2009年SUPER GT第3戦
ニュース
2009年05月14日
万全の富士!ところが一転して三重苦に見舞われ大苦戦。辛くもポイント圏内に入る9位フィニッシュ!
5月2日(土) 設営 晴れ
GWの高速は“ETC1000円渋滞”が至る所で発生。
三重から向かったスタッフ(私も便乗)は、通常4時間で楽勝の富士スピードウェイへの道程に7時間を要した。
大阪から向かったヨッスィーこと、吉本選手はなんと9時間半!
幸いメカスタッフの多くはここ富士周辺在住の為、これらの渋滞に影響される事はなかったが、このGWのレース、例年に無くお客さんにとっても大変なレースかもしれない。
例年500kmで行われるこの第3戦富士、だが今回はコスト削減の意味もあり、距離が400kmに短縮された。
またこれまで500kmでもピットイン回数制限は通常の300kmと同じ1回で、2ピットか?1ピットか?それらは燃費、ペースと相談してのチーム戦略の重要な柱だった。
特に紫電の様に、どちらも選択可能(マシンによっては1ピットは不可能なマシンもある)な場合、レース戦略の幅は広く、大きなアドバンテージとなっていた。
だが、今回は距離が短縮されたがピットイン2回とそれに伴いドライバー交代が義務付けられた。(給油、タイヤ交換は自由)
設営日、雲ひとつ無い五月晴れ。ETC1000円渋滞で、遠方のスタッフは軒並み遅れた。 |
特に大きな変更点の無い紫電。通常の富士仕様。 |
5月3日(日) 練習走行 晴れ
最初はいつも通り、加藤選手のセッティング走行。数回のピットインを繰り返し、プチアタックによるベスト1′44″265は、昨年同レースでの練習走行のベストを上回る、2番手タイム(最終的は3番手)。
まずまずの仕上がり。スーパーラップ用(以下:SL)=決勝スタート用タイヤも決まり、90分の練習走行の残り30分はヨッスィーに交代。
紫電で富士を初めて走るヨッスィー、何の違和感も無く順調にタイムを上げ、45″773をベストに46秒台を連発とレースラップに充分なタイムを出している。
開幕の雨天、ガラスの曇りで失速、第2戦鈴鹿のピットスタートと、これまで溜まったフラストレーション解消すべく、ここ富士ではMust表彰台を目指し、チームの意気は上がっている。
2デイレース初日。この日も暑からず、寒からずで過ごしやすい。 |
公開車検。 |
連休という事もあり、結構お客さんは入っている。見慣れた(見飽きた)カラーリングながらまだまだ人気はあるようだ。 |
絶景を見せる富士山。 photo/Kazuhisa Masuda | 午前中の練習走行では2番手タイムをマーク。 | 幾度かのピットインを繰り返し“富士仕様”に仕上げていく。 |
高橋選手の横断幕に代わり、ヨッスィーの横断幕が追加された。 |
ピットロードを抜ける紫電。こうしてみると富士のピットロードも段差があるのが判る。 |
戸田レーシングのたゆまぬ努力もあり、最高速も少し向上。 |
90分の練習時間の残り30分でヨッスィーに交代。モニターはワイヤレスTV。それ程目新しいアイテムではないが、今回モニターで借用。 |
ヨッスィー、紫電で初めての富士。45″77のベストタイムは充分。 photo/Kazuhisa Masuda |
今回ファンからの花束は3つに・・・。 |
走行後、車検場へ。任意で車重や各部の寸法を測定できる。 |
紫電が、例年にもまして神経質なのが、最低地上高。この管理は紫電最大の武器である高い旋回スピード得る為に不可欠。 |
ハンディウェイトはポイント×2(kg)となり微妙な端数が登場。 |
予選 晴れ
トップスピードに劣る紫電、ロングストレートを含む前半であっさりとリードされ、後半のテクニカルセクションでは追いつくのが精一杯。
ストレートの遅れ分をブレーキングで稼ぎ、前半で後続を抑え切り、後半でリードを築く。とするにはスタートでなるべく前にいる。理想は勿論ポールポジションだが・・・。
その為にはスターティンググリッド重要だ。
予選は鈴鹿と同様、まずヨッスィーが基準タイムをクリアし、加藤選手がSL用のセットアップ確認と、SL進出の為のアタックを行う。
ヨッスィーは2周計測で1′46″298と充分なタイムをマーク、すぐに加藤選手に交代。まずSL用=決勝スタートタイヤの皮むきを行う。
更にタイヤを交換し、本格アタックに入る。・・・はずだったが、「パワーステがおかしい。」と無線が入り緊急ピットイン。
どうやらパワーステが効かなくなった様だ。
メカが点検するが、電気系のリセット等で直るレベルでは無く、パワーステモーターの交換が必要。
だが交換するだけの時間は無い。
午後予選、鈴鹿同様まずヨッスィーが混走セッションで基準タイムをクリア後、加藤選手へ・・。 |
そのヨッスィー、計測2周目で46秒台をマークしすぐピットへ戻る。 |
その後、SL用(決勝スタート用となる)タイヤの皮むき、そして更にNEWタイヤでアタックの予定だったが・・・。 |
パワーステが効かなくなりピットに戻る。 |
エラーコードをチェック。どうやらモーター本体。この予選中には修復不可と診断。 |
その間、コックピット内で、他車のタイムを見る加藤選手。結局アタックではなく、基準タイムのみクリアする為にコースへ出る。 |
さあどうする。
加藤選手はアタックどころか、タイム計測すらできていない。
このままでは予選落ちである。(実際にはシード権があるので決勝レースに出られない訳ではないが・・・。)
勿論ステアリングが動かなくなる訳ではないが、エンジニアのシンタローから「危険ですから無理ならすぐ戻ってきてください。」と念を押され、加藤選手は再びコースへ出る。
だが今のGTマシン、パワーステアリングが無くてはとてもドライブ(少なくともレースアベレージでは・・)できるものではない。
1周ユックリと様子を見て、“アタック”?に入る。
第1セクターこそヨッスィーのタイムを上回るが、素早い切り返しのある、ダンロップコーナーを始めとする後半のテクニカルセッションで遅れ、47″180!基準タイムには充分だが、SLボーダーの45秒前半にはとても届かない。
これ以上は、リスクが増すだけで、得るものは全く無いので、そのままピットイン。
加藤選手曰く「ハンドルを戻すのも力が要るので、ダンロップ(コーナー)の切り替えし、おっつかなくてブレーキ踏んじゃったよ!」
2号車のベストタイムはヨッスィーの46″298となり、これも悪いタイムでは無かったが・・・300占有時間になると各車
タイムUP。
終わってみれば21台中18番手!紫電にとって、過去最悪のグリッド位置である。
昨年5月の富士で17番手があるが、これはウェットとドライの路面の変化に、うまくタイミングが合わず、アタックチャンスを逃した為で、多くの有力チームが下位に沈んだ。
前回鈴鹿の様に、それなりのグリッドを得たがピットスタートになった事や、全力アタックをしたが、SL進出を逃した事はあるが、トラブルにより予選でパフォーマンスを発揮できなかったのは初めてである。
鈴鹿でのスターターモーターのトラブルや今回のパワーステといい、これまでトラブルが出たとしてもフリー走行等良いタイミングで出て、予選やSL、決勝レースに大きな影響を及ぼさなかったが、今年は全く逆。「なんでここで!」というタイミングで発生。
とにかく決まってしまったものはしようが無い。鈴鹿同様、追い上げを“楽しむ”しかない。
「ピットスタートよりましか~。」と慰めとも、諦めとも取れない愚痴が出る。
せめともの救いは、今回義務着けられた2回のピットインと、400km(300クラスは多分7~8%程少ない・・)と言うロングラン。
好燃費を活かし、スタート時の搭載燃料をうまく調整し、ペースを上げ、最短ピットストップで差を詰め、逆転を狙うと言う青写真はできている。
久々にSL進出ならず、早めのメンテナンスが開始された。
結局SLが始まる直前の、午後3時頃にはメンテナンスの為この状態。 |
パワーステモーターを交換するにはウインドー、インパネを外す。 |
ギアの当りをチェックをする松下チーフメカ。2戦連続のマシントラブルで、心中穏やかではない。症状の出ない電気系の予防策は新品交換が定石。だがそれは予算との相談。4年目の紫電、各所に見えざる落とし穴が出始めたのか・・・。 |
昼間のピットウォークより、なんだか夕方のキッズウォークの方が混雑してる。 |
そんな中、加藤選手とヨッスィーがサインと撮影のファンサービス。 |
決勝前日の最後は給油シミュレーション。練習ではなく実際の給油時間を計る。タンクとマシンの距離、勾配等で微妙に異なるので重要なデーターとなる。 |
決勝 晴れ
夜中から、場内の駐車場への誘導が始まった為、朝の“通勤”はスムーズ。
50000人以上と、相変わらず、この時期の富士は大盛況。
朝のフリー走行、パワーステも完治したはずだが、勿論修理後の実走はこれが最初。
まずは加藤選手が走る。
昨日のうっぷん晴らすかの快走。燃料もレース仕様で多目のはずなのに、44″314!
このフリー走行トップタイムである。
このタイムで予選一回目なら、3番手で楽々SL進出である。
代わってヨッスィーも46秒台と充分走りを見せる。
トラブルさえ無ければ、もっと楽なレース展開を望めたのだが、観客の方々には、追い上げが楽しみとなりそうだ。
雲は多いが、本日も雨の心配は全く無い、素晴らしい五月晴れ。
決勝日朝、今日も爽やかな一日が期待できそう。 |
フリー走行前、交代時の手順を話し合う、両ドライバー。 |
レースタイムに近いフリー走行は、レースの組み立てに重要なデーターとなる。 |
ピットストップ、ドライバー交代は2回義務。フリー走行での練習。 photo/Kazuhisa Masuda |
ちびっ子ファンから送られた応援メッセージ。 |
加藤選手は昨年のお子様誕生から、より一層子供ファンへのサービス精神が旺盛になった。 |
グリッドに向けてピットを離れる加藤選手。
2回のピットイン。加藤選手がスタートとゴールの2スティントを担当。
短い給油時間でピットストップを短縮し、2スティント目は軽くしてヨッスィーが繋ぐ・・・予定。
定刻通り午後2時のフォーメーションラップの後スタート。
ヘアピンで500クラスのトップグループで接触の波乱があったものの、300クラスは無事にオープニングラップを終える。
1周目は“大人しく”グリッド通り18位で帰ってきた加藤選手だが、2周目、いきなり15位へ!
タイムもトップグループと変わらぬ45秒台。
3周目15位、4周目14位。
レースは1、2位の81、43号車が3位19号車に4秒のリード。
以下7位までの5台は、8秒以内でほぼ等間隔。
その7位5号車から14位2号車の加藤選手までは3秒以内に8台がひしめく集団。
ポイント圏内に入るのにそれほど時間はかからないだろう。
ところが5周目、突然モニターに映し出された紫電!
ダンロップコーナーの立ち上がり、他のマシンに抜かれつつ、スロー走行からフル加速状態。
何かが起こって止まっていたのか?
加藤選手「クソッ誰か押したよ!!」
右側が映ったマシン、確かにウイング翼端板が無くなり、後ろ右角が破損している。
ピットインせず、ストレート通過。
メカが目視で確認。モニターで見た通り。更にテールランプがぶら下がってる状態。
順位は20位にドロップ。
シンタロー「クルマ走れそうですか?」
加藤選手「走れる!走れる!」
それを裏付ける様に、この6周目45″595と、加藤選手ベストタイムをマーク。
“ふりだし”以下の順位になって、やり直しである。
トップとは30秒近い差が着いてしまった。
その後追突したのは111号車と判り、彼らにはドライビングスルーペナルティが課せられたが、これが被害者側の救済になる訳ではない。
しかしモチベーションを無くす事無く追い上げる加藤選手。
8周目17位。9周目15位。10周目14位。12周目13位。
トップグループは46秒台に落ち着き、スタートから変わらず1、2位は0、2秒間隔で81、43号車コンビ、7号車に代わった3位に8秒差を着け“別次元”のレースを展開中。
そのグループと変わらない、いや少し早いペースで追い上げる加藤選手は、その後もペースを落とさず追撃。
46秒後半から47秒台のマシン群の中、45後半から46秒前半で回遊する。
皮肉にも、追突されスピンで遅れた間に、密集していた中段グループ大きく伸びた為、集団の中にいるより加藤選手は自分のペースを保ち易いようだ。
16周目には10位と、ついにポイント圏内にマシンを進めた。
ここまでのポジションアップは凄いが、デッドヒート中の首位2台43・81号車とは36秒差、これは遥かかなた。
そこから8秒離れた3位7号車、以下、19・26・30・46・74・31号車、そして2号車加藤選手。
4番グリッドから5位を走行していた、お隣ピットの11号車がエンジントラブルでピットイン。
上位グループの1台が脱落するなど、レースはまだ20%を消化したばかり、2回のピットワークも含め、まだ我々は諦める位置ではない。
っが、ここから先は簡単に順位を上げられない。
と同時に一回目のルーティンピットが始まり、見かけの順位は上がって行く。
21周目には9位。23周目8位、25周目7位そしてそのままの順位で予定通りの28周目、2スティント目担当のヨッスィーが待つピットへ。
しかしここまで這い上がって来た我々を、再度奈落に突き落とす出来事が・・・!
順当にピット作業を終えたマシンが再スタートしようとした時、ピットオフィシャルから“待った”が掛かる。
序盤の追突で破損した箇所の修復が命じられたのだ。
確かに破損したテールランプ等、走行中に脱落の恐れが無い訳ではない。
微妙な状態でオレンジボール(マシンに破損やトラブルがあり、二次アクシデントの恐れがある場合に強制ピットインを命じる旗。黒地にオレンジの丸の旗)が出されなかったのは、被害車側への温情か?
とにかくテールランプをガムテープで補強し、めくれ上がっていた、リヤエンドガーニー(テールランプ上部のアルミプレート)を、力任せに引き剥がす。
スターティンググリッドに向かう紫電。今回はチャンとピットを後にする事ができた。 |
グリッド上、エンジニアのシンタローを囲む両選手。 |
後方グリッドとは言え、レースのキーとなる(はず)2号車。こんな後までやってきたリポーターに応えるヨッスィー。 |
後は3台だけ。あとはマーシャルカー。 |
スタート前、握手をする両選手。加藤選手がスタートとゴールを担当。 |
スタート直後。後の方だが、ピットスタートに比べればまし(笑)。 photo/Kazuhisa Masuda |
レース序盤に追突され右後部が破損。 |
割れたカウルと、ぶら下がったテールランプはガムテープ補修。めくれ上がったガーニーは引き剥がすし、翼端板はそのまま。 |
オフィシャルの確認を受けつつ補修。約1分を要したがレースを決定着けた。 |
この修復に約1分を費やし、やっとヨッスィーを送り出す。
しかしこの1分は、今日のレースを決定付ける事となった。
18番グリッドからのスタート。+ 追突、スピンでのポジションダウン。+ 1分もの予定外のピットストップ。
これだけのマイナス要素が重なって上位に食い込める程甘いレースではない。
ピットアウト後の順位は16位。またやり直しである。
リヤガーニーの破損と、翼端板の脱落で、リヤ周りの特性が変わったのか?高速コーナーでのオーバーステアが気になるのでスタビを調整して対応、ペースを上げるヨッスィー、いまだ元気モリモリである。
50秒台で走行する前方集団に対し45~46秒台で飛ばすヨッスィー。
程なく順位は上がり、31周目14位、33周目には加藤選手を上回る45″503のベストタイムをマーク。
35周目13位、39周目12位、46周目11位。
この間、ずっと45~46秒台のヨッスィー。
このタイムは44~45秒台のトップ43号車にはかなわないが、他のトップグループとは全く遜色が無い・・・では追いつかない。
と言ってもこれ以上のペースUPは、3スティント目のタイヤ無交換作戦に響く。
レースは2回目のピットインも始まり、再び見かけの順位が変わり始め、それが9位となった56周目、再び加藤選手に交代。
残りは恐らく26周。それに見合うやや大目の給油。そして予定通りタイヤ交換はしない。
タイヤ無交換は、ピットストップ時間もさることながら、アウトラップも短縮できる。
11位で復帰した加藤選手は、その後淡々と46秒台を刻むが、順位を上げるのは62周目と、66周目にひとつづつ上げるが精一杯。
その後、約30秒前を行く74号車と差が伸び縮みするものの、脅かすには至らず、このポイント圏内の順位を守るに留まり、トップから2周遅れの80周、「労多くして功少なし」のレースは9位でチェッカーを受ける。
2回目のピットイン前、準備を整えた加藤選手。 |
タイヤ交換はしない為、ジャッキアップなし。これが目的ではないが、給油スピードも上がる。 |
給油後、ホースから燃料漏れがあり清掃中。大事には至らず。 |
タイヤ交換無しの最終スティントも快調に飛ばす加藤選手。 photo/Kazuhisa Masuda |
しかしレース終盤は順位もほぼ固定。前走車とのペースも、差も変わらず。 photo/Kazuhisa Masuda |
2周遅れでチェッカー。両ドライバー、メカスタッフは勿論、作戦そのものにもミスが無かっただけに悔しいレース結果となった。 |
レース後のマシン。今年、軽量化の為に無くした補強部材があったらここまでならなかった・・かも? |
コースウォークは初めて?のイベント。レース終了後行われた。 |