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SUPER GT第6戦 決勝レポ

ニュース
2009年08月27日

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photo/Kazuhisa Masuda 

こぼれ落ちたシーズン2勝目!しかし3戦連続表彰台GET!


 
 8月22・23日第6戦は三重県、鈴鹿サーキット。
 SUPER GT第6戦 第38回INTERNATIONAL Pokka SUMMER SPECIAL

 マシンは順調な仕上がりを見せるものの、92kgのハンディウェイトを含め、1300kgを超える車重の影響は如何ともしがたく、ノックダウン予選ではセッション3に進めず12番手。
 その後、ポールタイムを出したチームが、“どこか”のチームも経験した様な車検失格となり最後尾となった為、11番グリッドに繰り上がり決勝をむかえる。

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過去のデータはあるが、タイヤ、路面も異なるのでセット変更は常に行われる。
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photo/Kazuhisa Masuda
セットアップの時間が少なく、練習時間も足りないのが3rdドライバーを入れなかった理由のひとつ。
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ハンドリングに違和感があると両ドライバー。

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やっと2名お揃いのレーシングスーツ。表彰台でお披露目できるか・・?
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ファンからの花束プレゼント。ありがとうございます。
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年に一度、鈴鹿Pokka恒例のナイトセッション。

 今回のレース、例年の1000kmが700kmに短縮。
 500クラスとのタイム差から、300クラスは約640~655km、110~113周と予想。
 実はこの距離なら一部燃費の厳しいマシンを除き、多くのマシンは2ストップ、3スティントでも充分走る事ができる距離であるが、ルールで3回のピットストップが義務付けられている。
 (今回それが、レースを大きく左右する事となった。)
 それならば、少ない燃料、軽い状態でスタートして序盤でペースを上げるとか、スタートから満タンとして、途中で“カラ”ピットインで義務回数をこなすとか、各チームで作戦はまちまち。
 我々のとった作戦は、満タンでスタートし、レース開始直後にピットイン、再度満タン(給油時間3~4秒、殆ど“義務消化”ピット)とし、300クラスの最後尾にポジションを移し、混戦に巻き込まれるのを避け、淡々と順位を上げるというものだ。
 スタート直前のにわか雨は、この作戦の修正を迫られるかと思われたが、大した事はなく、午後3時全車ドライタイヤでのスタートなった。

 オープニングラップを10位で通過するが、トップグループの2分10秒台に対し、スタートを務めた加藤選手のいる中段グループは12秒台とペースを上げられない。
 翌2周目を終え、予定通りピットインを敢行!
 多くのファンは、何か有ったのか?トラブル?ペナルティ?と心配されたようだが、全くもって予定通り。
 短い給油のみでレースに復帰。当然順位は最下位、20位。
 トップとは40秒以上の差がついた。

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決勝は、湿度も低いカラッと快晴。
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スタート直前にパラッと雨が降りレインが準備されたが、結局影響なし。
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スタート前の両ドライバー。緊張など微塵も感じられない。いつもだが・・・。

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photo/Kazuhisa Masuda
スタート!
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photo/Kazuhisa Masuda
1周を終え早くも26号車が仕掛けるがその後パンクで脱落。加藤選手は中団に埋もれてしまったのでこの翌周、予定通りピットに入る。
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序盤は1・2番グリッドのフェラーリ勢がレースをリード。

 しかしこの作戦は功を奏し、直ぐに10秒台にペースUP、追撃を開始。
 5周目には19位、7周目には17位に上がる。
 8周目には、我々と同様の作戦を取るカローラアクシオの1台、74号車もピットン、短い給油のみで2号車の直ぐ前に復帰。共にトップグループと、ほぼ同じラップタイムで15、16位を形成する。
 20周を過ぎ14位。この辺りから1回目ルーティンピットが始まり、自動的に順位は上がる。
 22周目には11位。23周目10位。
 30周では7位に、翌31周目6位。
 長丁場の為、そのピットインのタイミングは各チームかなりバラつきが見られる。
 多くは20周台でピットインが行われたが、上位グループを形成していた、81、11、46、43号車は30周台。
 37周目には74号車に続く4位に上がるが、翌38周目には46、43号車、そして74号車(2回目)の3台揃ってピットイン。
 だがこの時我々もピットで、受け入れ準備も完了し、加藤選手の到着待ちであった。
 燃料が減り軽くなったにも関わらず、ややタイムが落ちてきた事、タイヤか?混戦状態となった為か?疲れは無さそうだが、予定より4~5周早い39周を終えピットに入ってきた。
 加藤選手から、吉本選手(以下、ヨッスィー)に交代。燃料フルチャージ、タイヤ前後交換、クールスーツ用氷交換等、ピット作業フルセットは順調に進む。
 1回目に比べ、40秒以上を費やしヨッスィーを送り出した時点で9位。
 ここまで直ぐ前にいた74号車はピットストップで順位を入替え、直ぐ後10位に下がった。
 トップ11号車とは64秒差であるが、彼等はまだ2回のピットインが必要であり、2位以下の81、19、7、46、52、43、88号車も、同様2回のピットストップが必要である。
 また燃費の差により、46、43号車等は、我々2号車同様、1回は“義務消化”に近い短時間のピットストップで済みそうであり、全車義務ピットストップが終われば上位に来ているだろう。
 2スティント目(厳密には3スティント目だが)を走るヨッスィー、ピタリ11秒台中盤で、淡々と周回をこなすが、NEWタイヤ、休憩充分なわりに今ひとつタイムが伸びない。
 いままでのヨッスィーなら、レース中は加藤選手を上回るタイムをマークする快走を見せるはずなのだが・・・。
 しかも、何も喋らない。静かである・・・んっこれは無線がおかしいのか?
 いくら呼びかけても返事が無い。マイクか?イヤホンか?「サイン見えたらパッシングして!!」と呼ぶが、これも反応なし。
 こちらからの声が届いていない。
 続いて大き目のホワイトボードに「FU?」(燃料使用量は?)と書いて見せる。「#5☆、△2・・」雑音が多い中どうも当てにならない数値を答えてきた。
 イヤホンがダメ、聞こえていない。マイクも調子が悪いようだ。
 レースは無線が無くても、サインボードでできる様にはなっているが、マシンやドライバーからの情報がわからないと、緻密な作戦変更ができない。
 気温や湿度、風向き、走り方に対して、今現在の燃費は、ガス欠を回避し、且つ給油時間の1秒を縮める最重要とも言えるデーターである。
 そのヨッスィー“孤独”に耐えながらも、50周目には8位、54周目には6位、69周で5位。
 43、52、19、7号車等、上位陣の2回目のピットインもあり、順位を上げて行く。
 69周目には2位の81号車が、3位の46号車に対して75秒のマージンを築いて2回目のピットイン。
 短いピットストップで、順位を落とす事無く復帰。
 11、81、46、74号車に続く5位。直ぐ後には43号車。
 11号車は2回、81、46、74、2、43号車はあと1回のピットストップを残した上位陣。
 70周を過ぎた辺りで、46号車、74号車が3、4位争いの接近戦となり、順位を入替え、続いて46号車とヨッスィー2号車との白熱したバトルが2周に渡って展開されるが、ラップタイムは両車共、13秒台と大きく落ち込む。
 この接近戦は74周目のデグナーで、ヨッスィーが46号車をパスしドライバーの意地を見せるが、46号車はその周回でピットイン。上位陣では最初の3回目、義務ピットを消化した。
 その90秒ほど前にトップの11号車が“2回目”のピットインを終えたが、2位81号車からのマージンは60秒弱と、トップをキープするには不十分。ピットを出た時点で順位は入れ替わった。
 残りも40周を切り、満タンであれば充分走り切れる周回となり、3回目のピットインが始まる。
 75周目には43号車がピットイン。義務回数を消化。
 77周目、74号車と同時に2号車、ヨッスィーもピットに入ってくる。
 ヨッスィーが思いの他ペースが悪く、後方の“NEWタイヤ勢”に追い上げられそうになった事。燃費も不安だった事。
 諸々の事情が交錯し、チョッと予定周回より早いが、加藤選手に交代。再び燃料フルチャージ、タイヤ交換。
 加藤選手の無線はチャンと交信ができている。
 この早目のピットインが、後に今回のレース、最高のタイミングだった事になる。
 ピットアウト時点で、トップは81号車、2位以下11、19、7、52号車に続く6位。
 7位、8位の46、43号車の前に出る事ができた。
 義務ピット3回を終了したマシンの中ではトップ。
 前5台は、あと1回のピットストップを残しているが、トップ81号車とは既に110秒、3位の19号車にも70秒の差を着けられているので、実質表彰台に届くか?届かないか?の位置である。

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ファーストスティント(実際にはセカンド・・)走り終えた加藤選手。モニターを見上げつつインタビューを受ける。
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その頃ヨッスィーの無線が不調。ホワイトボードで話しかけて見る事に・・・。
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46号車との攻防戦。見応えはあるが、タイムは落ちてしまう。

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photo/Kazuhisa Masuda
ヨッスィー意地を見せ、46号車をオーバーテイク!
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セカンドスティント走り終えたヨッスィーがインタビューを受けていると・・・
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130Rで8号車NSXが炎上!!これがレースを大きく動かす事に・・・。

 加藤選手がピットアウトした78周目、モニターTVに衝撃的な映像が映し出される。
 バックストレッチの先、130Rイン側で8号車NSXが炎上!!
 スローパンクチャーから、タイヤバーストを起こし、オイルラインを壊した為と思われる。
 かなり派手に燃え上がり、消火活動の為、セーフティーカー(以下、SC)が入る。レース中断である。
 と、どうなるか?
 メインストレートで500は右、300は左で1列づつで一旦停車。各クラス1位の前にいるマシンは、コースを1周しその隊列の後に着くのである。
 ピットに入る事はできるが、ピット作業は禁止、既にピット作業を完了したマシンはピットロード出口で止められる。
 細かなルールがあるが概ねこんな所である・・・。
 81号車との差は110秒近くあったが、このタイム差は前にいるというより、殆ど背後に迫っていると言うレベルであるが、その差が殆ど無くなってしまうのである。
 ほどなくして、整列も完了。
 500クラス、そして300クラスの順に、SCの先導でスタート。
 ピットロードも開放され、作業も許可されるが、隊列の最後尾に着かなくてはならない。
 このSC先導はレース周回とはなるが、同クラスでは追い越しができず“レース”は中断されている。
 1周してきた所で、300クラス上位5台を始め、500クラスを含め8台(翌周にも8台)がピットになだれ込んできた。
 このスロー走行中に、3回目のピットインを済ませるのが、このアクシデントにおける最善の策なのである。
 ・・・っが、最後尾に着かなくてはならず順位は大きくダウン。
 代わって上位を形成したのは、直前までに3回ピットインを完了していた2号車紫電、そして43、46、74号車と続く。
 
 SC走行は4周に渡って行われ、84周を終えSCが退きレース再開。
 1.5秒後ろに43号車、更に0.3秒後に46号車が続く。
 同一周回は9位までだが、差は20秒もない。
 残り周回は26~28周。まだ何が起こるか判らない。

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SCが入りレースは中断。メインストレートに戻ってくる各マシン。
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500は右、300は左に1列で並ぶ。
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SC介入時の300クラスの順位。周回数は500クラストップの数字。

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このSC介入中に3回目、義務ピットストップを消化しようと、ピット前は大混乱。
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レース再開後トップグループを形成したのは、SC前に3回ピットを消化したマシン2、46、43号車。
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photo/Kazuhisa Masuda
この3台の接戦は終盤のドラマへ・・・。

 86周目、46が43をパス!加藤選手の背後に迫る。
 その後、コンマ5秒まで詰め寄られる事もあるが、加藤選手は500をうまく利用し差を広げ、46号車柳田選手につけ入るスキを与えない。43号車、高木選手も前の2台を伺うように追走。

 90周を過ぎても、この3台を脅かすマシンは現れず、少なくとも上位グループの順位は安定してきたようだ。
 かなり暗くなってきた100周過ぎ、未だ3台の順位は変わらず3秒以内。
 タイムも安定した11秒台で、淡々と周回をこなし、110周を終え、500トップマシンの位置から112周がチェッカーとなるであろうし、後から仕掛けられても、百戦錬磨の加藤選手なら充分抑えきられるだろう。
 チームの誰もがこのままレースが終わるだろうと思っていた。
 残り2周、111周目に突入。
 セクター3(バックストレートエンド)までは、これまでと殆ど変わらぬタイム。
 ところが、130Rを過ぎ、シケイン手前で500クラス17号車NSXに前を塞がれ(と言うか、予想以上に早い減速)、そのスキを逃さず、46号車に横に並ばれ、そのままシケイン右から左の切り返しでパスされてしまう。
 ここから先、ストレートはパワー勝負!だが元々重い紫電は、今回ウェイト92kgが加わっており、太刀打ちできない。
 46号車にリードされただけではなく、メインストレートで詰め寄られた43号車にも、1コーナー飛び込みでパスされてしまい、一気に3位にドロップダウン。
 そのまま最終ラップに突入するが、何の波乱も起こらず、46、43号車に続き悔しい3位フィニッシュ。

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夜のとばりが降りる鈴鹿。3台の接戦は続く。
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もう何も作戦は無い。ただモニターを見守るピット内のクルー。
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優勝目前!メディアもピットに集まってくる。

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ファイナルラップへと移る、ストレートで逆転!46、43号車に先行され、そのままフィニッシュ。
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ウィニングランを終えパークフェルメに向う紫電、加藤選手。お疲れ様でした。
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終盤観客の目を釘付けにした3台の6人が、そのまま表彰台。

 シケインで遭遇した17号車NSXは、この周がアウトラップで、このレースで引退する金石 勝智選手のラストランであった為、500クラスとしてはスローペースで走行していた。
 そこに300クラスのトップ争いが遭遇、それが2号車にとっては最悪の地点、だが46、43号車にとっては最高の地点だった。
 今回のレース途中のSCも、3回ピットを終えたチームと、まだ終えていなかったチームで大きく明暗を分けた。
 故意に行われた訳ではない、こうした不確定要素も含めレースであり、運であり、ドラマと言えるのだろう。
 一旦は優勝が見えただけに、ドライバーは勿論、ピットクルーはガックリ!だが、当初の目標は充分に達成。
 ランキングも、ここでトップに返り咲いた43号車に続き、2点差の2位に浮上。

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表彰台から戻った加藤選手。悔しさが無い訳では無いが、表情からも結果オーライ。
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今期連続、3度目の乾杯!
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Pokka恒例の花火。レース距離は短くなったがフィナーレの時間は変わらず。