Super GT 2006 Series 第6戦
SUPER GT 35TH INTERNRTIONAL Pokka1000km 4/5ページ

8月20日(日)決勝
晴れ 路面:ドライ

今朝は3日間通しで一番雲の量が少なく、どうやら夏の耐久レースらしい1日となりそうだ。予選も、今日朝一のフリー走行も、走行時間は通常のレースと変わらない。となると3人体制のチーム大忙しである。このフリー走行は満タン時のマシンのフィーリング確認する重要なセッションであり、3人共走行は必要である。ましてや昨日、ブレーキ時のステアリング異常が出ており、それらの確認も含めると、30分のフリー走行はかなり短い。各ドライバー計測2周、アウトイン含めると4周づつ、8〜9分×3人結構忙しい。
そんな中、明るい材料と、暗い材料が出てきた。“明るい”のは、今回の助っ人ドライバー吉本選手が、2′11″388とこのセッションでは加藤選手を上回り自己ベスト更新。走行時間が少なかったハンディを感じさせない走りを決勝でも期待できそうだ。

photoいかにも夏っていう雲。やっと雨の心配の無い1日になりそうだ。

photo新品ローターを含め、足回りは入念にチェックされた。

photo4回のピットインが予定される。

photo入念に立ち位置もチェック。

続いて“暗い”材料。ブレーキ時のハンドル振れは“とりあえず”おさまっているようだが、それとは別のハンドリングの異常を3人のドライバーが全員訴えている点だ。昨日、足回りはチェックと念の為部品を変える等しており、新たなるステアリング系のトラブルは厄介だ。
このレーシングマシンという“料理”、セッティングという“レシピ”はエンジンニアが決め、メンテナンスという“調理”はメカニックが行う。しかし“味見”はドライバーしかできない上、それを食べ切るのもドライバーである。特にこうした操作系のフィーリングに関するトラブルは、原因が“見えにくい”。オマケにこのタイミングでは決勝レースまでに“味見”をする事もできない。いきなり“実食”である。しかも1000km!
しかし3人共同じ訴えである以上、どこに原因があるかと、メカも懸命に探す・・・。
その結果、症状に合致する原因を発見!(内容はチョッと・・・今は秘密で。)
作業は少し手間取る(大勢で作業ができる場所で無い為)が“美味しく”いただける料理になりそうだ。

photo朝のフリー走行は3人共ドライブ。同じトラブル症状を訴えた。

photo原因は程なく見つかった。。

photoが、狭くて1人でしか作業ができない。内容のわりに時間が掛かった。

ここ鈴鹿1000kmでは地元という事もあり、毎年「Honda Cars東海(勿論昨年までは「HONDA VERNO東海」)特別応援観戦券を販売している事から、応援席ができている。今回は応援席への挨拶に行けなかったが、抽選で40名の方にドライバーをガイドにコースを1周するバスツアーを、20名の方はピット前でドライバーとの記念撮影と、いつもと違う趣向でお楽しみいただいた。
フリー走行から決勝レースが始まるまでの時間、ドライバーはファンサービスに努めてもらいました。

photoRQも乗り込んでのバスツアー。

photoバスガイドは高橋選手。

photo和やかなコース1周。

photoピット前での記念撮影。マシンは整備中で並べられないので、タペストリーで代用。

決勝レースはいつもより1時間早い、午後1時から。ウォームアップ走行は正午過ぎに始まり、今回スタートを努める加藤選手から、ステアリング問題無しの報が入りメカも一安心。気温は33度とポッカ1000kmにふさわしい。
今年はずっと高橋選手だったが、初めて加藤選手がスタートを努める。というのもこの1000km(300クラスは実質930km前後)4回ピット(給油)が標準的だが、エコランで3回ピットも不可能では無い。っが、ガス欠のリスクは無視できず4回ピット(5スティント)で行く事とし、加藤、吉本選手に4、5スティントと2スティントを走る予定。(場合によっては加藤選手1人で・・)その為の休憩時間を多くとる必要があるからだ。従って、2スティント目は吉本選手、3スティント目を高橋選手が担当する。

photoこれまた入念な打ち合わせ。でも何が起きるか判らない・・・。

photo暑い中駆けつけてくれたお客さん。“応援団席”はピットのまん前

photo白いキャップはお配りした特製オリジナル「紫電キャップ」

photoグリッドについたマシン。加藤選手はどこに?

photoAピット前の日陰で休んでいた。佐々木孝太選手と何やら・・。

photoグリッドでの3ショット。加藤選手がスタートドライバーを努めるのは今シーズン初。

スタート方法はいつもと同じ。定刻午後1時スタート。先は長いので無理なスタートダッシュは避け、ピタリ11秒台のタイム刻む。その内7周目27号車コースアウト10位へ。12周目19号車コースアウト9位へ、46号車がズルズルと下がってきて13周目8位・・・と無理(ドライバーは一生懸命だと思うが・・)せずして順位は上がっていく
と、この辺りから「クラッチが切れね〜よ!!」ピットに激震が走った。とりあえず走れる様だが(そりゃつながらないとは逆だから・・)長丁場の初盤からこれではかなり厳しい。シーケンシャルミッションはクラッチを踏まなくても(切らなくても)ギアチェンジは可能だが、クラッチ操作をした方が(できる方が・・)良いに決まっている。なんと言っても、ピットインで止まったらどうやってスタートさせるか?
色々心配のネタは尽きない。・・・タイムも13〜15秒台と落ち、加藤選手にしてはバラつきが大きい。
マシンにトラブルが出た場合、危険か?そうでないか?症状が酷くなるか?そうでないか?ピットインをして直ぐに修復ができるか?そうでないか?ドライバーはこれらを総合的に判断し(しかもレースモードで走りながら)そのまま走り続けるか?どうか決める。ルマン24時間をはじめ、耐久経験豊富な加藤選手、時折12秒台に入れる13〜14秒台、それも安定したタイムを刻み始めた。どうやら“刺さったトゲ”の痛みになれてきたようだ。

photoスタート。11番手グリッド、当然中団に埋もれる。

photoいつものスプリントと比べ、各マシン前後左右に大きく車間を空けている。様に思える。

photo300となったランボは速い。

photo序盤にクラッチトラブルが発生。

この間に88号車にパスされたり、62号車をパスしたり一進一退、22周目まで8位を堅持。ここらから300クラスのピットインが始まり、見かけの順位は上がって行き、31周目には前を行く全てのピットインが終わり、とりあえずトップに立つが、35周を終えピットイン。加藤選手から吉本選手に交代。ガス補給タイヤ交換を済ませる。果たしてクラッチの切れないマシンを発進させる事ができるのか?
ジャッキ降下!と殆ど同時にギアを1速に入れたまま、スターターを回す。アクセル全開!鈴鹿のピットレーンの下り坂にも助けられ、激しいホイールスピンでスタート。とりあえずコースに送り出す事に成功。リセットされた順位は変わらぬ8位。
燃料補給後に行う燃料計のリセットを行う指示をしたが、「フューエルリセットってどうやるんですか?」と、各部操作方法を覚える時間が無かった程、走行時間が短かったドライバーとは思えない吉本選手はNEWタイヤの恩恵も受けたとは言え、クラッチ不調の“トゲの痛み”を感じさせぬ13〜14秒台の快走!
どうやらクラッチも全く切れないのでは無く、やや引っかかった様な感じで“完全に”切れない。といったレベルで、コツを掴めばさほど支障無く走る事はでき、一抹の不安は残るが“暫く”は大丈夫だろうとの事。
順位は他チームのピットインタイミングの違いもあり、40周目6位、45周目4位、と上がって行くが、我々が次のピット作業終了後が本当の暫定?順位となる。
1000kmともなるとピットイン回数とタイミングは各チームに違いがあり、また自チームのレースも進めなくてはならず、実際にはなかなか情報収集もできない。とにかくそれなりのタイムで、確実に周回を重ねるだけだ・・・。
そんな2号車「プリヴェチューリッヒ・紫電」に2本目の“トゲ”が刺さったようだ。それもマシンにではなく、ドライバーに・・・。
「何かクールスーツが効かないですが〜・・・」全スタッフの中で最も若い彼は、大人しい口調で無線を送って着たが、事態は深刻だ。
一昨年のセパンで同じクールスーツの不調で“死にかけた”吉本選手。自己診断では、効かないのでは無く、“効きが弱い”みたいで、加藤選手のドライブ時まで問題無かった事から、ベルトの締め付けか?何かで水が通るチューブが折れ曲がったか?締め付けられているのではないかと推測される。

photo予定では満タンで走れるギリギリの1歩手前、35〜36周毎にピットに入る。・・はずだった。

photo二人目は吉本選手。しかしクールスーツの不調に付き合わされる事に・・・。

しかし吉本選手を“サウナ”から開放するには、もう少々頑張っていただかなくてはならない。52周目「Z、速ぇ〜〜・・」と言いつつもその47号車を、実力で抜いて3位に上がった時の声はかなりバテ気味だった。
タイム的には大きく遅れる訳では無いが、いつドライバーが“イって”しまうか判らない。ドライバー交代は71周目の予定だったが、その後の作戦上ミニマムとなる67周が終了した時点でピットイン。高橋選手を送り出す。解放された吉本選手も自力で歩ける程度の体力は残っていたが、大容量のドリンクは全く残っていなかった。大事になる前のピットインは正解だったと思われる。
68周目、アウトラップでリセットされた順位は5位だが、直後からはその少し前にピット作業を終えた11号車、47号車、27号車が12秒台で猛追。14秒台とペースの上がらない高橋選手は抑える事ができず、72周目までに8位に後退。その後は各車のピットインもあり順位は変動。6〜7位を行ったり来たりの周回が続く。500クラスが100周を終えた午後4時30分の時点で、300クラストップは52号車で93周。我々は既に1周遅れの92周。

photoピットインの準備を進める。見ての通り、午後ピットは日陰になる。に対してスタンド席は暑いだろうな。

photo着替えた吉本選手。メカにマシンの状況を伝える。

173周のレース、このペースなら300クラストップは159〜160周、我々は158周辺りがフィニッシュとなるだろう。300は500のペースにより最終周回数が決まり、当然燃料計算もそれに左右されるので、これらの計算は重要な事になる。
このスティント、35周を託された高橋選手。20周を終えた辺りからタイムがガックリと落ちてきた。確かに開幕の鈴鹿では15周で加藤選手に交代しており、今回はその倍以上。しかも暑さは比では無い。ドライビングスキルのアップはあるが、スタミナの点ではまだアマチュアの域を出ないどころか年齢ハンディがズッシリとある。15秒台すら出なくなって、いてもたってもいられなくなったエンジニア、シンタローは吉本選手同様、早めのドライバー交代を敢行。98周が終了した時点でピットに呼び戻し、加藤選手に交代する事とした。予定ではこの4スティント目で105周が完了しているはずだったが、高橋、吉本両選手が7周の“借り入れ”をしてしまい、その“債務”を加藤選手に押し付ける形となった。
残り周回は推定60周。実はこれを途中1回の給油のみ、タイヤ無交換で加藤選手に“借金返済と貯金”をしてもらおうという予定なのである。(勿論加藤選手の体力如何では、吉本選手の再起用のオプションもある)
これはGT1レース分。気温が下がり始めたとは言え、果たして体力はもつのか?またなんと言ってもタイヤが持つのか?その重責を任された加藤選手が“返済方法”に選択したのはソフトタイヤ!ハードならこの周回は充分もつだろうが、ソフトではタイヤ屋さんもかなり厳しい(無理!)との事。

photo吉本選手に代わって高橋選手。順調に周回を重ねるに見えたが・・・。

photo高橋選手もバテて予定周回をこなす前に交代。

現在9位、ハードタイヤで普通に攻めても面白くない。ソフトタイヤで様子を見ながら“攻める”との事。加藤選手も「ま〜何とかするわ。」と言い残してコースに出て行った。
103周目にはチームファステスト10″979をマーク。その後も11〜13秒台と、1スティント走った疲れも見せず更に先を急ぐ。104周目62号車をパス。8位。そして今回のレース最大(チームとって)ハイライト。(たまたまモニターで映し出されたから・・・)111周目裏ストレート。前を行く47号車を追走する加藤選手。シケインでは追突せんばかりに接近。トップスピード勝負の第1コーナーまでは無理せず、S字は“どこからでも抜けるぞ”と言わんばかりに左右に揺さぶりをかけ、ダンロップコーナー、アウト側から“力技でバッサリ”
シンタロー「ん〜、スバラシイ〜」加藤選手「もっとほめて!もっとほめて!」(これは本当にあった無線会話です。)
118周目、3回ピット作戦を取るMR-S勢の一角、前を行く777号車が3回目のピットイン。6位に上がる。

photo午後5時。シケインを抜ける紫電。例年の1000kmより観客は多い。

photo午後5時半。ダンロップコーナーを登る紫電。かなり西日が強くなってきた。

時刻は5時半、この頃になると気温29度路温33度と、レース開始時のそれぞれ33度、47度から、かなり優しくなってきた。
121周を過ぎたあたりで、「タイヤ交換どうします?」ソフトタイヤで20周以上攻め続け、残り更に倍の40周近くを走るのである。不安は当然。満タンで36周は保証されている事から、134周目の燃料補給時に交換するかどうか?
その問い掛けに対し、加藤選手は「このまま行くしかないんだろー!」おっしゃる通り、その通り。だがタイヤがもっての話。残り周回数分とは言え3分の2の燃料、50kgほど重量も増える。土壇場でタイヤが“逝って”しまったり、タイムが落ちては元も子も無い。
しかしそれらが杞憂であり、加藤選手のマシンの状況把握能力が卓越している事を思い知らされる事となった。

photo1000kmらしい雰囲気となってきた。午後6時半

photo夜のVIPルーム。

photoマシンの不調でスタートしなかった96号車はこの演出の為、夜間のみ出走。目立つ!!

ピットアウト後も殆ど13秒台!昼の空に、夜の空が加わり始める頃になってもそれは変わる事は無く、路温が下がった事を差し引いても40周以上を走ったタイヤとは思えない快走ぶりである。
夜の空がその殆どを支配した午後7時まで数十秒、夜間走行に入ってからもそのタイムを落とす事無く、300トップから遅れること2周、5位、158周でチェッカーを受ける。

photo前にも後ろにも、追いつき、追いつかれる差ではない。モニターで見守るのみ。

photo60周(ほぼ1レース分)近くを走りきり、チェッカーを受けピット前を逆走し、パークフェルメに向かう紫電。加藤選手。

ページ1 ページ2 ページ3 ページ4 ページ5

 
現在の位置:ホーム / レースリポート / Super GT 2006 Series 第3戦:ページ3