選の時にも話しましたが、クルマのパフォーマンスが・・特に極端にこのサーキットの特性的に(悪い所が)出ちゃったってのがあるにせよ、今年1年通しての話なんですが、紫電を走らせ始めて以来、テストも含め、全てのレース&テストで必ず壊してしまうと・・・今回もずば抜けて早くはなかったんですが、シングルフィニッシュはギリギリできるかなという雰囲気だったんですけど・・ファーストスティントで500とぶつかっちゃって・・それを修復しないと再スタートができないよということで、ピットインのタイミングで修復したんですけど・・それでもリヤテールランプも壊れちゃったりしてそれが落っこちること無く配線が繋がっていて、電気もうまく流れていたんであれくらい(短いピットストップ)でましだったんですけど・・・。とにかくレースの順位の前に・・ぶつからないこと・・当然どっちがいいとか悪いとかあると思うんですが・・・結局ぶつからない人はぶつからないんで、当然タイミングもあるんでしょうけど・・そういう(ぶつかるという)こと無くレースを終えるという事の重要性を今年は切実に感じましたね。(横から高橋選手「ぶつかってなくても全然ダメだったよ。」)僕個人的にはギリギリポイントとれたかな・・?ってところですね。加藤選手はプッシュすれば1秒台から(2分)フラットくらいは出るかな?って思うんでうすけど、タイヤ残しながらのイメージだと01~02秒台・・・そのラップタイムって、実際平均でみれば10番手前後のラップタイムなんで、どちらにせよトップファイブと絡むレースは、どちらにせよ今回は厳しかったのかなって思います。シリーズ戦終わっちゃいましたけど、あとスプリントカップありますんで、またクルマ修復して、気持よく紫電の最後が終われる様に頑張ります。
■高橋選手「ま~とにかくタイヤがダメだったね。回らない。止まらない。俺だけがタイヤのせいにするとまずいけど、カトチャンも大した事なかったから・・もうボロボロだった。最後もダメだったし・・。もう少しカッコよく締めくくりたかったけど・・・ま~来年ビシッと絶対チャンピオンとりますから。」
■加藤選手「まだ状況がよく分かってないんですが、ピットに入ってドライバー交代したあとに・・修理ですね?(右のテールランプ)それが何をやっているか全然分かってなくて・・・それを直し終わってピットアウトしたんですけど・・・・チョットタイヤ(選択を)はずしたかな~?タイムが平凡になってしまって・・しかも周回遅れになってしまって・・。一生懸命走ってたんですが順位は残念ながら(横から高橋選手「カトチャン平凡でもこっちはボロボロになっちゃった。」)16位と終わったんですけど・・・今シーズン結局1回もぶつからずに終わったレースは無かった珍しいシーズンでした。(横から高橋選手「オートポリスは決勝行ってないからね。」)紫電にとっても、応援してくださった方にとっても申し訳ないシーズンになってしまったんですけど・・・あと本当にラストランになった富士(JAFGP)応援よろしくお願いします。」