モータースポーツ

 SUPER GT第9戦 決勝レポ

ニュース
2009年12月11日

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自力チャンピオンが消え、意地を見せたい最終戦。
だが2戦連続のトラブルで今シーズンを終える。


 11月7・8日最終第9戦は栃木県、ツインリンクモテギ
 SUPER GT第9戦 MOTEGI 250km RACE

6日(金)晴れ 設営

 前8戦オートポリスが今シーズン初のノーポイントレースとなってしまい、反対にランキング上位陣が、しっかりと上位に入り、首位の19号車からは11ポイントと大きく差をつけられランキング5位となってしまった。
 数字的には、チャンピオンの可能性は残されているが、確立的にはかなり低く、3位11ポイントでは、19号車ノーポイントでも2位の回数で追いつけないので2位以上が絶対条件。
 仮に優勝しても、上位4台のどこかが表彰台(2位・3位)に上がってきてしまってはチャンピオンは無理。
 “狸の皮算用”でもかなり厳しいと言える。
 しかし、4年連続で最終戦まで、チャンピオン争いに残ったチームの意地としても、悔いの残らない良い結果で今シーズンを締めくくりたい。
 今回の最終戦は例年の富士に代わり、モテギである。
 立冬を迎える、11月初旬としては暖かく、太陽が出ている時間帯ならまだまだ秋の装いで充分である。
 月初には同じ栃木県、奥日光で初雪あったと聞いていたので、かなりの防寒具を用意したが、無駄な荷物となってしまった。(奥日光とは標高も距離的にも違いすぎる。)
 今回のレース距離は、250kmと最短。しかもここまでのハンディウェイトは全てリセットされての、ガチンコ勝負である。
 タイヤ無交換や、少な目の燃料でのスプリント的な展開など色々な作戦が考えられる。
 このモテギは多くの低速コーナーを短いストレートでつないだ、ストップ&ゴーサーキット。
 重くて、パワーの乏しい紫電にとっては、最も不得意なサーキットと考えられるが、昨年2位で初めての表彰台、一昨年は6位と不得意だが、悪いリザルトになるとは限らない。

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設営日。立冬とは言え、雲ひとつない素晴らしい“秋晴れ”に恵まれた。週末まで雨予報なし。
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ランキングトップの19号車と前戦優勝の11号車。両隣は殆ど荷降ろしが完了している。
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ここモテギがSGT最終戦となるのは初めて。

 7日(土)晴れ 練習走行・予選・ノックダウン予選

 この日の最初の仕事は、午前7時45分からの公開車検。
 そこに今回は救出訓練がある。
 これは、サーキット、コースオフィシャルのスキルUPの為、クラッシュ等、緊急時においてドライバーの救出訓練を、実車を使って行うのである。(ドライバーはメカニック等が代役となるが・・・。)
 マシンも準備はできているので、シャッターを開ければ直ぐにセット可能。
 水戸にホテルをとっていたので、大体いつも30~40分あれば到着すると考え、7時に出発。
 ところが、土曜日だというのに何故か道が混んでいる。
 通勤ではなく、皆モテギに向かっている。
 やばい遅刻しそうだ!
 隣のピットのスタッフから電話が入る。
 「時間間違えていない?」
 「いや、今向かってる!」
 やっとサーキットについた時には既に、公開車検も始まった7時50分
 シャッターを開けると、既に観客が待ちうけ、全マシンズラッと並んでいる。
 2号車紫電のみ歯抜け状態で・・・。
 救出訓練を予定していたオフィシャル陣も、待ちぼうけを食わされ、急遽隣の11号車で行ったとか。
 
 となると、我々より遅くにホテルを出発するドライバーはどう?
 彼らは8時半のドライバーブリーフィングに間に合うように出発するはずだが、所要時間は同じ位を見込んでいるはず・・・。
 かといって今更、混んでる事を伝えても意味が無い。
 8時20分まだこない。25分まだこない。30分。ブリーフィング開始時刻。まだこない。
 35分、加藤選手に電話をしてみると「はい。」と小声で答える。
 察しはついた。「ブリーフィング出てますか?」小声で「はい。」
 遅刻寸前というか、既に始まっていたので、駐車場からそのままブリーフィングルームに飛び込んだようだ。
 こんな遅刻はGT参戦以来始めてのハプニング。
 ご迷惑をおかけしました。
 これまで我々のチームで、ハプニングやアクシデントがあるとレース結果が良いという、全くもって根拠の無いジンクスがあり、今回の件がこのレースでの全ての厄を引き受けてくれた事を願うばかりである。

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公開車検で遅刻。シャッターを開けたら、既にお客さんが・・・。
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もちろん前日に全て、準備はできている。おまたせしました。
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この時期、時間にしては、寒くはない。

 午前9時55分開始のプラクティスセッション(練習走行)、いつもの様に走り出しは加藤選手から。
 これまで、レース、テストを含め、紫電による、モテギの走行は真夏の7月や、残暑の9月ばかり。
 立冬を迎える、この時期は初めてであるが、本格的にペースを上げ始めて4周目、走り出しの基本セッティングで1′56″218。
 悪いタイムではない、というか結果的に今日のベストとなり、ひいてはクラス3番手タイムとなった。
 多くのチームがセッション序盤で、ベストタイムをマーク。
 これは、序盤に午後の予選向けのセットを作り、その後決勝向けのセッティングとなったのか・・・?
 幾度かのピットインを繰り返し、仕様の違うタイヤに交換してコースへ。
 それに伴いダンパー、スプリング、車高等のセット変更。
 やはり気温、路温が昨年まで大きく異なる為、セッティングも暗中模索。(ってほどでも無いが・・)
 なかなかピシッとは決まらない。
 そんな中、残り25分程でヨッスィーに交代。
 彼は紫電で鈴鹿以外、2007年7月の公式テストで、唯一このモテギを走っている。
 もっとも、初めてのサーキットだろうが、初めてのマシンだろうが、その両方であろうが、ヨーロッパのGP2で活躍した彼にしてみれば大した問題ではないだろう。
 それに加藤選手と、エンジニアのシンタローが決めたセッティングに全幅の信頼を寄せており、短い練習時間でも充分な手応えを掴む事ができるのである。
 そんな彼は1回のピットインを含め、8周計測。内6周全てを58秒台で固める。
 レースラップ想定としては実に安定している。
 予選であればまだ2秒は詰められそうである。

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用意された6セット。この時期のモテギ、タイヤ選定に迷うところ。
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走り始めに好タイムをマーク。
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その後はピットイン、アウトを繰り返し、各種セット変更を繰り返す。

 午後からは1回目の予選と、2回目はノックダウン方式の予選である。
 1回目予選は、基準タイムをクリア(クラストップ3台の平均の107%以内)すれば良い。
 これはマシン、ドライバーの実力からすれば、全く問題ない。
 続くノックダウン予選。
 これはモテギでは恒例となった予選方法で、今年は鈴鹿POKKAに続き2回目である。
 セッション1で300クラスは16台に絞られ、続くセッション2で更に10台に、そして最終セッション3でその10台のグリッドが決まる。
 また同じドライバーはセッション連続では出走できない。これは今回初。
 従って出走順は、加藤選手→ヨッスィー→加藤選手、又は
 ヨッスィー→加藤選手→ヨッスィーのいずれかであり、今回は後者を選択。
 セッション1を突破する事は両ドライバー共問題ないだろうが、セッション2で10位以内に入るのは、ヨッスィーと言えども、厳しいであろうと思われたからである。
 やはり一発のタイムは加藤選手にまかせ、セッション3には駒を進めたい。
 仮にヨッスィーが不発でも、10番グリッドは確保できる。
 その為の“最善の選択”であった・・・。

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フラワーギフトに応えるヨッスィー。ミュージシャンでもある彼には、そちらからのプレゼントも多い。
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加藤選手にも・・・300ドライバーの中でもかなり多い。
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今回はメカ、スタッフ分もあり、全部合わせるとこんな感じ!!

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この大量に贈られた花束は、手前に用意した、カット加工したペットボトルを利用して・・・。
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レースの必勝と安全を祈願し、ホスピテントの一角に飾らせていただいております。
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応援メッセージはこうしてスタッフの目につくように貼り出しています。今回は最終戦とあってか大量25通。

 プラクティス終了から約1時間のインターバルの後、12時50分1回目予選開始。
 基準タイムは問題ないので、このセッションもテスト走行的色合いが強い。
 加藤選手、ヨッスィーそれぞれ8~10周ほど走行。
 タイムは加藤選手、56″932、ヨッスィー56″850。
 ヨッスィーのタイムでクラス3番手。勿論この順位は、ここではなんの意味もなさない。
 500クラスでは35号車(第6戦鈴鹿POKKA優勝)が、プロペラシャフトのトラブルで、片方のドライバーが基準タイムをクリアできず、ノックダウン予選に進めない。
 こうした事態が、我々にも無いとは言えない。
 1回目予選終了から50分後、午後2時25分からノックダウン予選開始であるが、今回は走行時間のインターバルが、非常に短く、朝の暖機9時半から昼食は勿論休憩も全く取れない。
 せめて2時間のインターバルが欲しい。
 本日最後のイベント、キッズウォークがいつもより1時間早い午後4時になった為だと思うが、暗く、寒くなってしまっては、子供達もかわいそうなので止む負えまい。
 10分間のセッション1、ヨッスィーがコースイン。
 ここでの選択タイヤのキャラクターによるのだろうが、ソフトをチョイスすれば2周目からアタックに入り、4周は計測可能であろうが、ヨッスィーは2周タイヤの“暖機”を行いアタック。
 まず56″121、5番手をマーク。1周流しもう一度アタック。
 他チームのタイムが上がり順位が落ちていくが、セッション2へ進出は充分だろう。
 55″807をマークし6番手でセッション1終了。連続して500のセッション開始。
 トップは81号車、55″471。セッション2に進んだ以上、これらの順位、タイムも意味は無い。

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ノックダウン予選前、19号車の坂東監督と談笑する加藤選手。紫電デビューの前年05年は同チームのセリカを駆った事がある。
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セッション1はヨッスィーが難なく突破。16台に残る。
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ピンボケだが、右表の左上がゼッケン2。水色になったのはセッション2進出を示す。

 7分のインターバルでセッション2開始。
 7分間の為、アタックは2周が精一杯だろう。
 早めに加藤選手コースイン。
 ヨッスィー同様、2周のウォームUPの後、56″248!予想外にタイムが悪い。この時点で5番手。
 加藤選手、そのままアタック続行。
 他チームのタイムが上がり、この順位もだんだん下がり10番手!セッション3進出への瀬戸際!
 第1セクター、先のベストタイムより、0.23秒早い。続く第2セクター0.015秒遅れ。
 チェッカーが出る、これが最後のアタックとなった。
 第3セクターも0.19秒遅れ。
 加藤選手が最終コーナーに現れる。
 ピット前を通過。
 サインマンが振り返り、見送る。
 コントロールラインはピットロードエンドの少し先。タイムは・・・!?
 56″339!!タイムUPならず!だがこの時点では10番手のまま。
 他のマシン次々とチェッカーを受けるが、既に10番手以内のマシンばかり。
 ところが、それまで14番手2分前後で周回を重ねていた26号車がこの周アタックに入っていた。
 戻った26号車、なんと2番手タイム54″897!!
 「カトー!ヒロキーー!ノーックダーン!」、ピエール北川氏のレースアナウンスが響き渡る。
 既に3コーナーに向っていた加藤選手に「お疲れ様でした。11番手でした。」とエンジニアのシンタローが労をねぎらう。
 実はこのセッション、昨年9月に相性の良かったタイヤを元に試してみたのだが、思いの外、この時期には難しかったようだ。
 それでも加藤選手なら何とか・・・?という期待があったが、それでも及ばなかった。
 セッション3はTV観戦となり、スタッフも遅い昼食をとる。
 結局ポールは81号車。
 その他ランキング上位陣で43、19、7号車は2、3、4番グリッド。
 46、11号車は7、8番グリッドに収まり、ただ1台、我々だけが2桁グリッド。
 既に、チャンピオン争いから遅れをとった感は拭いきれない。

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セッション2を前に気合を入れているのか?仁王立ちの加藤選手。(個人的な感想として・・)加藤選手は時折不可解なポーズを取る事がある。
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開始2分前。すぐにピットから離れる。
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7分間のセッションはタイヤのキャラクターによるが、2~3周しかアタックはできない。

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2周のアッタク計測。セッション3進出の10位に踏みとどまるかに思えたが・・・
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最後に“うっちゃり”をくらって11位へ。オレンジがセッション3進出。左上角は水色のまま・・。
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最後の出番が無くなったヨッスィーと共に、遅めのランチ。

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気温、タイヤ、勝負所が変われば、同じコースでもギヤレシオを変更する場合もある。今年はそうした微調整を殆のサーキットで行った。
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キッズウォークでツーショットに収まるヨッスィー。サインに応える加藤選手。
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“秋の日は釣瓶落とし”例年と異なり、夕暮れが早いモテギ。

 8日(日)晴れ 決勝

 不発の予選から一夜明け決勝。
 早めの出発で連続遅刻とはならなかったが、沢山の車列がモテギを目指し、随分とお客さんが入っているように思われる。
 300、500共にチャンピオン争い、ハンディウェイト無しのガチンコ勝負、NSXのラストラン等話題も豊富だ。
 予選タイムの悪かった原因もハッキリしているし、決勝用のセットは決して悪くは無い。
 レースでの奇策もある。チャンピオンの可能性はかなり低いが諦めた訳では無い。
 朝のフリー走行では57″010で4番手と悪くない。
 ヨッスィーに交代。フリー走行後、恒例となったサーキットサファリも目一杯走行。
 この時、幾度かのドライバー交代練習も行う。
 今日のレースは、タイヤ無交換作戦!奇策・・・という程でも無いが我々のチームではこのルーティンピットでは初めての事である。
 恐らく今回の、SGT最短の250kmなので他のチームもやってくると予想される。
 タイヤ交換を行わないが、給油は行う。
 ドライバー交代中に、タイヤ交換や給油作業を行う事はできるが、給油作業とタイヤ交換はルールとして同時にはできない。(F1等はOK)
 となるとドライバー交代に要する時間(約20秒)は、しっかり給油に当てる事により、スタート時の搭載燃料を少なめにする事ができる。
 タイヤ交換前提の場合、その交換時間を見越し、給油時間は短い。(レースによっては10秒以下)
 当然スタート時の搭載燃料も多い。
 またタイヤを交換しない事により、アウトラップから飛ばす事ができる。
 このレース距離、そして起死回生のジャンプUPを狙うにはそれしかない。

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昨日と変わらぬ、暑からず寒からずの好天に恵まれた。
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フリー走行で他車のタイムを見る加藤選手。
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エンジニアのシンタローと両選手。

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フリー走行のタイムは4番手と悪くない。
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この日は10台のサファリバスが出た。このサーキットサファリも重要な走行セッション
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今日もロングスティントになる・・と思われるヨッスィー。サファリを走る。

 決勝レースは、定刻通り午後2時フォーメーションスタート。
 コントロールラインから1コーナーまでのストレートは短い。
 紫電も“刺される”事はない。
 どころか、すぐ前10番グリッドの、イン側26号車が前の集団に若干のためらいを見せた時に、アウト側から加藤選手がパス。
 オープニングラップは10位で戻る。
 トップはポールスタートの81号車。続いて7、43、19、74、11、88、46、87号車。0.5秒遅れて2号車加藤選手。トップからは5秒離されている。
 3周目、加藤選手を始め上位陣の多くがベストラップをマーク。
 4周目、8位9位の46、87号車が入れ替わる。
 前を行く46号車とテールtoノーズの接近戦。
 8周目V字コーナーで並ぶかに思えたが、抜ききれず立ち上がりでアウトに・・・。
 モニターTVにグラベルに押し出される紫電が映し出される。体勢を立て直し再び追いすがる。
 なかなか簡単には抜かせてもらえない。
 しばらく小康状態が続き12周目46号車をパス9位へ。
 そして13周目には、更に8位の87号車をも抜き8位。先を急ぐ。
 この時点で既にトップ81号車から25秒遅れ。
 2位以下、7、43、19、74、11、88号車と、やはりランキング上位陣が占める。

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今年毎戦の持ち込まれた、パーティーアイテム。最終戦はこれ。まさに嘆き
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グリッドがどうあれ、こうした、底抜けの明るさはレース前には必須。
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今シーズンの“ファイナル”グリッドに向かう加藤選手。

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今回だけ急遽グリッドガールで立ってくれた・・・・誰だっけ?人気あったね。
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チャンピオンの可能性があるとは言え、11番手に沈んだ我々に、メディアの関心は薄まった。
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両ドライバーに特にインタビューもなく、哀愁漂う、両ドライバーとエンジニア。

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この位置から最低2位を狙うのは至難の業。セパンでは最後尾から優勝しているが、あれはオープニングラップでの偶然の産物。
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スタート!どこにいるか見えない。
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真ん中辺りで、ルーフのエアスクープのみ、チラリと見える。

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この1コーナー進入で26号車をアウトからパス。
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その後は後方から脅かされる事なく先を急ぐ加藤選手。
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序盤の相手、46号車をパスし9位へ・・・。

 15周を終えた。
 ルールにより、1人のドライバーの周回数はレースの3分の2以下と決められているが、今回、300クラスのレース周回の場合15周を過ぎればいつでもドライバー交代は可能。
 16周に入るとまず11号車がピットイン。
 こうしてピットインを他チームと大きくずらすことに事により、混戦状態のレースを打開できる場合もある。
 8月の鈴鹿POKKAで、ピット回数が義務付けられていたので、スタート直後、我々が早々とピットインしたのもそうした作戦のひとつである。
 勿論、残り周回と、タイヤライフとの相談ではあるが・・・。
 11号車、給油短く、タイヤ4本交換。(直ぐ隣なので観察できた)
 その後、上位陣では、18周目46号車、翌周19号車、その次の周は43号車と続々とピット作業を済ませて行く。
 当然見かけの順位は上がり、4位となる。
 21周を終えたところで加藤選手ピットイン。これはほぼ予定通り。
 タイヤ交換はなし。ジャッキUPもなし。給油は長めの17秒だが、殆どロス無くヨッスィーに代わって再スタート。
 コースに戻ったヨッスィー、開口一番「エンジン音がおかしい!」
 ゲッ!!オートポリスの悪夢再びか?!!
 
 とりあえず走る事に支障はなさそうなのなので、ストレート通過時に様子を見る(聞く)事にする。
 エンジン担当の、戸田レーシングの柚木エンジニアも待機。
 ストレートを通過するが、それ程変わった様子は無い。
 タイムもアウトラップとしてはそれ程悪くは無い。順位は6位。
 テレメトリーシステム(遠隔測定装置)は装備されていないので、ヨッスィーに水温等、エンジンの様子を知る数値を聞いたが特に異常は無い。
 恐らくエキゾーストパイプにクラックが入ったのではないかと推察。
 その後のタイムも58秒台と、残り周回と、無交換のタイヤライフを考えれば決して悪いタイムではない。
 どころか、上位陣のピットインもあり、25周目には5位。
 28周目には、2位だった55号車がピットイン、その直前にリードを広げ、ピットに入った7号車を、そのアウトラップでヨッスィーがパス、3位にまで上がる。
 トップは、ピットアウト後も2位19号車に22秒もの差をつけ首位を守る81号車。
 19号車から遅れること3秒でヨッスィー。
 2秒後方にいた脅威、43号車は2コーナーで5位の11号車と接触。(レーシングアクシデントと判定)
 コースアウトを喫し、戦列復帰に時間がかかり、17位にまで後退、チャンピオン争いから脱落してしまった。
 29周を終え、トップは81号車、56秒台の快走。25秒遅れて19号車、59秒台。
 4秒遅れでヨッスィー、2号車は00秒台。ピタリと着けた4位の7号車は59秒台。
 81号車、圧倒的な速さである。
 この頃になると、ストレートを通過する2号車の排気音がおかしく、エキゾーストの破損は明らかになってきた。
 タイム的にも前の19号車に迫り、後ろの7号車を押さえるタイムで走っていたヨッスィーも、徐々に遅れ始め、31周目は7号車に、そして32周目には11号車にも抜かれ、5位にまで後退してしまった。
 エンジン性能を大きく左右するエキゾーストにクラックが入り、広がり始めたとすれば、これまでと同じパフォーマンスを発揮する事はできない。

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チャンピオンに最も近い19号車(5位)より早いタイムで迫る加藤選手。
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加藤選手からヨッスィーに代わりしばらくして43号車コースアウト。後方の脅威が一つ消えた。
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4位を走るヨッスィーに11号車が迫る。

 ヨッスィーの必死の攻めが、守りに転じてもライバルを抑えられるものではない。
 そんな苦戦を強いられ中、前の周にエンジンブローしたマシンがあり、5コーナー(立体交差手前)付近がオイルまみれになった。
 幸い他車を巻き込む大事には至らなかったが、コース清掃の為、セーフティーカー(以下SC)が出る。
 SCに続き、全車スロー走行となりメインストレートに戻る。
 その後500クラスのトップからSC先導で再スタート、300も同様に続く。
 SCが退去。37周目よりレース再開。
 トップ81号車との差が詰まった2位以下7号車(SCの出る直前に19号車を抜いていた)始め、19、11、2号車だが、81、7号車は57秒台、19号車以下は58~59秒台。
 見る見る2位と3位の差が開いていく。
 この7、19、11号車の争いは、正にチャンピオン争いで、81号車が1位の場合、2位以下の3台は実に微妙な点差で明暗を分ける。
 中でもランキングトップの19号車と11号車はこのままの順位で3、4位となれば19号車がチャンピオンだが、順位が逆転すれば、7号車も加わった3台が同点!
 だが3位の回数(1位、2位は共に一回づつの為。7号車は1位が無いので3位となる)で11号車がチャンピオンとなる。
 その19、11号車の3位攻防戦が熱くなる、その後ろのヨッスィー。
 レース再開後はそれらと変わらぬタイムで追いすがる。
 43周を過ぎても19号車から2秒の遅れ。この2台に“何か”があれば、いつでも取って代わる位置につけている。
 まだ、何が起こるか分からない。
 ところがそんな“何か”は2号車に起こってしまった。
 「ガス欠症状が出てる!」ヨッシィーからの無線。
 計算上では充分な残量があるはずだが、排気の影響は燃調(ガソリン消費)にも及ぶ可能性はある。
 緊急ピットインの準備をするスタッフ。
 ピットロードに入った2号車ヨッシィー。
 だがこの時点で完全に勝負権は失ったといえる。
 であれば、ついでと言うわけでもないが、エキゾーストのクラックだと思われる異音の原因を確かめる事も必要だ。
 原因によっては、マシンへのダメージを広げる(ドライバーへの危険、修復に金が掛かるかも・・。)可能性もある。
 ひどい排気音を撒き散らしつつ、ピット前に停車。
 リヤカウルを外し、メカニックが覗き込む。
 エキゾーストの1本が、シリンダーヘッドから直ぐのところで完全に折れている。
 クラックという状態は完全通り越している。
 このまま走り続ければ、高温の排気ガスがエンジンルーム内に充満し、特に排気周辺部分の火災の可能性も無視できない。
 またこうした排気ガスは空気の流れで、室内に入り込む場合もありドライバーに影響を及ぼす場合もある。
 ヨッシィー、降車。
 ピットにマシンを入れる。
 走行を断念。
 ・・・・リタイヤではない。

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5位の時点でSCが入り、前車との差は殆ど無くなったが、追撃できる余力な無くなった。
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追撃はできず、6位の74号車にも煽られるも、ヨッスィー意地を見せ抑えるが・・・。
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「ガス欠症状が出てる」と言う事で緊急ピットイン。この時点で今シーズンは終わった。

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先にエキゾーストの状態を確認する為、カウルが外される。
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パックりと割れたエキゾースト。火災や、ドライバーの一酸化炭素中毒の可能性も有り、大事に至らず何より。
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金属疲労と思われるが、対策は“早期交換”が一番。

 既に完走扱いの周回をこなしているので、このままピットでチェッカーを待つ事にする。
 「ガス欠症状」がこれらに起因するかどうかは判らないが、このレースに関しては大して意味の無い事となった。
 レースは81、7号車が1、2位争いを演じ、19、11号車が3、4位の正にチャンピオン争いを展開。
 我々は、周辺備品の撤収を進めつつレース展開を眺める。
 結局この順位でチェッカーとなり、チャンピオンの栄冠は19号車に輝くこととなった。
 
 我々に残ったのは前戦オートポリス同様、完走というリザルトのみ。しかも最下位16位だった。

 筆者の“偏見”09年振り返り
 GT300、ヨコハマADVANチーム、新春座談会