Super GT 2006 Series 第2戦
SUPER GT OKAYAMA 300km RACE 2/3ページ
4月7日(金)フリー走行
晴れ 路面:ドライ
サーキットに到着したが、今日は、少なくとも午前セッションは走れない。昨夜深夜まで、モーターを点検したが原因が判らず、結局今日届くモーター(同じ物ではない)を待つ事になった。デイトナプロトをベースにした紫電には、アメリカ製のパーツが随所に使用されているが、これらのスペアパーツをどこまで持つか?はプライベーターとしては厳しい選択を強いられる。消耗品はともかくとして、クラッシュ、コースアウトで破損し易いパーツ、特に精度を求められ、応急処置が困難な足回り、ブレーキ周りを優先的に準備するのは当然だが、その他大型のカウル等はできるだけ補修を行う。現地(サーキット)で補修不可能な事故は恐らく、走行不能な程の状態と考えられ、その場合レースを諦めなくてはならないだろう。
かなり派手にクラッシュして、短時間で何事も無く修復されてくるのは、メカの力+経済力以外の何物でもない。
しかしこのスターターモーター等は新品状態から、これ程短期で故障をするとはまったく想定外。クラッシュで壊れる事もありえない。少々の電気系の故障等も修理は可能である。スペアとしての準備はかなり後回しになるのは当然と思われる。
午前セッションが始まる頃、シャッターが閉められたピットの中では、悶々とした空気が漂っていた。スターターモーターの到着を待つ傍ら、スターターモーターの点検が行われるが、多くのメカが携われる訳ではない。マシンの他のメンテナンスは昨晩すましている。ただ待つだけでは時間が勿体無いと、ドライバー、エンジニアはコースサイドに足を運び、他のマシンの走りを観察。午後セッションに備えた。
部品の配送経路を追った所、岡山県までは着ているようだが、しかしここ英田近辺へはまだ時間がかかりそうだ。運送屋の配送担当者が持って出てしまえば、配達されるのを待つしかないので、こちらから取りに行った方が早いだろうと、加藤選手が運送屋の営業所まで部品を取りに出かけた。受け取ったら速攻で帰ってこられるだろう。
そんな午前も終わろうかと言う頃、パーツをもって加藤選手が帰って来た。同じモーターではないが、部品流用はできるであろうし、“トンネル”の先に明かりを見た感じだ。早速モーターを比べ、流用できるパーツを移植、単体点検でもOK。マシンに装着。早々脱着する部品ではないので、結構狭苦しい場所にあり、これまた人海戦術は使えない。
ところがマシンに付けると回らない。これは昨日から続いた、現象。単体では回るが、マシンに付けると回らない。こうした再現性は非常に厄介!手の打ちようが無い。“トンネル”の先は雪国だった。
結局午後のセッションも走れず・・・。04年NSXでのセパンを思い出す。(オーバーヒートで走れなかった)
メカは諦めずオーバーホールを繰り返し、テスターを駆使し、原因究明に努めるが、メカ以外の私や、ドライバーはこれ以上ここに居ても役に立たないし「ま〜何とかするだろう」と、夕食を取りつつ宿に引き上げる。食事をしつつも「直りました。」と言う連絡をまったが、とうとうそれは無かった。
今回メカとドライバーや私は、同じ宿で、夜中2時頃目を覚ました私は、窓から駐車場を見下ろす。するとメカの足、ハイエースワゴンが帰ってきているのを見た。その時「あ〜直ったんだな」と確信した。彼らは直らなければ帰ってはこないだろうから・・・。
4月8日(土)予選 晴れ
路面:ドライ
サーキットへ到着。公開車検が行われており、マシンはいつもの様にピット前に並んでいる。何も無かった様に・・・。
メカは何度かのオーバーホールで、しかもマシンに装着した時にだけ起こる、ほんの僅かな漏電箇所を見つけたのだ。
昨日1日走れなかった悔しさより、無事に修理ができた事の方がうれしい。
しかし1日走る事ができなかった代償は大きく、昨日予定していた重量増加によるサスの詰めがまったくできていない。1回目の予選、前半はSL進出を狙い、後半と2回目予選はレースに向けたセッティングの時間にも充てられる事になる。
朝の公開車検はお昼のピットウォークと変わらぬほどのお客さんが・・・。
この山のかすみは黄砂か?花粉か?設営の章の写真と見比べてみてください。
その1回目予選、加藤選手のアタックで1’31″969と、32秒は切れたが、8番手。辛くもSL権は得る事ができたが、結構一杯一杯と言った感じである。混走セッションでは高橋選手が1′34″571と自己ベストを更新し決勝レースでの期待がかかる。
午後予選前にスプリングを変える等、決め手を欠いたセッティングを更に詰めるが、この時点でのこの作業は一か?八か?の勝負でもある。2回目予選終了から、SLまでの間は約20分。この間に戻す事はできるだろうが、本来なら前日の仕事である。
午後に向けバネを返る等、まだまだウェイト対策セッティングが決まっていない。
午後の予選は15分。無論タイムアップは無意味だが、明日のレースの為のデーター取りと言っても良い10ラップである。
ここ岡山では午後予選前にカートレースが行われ、カートの中には2サイクル車もあるので、どうしても路面がオイルで滑り易くなる。(と思われる・・)多くのマシンがタイムアップをしていないが、SL進出の10台以下は、午前予選でグリッドは決まっているので、無理はしないからでもあろうか?
午前予選が8位の為、SLは3番手スタートと早い。今回のSL用BGMは勿論ユーミン。しかも荒井由実(決して松任谷由実では無い)「返事はいらない」。しかしここ岡山はBGMが小さく、しかも観客用の大型ビジョンが無いので、どうも盛り上がりに欠ける。
加藤選手のアタックも午前予選を上回る事はできず、1′32″334。殆どのマシンが午前のタイムを上回る事ができず、前述のオイル?の影響かとも思われたが、1・2位となった46・13号車は午前を上回り、30秒台に入れている。
結局多少前後のマシンが入れ替わったが午前予選と同じ8位と、明日のグリッドが確定した。
SL直前。加藤選手からフィーリングを聞くエンジニア、信太郎。
SLに向かう紫電。待機中のサポートとして松下チーフメカも走る。結果は変わらず8位。
アンパンがぶら下がっている。大食いメカのお預け状態?昨日と変わって余裕の決勝前のメンテ。
これが新兵器。ヘルメット乾燥機。温風が出て、除菌(紫外線みたいな光で・・)もやってくれる優れ物。
4月9日(日)決勝 晴れ
路面:ドライ
このレースウィークは雨が無い。ありがたい事だが晴天と言う程でもない。昨日から山がかすんで見える。大陸から飛来した黄砂だ!と言う説と、大量の杉花粉だと言う説がパドックに流れた。どちらにしろマシンに細かなチリが積もっていく。僅かな時間でも指で文字が書ける程・・!
これだけ酷いとエンジンにも影響が出るのでは??っと、思えてくる。
朝のフリー走行では満タンで、しかもかなり周回したタイヤでも33秒台5番手と中々バランスは良いようだ。
レースでは十分にポイント圏内をキープできると思われ、チーム内にも明るいムードがただよっていた。
昨夕のピット作業練習でもまずまずだった。クルーも紫電に慣れた。
レース前のウォームアップも終わり、紫電がグリッドに向けてピットを離れる。ピットクルーが機材を持ってピットロード歩く。そこへ紫電が帰って来て、8番グリッドにマシンを止める。たかがまだ2戦目だが、今シーズンテスト等も含め紫電は5回サーキットへ来ているが」、グリッドにマシンを並べたのは、これまた初めてである。メカと眺めながら「なんか見慣れないね」って感じである。
グリッドに並んでから、スタートまでのグリッドウォークは、マシンを外周全てをじっくり見せるお披露目の場であり、ある意味チーム間の交流の場でもある。この紫電はNEWマシンながら前回の鈴鹿でその“場”を逸してしまった。
今回は多くの観客、チーム関係者が「紫電」を見にやって来る。
今シーズンはスターターとなる事が多い(多分)高橋選手にアドバイスを送る加藤選手。
鈴鹿では待ちぼうけを食ったRQ。今度はちゃんとマシンが来た。
定刻の午後2時。フォーメーションラップからレースはスタート。オープニングの1コーナーで500の混乱が起き、土煙でやや視界が遮られたが、300クラスにまで影響及ぶことは無かった。
が、ストレートで抜かれ順位を落とす。直前の富士テストでも、パワー不足からか?コーナリング重視のダウンフォースが抵抗となっているのか、トップスピードが今ひとつ・・。勿論原因は判っているが、それはまだ秘密という事で・・。14位で走行する高橋選手、25周目にピットイン。加藤選手に交代。リセットされた順位は20位。
スタート1コーナーで500に波乱があったが300クラスには殆ど影響無し。
交代した加藤選手。35〜34秒台で走るが、しばらくして「マシンどっかぶつけた?」と無線で聞いてくる。高橋選手はそんな覚えは無いと・・・。どうもステアリングに異常を感じるようだ。何とか走行はできるとの事だが、「バトルはきついね〜・・。ん〜。何とかするわ。」と、力強いお言葉を言い残して無線が途絶えた。(無線が壊れた訳では無い)
って、だいたい用が無ければ無言でレースを続ける。この無線の前後は35〜37秒台とバラつくが、次第に慣れてきたのかタイム的には35秒台と、決して早いタイムではないが安定してきた。トップグループは34〜35秒台。
30周目で19位。この辺りから他のチームピット作業が始まり次第に順位が上がってきて、33周目15位。36周で13位。43周目12位。45周目11位。ポイント圏内まであと1台。10位は加藤選手の古巣、坂東組セリカ19号車。タイム的には僅かに加藤選手の方が速いが、抜く事はできない。ずっとテールtoノーズで周回を重ね、52周目何とかパス。10位へ。1周約0.5秒ずつ引き離し、先を急ぐ。残り周回は22〜23周。
次の目標は、5秒先のトイストーリーMR-S、101号車。
しかしラップタイムはこれまた、僅かに加藤選手が速いが簡単に抜ける程ではなく、60周目辺りから差は1秒以内となり、またまたテールtoノーズの小康状態が続いた。
そして10位でむかえた残り2周の74周目。前を行く101号車MRSを射程内に入れながらも抜きあぐんでいた加藤選手はダブルヘアピンで勝負を掛ける。
がっ、接触!101号車はスピン。9位で戻ってきて、そのままファイナルラップ。そして9位でチェッカーを受ける。、しかしこの101号車への接触行為がペナルティとなり、レース中ならドライブスルーとなるべく、タイム27秒が加算され、11位に後退。ポイントを逃す事となった。