SUPER GT 2007SERIES 第1戦 鈴鹿サーキット
2007シーズン 紫電
2007年04月28日
今シーズンは、今までのシーズンとは違う。 これまでは「今年もがんばろうね。去年よりランキングを上げようね。」とプライベーターらしい、漠然とした抱負を持って臨んでいたのだけど、それを当てはめれば、今年はチャンピオン奪取しか残されていない! |
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3月15日(木)設営
SUPER GT、07年シーズンは昨年から鈴鹿が開幕戦。昨年多くの話題と、それに見合うリザルトを残した紫電も2シーズン目をむかえる。
しかし今シーズンは、今までのシーズンとは違う。これまでは「今年もがんばろうね。去年よりランキングを上げようね。」とプライベーターらしい、漠然とした抱負を持って臨んでいたのだけど、それを当てはめれば、今年はチャンピオン奪取しか残されていない!これは結構チームとってはプレッシャーかな?いっそ昨年チャンピオンが取れていれば、あとは“守る”か?“落ちる”か?しかないのでもう少し気楽だったかも・・・。
マシンと同じく、メカスタッフ等も昨シーズンと変わらず2年目となり、ドライバーを取り巻くコミニュケーションも“あたり”が着き、マシンのポテンシャルを引き出す事となる。
11月初旬の最終戦から、4ヶ月のシーズンオフ。いや2月にプライベートテストを行っているので、実質3ヶ月のオフ期間で、シーズン中にはできなかったマシンの改良が行われた。主には足周りの見直しが行われ、より開発の進んだ、ヨコハマタイヤの性能を極限まで引き出すと言う抽象的な表現以外、詳細は秘密と言う事で・・。そして1シーズン戦ったマシンのリフレッシュという最も重要なメンテナンスを行い、外観的には全くといいほど変更は無い。
ただこれまでも音量規制はあったのだが、特に車検等で測定も行われなかったが、今シーズンは音量測定が行われ様になった。それに伴い殆どのマシンがそれなりのサイレンサーを追加し、音量測定をより確実にクリアしている。
3月16日(金)フリー走行 晴れ
薄曇りの空から、雨の心配はなさそうだが、数日前まで3月中旬とは思えぬ暖かさから一転、このレースウィークは季節相応の寒さが戻ってきている。
午前の走行は2週前のテストの延長。というか、確認的な走行。大きなトラブルも無く、加藤選手が2分5~6秒台と安定したタイムを刻み、高橋選手が7~8秒台と伸び悩む。
この走行では、加藤選手の5″192がベスト。(この日通じてのベスト)
午前セッションのクラストップは昨年休止していたGaraiya(ガライヤ)の4″267。全体的にまだ本気を出している感じでは無い。はたして午後は・・・。
午後も天候は薄曇り、気温も11~12度と変わりは無い。だからと言うわけではないがタイムにも大きな変化が少ない中、13号車エンドレスZが、3″138、62号車ヴィーマックが4″610とそれぞれ唯1台づつが3秒台、4秒台へと入ったが、まだまだ“手の内は見せない”と言った様子。
高橋選手もスタートを想定して、NEWタイヤで走行に入り、6秒台から5秒台に入ろうかという時に赤旗。その後の300専有時間終了時に、加藤選手もアタック。3秒台に入ろうかという時そのままピットイン。午前のタイムを上回る事は無かった。
マシンとしては、特に問題は無く、特に足回りを中心に種々のセッティングを確認する事ができ、明日の予選は好位置を狙えそうな手応えを感じた。
![]() 重要な学習アイテム。 |
3月17日(土)予選/スーパーラップ 晴れ
17日は予選。今年も予選方式は同じ。午前の予選で、午後のスーパーラップ(以下「SL」:1回目予選上位10台による1台づつのタイムアタック。これによりスターティンググリッドを確定する)進出10台を選抜する予選方式は今年も変わらない。
昨日のタイムからSLへの進出は心配ないだろうが、昨日の練習では目標タイムをマークする直前に赤旗やピットインでチャンと走り切っておらず、また他のマシンのタイムも拮抗しており、上位を狙えるとは思えない。
今年の足回りの改良は、一発の速さより、タイヤに優しくコンスタントにハイアベレージでラップする方向にある。(もともと一発が速いマシンでは無いつもりのようだが、ポールを3回も獲ればそんな風には誰も思わないでしょうが・・・)
エンジニアのシンちゃんのパソコンシュミレーションでは昨年の自己(紫電)ベスト並、3秒前半くらいは出ると予測しているが、他のマシンは、2秒台に行くのじゃないかと思われる・・・。
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そんな開幕の腹の探りあいの中、今シーズンの最初の手の内の見せ合いとなる、開幕戦最初の予選が始まった。
アタッカーは加藤選手。20分間の予選開始から12分。各車のタイムを見てゆっくりコースイン。この時点でのトップ101号車MR-S、既に“やはり”の2秒台。2″923!続いて43号車3″408とやはりミシュラン勢がきた。加藤選手はこの(寒い)季節がら、アウトラップ、そしてもう1ラップと充分タイヤに熱を入れ残り時間6分、アタック開始。
ここ鈴鹿サーキットは、コントロールラインから逆バンクがセクター1、そこからデグナー立ち上がりまでがセクター2、続いて130R、200m手前までがセクター3、そしてコントロールラインまでがセクター4と各区間タイムが表示される。
その各セクターを自己ベストでまとめて、最終コーナーを下り降りてくる。ヤッタ!2′3″038!2番手タイム。SL進出は間違いないだろうとピットに戻る。
その後、13号車も2秒台!それも2″536!とダントツのトップタイム。結果3位。SLは8番手スタートとなった。
混走セッションでは高橋選手が、今回はシケインが課題と、色々なアプローチ、ラインをトライ。混走セッションで6秒台。基準タイムをクリア。
そして午後2回目予選では5秒台にまでタイムアップ。予選中にこのタイムがコンスタントに出せれば、決勝レースでも6~7秒でまとめる事ができ、上位を守る事ができるだろう。
ところがこの予選2回目、終盤で高橋選手から加藤選手に交代し、SLに挑む直前の、マシン確認を行った。しかしこの交代直前なんと他のマシンと接触!見た目には大きなタダメージは無さそうだが、加藤選手からも違和感があるとの事で緊急ピットイン。フロント右ホイールが当たっており、測定するとアライメントも狂っている。まもなく500の走行時間が始まり、20分間の走行終了5分後には300のSLが開始される。それまでに処置をしなくてはならない。SLが始まったらマシン修理は許されない。
精密な測定、調整はSL終了後に行う事とし、まずは時間内にできる点検、修正を行い、SL待機。 8番手スタートの時点で、トップは43号車の3″503。ここまでの7台で、午前予選のタイムを上回るマシンは無い。
SLアタックミュージックは今年もユーミン。“ナビゲーター”の流れる中、セクター1でトップより0.5秒、セクター2までで、何と1秒もタイムを縮めて来た!この驚異的ペースで行けば2秒台は確実と思われたヘアピン立ち上がり、何と痛恨のギア抜け!一瞬の失速は、稼げないセクター3に響き、そこまでの貯金を一気に吐き出す結果となり、2′3″876のタイムで3位に後退。残された101号車、13号車は1回目予選タイムを上回り、順当なタイムをたたき出し、明日の決勝グリッドは13号車、101号車がワンツーグリッド。「プリヴェKENZOアセット・紫電」は開幕戦5番手スタートが確定した。
3月18日(日)決勝 晴れ
決勝日も快晴。体感温度を下げる風は強く、ストレートは追い風となる。
朝一のフリー走行では高橋選手から加藤選手へ交代する“予定”で、満タン走行を行った。ところがその交代直後、スターターモーターが回らず、エンジンが始動しない!結局そのままピットへ・・。加藤選手は満タン状態のマシンを確認できないまま、決勝レースをむかえる事になった。
マシントラブルは、スペアのスターターモーターに交換する事で解決。いつもながら実に“良いタイミング”で発生する。
これまでの1シーズン、レース中のマシントラブルは無いが(モテギのみブレーキに違和感が出てピットに戻っているが、その後完走はしている。)、レース前にはNEWマシン“らしく”、それなりにトラブルはあり、2度のピットスターを喫する事はあったが、決勝レース中は発生しておらず完走率100%である。
この強運、どうやら今年も継続されている・・・ようだ。
今回のスタートは加藤選手。前グリッドのマシンにチャンとレースをされては、トップはかなり厳しい。スタート時の混戦をうまく抜け、順位をキープし初戦は無難なリザルトを残したい。
レースは定刻通り午後2時フォーメーションラップへ。そのフォーメーションスタート直後で、前グリッドの43号車がなんとコースアウト!優勝候補の一角が最後尾グリッドへと消えた。
シーズン開幕の1コーナーは、500マシン数台のコースアウトで始まった。それらに巻き込まれる事無く、300のスタートはきれいに切られ、1周目は43号車の後退で、労せず4位へ。
その後はトップ13号車が、2位以下101号車、46号車そして2号車を引離しに掛かる形で展開。 8周あたりから500クラスが追いついて来た。それらの集団を利用し、46号車に最接近。加藤選手は11周目ダンロップコーナーイン側から46号車をパス。
3位に順位を上げたあとも、7秒台の安定したタイムで周回を続けるが、101号車をパスするには至らない。ピットインは30周前後を予定。タイヤライフを考え加藤選手無理はしない。
![]() ドライバー、スタッフも愛用の |
22周辺りから300クラスのピットインが始まり、2、3位を9秒前後引離した13号車は26周目ピットイン。順調にレースに復帰。
一時的に1、2位に上がった101号車と2号車は、32周を終え、同時にピットロードに入って来た。これは全くの偶然。しかしピットワークレースは、101号車に軍配が上がる。ピット進入時より2~3秒ほどリードされた。
原因はドライバー交代時にステアリングが動いてしまい、フロントタイヤの脱着に手間どってしまったのだ。
ところがアウトラップ、2~3年前の高橋選手なら“無理をしないか”、“スピンをするか”の二者択一だったが、一昨年から、このアウトラップを、NEWタイヤ、ユーズドタイヤ問わず、集中練習。かなり成果は上がっていたのだが、今回のレースはその成果を示す絶好の舞台が出来上がっていた。
冷えたタイヤの高橋選手は、ピットアウト時に広げられたリードを、S字、デグナーまでの走りで挽回。NEWタイヤを履いた101号車が、ヘアピン進入で500に進路を譲った。その隙をついて、同じくNEWタイヤの2号車、高橋選手が500に続いてパス!巧みに2位へと上がる。
101号車はパワステにトラブルを抱え、ステアリング蛇角が大きなヘアピンは、ライン修正に苦労する所。おまけに交代したばかりの石浦選手はGT初レース、初ラップ。500の対処も初めてである。またタイヤメーカーの違いは走り出しのグリップ力の差にも表れたようだ。
こうした有利な条件もあったのだが、これらがうまく重なったこのポイントで、このチャンスを逃さなかった事は正に”プロ“ドライバーの領域に一歩踏み込んだ瞬間かも・・・。この時を逃していたら、追走はできても、オーバーテイクは厳しかったかもしれない。
その後も、トップ13号車には20秒近く引離されたが、3位を徐々に引離す7秒台の快走で単独2位を堅守。
終盤は、ややペースが落ちた3号車より速いペースで追い上げるが、脅かすには至らず、12秒の水を空けられ48周を終え、2位でチェッカーを受けた。
予選5位 : 決勝2位
獲得ポイント チームポイント18点 (15点+3点:トップ同一周回ポイント)累計18点 ランキング 2位
ドライバーポイント16点(15点+1点:決勝ベストラップ)累計16点 ランキング 2位
昨年の初戦では1150kgでスタートした紫電。今年はいきなり50kg増量の1200kgから始めなくてはならなかった。特認車両という事で参戦している以上、性能調整が入るのはある程度、やむおえないが、この50kgというウェイトがどれほど厳しいかは、昨シーズン思い知らされている。パワーも絞られ、特に加速、トップスピードの遅い紫電は、コーナーをいかに速くするかに改良、セッティングの重点が置かれていた。
勿論エンジンも数々の改良が加えられ、昨シーズン終盤までにかなり向上している。
しかし最も大きいのは、足回りの改良で、詳しくは書けないが、“紫電”に最適なタイヤの性能をフルに引き出し、尚且つ、アベレージをも安定させるという内容である。
そんな事は誰もが思いつく“当たり前”の事ジャン。と思われがちだが、意外チャンとできていないマシンも多く、またドライバーの技量の差から、そうしたセッティングが取れない場合もある。
昨シーズン、レースは勿論、参加可能な全てのテストも参加。豊富なデーターを収集。また今回のレースで光彩を放った高橋選手のスキルアップは、そうしたセッティングに選択の幅を広げる事ができ、紫電のポテンシャルを更に引き出す事ができる。
今シーズン、マシン、タイヤ以上にポテンシャル上がったのは、実は“ドライバー”なのである。
期待以上のレース運び、リザルト。まだまだ初戦とは言え、今シーズンもチャンピオン争いができるレース展開をお見せしたいと思います。