モータースポーツ

2015 SUPER GT第3戦:CHANG INTERNATIONAL CIRCUIT

GTレースレポート
2015年06月26日

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6月18-19日 設営

 約1ヶ月半のインターバルを経ての第3戦は、シリーズ唯一の海外戦。 場所はタイのブリーラム「Chang International Circuit」、昨年は10月に開催されたが、タイの周辺イベントスケジュールの都合により今年は6月開催となった。
 5月下旬に船便で日本を離れたマシン、他機材がピット内に搬入されているが、国内戦と異なり設営の為に1日以上早いサーキット入りとなる。
 昨年は出来たてで、初めてのサーキットという事もあり、各チームも設営に戸惑ったのだが、今年はスムースに作業が進む。
 だが、2号車「シンティアム・アップル・ロータス」にはエンジン脱着という大きな仕事がある。
 開幕戦岡山、第2戦富士で見舞われたスターター系のトラブル・・・それらの改良パーツの組付けである。
 船積みまでに行えれば良かったのだが、スターター以外も含め、改良パーツは船積み後も新たなアイデアも盛り込まれギリギリまで製作が進めら、一部はスタッフがハンドキャリーで持ち込まれた。
 大まかな設営が終わったところで、早速エンジンが降ろされるが・・・エンジンパーツの一部は、後発でやって来るNISMO(ニスモ)の専門スタッフの方により行うので初日はここまで。
 2日目朝一からNISMOのスタッフの方々により、パーツの組付けが行われ。
 その後は順調に作業は進行・・・昼過ぎにはエンジン始動確認、夕方4時半の車検までにはアライメンテも含め、メンテンナンスも完了。
 文章にすれば2~3行の、アッという間にBigJobは完了。
 2日間の設営、メンテナンス作業は予定通り・・・あとは走行を待つだけ・・・・。
 だがこの6月のタイ、日差しが“痛い程”の暑さ。
 路面温度も50度以上に上昇。
 タイヤ選択においても、まだ多くのデーターを持たないこのマシンは遅れをとっている。
 おまけに6月は雨期となり、レース中でも突然の雨の可能性も高い。
 ドライバーには厳しいレースとなろうが、観戦するには面白いレースが期待できそうである。
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6月20日(土) プラクティス/晴れ/ドライ

 気温32度、路温45度で始まったプラクティス、練習走行・・・1周目は加藤選手による長い船旅を経たマシンの確認。
 昨日エンジンを載せ終えた「シンティアム・アップル・ロータス」だが、特に問題はなくタイム計測に入るが、直ぐに赤旗中断となるも、その後は順調に周回を重ね、1′35″420までタイムを上げ暫定4番手と悪くない滑り出しである。
 一旦スタビライザーの調整や、水温が高くなった事に伴う対策(ボンネットのエア抜きダクトの拡張)等を行い更に周回を重ねる。
 すでにクラストップは34秒台に入り昨年のレコードタイムに迫る。
 加藤選手は特にタイムを更新する事はないが、ベースセッティングに読み違いもなさそうなので高橋選手に交代し、3コーナー・・奥のヘアピンでのスピンも交え10周を走行。
 タイムは39秒、38秒と徐々に削られて行くものの十分とは言えない。 続いては加藤選手がNEWタイヤでアタック、34″696の3番手タイムをマーク! (最終的にはこの加藤選手のタイムも5番手となるが・・・。) 85分の500、300混走が終了、10分間の300専有走行は再び高橋選手で・・・
 公式セッション中は、僅かな時間の間の車載ビデオ学習と、舘“師匠”(アドバイザー)の指導もあり、タイムは36″053のベスト!と、一気に向上!最終ラップでは、1コーナーでスピンを喫するおまけはあったが、今シーズン、なかなか多くの周回を重ねる事ができなかったフラストレーションを、はき出すかのような、果敢な攻めを見せた。
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6月20日(土) 公式予選 Q1/晴れ/ドライ

 午後3時20分、Q1予選開始。一日で最も暑い時刻だけに気温36度、路温は60度を越えようとしている。
 Q1予選までにギアレシオ変更・・・ここ2年、GT3マシンではできなかったセッティングの一つで、マザーシャーシマシン・・レーシングマシンの醍醐味でもある。
 15分間のQ1予選アタックは加藤選手・・・5分経過したところでコースイン、2周の暖気を経てのアタックは34″762は3番手。
 そのまま連続アタックに入り、セクター1ベスト!続くセクター2は更新ならず・・・タイム更新は無理かと思ったが、セクター3はクラストップタイムで、34″496のトップタイム!!
 更にタイムを詰めようと3周連続のアタックに入りセクター1ベスト!!・・・ところがプラクティスで高橋選手がスピンした3コーナー・・奥のヘアピンで同様にスピン!
 幸いコース上にとどまり、再スタートもできたので、そのままピットに戻る・・・結果Q1予選はトップタイムでQ2進出となった。
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6月20日(土) 公式予選 Q2/晴れ/ドライ

 500のQ1を含み30分後、13台のQ2予選が開始される。 12分間とやや短いので開始と同時にピットを離れる高橋選手。
 計測2周目で36″496で3番手、翌周36″296ベスト!だが8番手に・・・。
 さすがにポールを狙う他12台(12名)は名だたるプロドライバーばかり、一気にタイムを上げてきている。
 そんな中、果敢に連続アタックの高橋選手。
 順位は13番手と、Q1進出では最下位・・・タイム更新こそならなかったが、決勝レースを期待できる連続の36秒台である。
 このNEWマシンが完成し、公式セッションで初めてのトップリザルトである。
 応援いただいている関係者の方々からは「だんだん早くなってきましてね」と声を掛けられるが、元々これくらいのタイムを狙って作られたマシンであるにも関わらず、テスト不十分で開幕から初期トラブルに見舞われ、まともに走行周回を重ねる事ができず、完全ドライコンディションのアタックは今回初めて披露したと言ってもいい。
 (岡山の予選はウェット、富士の予選は不出走)
 また、このタイム領域で、多くのラップを重ねた事で見えてきた事もあり、それも問題点というよりポテンシャルの方が多く、それらは明日の決勝レースにも反映できる事もある。
 今回も多少のメカニカルトラブルは発生しているが、致命的なものでは無く決勝レースに響く事は無さそうだ。
 そうした事も含め、育て上げるマシンがようやくスタートラインに立ったともいえるこの第3戦・・・「やればできる子」の活躍にご期待ください。
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6月21日(日) 決勝レース/晴れ/ドライ

 ウォームアップ走行開始、だが2号車はジャッキアップ、タイヤ未装着状態でメカがクーラーBOXの取付の最終段階に入っている。
 13:58ウォームアップ走行終了。各マシンピットに戻る。 水と氷を入れ作動確認・・OK!加藤選手がクールスーツも着こみ、乗車準備に入る。
 14:05タイヤが装着され、ジャッキダウン・・加藤選手が乗込む。 14:07ピットを離れる・・・14:08「ピット出口クローズ」!! ギリギリでグリッドに着けることができた。
 助手席側のエアコンユニットの上に積まれた、氷水の入ったクーラーBOX・・・まるで釣りにでも行くかの様相だが、クールスーツとしての機能はバッチリ。
 気温37度、路温は軽く50度を超えている。
 ドライバーの冷却装置無くしてとてもレースを走れる環境ではない。
 タイの国歌、続いて日本の「君が代」が流れ、約10分後・・通常の国内戦より1時間遅い15:00フォーメーションラップ開始、1周の後レーススタート。
 オープニングラップはポールとセカンド始め、前方で多少のポジションの入れ替わりが有ったが、加藤選手は変わらずポジション13位。
 だが、2周目の1コーナーでインから50号車(メルセデス)に、その立ち上がり、加速勝負で33号車(ポルシェ)にそれぞれ抜かれ15位に下がるが、翌周バックストレート奥、3コーナーのヘアピン(以下:奥のヘアピン)で33号車がオーバーラン!14位へ。
 4周目に入るホームストレートでは55号車(CR-Z)を抜き13位へとポジションを戻し、翌5周目には?奥のヘアピン?でアウトに膨らんだ50号車をパス12位!!
 6周目、1コーナーから立ち上がり、ややアウトに膨らんだ21号車(アウディR8)を抜き11位!レース序盤の激しい攻防が繰り広げられる中、加藤選手は着実に順位を上げる。
 前を行く88号車(ランボルギーニ)は充分射程内だが、まだ先の長いレース(66周だが、300クラスは61周前後)、またパワー、トップスピードで勝る88号車はテールtoノーズとなるも簡単にはオーバーテイクはできない。
 500が追いついてきたので、それに乗じて背後からプレッシャーを掛け続けた為か?10周目の?奥のヘアピン?で88号車がオーバーラン!!10位ポイント圏内へと入る。
 だが、ここから先はなかなか前には行けない。
 3~4秒先の9位を走る61号車(BR-Z)は殆ど同タイムの36秒台・・・なかなか捉えることができず淡々と周回を重ねる。
 そんな中、加藤選手は思わぬ?敵?と戦う事になった。
 クールスーツの要、クーラーBOXを固定していたタイダウンベルトが少し緩み、左コーナーでの遠心力でクーラーBOXが左腕に接触、ハンドリングに影響を及ぼしているようだ。
 幸い、脱落するほどの緩みではないが、ここ「 Chang International Circuit」の左コーナー4つの内(実際には5つだが、バックストレート途中の為影響はない)インフィールドに3つ連続しておりここで約10kgのクーラーBOXが加藤選手に襲いかかってくる。
 だが加藤選手のラップタイムはそれの影響を感じさせない程安定、上位グループと変わらぬ36秒台で周回を重ねる。
 21周を過ぎるとルーティンピットインが始まり見かけの順位が上がり、他のマシンはタイヤ交換や給油によりペースの落ちる。
 このタイミングを見計らってペースを上げ、コース上でのリアルなバトルを避け順位を上げるのは加藤選手の常套手段。
 だが、その為にはこの周回数を走ってペースを上げられる(少なくとも落とさない)だけの、タイヤを?残して?おかなくてはならない。
 その為にはスタートからのタイヤマネージメントができなくてはならず、ドライバーなら誰でもできるわけではない。
 30周を過ぎ、加藤選手は36秒前半はおろか、見けけ順位が1位になった32、33周目は35秒台、36周目には35″717のベストタイムをマーク!!気温、路温が下がった事もあるが、この周回を重ねたタイヤとしてかなりのハイペースである。
 ピットイン予定は42周で、タイヤ交換はしない予定であるが、やはり交換すべきかどうか?迷うところ・・・今走っている加藤選手、渡邉エンジニア、次に乗る高橋選手とでやりとりが行われ、結局交換しない事となった。
 40周に入って「燃料(コーションランプ)灯いた!!」と緊急入電!
 予定より早いが、準備はできている、数十秒後にピットに入る加藤選手。
 タイヤ交換無し、約20秒ほどの給油のみで、その間にドライバー交代を行えば良い・・・のだが、突貫で装着したクールスーツ関連、全くドライバー交代のシミュレーションを行っていない。
 特にホースカプラーは、通常ドライバー自身がワンタッチで脱着できる様に固定されているのだが、やむおえず今回は固定されておらず、ドライバー交代に約40秒と予想以上に時間を費やしてしまった。
 それでも高橋選手のピットアウト、41周を終えての順位は9位とポイント圏内をキープ!43周目には1台のピットインがあり8位へと上がるが、ここまでの2周が40秒台、翌周39秒台に入るもののペースが悪い。
 朝のフリー走行、サファリの36秒台とまでは行かなくとも37~38秒台は欲しい!!
 ピットアウト時、9位55号車(CR-Z)からのリードはプラス35秒、45周を終えた時点ではプラス24秒と、4周で10秒以上詰められている。
 高橋選手は52周に入り38秒台に入れるが38秒後半、9位55号車からはプラス13秒。10位33号車からはプラス18秒。
 37~38秒台の55号車、36~37秒台の33号車、残り周回は8~9周。
 高橋選手何とか逃げきれそうか!!
 ところが、55周目1コーナーでコースアウト!大きくタイムロス、更にインフィールド、3つ連続左コーナーの3つ目で500マシンと接触!ランオフエリアに弾き出されタイムロス。
 ここまでで一気に差が詰まった後ろの2台、最終コーナーまでに相次いで抜かれ、10位に後退してしまった。
 このポイント圏、10位をキープしたいところだが、2度のピットインで後退していた、31号車(プリウス)が猛追。
 35秒台の31号車を抑える事はできず58周を終え11位とポイント圏外へ・・・。
 その後60周を走りきりチェッカー。
 惜しくもポイントを逃す事となった。
 今回、我々のNEWマシン「エヴォーラ」が、Q1予選でようやく速さを見せつける事ができた。
 そして、設計時の想定通り・・・いや、それ以上に高次元でバランスのとれたマシンであると確信もできた。
 反面、各ハード部分にはまだ?ガラス細工?の如く、不安要素が無くはない。
 速さは確認できたが、強さを備えるにはもう少し時間、テストが必要なようだ。
 今回のレースにおいては、ヨッシーの「LMcorsa」さん始め、「NISMO」さん等、多くの関係者の方々に助けていただきレースに臨む事ができました。
 あらためて御礼申し上げます。
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